北斗の拳4 七星覇拳伝 北斗神拳の彼方へ

【ほくとのけんふぉー しちせいはけんでん ほくとしんけんのかなたへ】

ジャンル ロールプレイング
対応機種 ファミリーコンピュータ
メディア 4MbitROMカートリッジ
発売元 東映動画
開発元 ショウエイシステム、オフィス恒環
発売日 1991年3月29日
定価 6,500円(税抜)
判定 クソゲー
ポイント 発想は悪くないが…
お使いに次ぐお使いのシナリオ
「ミスった」「しんだ」「ねてる」
悲しみは37ポイント
グラフィックショボすぎ
宝箱は空箱ばかり
「べどどば~」「ばるらるらん」「あ~らららら」
北斗ゲーにおける黒夜叉贔屓の伝説はここから始まる
北斗の拳シリーズリンク

概要

もはや知らない人のほうが少ないであろう有名漫画&アニメ『北斗の拳』を題材にしたロールプレイングゲーム。

特徴

  • ストーリーは監修武論尊、アニメ版のメインライターを務めた戸田博史氏が担当。
    • 原作後の20XX年*1が舞台で、村を悪人に襲われ、母親を殺された主人公が、混乱に乗じて出現した「裏南斗」の集団に立ち向かうという設定。
      • ラオウの遺児リュウ、ファルコの息子ミッシュの他にも、北斗宗家に仕える風丸、北斗神拳伝承者候補のリュード、南斗水鳥拳伝承者のルギー、南斗白鷺拳伝承者のジンギといったゲームオリジナルキャラがパーティーに加わる。
  • RPGとしてのシステムは一般的な形式
    • エンカウントする敵を倒し、経験値、金(ジュドル)を稼ぎ、武器、防具を購入していく。
    • フィールドも前作のエリア別から一般的な地続きのマップとなった。
      • 違う場所への移動は、今回はラオウの愛馬「黒王号」を手に入れる事で出来るようになる。
    • 戦闘は前作同様オーソドックスなコマンド式&ターン式だが、強制的に1対1で戦わなければならないボス戦も存在する。
    • 仲間は前作同様最大3人まで。
    • 主人公が戦闘不能になると全滅扱いとなり、所持金が半減する。
  • 奥義の覚え方は二種類
    • 一部はレベルが上がると自然に覚える
    • それ以外は先代伝承者の墓を訪ねては、その霊と交信(早い話がチャネリング)して会得する
      • 主人公はゲーム開始時点で拳法(おそらく北斗神拳とは関係ない)の修業中の身であり、レベルを上げても何の技も使えない状態だが、あるきっかけで北斗宗家の血を引いていることを知らされた後、リュウケンの霊の声を聞いて北斗神拳の奥義に目覚める。…まあ原作のケンシロウもオカルトじみた方法で宗家の記憶を受け継いだりしていたのだが。

問題点

RPGとしての問題

  • ドット絵が前作より劣化している
    • マップ上、フィールド上のキャラ絵も稚拙で、1991年発売の作品とはとても思えない。ただでさえ低クオリティだった前作に更に輪をかけた出来になっている。
    • フィールドや町などのドット絵は前作よりスッキリしており見やすくなっている。一見すると進化しているように見えるのだが、洞窟や城などのドットはかなり粗く前作と大差がない。
    • 戦闘中の画面では紫色の髪の主人公がドット絵では髪も服も緑色。最初の仲間の風丸も、戦闘中は赤い髪に黄色い服を着ているのだが、ドット絵では髪も服も白色になっているなど、まったくもって一致していない。
      • マップ画面のドットキャラは似たようなデザインな上に配色もやたらと被っており、主人公や仲間たちの数人、男性の村人やケンシロウといったほとんどのキャラが緑色である。前作は種類が少ないとはいえ、キャラの見た目はあまり被らないようにデザインされていたのだが…。
  • ダンジョンの構成が酷い。
    • 前作ではあまりにも長過ぎたダンジョンは本作では多少は短くなったが、構成は全部一緒で仕掛けといったものも存在しない
    • 床はピンク色で非常に目に悪い。
    • 町や村のマップの流用も激しく、おかげであらゆる村の真ん中に水路で囲まれた墓が見つかるという有様である。前作では拙いグラフィックながら高層ビルの立ち並ぶ町などで個性を出していたというのに。
  • エンカウント率も高く、レベル上げ必須なゲームバランスも前作と変わらない。
    • しかもレベルも上げづらいので作業感が強い。
  • シナリオ面の問題
    • 本作のシナリオは基本的に「新しい町に着く」→「中ボスを倒して町を苦しめているボスの元まで行く」→「ボスを倒して新しい町へ」の繰り返しという単調なもの。ボスに関しても、原作でいうところのガルフやゲイラといった、雑魚に毛が生えた程度の連中がぽっと出で現れては死んでいくパターンが多く、単調さに拍車をかけている。
  • 全滅イベントの問題
    • ゲーム中盤に一度敗北しないとイベントが進行しないボスが登場し、その結果強制的に所持金を半分にされる
      • 通常の全滅時と同じくセーブ地点からの再開だったり、再戦の際にも台詞が変わらなかったりするあたり、仕様かバグなのか判然としない。終盤にはペナルティ無しの負けイベント(こちらは敗北後その場で復活)が存在するので、後者の可能性が高いけれど。
  • 宝箱にやたらと空箱が多い。
    • 村人に「そこの宝箱をあげます」とお礼を言われるイベントがあるが、開けてみても空箱という事まで起こる始末。
    • イベントアイテムなどの入った宝箱はそれと分かるように配置されているが、ここでも二つ置いてあるうちの一つが空箱だったりする。
      • こういった事情もあって宝箱は無視推奨。宝箱から色々なアイテムを手に入れるのもRPGの楽しみの一つなのだが…。

演出面の問題点

  • かなしみのポイント
    • 主人公は原作のケンシロウ同様、強敵たちとの出会いと別れを通して哀しみを知っていくのだが、別れの場面に続けて「(主人公)は 37ポイントの かなしみを せおった」といったメッセージが表示され、雰囲気をぶち壊しにされる。前作でも「かなしみ」は数値化されたパラメーターとして存在してはいたが、文章上は「ふかい かなしみを せおった」と無難な表現に留められていた。
    • しかもこの演出たった2回しかない。こんな変な描写が何度もあっても問題だが、たった2回で北斗神拳究極奥義・無想転生を体得する。
      • 効果は回避率の上昇のみで、ボス戦などで有用な場面もあるが確実性に欠け、使い勝手は微妙。守備力を上げる秘孔「闘守孔」のほうが重ねがけできて効果が確実な上、オーラの消費が少ないという有様。
  • 戦闘中のメッセージも地味に酷い。
    • 攻撃を外したときの表示は「ミスった」。死亡した場合はLvのところに「しんだ」と表示される。後者はまだしも前者はふざけているようにしか見えない。
    • 敵の攻撃で眠らされるとLvのところに「ねてる」と表示される。
      • それだけなら普通なのだがその眠っている仲間の番になると「ね、ねむい・・・」とセリフが表示される。寝言?
    • ダメージを受けた際は、「かぜまる『ダメージ 13』」といった、まるでダメージを自己申告しているかのような表現になっておりプレイヤーの笑いを誘った。

北斗の拳としての問題点

  • 奥義習得元の謎
    • 途中で仲間になるリュードは百裂拳と柔破斬を習得している。
      • 構成的にケンシロウの技を受け継いだように見えるがケンシロウはまだ生きている。彼が一体誰の霊と交信したのかは謎のままである。物語の展開を考えるとラオウあたりが候補になるが…。
  • トキの墓がなぜか主人公が最初に訪れることになる北の村モンパサにある。なんでやねん
    • この村はかつて北斗四兄弟が修業を行った地にできたらしいが、原作でトキとラオウの墓が建てられた場所とは明らかに違う。また北斗練気闘座(見た目はなぜか洞窟)にはラオウの像が建てられており、調べると墓標に「わが生涯に一片の悔いなし!」の文字が書かれているとのこと。どうやら勝手に墓が増やされている
    • なお、別の村にはレイの墓があり、調べるとレイの肩当てを入手できる。装備できるのは南斗水鳥拳の使い手のルギーだけで、かなり強い部類の肩当てなのだが、 これってどうみても墓荒らしだよね。
  • 原作で死んでいる人物は登場しない…と思ったら黒王号(ルーラ扱いだが)と黒夜叉が登場。黒繋がりか?
    • ……というよりはシナリオライターの贔屓と言ったほうが正しいだろう。このライター、妙に黒夜叉をプッシュする事で有名である。因みに同氏がシナリオを担当したバンプレスト版北斗でも黒夜叉が平然と生きている
  • ザコ敵が「べどどば~」「ぎゃぎゅぎょ~」「ばるらるらん」「ほりゃ~」「どるらべば~」「ありゃら~」「ぐにょろろ~」「あ~らららら」「おわだ~」「ぶしゅしゅしゅしゅしゅ」といった すでに秘孔を突かれたかのような台詞を発して襲ってくる。 日本語でおk。
    • 味方やボス敵はそれなりに気合いや掛け声らしい台詞(北斗神拳なら「あたたたた~」など)だが、裏南斗五車星のカインというキャラは「ごっしゃ~」と駄洒落にもならない叫びをあげながら攻撃を行う。もはや突っ込む気も起こらない。
  • ある町でペロという名の長靴を履いた喋る猫がいる。
    • これは東映動画製作のアニメ『長靴をはいた猫』の主人公であり、同社のシンボルマークとして本作のパッケージやタイトル画面にも描かれている。ゲーム中にはスタッフの遊び心で登場させたのだろうが、『北斗の拳』の世界観にマッチしておらず異物感が強い。

その他細かな問題点

  • ボス戦などのイベント戦終了後、なぜか主人公が必ず左を向いている。
    • 例えば、戦闘前に玉座に座っているボスに主人公らが上を向いた状態でボスに話しかけても、戦闘が終わるとどういうわけか左を向いているのである。
    • 考えられる説としては、ラスボス撃破後のイベントで左から重要人物が現れるために左を向くシーンがある。この動作を全てのボスイベントに間違えて適用してしまい、直しきれなかった可能性がある。
  • 設定面の詰めが甘く雑なのは今回もである。
    • 冒頭で「主人公は今日も修行を終えて生まれ故郷のマレードの村に~」とあるのだが、主人公が村に入って言う台詞が「ふるさとの町が廃墟に~」となっている。村なのか町なのかどっちやねんと、生まれ故郷なのに間違えるなと言いたくなる。一応、その後は村といわれる事が多いのだが。
  • 誤字が本作でも妙に多い。
    • 「ドーメル」「ジンギ」(ゲームオリジナルキャラ)→「ドメール」「ンギ」、「マミヤ」→「マミ」、「なにがきる」、「きつけて」、「みから」など。
    • ジャギも「ジャ」と間違えられている。おい 東映動画! 俺の名を言ってみろ!!
    • 説明書には「ゴスデューム」と記載されている地名が「ゴズデーュム」という発音不可能な表記になっている。

評価点

  • 独自設定自体はかなり良い。
    • 拳士としてどこかまだ粗さのある未完成な感じが、原作キャラにはない次世代拳士的な風貌を匂わせてくれる。
    • 冒頭から親を殺された上、実は母親が本当の親ではなかった事を明かされ、この世の悪を憎んで戦いながらも北斗宗家の人間として『愛』だけは決して忘れなかった主人公*2、「北斗宗家の人間には従者がつく」という、ファンでも忘れがちな設定が活かされている風丸、学ランに見える服がダサいが、やはり先代同様に超美形の南斗水鳥拳のルギー、先代に未熟とはっきり言われ、その先代と同じように愛と友情のために眼の光を失う南斗白鷺拳のジンギ*3、ファルコの息子という原作ファンなら間違いなく感嘆するキャラの上、その後ろにある細かく熱いバックグラウンドまでしっかりと用意された元斗皇拳のミッシュ、北斗宗家の血をひいており、その強すぎる己の拳によって力に溺れ心を狂わせていったリュードなど、そんな漢達を強敵に、裏南斗聖拳や、元斗琉拳という、これまたオリジナリティ溢れる敵を相手に戦っていくという、真の北斗ファンなら胸が熱くなること間違いなしである。
    • 前作は、レベルをしっかり上げないとケンシロウがハート様どころかジードにすら敗れてしまうという、ゲームだから仕方ないとはいえプレイヤーに悲しみを背負わせる点があった。今作は、未熟な点のある拳士たちが主人公である分、そこらの敵に苦戦しても違和感のない内容になっている。
    • 『3』はあまりの原作無視っぷり、本作同様独自設定である『5』は荒唐無稽な展開の連続で評価は高くなかったが、本作は「ゲーム部分はいまいちながら、キャラや設定は良い」と評価するプレイヤーも多い。
    • NPCもキャラの立っている者が多く、一部のキャラとは後に再会したり、改心した敵が主人公たちを助けてくれるといった胸の熱くなる展開もある。
  • 原作終了後の設定をうまく活かした点もある。
    • 成長したラオウの息子、リュウの姿が見られる唯一の北斗ゲーである。
      • 原作以外でリュウが登場するのは本作と外伝漫画『天の覇王 北斗の拳 ラオウ外伝』のみであり*4、その点は貴重である。
      • なお原作と照らし合わせると、本作に登場したリュウが北斗神拳伝承者の道を望んでいない事に納得がいく流れとなっている。この辺の辻褄合わせは見事と言える*5
    • オリジナル流派「元斗琉拳」は、原作の帝都と修羅の国編が終わった後、ファルコを失い新たな力を求めた元斗の人間が修羅の国に渡って魔道に入り、壊滅した北斗琉拳にかわって支配者になった設定。親世代では和解しただけで終わった北斗神拳と元斗皇拳が、手を組んで因縁の敵に挑むストーリーはアツい。
    • 『北斗の拳』の主人公であるケンシロウは終盤まで登場しない上、故あって戦う時には既にかなり弱っている状態となっている。理由は「自分はラオウやカイオウといった強敵と戦いすぎて身体を蝕んでしまい、死兆星が見えていた」からとの事。
      • 実際、原作でも終盤でボルゲ相手にてこずっていたり、本気で突いたであろう秘孔でもボルゲを倒せなかったあたり、ケンシロウが全盛期に比べると明らかに弱っている描写は十分にあった。その描写が活かされている設定といえよう。
  • 前作同様、BGMは「J-WALK」の知久光康が担当。
    • フィールド場面のBGMは荒野へと旅立つ雰囲気がよく表現出来ている。
    • 町のBGMは2種類あり、いずれも『北斗の拳』らしい物悲しい雰囲気が感じられる。
    • 前作では3種類あったボス戦のBGMは1種類に減らされてしまったが、曲自体の出来はとても良いため、違和感はそれほど感じない。
  • タイマンボス戦での顔グラは丁寧に描かれている。
    • ノーマルバトルでは北斗のイケメンキャラタイプのニヒルな笑顔をしている主人公だが、タイマンバトルになるとかなりの男前に変貌する。
    • 主人公はオープニングで母親を殺され、「俺はこの世の悪が憎い!」というシリアスな旅立ちをするキャラクターなのだが、上述の様に通常戦闘においては ものすごいスマイル になっている。悪党と戦う時にいきなりこれでは台無しなんじゃあないかと思えてしまう。立ち直りが早いというか何というか…。ちなみにタイマンバトルではシリアスな顔になっている。 全部その顔でやれ。

総評

原作終了後という設定やオリジナル設定等、設定面では光る所のある一作。
とはいえ基本的に「新しい町に行くと悪党がのさばっているのでそれを倒す」の繰り返しで単調さ。戦闘BGMも今回は最初から最後まで同じ。(一部以外の)グラフィックが前作よりも劣化している事を含めると、前作の反省を生かすどころか、前作よりも退化してしまっているとすら言える。
結局、ファミリーコンピュータで東映動画はまともな北斗ゲーを発売することは無かった

次作からはスーパーファミコンに場を移すが…


余談

  • 「死神三兄弟」という敵が途中出現し、それぞれ「レッド」「ホワイト」「ブルー」と名乗るのだが、彼らの色はそれぞれパープル、イエロー、グリーン。全く名前と合っていない
  • とある町では「ぼくあべし ひでぶの おやじなら レジェンダにいるよ」という台詞を話す村人がいる。
    • このネタは前作や次作でも繰り返されているので、スタッフは狙ってやったと思われる。もっと別のところに拘わってくれ…。
      • ちなみに秘孔を突かれたとか妖術だとか一応の理由付けがある前作・次作と異なり、本作ではこうした言動になんのフォローもない。
  • 最初の名前入力画面で「かぜまる」と入力すると「くろやしゃは ●●ポイントの かなしみを せおった。」という謎のメッセージが出た後、名前入力し直される。
    • 序盤から終盤まで仲間になるキャラクターと名前を被らせないための処置だと思われるが、いくら何でも黒夜叉贔屓が過ぎるだろう。
  • ガドラというボスの死に台詞「バラム様の城は遥か南のひでぶ!」が、ごく一部のプレイヤーにウケている。
  • 前作では敵ボスを倒したのちも、その悪者の縄張りには「○○のぶか」と名乗る雑魚敵が登場していたが、本作ではそういったチンピラ共はボスを倒した直後に野盗に落ちぶれる。

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最終更新:2024年01月03日 11:02

*1 作中に登場するアインの娘のアスカが結婚できる歳になっているので、軽くみても原作終了から10年以上は経っていると思われる

*2 結局、最後まで彼の本当の親が誰なのかは明かされない。設定や時間軸やストーリーの展開から考えるとケンシロウでもおかしくないと思われるが、作中では明言されない

*3 丁寧にも、ジンギが眼の光を失う前に先代に会いにいっても追い返されるようになっている

*4 アニメ版はカイオウを倒したところで終了したため、登場していない。

*5 原作でリュウは北斗神拳伝承者になるとは一言も言っておらず、ケンシロウもリュウに北斗神拳伝承者になれとは一言も言っていない