冬のロンド

【ふゆのろんど】

ジャンル 恋愛アドベンチャー
対応機種 Windows 2000/XP/Vista
発売元 DIVA
販売元 ホビボックス
発売日 2008年10月31日
定価 8,800円(税別)
レーティング アダルトゲーム
配信 2009年12月18日/3,800円(税別)
配信停止
判定 なし
ポイント ツッコミどころが満載過ぎる世界観
非常に雑なシナリオ
良い所もあるにはあるが…


概要

大手アダルトゲーム会社F&Cの重鎮だった金杉肇氏が、同社から独立して新設したブランド「DIVA」の処女作。
ブランド名が日本語で「歌姫」を意味する通り、本作はヴォーカリストや作曲家の豪華さをウリとしている。


作品概要

ストーリー

父親の再婚によって雪降るヨーロッパの小国ルミアウラで暮らすことになった主人公。
そこで待っていたのは再婚相手の子である美少女で優しくてなおかつ姫君という新しい姉妹たちと*1、貧しいけれど純朴な人々。
水道も電気もネットもないけれど満ち足りた日々を過ごしていくうちに、彼女たちに姉妹以上の感情を覚える主人公だったが知らなかったのである。
姫君という立場故に課せられた定めを...。

舞台設定

  • 本作はルミアウラを舞台に進行する。中世の趣を色濃く残す日本から飛行機と鉄道を乗り継いで40時間もかかる、北極圏にほど近いヨーロッパの小国。
    • 所要時間に引っかかりを覚えるが、便数や本数が少なくて乗り継ぎに時間が掛かると解釈すれば、不自然ではないだろう。海外ではよくあることである。
    • 主産業は林業だが、それだけでは国が立ち行かず、「王家の姫を世界各地の王家や有力者に嫁として売り飛ばす」事で国を保っている。
    • 慢性的な電力不足のため、電気は一部公共機関のみ通っている。上流階級である主人公の家も暖炉やランプが頼りである。
      • 冬場は極寒のせいで水が凍結するため、水道や井戸水が使えず、 片道徒歩一時間以上もかかる山奥まで歩いていって 水を確保する必要がある。
    • 学校に通えるのは国民の4割ほどである。授業は午前中のみ行われ、午後は子供たちも労働に勤しむ。 教師はボランティアである。
    • 移動手段は徒歩もしくは馬。
    • 騎士団が存在するが、これが他国における警察 及び軍隊に相当する存在 である。
    • 建国当初は国民が少なかったので、近親婚が当然の如く行われていた。そのため、近親婚のタブーは軽く触れられる程度で 現在も問題とされていない。

評価点

魅力的なキャラクター

  • 見た目はちびっこだけどきちんと姉している長女。優等生だけどヤキモチな次女、寡黙な読書家だけど気配りの効く三女、見た目は美女だけど中身は甘えんぼな四女といった具合で魅力的に描写できている。
    • その中でも次女のヴィクトリアはメインヒロイン級の扱いであり、描写に不足はない。

ヒロインのCGは概ね問題ない

歌曲・BGM

  • ウリとしているだけあり、相応に高品質のものが揃っている。

問題点

舞台・キャラクター設定が稚拙過ぎてツッコミが追い付かない

  • まず本作の舞台は北極圏にほど近いヨーロッパの小国となっており、本文中に「北極圏にもそう遠くはない」「21世紀なのに」「携帯の充電も出来ない」(大意)などの文章が出てくるので現代且つ現実路線の話であろうことが分かる。
    それでいて建国5000年以上というとてつもない歴史の長さだが、建国時の初代女王は魔女だったという言い伝えがあるなど、なぜかファンタジー要素もある。
    • シナリオの核となるのは「王族人身売買の文化(姫を金持ちに嫁として売り飛ばし国を保つ)」という珍奇でクレイジーな文化。姫を売り飛ばす行為も、それに応じて国家予算級の金を差し出すのも意味不明。
    • 環境面ではルミアウラの日の出が日本とほぼ変わらない。北極に近いということは季節による日照時間の変動が激しいはずだが、ゲーム中では日本と変わらないように描写される。
      ゆえに、『冬のロンド』というタイトルからして不自然。北海道の冬だろうか?
    • 前述の説明通り姉(長女)が「この時期だと凍結するから井戸は使えない」といって、山奥まで片道1時間もかけて水を汲みに毎朝出かけるのだが、実際には凍結深度(外気温の影響を受ける領域よりも深く掘れば地下水は凍結しない)というものがある。なお現代では地下水をくみ上げる水道管やポンプが凍結して水が出ないという事もあるが、機械的なテクノロジーと無縁なルミアウラでは関係ない話である。
      • 姫の魅力を描くゲーム的な都合と王国や姫の過酷な環境を描写したかったのだろうが、「それは姫ではなく世話係などがすべき仕事だろう」「大切な商品である姫を狼が徘徊する地域に向かわせるのはどうか」「(民衆共々)山の近くに移るべきだろ…というより先祖は何故そこに定住した?」などツッコミどころが多過ぎて霞んでしまっている。なお、この件以外にも危険な行為を姫がしていたり丁重に扱っていなかったりとおかしい場面が多い。
    • 王様や騎士団が何故かプレートアーマー(全身型)を装備している。現代設定うんぬん以前の話で、北極圏の近くでこれはない
      • 深く考えず中世ちっくな世界観を演出したかったのだろう。観光客向けのアピール……というわけでもない…。実際に重要なことを現代ではまずありえない中世ちっくな行為で決定したりする。
    • ゲームにツッコミを入れても仕方ないと言う意見も中にはあるが、あまりにも説得力がなさすぎて論外の域に達しており、もはや笑うしかないレベル。せめて架空のファンタジー世界観にしていれば、ここまで目に付くことはなかったことは言うまでもない。
  • 主人公は主人公らしいことはしているものの、著しく思慮が欠けており、説得力皆無のわがままだけで動く。その上で能力的にも見るべきところはないので、不快に感じたユーザーが多数居る。
    • ルミアウラの文化を知らなかったり文字の読み書きも出来ない。しかし何故か会話は完璧。ゲーム上の都合と言えばそれまでだが、それなら文字の読み書きが出来ないってのは要らないのでは…。
    • 主人公に対する周囲の反応も一々異常で、わがまましか言っていない彼をヨイショしまくる。姫を購入する側の婚約者ですら何故か感動して、何の得にもならない決闘を受けてわざと負けたりする。とても分かりやすいマンセーっぷり。
      • 主人公をフォローする為に終盤では設定の根幹が破綻しており、『(元々微妙だったけど)主人公のせいでシナリオが破綻した』という意見すらある。

シナリオ

  • 実質的に個別ルートがない。シナリオの90%が共通ルートと思えば概ね合っている。

ヒロインの描写に差がある

  • 前述の通り次女の扱いは良い、ヒロイン毎に差があることも許容したとして、次女以外のヒロインは適当過ぎる描写なので個別に期待していると肩透かしで終わるのは問題。
+ シナリオの核心に関するネタバレ
  • 本作は、主人公がヒロインの許婚との決闘に勝利してヒロインと結ばれるという流れだが、次女以外の許婚が登場しない。そのためか、長女や三女らの攻略を目指しても彼女らとは無関係な次女の許婚と戦う。
    • 次女を攻略するのならばまだ自然な流れだが、それ以外のヒロインの場合だと不自然極まりない展開。
    • そもそも国家運営に関わる話なのに、とにかく決闘で勝てばいいという文化も意味不明。政治も文化もぐちゃぐちゃである。
      • 更に付け足すと、一応彼の行動に対するフォローも入ってはいるのだが、それによって更なるつっこみどころが発生するので、結局頭が痛くなってくる。
  • 主人公は人身売買を止めさせたが、王国の財政難などをどうにかする能力などあるわけがなく、根本的な問題はスルー。解決の為の道筋もつけられていない。
    • エンディングでは大団円のような雰囲気を出しているが、実は何も解決していない

総評

クレイジー過ぎる 独特な雰囲気とBGM・CGを楽しむ分には良いだろう…とりあえず次女に関してはそこまで問題がないはずである。
その一方で、主人公やサブキャラ・シナリオ・設定などに目を向けた場合はネタとして楽しむ他ない。
真面目に楽しみたいなら、ヒロイン以外にはなるべく目を背けることが大切である。
凡作と評価しようにも酷い部分ばかりが目立つので、駄作扱いされることの多い作品と言えるだろう。


余談

  • DIVAブランドは次回作『こいらぼ』を最後に公式サイトが消滅している。
    • ダウンロード版も配信停止され、体験版配信サイトも消滅している。

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最終更新:2023年06月24日 10:51

*1 ルミアウラ国王の弟と外国人女性との間に生まれた子。父親であるルミアウラ国王の弟は既に死んでいる。