シティ・アドベンチャー タッチ ミステリー・オブ・トライアングル

【してぃ あどべんちゃー たっち みすてりー おぶ とらいあんぐる】

ジャンル アクション
対応機種 ファミリーコンピュータ
メディア 1Mbit+64kRAMROMカートリッジ
発売元 東宝
開発元 コンパイル
発売日 1987年3月14日
価格 4,900円(税抜)
判定 クソゲー
シリーズファンから不評
ポイント 擁護不可能なSHITTY ADVENTURE
原作にノータッチの羊頭狗肉ゲー
少年サンデー関連作品リンク


概要

あだち充氏による大人気青春野球ラブコメ漫画『タッチ』を原作としたゲーム。
『タッチ』のゲーム化は1987年1月にパソコンPC-8801シリーズ向けに発売されたアドベンチャーゲームの『タッチ』が最初であり、本作は2作目にして最後の作品となる。

ストーリー

ある日、みなみが買物に行こうと南風を出ると、パンチがすごいいきおいで飛びついてきました。パンチはみなみの服のそでをひっぱってはなしません。どうしたのだろうと思ったみなみは、パンチにひっぱられるままに犬小屋の前までやって来ました。

 いつもなら10ぴきの子犬たちで大さわぎの犬小屋が、今朝はとても静かです。不思議におもってみなみが犬小屋をのぞくと、いっぴきも子犬たちがいませんでした。みなみがあたりをみまわすと、大きなエサの皿をパンチが悲しそうにのぞきこんでいるのに気がつきました。みなみが、大きなエサの皿の底をのぞいてみると、なんとそこには、ポッカリと大きな穴があいていました。みなみは、この穴に子犬たちがおっこちてしまったのかな?と考えました。それにしても、この穴はいったいどこにつうじているのでしょうか?………………………

 そうこうしているうちに、むこうからタッちゃんとカッちゃんがやって来ました。みなみは二人にいままでのいきさつを話しました。すると不思議そうにお皿をながめていたタッちゃんは、いったいこの皿はどうなっているんだろうと、持ちあげようとしました。みなみは、それを見てあわててタッちゃんを止めました。なぜなら、穴がなくなってしまうかもしれないと思ったからでした。

 結局三人は、子犬たちはいま食べざかりだから、たぶんこの穴に落ちたエサをおっかけて、この中に飛びこんだのだろうと考えました。三人がどうしようかとそうだんしていると、パンチが悲しそうにこちらを見ています。そのパンチにこたえるように、三人は顔をみあわせると、お皿の大きな穴の中に飛びこみました。

 まるく光って見えるお皿の底はあっというまに点になり、そして見えなくなりました。

 とそのとき、ドスン!!と三人はしりもちをつきました。いたいおしりをさすりながら、三人が見たのは、自分たちの住んでいるまちでした。

 ところがその町では、道のまん中を人形やおもちゃの自動車がうごきまわっているではないですか!

 三人は、しばらく目を丸くしていましたが、目の前に子犬がいることに気づいて、あわてておいかけていきました。…………………

 はたして、三人はパンチの期待にこたえることが出来るでしょうか?それは、あなたのウデにかかっているのです!

(※説明書より抜粋)


特徴

  • いわゆるベルトスクロールアクションゲームであり、複数のマップがつながっている広大な世界を探索し、行方不明となったパンチの子犬を救出するのが目的。
    • 先へ進むのにアイテムの入手が必要等の条件がある場所もあるが、犬を探すのに決まった順番はない。
  • 操作キャラは達也と和也の二人。
    • 一人プレイ時はセレクトボタンで達也と和也のどちらを操作するか切り替える。操作していない方(と南)は自動でプレイヤーの後をついてくる。攻撃するともう一方も同時に攻撃をする。
      • 南が敵にぶつかると座り込んで泣き出す。南にはステータスが存在しないので、ダメージを受けると達也、和也の両方がダメージを受けてしまう。
      • 持てるアイテムに個数制限があるため、どちらのキャラで入手・使用するためや後述の経験値を稼ぐためにキャラを切り替えて進めて行く必要がある。
  • 体力兼お金のステータス
    • 画面には達也と和也それぞれに数字が表示されており、説明書ではステータス(体力)と表記されている。
    • それぞれ個別に管理されており、敵を倒す事で増え、ダメージを受けたり買い物をすると減少する。
      • お金と体力で共用の為、扱いに気を付けないと買い物直後に敵に触れて即ゲームオーバーなんて事になったりもする。
      • 逆に言えば安全に戦える序盤の敵でしっかり稼いでおけば、アクションゲームが得意でないプレイヤーでもゲームオーバーになりにくい、ということでもある。
  • マップの建物に入ると買い物をしたり、この世界の住人である「せいんと」からヒントを貰ったりできる。
    • 中には「、、、、」と無言のせいんともいるが、この無言のせいんとがいる場所では不要なアイテムをあげる(捨てる)ことができる。
    • ちなみに、上記の体力をせいんとは経験値と言っているなど、ヒントに関しては後述の問題点がある。
  • あいことば
    • いわゆるパスワード。いつでも確認する事が出来、ステータスやアイテムの入手状況を引き継いで再開できる。

問題点

タッチのゲームとして

+ 一例(画像)

  • 「異次元空間に落ちた飼い犬パンチの子どもを救うために達也、和也、南の3人が不思議なパラレルワールドを冒険する」という野球もラブコメも投げ捨てたストーリーと設定
    • 原田・松平・新田・西村・上杉家の両親・マスター・柏葉監督などの個性豊かな原作キャラは一切登場しない。主役3人とパンチ・仔犬のみである。
    • ちなみに説明書には「●子犬のつかまえかた」として、「子犬をつかまえたら、すかさず子犬に“タッチ”してください。」という記述がある。数少ないタッチ要素…というか「タッチ」という文言をなんとか入れたいだけのムダなあがきに思えてならない。説明書を書く方も困ったのではないだろうか、これでは…。
  • 「野球のボールを投げて(もしくは素手で)敵を倒して情報を入手し、謎を解いて10匹の子犬を救出していく」という『タッチ』に全くタッチできていないゲーム内容。まさかのアクションゲームである。
    • ただしファミコンゲーム=アクションと言っても過言ではなかった発売当時の時代背景を考えるとアクションゲームになった事自体は仕方ないと言える。それでもここまで『タッチ』要素がない点は問題ではあるが。
    • ちなみに飼い犬パンチの子どもは原作では2匹である。あとの8匹はどこから湧いて出たのか。もっと言うなら、原作でパンチに子どもができる頃には、和也はもう鬼籍に入っている
    • 雑魚敵も戦車、ピエロ、風船、地中から出るドリルなど、原作とも野球とも一切関係のないものばかり。
      • この異常な世界も見た目だけは「自分たちの住んでいるまち」ということで、野球場があるにはある。だが中には入れないので何の意味もなく、もっとも仮に入れたとしてもこんな世界では野球をやらせてくれるとも思えないが。

アクションゲームとして

マッピング必須の広大なマップ

  • プレイ時間を長くという事で当時よくあった事ではあるが、FCゲームとしてはかなり広大なマップになっている。それだけなら悪いとも言えないが、似たような景色が多くマッピングなしでは迷うこと必至。
    • プレイヤーの助けになる全体マップやオートマッピングなどもなく、今自分がどこにいるのかもわからない事態に陥りやすい。

探している犬が捕まえた数しか表示されない

  • 現在何匹の犬を捕まえたかは画面に表示されるが、どの犬を捕まえたかは表示されない。
    • ステージクリアタイプならいいのだが、どの犬からでも捕まえる事が出来る為、きちんとメモを取っておかないと自分が既に捕まえた犬もどこの犬だったのかわからなくなる。

ザコ敵が多い上に強すぎる

  • プレイヤーに突進してくるものがほとんどである程度の数はこちらが攻撃をしていればノックバックで距離が離れるので被弾せず倒す事は出来る。
    • ただし、敵の体力が高めの物が多く、最初期のマップ以外の敵はなかなか倒れてくれない為アクションゲームなのに爽快感が全くない。まともに相手をしているといつまで経っても先に進めない。
  • しかもダメージを食らっても無敵時間が無いので大量に湧いてくると囲まれた挙句みるみるうちにごっそり体力が減らされていく。
    • 立ち位置によっては敵を達也と和也(または南)とピンポンするような形でどんどん減っていくこともある。

ゲーム中のヒントが曖昧で結局総当たり必須

  • 犬捜索とボス撃破についてある程度のヒントは得られ、各エリア毎に用意されたショップでボス撃破に必要なアイテムを購入→それを装備して初めてボスにダメージが通るようになるというのが基本的な流れ。
    • 「燃やして倒せ」と言われるボスであれば、効果のありそうなものが近くのショップに4つ並んでおり、その中の一つだけが正解なのだが、効果があるのはマッチのみでライターやランプは火がついているのにボスにまったく効果がない。ヒントからすると他のアイテムでも良いように思えるので少々理不尽。
    • 当時よくあった事ではあるが、結局は色々アイテムを買ってみて総当たりで試してみるしかなく、ゲームの単調さに拍車をかけている。一応、全く関係ないアイテムを装備していると、ボス相手にアイテムが飛び出さない等、最低限の補助はされている。
  • 雑魚敵として様々な場所に出現する風船は特定の武器を使わないとダメージが通らないのだが、それに関するヒントも不親切。風船自体は学校以外にも出現するのに、せいんとからは「学校に行く時は該当武器を持っていた方がいい」と言う旨のアドバイスを聞けるのである。
  • 「倉庫のどこかを殴ると」「コインはこの近く」というヒントを元に壁を殴ってコインを手に入れる箇所があるのだが、「殴る」とあるように「武器を装備していない状態」でないと入手できない。何を装備していてもモーション自体は変わらない為、近くを総当たりで殴っているのに何も手に入らないと勘違いしたプレイヤーもいた。

進め方次第でゲームクリアが不可能になる

  • ある地点のボスはその時点までに子犬を8匹救出、つまりボス討伐で救出するのが9匹目ではないと最後の子犬のいる場所に入るアイテムをくれるせいんとのいる建物に入れなくなるため、クリア不可能になる。
    • 一応、9匹目を手に入れられるエリアでは「子犬は8匹助けたかい」というヒントが貰えはするのだが、8匹未満でも特に行動制限はなくボスに有効なアイテムを入手出来、そのまま倒せてしまえる。どうしてもこの順番でなければいけないのならもう少しフラグ立てをしっかりしてほしかったところ。
    • プレイ次第ではこのボスを2番目に倒す事もできてしまうため、スタートしてから自由に行動できるオープンワールドでこの仕様はかなり厳しい。

浅倉南が邪魔

  • 南は移動のスピードが兄弟より遅く上記仕様の関係でアクション画面では何の役にも立たず、敵にぶつかると座り込んで泣き出すので、テンポを阻害する要因にしかなっていない。ダメージの仕様も含めて邪魔者以外の何物でもない。
    • 原作では南はどっちかと言えばしっかり者で気が強い性格なので、キャラ的な再現もまるでなっていない。

クソゲー最後の砦であるBGMも微妙

  • 有名なアニメ版OPテーマの『タッチ』を改変した曲などが使われているが、アレンジが過ぎて原形を留めていない部分が多い。

バグ

  • パスワードで何も入れずにスタートするとすぐにゲームオーバーになってしまうのだが、その後にコンティニューすると、敵が無敵になってしまう

評価点

  • タイトル画面やエンディングの絵が原作に忠実
    • エンディングでは当時放映していたアニメのアイキャッチのモーションを忠実に再現しており、ここだけは非常に凝っている。ファミコンでアニメーションするのは『イースII』くらいで非常に珍しい。
      • というかゲーム本編が上記のように完全に原作と別物のため、これくらいしか原作要素が無い
  • 和也が死なず最後まで生き残る。
    • 原作再現要素が皆無であることから、和也が最後まで活躍(?)できるのは怪我の功名と言えなくもない。
    • とはいえ和也の死はドラマの大事なターニングポイントなのでご都合主義的に「死ななかったから良い」とは一概に言えない。しかも、こんなおかしな形で活躍されて嬉しいかと言われれば…
  • 当時としては類を見ないゲーム性。
    • 「用意されたマップのほとんどの場所に最初から行ける」という、オープンワールドとベルトスクロールアクションの組み合わせになっており、ステージも、市街地、公園、学校、建物内部、住宅地、森林、海岸、中国など豊富に用意されており奥行きは感じる。
      • ゲームを進めるための情報も、前述の難点こそあれど各所にいるせいんとから様々なヒントは得られるため、当時のクソゲーに見られた謎解きの足掛かりすら存在しない…ということはない。
    • BGMの種類そのものは多めである。
  • 二人同時の協力プレイができる。
    • 同様のゲームで二人同時プレイのできる『がんばれゴエモン2』や『ダウンタウン熱血物語』が発売されるのは本作から約2年後の89年、と考えると、当時としては高い技術力で作られており、原作人気に頼って適当に作られた作品では決してない。
      • ただし、後述の「開発中だった別のゲームにキャラをあてがっただけ」という説の可能性は否定できない。
  • ボス戦は似たり寄ったりだが、見た目は大きめでBGMも相まって戦っているという実感はある。

総評

野球ラブコメ漫画『タッチ』を題材にしていながら、蓋を開けてみれば「異世界に迷い込んだ飼犬の子供を救出する」と言う原作との関連性が希薄な内容で、多くのファンを落胆させてしまった。それ故にガワ替え疑惑も出てしまうことになってしまった。
ゲーム性も悪くない部分は多少あれど、それ以上に莫大な稼ぎプレーを前提とする面倒な仕様やバグなどを筆頭にストレスの溜まる部分が多く、楽しめない領域の方が圧倒的に多い。
発売された当時は粗悪な版権ゲームが市場に溢れており「キャラゲーに名作無し」とまで言わしめるほどであったのだが、その中でも「最悪レベルの代物」といえる。
とりあえず、原作が好きでこれを買ってしまった人は鉄橋の下で泣いていいだろう。


余談

本作はネット上などで下記のように数々の噂が流れていることでも有名なタイトルである。
ただし、そのうちのいくつかは検証によりデマであることが後々に判明しているため、そのまま鵜呑みにせず話半分に聞いておいた方がいいだろう。

下ネタパスワード疑惑

  • 「とあるパスワードを入力するとかなり先へ進めた状態から始められる」という裏技が有名なのだが…。
+ H3」下ネタ注意

たつや:みなみにHしてしまいました
かずや:みなみにHしてしまいました
みなみ:TATUYAとHしてしまいました

  • …という性春真っ盛りな代物。もし意図的に仕込んだ物なら原作者や小学館側から訴えられても全くおかしくないレベル。
    • このパスワードの初出はおそらく『ファミリーコンピュータMagazine』掲載のウル技(裏技)の「南にH」
      後年のファミマガ別冊の裏技全集本『大技林』や『広技苑』にも収録されて堂々と掲載されていたため(後者は「Hでステータスアップ」に改題)、そのインパクトからユーザーに広く知れ渡っていた。
      文章もあまりにできすぎていることから仕込みだという噂が流れたのだと思われる。
    • ただし元コンパイルスタッフによれば、この裏技は意図的に仕込んだものではなく偶然の産物であるとの事。
      有名な「ゆうてい(略)ほりいゆうじ(略)」のように、たまたま意味のある文章&強力パスワードとして噛み合ってしまったらしい。
  • 後年、とあるユーザーの手でこのパスの詳細が解明された。解説は外部リンクを参照。
    • 簡潔に言うと実は上記のうち有効なのは達也の「みなみにHしてしまいました」の部分のみで、他の2つは無効パスワード扱い。
      しかも、このゲームはパスの整合性チェックが緩すぎるため、適当な文章でも高確率でそのまんま通ってしまうのである。
      達也のパスワードにしても偶然高ステータスのものが通ってしまっただけで、「みなみにRしてしまいました」という意味不明な文章でも通用してしまう。
      つまりパスワードを意図的に意味のある文章にしてしまえる自由度が非常に高いのである。
  • また、効果の方についても「最強パスワード」かと言えば、そんな事もない
    • 上記の『大技林』等では「たつやは子犬を7匹持っていて、ステータスが最高値の3000の状態になる」と記載されていたのだが…。
    • 犬は10匹中7匹集まっているが、逆に言えばクリア直前というわけでもなく、何より自由度が高いゲームだけに残り3匹がどれか分からない
      • さらに致命的なことに前述の「9匹目に助けないと詰む子犬」を救出してしまっているため、ゲームクリアが不可能。
    • 達也の体力が3000まで上がっているが、これもFC時代で1時間もかからずに上げられる数値と考えるとそこまででもない。
      むしろ相方の和也は完全に初期ステータスのままであり、和也の体力が低すぎる方が面倒くさい。
  • 結論としてはこのパスワード自体はただの創作文章としか言えず、 本作への風評被害 以外の何物でもないということになる。
    • 多少パスワードをミスしても再開できるようにと言う開発の心遣いだったのかも知れないが、結果的に上記のような酷い文章が拡散されてしまい、
      「公式で仕込んだ最強パスワード」「原作者や小学館側から訴えられた」等の根拠のない噂が拡散されてクソゲー関係のサイト等で有名になってしまった。
    • 上記のようにゲームそのものが酷い内容であるのは確実で擁護できないぐらいどうしようもないのだが、
      意図しないパスワードで叩かれてしまう事例も多く見られるというある意味可哀想な事態にもなっている。

ガワ替え疑惑

  • ファミコンブーム時代には既成のゲームからキャラだけを挿げ替えて世に送り出されたキャラゲーが多かった。これはいわゆる「皮(ガワ)替え」と呼ばれた手法で、システム開発費などの製作コストが安く上がるため、業界ではFC時代以後も使われ続けたテクニックである。有名なところでは『高橋名人の冒険島』『スーパーマリオUSA』、サンデー繋がりなら『ラムのウェディングベル』などもこの手法で作られている。
    • 本作も上述のように『タッチ』と全然関係のない内容であるため、開発中だったオリジナルゲームのキャラだけを何らかの理由で『タッチ』に挿げ替えたのではないかと推測されている。
      だがもちろん公式発表などがあった訳ではなく、こちらも確証のない噂である。
  • 1987年初期の世相は「ファミコンゲームといえばアクションorシューテング」という時代で本格派RPG『ドラゴンクエスト』や本格派アドベンチャー『ポートピア連続殺人事件』がヒットした前例はあるものの、まだまだ異端児的存在でしかなくこの先ジャンル自体が安定してヒットするかは未知数だった。
    • またスポーツ系ゲームも4か月前の1986年12月に発売された『プロ野球ファミリースタジアム』の大ヒットまでは、『テニス』『ベースボール』など任天堂の無印系スポーツシリーズばかりで割と地味臭い存在*2だったため「大型版権をコケさせないため安定したジャンルを取った」という判断はビジネス的観点からすれば無難だったのかも知れないが結果的にそれが先々まで語り継がれる伝説的クソゲーになってしまった。
      そしてこの直後にファミコンゲームは大きな転換期を迎えることになる。本作とは無関係の「RPG全盛期の到来」が理由とはいえ、本作に関係のありそうな部分だけでも当てはまる部分があるものと邪推できてしまうだけあり、なんとも皮肉な顛末となった。
    • 同年夏期に『燃えろ!!プロ野球』が発売され野球ゲームブームの口火を切り、翌1988年は『究極ハリキリスタジアム』や『ベストプレープロ野球』といった新顔も続々登場し全盛期を迎えることになる。
    • アドベンチャーゲームにしても同年夏期以降に『北海道連鎖殺人 オホーツクに消ゆ』『ふぁみこんむかし話 新・鬼ヶ島』などが発売され地位を築き、更に12月にはまさしく『タッチ』に向いたもの思える「恋愛要素を主眼に据えたアドベンチャー」として『アイドルホットライン 中山美穂のトキメキハイスクール』まで登場している。
      • このように、この後わずか半年程度の間に野球ゲームやアドベンチャーゲームが確固たる地位を築いている。タラレバは好ましくないが、もし制作があと1年先だったなら、このようなゲーム市場を鑑みてタッチらしく野球やPC版のような恋愛アドベンチャーとして作られ、まるで違った印象を与えるものになったかも知れないと考えると「許諾を取った時期が早すぎた」という間の悪さを感じずにはいられない。
      • とはいえリアルタイムでの商品展開がもたらす話題性も重要で本作発売の翌週がアニメ版『タッチ』の最終回であった、という点を考えればそう悠長なことも言ってはいられない事情もうなずける。いろんな意味で間が悪かった。

原作者激怒疑惑

  • 本作を原因に「原作者のあだち充氏が激怒して、自分の漫画作品のゲーム化を一切許さなくなった」という都市伝説が存在する。
    • こう言った噂が広まったのは、「原作:あだち充」の版権ゲームが非常に少ないのが原因だろう。とはいえ、氏の有名なアニメ化作品には野球を題材にしたものが多く、必殺技の飛び交うバトル物の漫画やアニメと比べてゲーム化に向いていないのが一番の原因と思われる。
    • だが、本作以降にPC88版『陽あたり良好!』が発売されたり、週刊少年サンデー×週刊少年マガジン創刊50周年記念のお祭りゲーム『サンデー×マガジン 熱闘!ドリームナイン』に『タッチ』『クロスゲーム』『H2』のキャラクターが出演したりしているので、少なくとも漫画作品のゲーム化を一切許さなくなったというのはデマであると言っていいだろう。

その後発売・開発元

  • 本作の「発売・東宝&開発・コンパイル」は翌1988年末に『ゴジラ (FC)』を世に送り出すこととなる。
    • ソフト売上の観点では爆発的ヒットとまでは言わないが、ゲーム自体は非常に良くできており、同じコンビによるものと聞いたらさすがにビックリだろう。
    • 開発元のコンパイルは、FCでは自社発売をしていなかったためFCユーザーにはなじみが薄かったが、数々の名作を送り出しており開発力には定評があるメーカーであった。なのになぜこのようなゲームになってしまったのかが、本ゲームにおける最大のミステリーかも知れない*3
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最終更新:2024年03月03日 22:37
添付ファイル

*1 厳密にはもう一本あるが、ほぼ同期なので企画の参考にはできなかったと思われる。詳しくは後述。

*2 参考までにファミスタが出るまで野球はおろかスポーツゲーム自体少なく『ベースボール』(唯一の野球ゲーム)『テニス』『ゴルフ』『ハイパーオリンピック』『サッカー』『10ヤードファイト』『ハイパースポーツ』『タッグチームプロレスリング』『バレーボール』『プロレス』『ファミリートレーナー アスレチックワールド』とたった11本しかなく、その内半分以上にあたる6つが任天堂の無印系タイトルのスポーツゲーム。

*3 ここに限らず、高い評価を受けているメーカーでも、たいていの場合一つや二つ期待外れな作品はあるが。