道 -TAO-

【たお】

ジャンル 究極の世紀末ロープレ
(アドベンチャー+RPG)

対応機種 ファミリーコンピュータ
メディア 2MbitROMカートリッジ
発売元 バップ
開発元 パックスソフトニカ
発売日 1989年12月1日
定価 5,500円
判定 クソゲー
怪作
ポイント 宗教色濃厚な電波作品
バカゲーと呼ぶのも悩ましい
連打命の戦闘


株式会社バップによるファミコン第4作目。
世紀末の世界を救うために主人公が旅をする、と言えば普通のゲームである。
移動画面はRPG風だが、会話画面ではアドベンチャーのように複数のコマンドが表示される形式となっている。
ただひたすら雑に作っただけの『元祖西遊記』に比べればよほどクソゲー度は低いが、代わりに極めて強烈な怪電波を発するゲームになってしまっている。


  • 漢字一字のコマンド。
    • 例えば人と話すときは「言」、人や物を見るときは「観」、敵と戦うコマンドは「闘」といった具合。はじめは戸惑うが、慣れればどうということはない。
  • ボタン連打による戦闘。
    • 敵と戦うことになった場合、Aボタンの連打で戦うことになる。Bボタンを押せば一時戦闘を中断でき、戦いを有利にするアイテムが使える。
    • 後で述べるがゲームバランスが悪く、後半になると相当気合を入れた連打が必要になるため、長時間プレイしていると右手がつること請け合いである。
    • 尚、主人公が装備できる武器は最初こそ日本刀などだが、次第にマシンガンや手榴弾、化学兵器等が登場し、どんどん物騒な戦闘になっていく。仮にも宗教的なテーマを持つ作品なのだが…。
  • 珍妙な敵たち。
    • ニワトリみたいな「コケットラー」タコのような「パスオーク」といったふざけた名の敵から、「ガルーダ」「デスナイト」などマジメな名前のものまで。
    • そんな名前の上に、敵の等級を表している「キダキ」「ジャカキ」などの冠詞がつく。
    • 「パドルデビル」という敵は、ゲームが進行するごとに「キダキのパドルデビル」「ジャカキの(ry」「アジャキ(r」「バルキ(」とどんどん出世(?)していく。
    • そんな連中が「殺して進ぜよう!」「わしの屁をかぎてえか!?」「神をも恐れぬ神懸りの術!」「素敵な夢を見せてやろう」「オレさまの肉を食え!」「水虫を移してやる」など訳の分からない口上を述べつつ迫ってくる。
      • ちなみに主人公の口上はと言うと使用するアイテムによっては「地獄に堕ちろ!」「お前なんか溶けちまえ!溶けだしたぞ!」「どうだ苦しいか!?」などと言ったとんでもないものも。これではどちらが悪役だかわからない…。
  • 異様に濃いキャラデザイン。
    • まるでバカ殿の如く白粉を塗ったような主人公の母、顎の下から懐中電灯で照らしたような不気味な顔の博物館館長と、最初の町からしてこんな面子であり、以降も無駄に濃い顔ぶれが揃っている。FC時代では珍しくない手法とは言え、真っ暗な背景にこれらの顔が表示される会話画面はある種のホラーにすら感じる。
      • また、ある人物との会話では「あんたの かあちゃん。えらい びじんじゃのう。」という台詞が出てくる。こいつの美的感覚はどうなってんだ。
  • 町から町へ、恐竜や翼竜に跨って移動する、意味不明な交通手段。しかも駅やヘリポートがわざわざ設置されているのに、である。
    • ただしこの仕様が問題になっている。

  • 特異なのが宗教がかった上に、「ノストラダムスの大予言」に影響されまくったシナリオ構成である。
  • 1999年8月18日のグランドクロス(太陽系の惑星が地球を中心として十字に並ぶ現象)により、魔王が降って来て世界が荒廃してしまったという設定。
    • 五島勉によれば、このグランドクロスがいわゆる「1999年7の月」を差しているとの事だが、
      実際には当時のフランスで使われていたユリウス暦でも、この月日は7の月にはならない。
    • また魔王の降って来た村の名がアンゴルモア。「大予言」で「恐怖の大王」の出現によってよみがえるとされる「アンゴルモアの大王」のアンゴルモアである。
    • それで、その魔王の名が「ヒスター」。「大予言」の一篇にある言葉で、五島が言うにはかの独裁者ヒトラーのことだという話である*1
  • イベントも台詞回しも電波塗れ。
    • 主人公が旅立つきっかけは「町の外で老婆に出会い、寺院に行きたいと言うので連れて行くと、実はその老婆は魔物で経典を奪われてしまう。しかしその魔物を引き入れた元凶である主人公は住職に勇者の素質を見出され、経典を取り戻す旅に駆り出される」と言うもの。
    • ある場所では日本刀が無条件で貰えるのだが、その理由は「そのクリッとした腰がたまんないねえ」と…。
    • 途中、敵宗教団体が「あみたま」と呼ばれる品を人々に売りつけ、それを持つ人は魔物と化してしまうという展開があるが、その実態は「ヒスターは第三の目に開眼しようと世界中の動物を浚い、目玉をくり抜いて自分に埋め込もうとしたが失敗。仕方なく余った目玉をプラスチックで固めて人々に売りつけた」というもの。
    • 台詞の中で「とおりゃんせ」や「かごめかごめ」と言った童謡が急に飛び出す。一応、意味は持たされているのだが、あまりに唐突なので電波としか思えない。
    • 極めつけは敵の幹部である闇の天王「ダヴァナンダ天王」の戦闘前の台詞。「山のお寺の鐘が鳴る。お手繋いで皆帰ろ。そんな訳にはいかんのだ!」…お前は一体何を言っているんだ…?
    • 全編を通してこんな調子であり、更には下記の問題点にあるような展開も加わって凄まじい電波を放つシナリオとなっている。

  • 結論は「天道に帰依しましょう」。
    • 天道は清時代の中国を発端とする新宗教。このソフトの開発に天道教団そのものが関わっているのかどうかは不明ではあるのだが…
    • ゲームの最終目的が「真なる神から三宝を授かり世界を救う」ことだが、三宝にそのような力があると見なす宗教集団は天道しかいない。
    • 中盤で真の神は「ラウム様」、白蓮教や天理教などにおける「無生老母」であると判明する。天道ではあらゆる神はラウムの化神であるとしている。
      • 「およそ全ての聖者達は真なる神から三宝を受けてきた。だが今ある教えからはその事実が抹消されている」とゲーム中で述べられている。寄り道しないと聞けない話ではあるが。
    • エンディングではラウムに代わって(?)天然古佛なる人物が現れ三宝を授けてくる。彼は天道の本来の呼び名である「一貫道」の聖者として神聖視されている存在である。
      • BGMとして流れる「かごめかごめ」と怪しげなメッセージの相乗効果によって、アンニュイな気分になれること請け合いである。
    • 天道を持ち上げるためなのかどうか、他の宗教は大体がけちょんけちょんにけなされている始末。「いかなる経典も聖書も救いを絵に描いただけであり、暗記しても救いは現れない。真に救いを求めるなら三宝を授かるしかない」とまで言っている。
    • とある教会のある町では「借金を抱えたシスターが寄付金を持ち逃げした」「駅前に養豚場を作った所為で住民から苦情が出る」と言う、宗教的に喧嘩を売っているとしか思えない描写も。
  • 問題点かどうか判断がつかないが、宇宙の真理を研究しているという「オーム大聖堂」の存在がある。
    • 本作の発売直前に、かのオウム真理教の起こしたテロとして悪名高い「坂本堤弁護士一家殺害事件」が発覚し(当時はまだ殺害までは分かっていなかったが)、「救う会」が活動を開始している。
      まかり間違えば『チェルノブ』並みの大騒ぎになっていた可能性もある。
      • もっとも、「オーム」というのは(時代時代で異なる解釈はされるが)れっきとした宗教用語である。そのため、オウムの影響と決め付けることも出来ない。というより開発・発売時期から考えてオウムを茶化して書くことは困難と言える。
+ エンディングのメッセージ。(洗脳注意!)

カゴメ カゴメ。
カゴのなかのとりは。
いついつであう。
よあけのばんに。
ツルとカメがすーべった。
うしろのしょうめんだーれ。

たましいという とりは
りんねというカゴのなかに
すんでいます。
カゴには とてもちいさな
とびらがついていますが
うちがわからは あきません。
カゴのそとは とてもすてきな
ごくらくてんごくです。
いつになったら とびらがひらいて
そとへ とびだせるのでしょう。
それは ちきゅうの
なんきょくと ほっきょくが
すべってちじくが かたむく
じんるいさいごの ひがくるまえに
うしろのしょうめん。
まことなる示申によって
とびらは あけられるのです。

カゴメ カゴメ。
カゴのなかのとりは。
いついつであう。
よあけのばんに。
ツルとカメがすーべった。
うしろのしょうめんだーれ。

うしろのしょうめん。
それは われなり。

われは てんねんこぶつ!!いっしかんてーん!!
*三宝をさずかった!!

カゴのとびら。
げんかんは いまひらかれ
6まんねんの ながく くるしい
りんねてんせいの たびはおわり
ふたたび ラウムさまのもとへ
かえるときが やってきました。

ゆうやけこやけで
ひがくれて
おててつないで
みな かえろう。

(スタッフロール)

おかえりなさい。


  • 珍妙な敵が多いが、なかにはデザインが凝った敵もいる。終盤は雑魚にも目を引くビジュアルの敵が多く、ラスボス前に戦う四天王は特に格好良い。出るゲームを間違えたのでは?
  • BGMは意外と聴けるクオリティ。
    • 洗脳用、ということはないと思いたい…。
  • 救済措置は充実しており、敵に敗れてもパラメータの「チャンス」が残っていればその場で復活できるし、チャンスが1の時に負けても所持金の半分と引き換えに再スタートできる(ただしスタート地点に戻される)。
    • そのチャンスも金で買えるアイテムで増やせる。というかチャンスを増やさないと後半は死ねる。
  • 体力・攻撃力・防御力もドーピングでいくらでも増やせる。「修行」としてより低価格で増やせるポイントもあるが連打が必要。
  • 最終盤では、「勇ましいBGMと共に進むラストダンジョン」「敵幹部達のボスラッシュ」「第三形態まで変身するラスボス」「特定のアイテムでしかトドメを刺せないラスボス最終形態」と言った純粋に盛り上がる演出も盛り込まれている。

  • どうしようもないお遣い作業ゲー。アドベンチャー風にフラグを立てて進む場面も多少はあるが、基本的に淡々とお遣いをこなす作業とボタン連打で戦闘する作業の繰り返しである。
    • 終盤を除いて「あっちへ行け」「こっちに怪しい何かが…」「そっちの様子を見てきてくれ」と言われるままに向かうだけで話が進んでしまう。回れるポイントが少ないせいもあって冒険している感覚はない。
    • また移動手段が上で挙げた恐竜しかない上に、一度の利用で町一つ分しか移動できないし当然乗るたびに運賃が発生するし、ということで移動が非常に煩わしい。
    • 恐竜に乗って移動する画面では雲が多重スクロールしているが、この技術をもっと他の面に活かせなかったものか。
  • 天道が関わらない部分のストーリーがかなりいい加減である。
    • 八卦という「とても信じられない8つの物」を揃えれば悟りが開けると言われて主人公は旅立ったのだが、「何か貰ったと思ったら実は八卦だった」という展開がやたらと多い。
      • 一番酷いのは、ある民家で「要らない物を八卦として引き取ってくれ」と言われて貰ったら本当に八卦の一つだった、というもの。
        オーブとかクリスタルとかに「処分に困っている物」が混じっていたら噴飯モノであるが、それと同じような事態である。
      • 第一、話を進めていたら勝手に集まるので集めている気はしない。
    • 冒頭で「取り戻せ」といわれた経典が「実はニセ経典なので取り戻さなくてもいい」といわれたり、同じく冒頭で思わせぶりに出て来た石版が「古代人の落書き」とか言われたり、随分適当な種明かしばっかりである。
  • 劣悪な戦闘バランス。
    • 実はどこに行けばどの強さの敵が出てくるかは決まっていないらしく、一定のラインナップから無作為に選出されている模様。話が進むごとに出る敵の種類が増えていく。
      つまり、一旦最強クラスの敵が出て来るところまで進めたが最後、大抵はどこへ行っても強敵ばかり出て来ることになる。
      • 後半から出て来る敵の中には、連打が相当速くないと普通に力負けする奴もいれば、連打しまくろうが当たってしまう必殺技や、行動不能攻撃を放ってくる奴も多くなっており非常に手強い。
    • 加えて回復設備が世界に一つしかなく、回復アイテムを売ってくれる人も世界にたった一人、それも一つしか持てず、戦闘中に使っても単なる無駄遣い…とやたら縛りが多く、チャンスが幾つあっても足りない。
      無限ドーピング前提と言えるが、ドーピング出来る地点に到達すると最強クラスの敵が出て来るようになるのが辛い。
  • ファミコン時代のパスワードコンティニュー式RPGの例に漏れずパスワードは長い。
  • フォントの出来はあまり良いとは言えず、特に濁音と半濁音の区別が付きづらく「ぼく」が「ぽく」に見えたりしてしまう。

とにもかくにもEDを含めて宗教的な描写が強すぎてやっていて頭が痛くなるゲームである。
途中の雑な展開を含め話はまともに理解できるように作っているとは到底思えない。
というか、理解してはいけない類のゲームだろう。
一応、天道に関するところは真面目に作っているようだが、むしろそれ故に難解なゲームになってしまったと言える。
怪作要素以外の面でも、かったるいお使いゲーの上にゲームバランスが悪くしかも連打ゲーで異様に疲れると、ゲーム面だけ見てもろくでもないゲームである。


  • プログラム担当だったパックスソフトニカは、同年の7月に発売された名作『MOTHER』の開発に関わっており、後にGB版『ドンキーコング』や『モグラ~ニャ』などの開発でも知られるようになる、任天堂のセカンドパーティーである。

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最終更新:2023年12月07日 15:30

*1 ただし、この語が出てくる部分は「ラインとヒスターから来たものと呼ばれるだろう」とあるように、「ヒスター」とは地名(ドナウ川の古称)であり、ヒトラーのことを指すというのは誤りとみられる。