EVE new generation

【いぶ にゅー じぇねれーしょん】

ジャンル マルチサイトADV


対応機種 プレイステーション2
Windows 98SE~XP
メディア DVD-ROM 1枚
発売元 【PS2】角川書店
【Win】タイレルラボラトリー
発売日 【PS2】2006年8月31日
【Win】2007年3月23日
定価 【PS2】DXパック:9,240円 / 通常版:7,140円
【Win】10,290円(全て税込)
レーティング 【PS2】CERO:D(17才以上対象)
アダルトゲーム
備考 Win版のタイトルは『EVE new generation X』
判定 なし
ポイント シナリオの軸を一新
良くも悪くもライターの作風が強い
グラフィック面は不評
EVEシリーズリンク


私が殺したんだわ…多分




概要

EVE burst error』から続く『EVEシリーズ』の5作目。
毎度ライターの変わるシリーズだが、今回のシナリオライターは『Ever17 -the out of infinity-』や『極限脱出 9時間9人9の扉』の打越鋼太郎。
世界観や主人公は共通しているが 「new generation」とある通り、過去作とはストーリー上の繋がりは無い完全新作になっている。

ストーリー

私立探偵天城小次郎は、倉庫街にある事務所へと帰宅する途中、一人の少女と出逢う。少女は小次郎が探偵だということを知り、依頼を持ちかけてきた。

「私の記憶を探して欲しい」

その直後、外車から下りてきた男によって連れ去られてしまう。

 

一方、日本の諜報機関である内閣情報調査室のエージェント法条まりなは、ある夜ビルの屋上から飛び降りようとする一人の青年を見つける。

必死の説得を試みたものの、青年は自ら命を絶つ。

「計画はすでに始まっている。もう誰にも止めることはできない。テロだよ」

そう言い残した青年の掌には”蜜蜂”のタトゥが刻まれていた…。

 

突如首都圏を襲う大停電、武装テロ、謎の製薬会社、蜜蜂のタトゥ、そして、謎の少女…。

果たして、二人は【真相】という名のパズルを解くことができるのか

特徴

  • マルチサイトシステム
    • シリーズ過去作同様、「天城小次郎」と「法条まりな」の二人の主人公の視点を切り替えながらストーリーを進めていく。
    • 片方の視点だけを進めていくとやがて行き詰まる。その場合はもう片方の視点を進める事で、シナリオ進行が解禁される。
  • 捜査時の独特な入力方式
    • 通常の考える・決定は○ボタン、調べるは□、話すは△と状況に応じてボタンを選ぶ。
    • また方向キーで 見る方向や調べる方向を選択しながらボタンを選んでいく。
      • 方向キーとボタンを同時押しすることで、その対象に対してのアクションを行う。方向キーは場面に応じて対象に割り振られる。
      • 方向キーを押さずにボタンを押した場合は対象を指定せずにアクションを行う。辺りを見回したり、その場で考え込んだり、独り言を呟いたり或いはその場の全員に話しかけたり、など。

評価点

  • シリーズがシナリオの評価が微妙な物が続いていた中、シナリオ全体を通しての評価は高め。
    • 謎が謎を呼び、進めれば進めるほど先が気になるストーリーはプレイヤーを引き込む。
      • 序盤から多数の伏線が張り巡らされ、中盤からは展開が二転三転四転していく。打越氏の持ち味が活かされていて好評。『burst error』とは趣が異なるも、シリーズ内では同作に次いで良いという声が多い。
    • 叙述トリックやミスリードを誘う展開を得意とする打越氏の作風はマルチサイトシステムとも相性が良く、プレイヤーをストーリーに引き込む事に一役も二役も買っている。
      • また、両サイトが遭遇する場面でも、片方ではダイジェストで済ませたり、片方で済んだ説明の二度手間は極力省くなどの工夫もされており、多くの展開が小気味良く進む。
        しかもこの「片方での描写が省かれている」事自体が伏線である事すらもある。とにかく油断ならない構成となっている。
    • エピローグもしっかり描かれており、結末はシリーズの中でも後味が良いものとなっている。
  • PS2版『burst error』同様、サイトの切り替えはボタン一つで素早く行える。もう一方のサイトを進めないとストーリーが進行しないポイントに到達した際に、アイコンで知らせてくれるのも同じ。
    • 捜査時の入力方式は独自性が強いが、冒頭で解説が入るので理解出来ないまま本編が始まる心配は無い。

賛否両論点

過去作からの脱却

  • 今までのEVEシリーズは『burst error』で登場したエルディア王国を基点に話が作られていたが、本作はそれらは完全に無視している。
    • 今までのシリーズがそれらにこだわりすぎて話が破綻しがちだったので、完全新作にした事自体は割と好評。
    • ZERO』や『The Fatal Attraction』での後付設定にも一切触れていない。
    • 一応、具体的な説明はせず「過去の事件で似たような事があった」と示唆して、旧作プレイヤーに「あの事か」と思わせる程度の台詞はある。
    • 反面、過去作のキャラは主役二人以外では弥生、甲野本部長、氷室のレギュラー三人しか登場しない為、「シリーズ作品」として見ると、非常にさびしい。
      • 中でも氷室は非常に出番が少なく、扱いが悪い。本部長も中盤を過ぎるとエンディングまで出番が無い。
  • 打越色が強く出た作風
    • 「記憶」に関する事件である為、「今までに見聞きした情報が実は間違っていた」という展開が続き、シナリオ自体がまず理解しにくい。
      • 打越氏のシナリオでは良くある事だが、SF系の説明が長々と続き、これもまた話の理解を妨げる。
      • また、ややこしい数式やたとえ話の多用でなかなか要点を得ない解説が多いのも、打越作品の特徴が強く出ており、人を選ぶ部分がある。あと、登場人物が異様に暗算が正確で速いのも同じ。
    • プレイヤーに答えを求める謎掛けも一部登場するが、捻り過ぎて「そんなの解るか」と言いたくなるような難問になっている。
      • 総当たりのADVなので間違えても実害は無いし、適当に選んでもいずれは進めるのだが、心情的にはあまり気持ちのいいものではない。
    • これらは『infinityシリーズ』や『極限脱出シリーズ』ではいつもの事で、それらシリーズのファンからしてみれば魅力でもあるのだが、『EVEシリーズ』として見ると違和感が強いのも否めない。

難点

  • 作風を別としたシナリオの問題
    • トンデモ理論の超科学を展開するのは打越作品では恒例だが、本作のそれもかなり無茶なものである。infinityシリーズや極限脱出シリーズのような最初からSF寄りの世界観ならともかく、EVEの世界観は多少のSF要素はあっても基本は現実的である為、尚更それが際立ってしまっている。
    • 打越氏が後に手掛けた『12RIVEN -the Ψcliminal of integral-』ほどではないが、無理のあるトリック、冷静に考えるとおかしい展開もいくつかあり、「展開を優先して話の整合性を気にしない」打越氏の悪い癖が出てしまっている。
  • 主人公が二人とも過去作の良さを潰されている。
    • 二人ともとにかく事件に振り回される。
      • 本作では終盤までのかなりの行動が黒幕の思惑通りだった事が明かされる。自分で考えて行動しているつもりが、多くの場面で敵の掌の上で踊らされていたと言う格好である。
      • その敵の計画も主人公二人の活躍で潰したというより組織の内分裂など黒幕も予想だにしなかったアクシデントに見舞われたり、そもそも計画に無理な部分があったという感じで勝手に潰れて行く。これは過去作でも見られた展開だが、振り回される度合いで言えば本作は群を抜いている。
    • まりなの「1級捜査官」という肩書きが伊達かと思えるほど。
      • 要所要所では優秀な所を見せるのだが、単純なミスを犯すシーンが今回はあまりに多い。素人でも頭を抱えてしまうような展開もちらほらと。
      • 冷静な判断が出来ないような切迫した状況のみならず、特段焦るような状況でもない場面でも結構やらかしてしまう。任務成功率99%…?
      • 最終的には二人で謎を解いて事件を解決するのだが、まりなは謎解きが終わった後は殆ど小次郎に任せっぱなしである。結局最後まで事件に振り回される事に。
    • 一方の小次郎は事件に翻弄こそされるも、冒頭から活躍シーンは随所に見られ、クライマックスも主人公らしくしっかり決める。物語のラストを飾るのも彼である。
      • しかし普段は寒いギャグを連発する。これも打越氏の作品の主人公に近く、単体ならさほど問題は無いだろうが、小次郎がやるとどうにもギャグに切れが無く見えてしまう。
      • 関係ない箇所を調べる事でちょっとしたお遊びの描写が入る事自体は、『burst error』同様良い点なのだが、どうにもその内容が残念な出来だった。
      • また、今回はシステムの関係上、関係ない場所を調べると「そんな場合じゃない」などと冷たくあしらわれる事が多い為、遊ぶ気も従来より起きづらい。
  • 捜査の入力が不便。
    • ある場面では「□ボタン=調べる」だが、別の場面では「□ボタン=話を聞く」だったりと、やりたい事との違和感を感じる事が多い。
      • 正しく進めようとしているつもりなのに、見当違いな行動を取った事にされて主人公に冷たい言葉を掛けられるシーンも多々。
    • コマンド選択式に比べると進行自体はサクサク進むが、せっかくの新システムが活かされているとは言い難い。
  • 立ち絵を含め、CG全般が不評
    • 橋本タカシ氏の絵は顔つき等に少々癖があり、あまり一般受けする絵柄ではない為、難点に上げる人が多い。氏の絵柄が作風に合っていないという声も。
    • テキストでは「中学生くらいの子供」と説明されているのに、高校生か大学生以上にしか見えなかったりするCGも存在する。おまけにボイスも全体的に大人っぽいので説得力に欠ける。
  • 『burst error』SS版から恒例だったアニメムービーは一切ない。最新作としてはとても寂しい事に。
    • 一応、OPにはムービーがあるが、これは実写を使ったものである。

総評

毎度毎度『burst error』を引きずって微妙な評価を繰り返してきたEVEシリーズだが、シナリオの軸を完全に一新した事とライターに打越鋼太郎氏を起用した事で、久しぶりにシナリオが高評価となった。
ただしシリーズ作品としてみると気になる点も多く、良くも悪くも「打越鋼太郎の作品」といった感じで、『EVE』らしさは大分薄まってしまっている。
打越作品のファンなら買いだが、EVEシリーズのファンは「EVEらしさ」をどこまで重視するかで評価が変わってくるだろう。

何はともあれ、本作でシリーズの評価はある程度盛り返していたのだが、4年後に発売される『バーストエラー イブ・ザ・ファースト』でそれも水泡に帰してしまい、リマスター版や新作によってシリーズが再始動するまで更に長い年月を要する事になる。


余談

  • 「月刊コンプエース」で漫画化された。
    • 登場人物こそ共通しているが、単行本1巻分の短期連載の為かストーリーは導入部から結末に至るまでほぼ別物と言ってもいいほどに変更されている。
    • 著者は作中で「目の隠れていない小次郎」を描いたが、スタッフから即座に修正するよう言われて元に戻したとの事。その「目の隠れていない小次郎」はおまけ漫画に描かれてる。
  • 後に18禁シーンを追加した『EVE new generation X』が発売された。
    • 旧作同様、声優陣は一新されている。また、本編では非常に扱いが悪かった氷室に焦点を当てたシナリオも収録されていた。…予約特典で、だが。
    • 他にもファンディスク的ソフトの『EVE雀』も発売されている。
      • ただし『EVE雀』は麻雀ゲームとしての出来も良いとは言えず、ストーリーもCGもやっつけ仕事でボリュームも全くないというシリーズ内でも特に酷い出来なので要注意。
    • 「タイレルラボラトリー」は2019年にソフトウェア倫理機構から脱退したので、『EVE雀』がブランド最後の作品となった。

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最終更新:2022年07月27日 13:10