剣と魔法と学園モノ。3

【けんとまほうとがくえんもの。すりー】

ジャンル 3DダンジョンRPG

対応機種 プレイテーション3
プレイステーション・ポータブル
発売元 アクワイア
開発元 ゼロディブ
発売日 2010年10月7日
定価 【PS3】7,329円
【PSP】5,229円(共に税込)
判定 ゲームバランスが不安定
ポイント 序盤の難易度が高い
中盤から作業・ヌルゲー化
「男の娘」作れるキャラクターメイキングの実装
剣と魔法と学園モノ。シリーズ


概要

  • 「萌え」を意識したキャラクターデザインが特徴の3DダンジョンRPG。『剣と魔法と学園モノ。(通称ととモノ。)』シリーズの第3作目。
    • サブ学科システム、ロストの概念廃止、アイテムの共有化など、本家であるウィザードリィとの差別化が図られている。
  • ダンジョンでアイテム収集・資金稼ぎ・レベル上げを行いつつ、メインストーリーに該当する「クエスト」を進行させるのがゲームの目的。
  • PS3版は主要NPCの台詞にボイスが割り当てられている(主要NPCだけ、全く喋らないNPCもいる)。PSP版はボイスなし。
  • シリーズとしては、ゲーム開始地点となる学園が「ドラッケン」「プリシアナ」「タカチホ」の3種類あるのが特徴。
    • 選んだ学園によって、終盤までのストーリー展開や登場するNPCが変化する。
  • 発売から約一ヵ月後の2010年11月9日にver1.01へのアップデートが行われた。
    • 初期バージョンにあった「戦闘アニメをスキップできない」「マップにプレイヤーの向きが表示されない」などの問題点が修正された。

特徴

  • 基本的には前作の流れを踏襲したダンジョンRPGだが、システムの変更・撤廃などが数多く行われている。
  • 豊富な学科
    • 職業に相当する「学科」の数が非常に多い。男女で名前が違うだけの学科を1つと数えても前作から倍以上になっている。職業や学科としては突飛な名前のものもある。
      + 学科
    • 共通初期学科
      • 普通科、戦士、ナイト、格闘家、盗賊、狩人、炎術師、水術師、風術師、土術師、光術師、闇術師
    • 学園限定初期学科
      • ドラッケン:人形使い、トリックスター、パティシエ、牧師/シスター、ドクター、海賊
      • プリシアナ:ツンデレ、弟/妹、ダンサー、マニア、ヒーロー/ヒロイン、ジャーナリスト
      • タカチホ:神主/巫女、カンフー、折り紙士、予報士
        • いずれもその学園を訪ねた後ならば他校のものも選べるようになる。
    • 種族限定学科
      • ガンナー、精霊使い、狂戦士、錬金術師、風水師、賢者、ビースト、竜騎士、死霊使い、堕天使
    • その他の学科
      • プリンス/プリンセス、セイント/ヴァルキリー、アイドル、執事/メイド、侍、忍者/くのいち、まにまに
        • 主に特定のクエストをクリアすることで解放される。クエスト自体が学園限定のものも。
  • サブ学科システム
    • 前作までは各キャラが一度に就ける学科は1種類だけだったが、今作ではメインとサブの2学科を設定出来るようになった。
    • サブ学科は「メイン学科で育てた熟練度の半分」までの特技や魔法を利用出来る。
  • ストーリー性の強化
    • 今作は「3つの冒険者学校の交流」というところからストーリーが始まるので、個性的なサブキャラや会話シーンなどのイベントが増えている。

問題点

錬金バグ

  • ノーム専用学科(職業)「錬金術師」のスキルでダンジョン内錬金を行うとフリーズする。
    • プレイに支障をきたすほどのバグではないが、この問題により錬金術師の存在意義がなくなってしまっている。
  • アップデートで修正されたが、それでも時々フリーズしてしまう。

相変わらず種族間バランスは良くない

  • 学科制限の撤廃、相性の撤廃によりどの種族のキャラクターでもパーティに組みこみやすくはなったが、その一方で初期能力値が前作からそのまま据え置かれたことでバランスに歪みが出ている。
    • ノームはステータスがピーキーな代わりに種族間相性が非常に良いという特徴があったが、相性廃止により最大の長所を失ってしまった。専用学科の錬金術師が不遇であるのも向かい風。
      • 前作では学科制限により最も適性のある魔法使いになれなかったので、一概に弱体化ばかりという言う訳ではないが。
    • ディアボロスは高い能力値の代わりに種族間相性が全種族で最悪でパーティに組み入れ辛いとノームと対照的な種族であったが、相性廃止により隙が無くなった。
      今作では術師系職が終盤まで辛いところを高い耐久力と攻撃力、種族スキルのブレスによりある程度解決できるのも優秀。
      難点は専用学科の死霊使いが前作同様不遇なこととレベルアップ速度が最も遅いくらい。それもこれだけのメリットの前では霞む。
    • フェルパーは何故か序盤のHPの伸びが異常に良く、序盤が苦しいこのゲームにおいてこの性質は非常に強い。
      一応は早熟型という扱いで最終的には他職に追いつかれるがそれでも前衛職向けの能力は軒並み上位レベルなので強い。(もう少し正確に言うと、早熟型のHPに他種族のHPが後半でやっと追いつく感じなので、晩成型に対して後半は劣るという訳ではない。)
      本来適性のある前衛職としては勿論、後衛職としても低めのMPに目を瞑れば有力な選択肢となるほどでこれは流石にやりすぎな感がある。
      • 元々、本家Wizシリーズでフェルパーが初めて実装されたWiz6ではパーティー全員フェルパーでも問題ないほど隙が無い有力種族で、某元ネタの方でも運だけが低いためガチ盗賊に向かない以外はやっぱり全員フェルパーでもOKであったため、シリーズのお役職を踏襲しているとも言えるが。

学科間バランスもやはり良くない

  • 極端に強い学科はあまりないが、逆に極端に使いづらい学科がいくつかある。
    後述のように、下位の攻撃魔法しか覚えない学科や、補助魔法に特化した学科は魔法弱体化の影響を受けて使いづらい。
    前衛学科は極端な差はないが、「二刀流」や「鬼神斬り」といった汎用性の高い火力スキルの無い学科は使いづらい。以下に特に使いづらい学科を記す。
    • 前作『とともの。2』では不遇学科であり、アップデート版の2Gで大幅な上方修正を受けた錬金術師は覚える魔法の大幅な削除と火力スキル「二刀流」の削除、さらに魔法弱体化の影響により戦闘や探索面で全くの役立たずとなったばかりか、要の錬金スキルもバグが多く使いづらいと踏んだり蹴ったりの仕様。
    • 同じく前作不遇の死霊使いは今作も死霊魔法が弱点を突かないと効果が薄いというデメリットが痛い。雑魚戦では敵の種族はばらけているし、単体で出るボスは無種族が多いため使いどころが無い。
      そもそも初攻略時は敵の種族も分からないのであまりに使いづらい。
    • 新規学科の神主/巫女は補助系の後衛学科であるが、HPや攻撃力が最低クラスで攻撃魔法も強力なものは無く、肝心の補助面でも今作の補助魔法の全体的な弱さにより使いづらい。数ターン連続で使用してようやくの性能なのに打たれ弱く死にやすいというのは致命的と言える。
      一応回復魔法はあるが、これも有用な魔法の一部を覚えないため他の補助学科の方が使いやすい。

(一部除く)魔法が弱すぎる

  • 攻撃魔法は威力が低すぎる。攻撃力の高い武器を装備させて通常攻撃させた方がダメージが大きい。
    • 術師系学科の全体攻撃魔法のみ例外で、こちらは非常に強い(後述)。
  • 補助魔法(ステータス下降・上昇系)は変動幅が小さすぎて、4~5ターン連続で使用しないと効果を実感できない。
  • 実用的なのは回復魔法と常駐魔法(画面を明るくする等の探索補助)のみ。
  • 下位の攻撃魔法しか覚えない学科や、補助魔法に特化した学科の存在意義がなくなってしまっている。

序盤の敵が強すぎる

  • 1~2つ目のダンジョンであるにも拘らず、敵が状態異常攻撃や魔法、1人への集中攻撃を仕掛けてくる。序盤であるため装備も整っておらず、厳しい戦いとなる。
  • 不意打ち、バックアタックを受けるとパーティの半数が行動前に死ぬ。敵の数が多いと全滅もあり得る。

全体攻撃魔法が強すぎる

  • 上で魔法が弱いと述べたが、術師系学科が最後に習得する全体攻撃魔法のみ例外で、こちらは狂った性能を持っている。
  • 敵全体を攻撃できるにも拘らず異常に威力が高く、よほど魔法攻撃力が低くない限りこれ1発で敵全員が死ぬ。
    • 装備で魔法攻撃力を強化すれば、ラストダンジョンの敵ですら瞬殺できる。隠しダンジョンまで進んで、ようやくこれを耐える敵が出現する。
  • この問題により中盤からゲームバランスが崩壊する。戦闘はコマンド画面で全体攻撃魔法を選択するだけの作業となる。
    • 真面目に戦う必要があるのはボス戦のみ。そのボス戦も後述する合体技を利用することで完封できてしまう。
  • ちなみにこの"強すぎる全体攻撃魔法"、何も有利なことばかりではない。
    • もちろん後半に戦う強敵連中は揃って上記の凶悪魔法修得済。下手すればプレイヤーサイドが逆に軽~く瞬殺される。
  • 当然それなりにMP消費量は多いものの、”4次元ポケット仕様の道具袋とやたらリーズナブルに手に入るMP回復アイテム”がある為、MPの問題は無きに等しい。
    また、”レベルが上がればMP全回復”という仕様上、全体攻撃魔法を使い続けてMPが枯渇するころにはレベルが上がってMP全回復になりやすいので、クリア後の隠しダンジョンでは回復アイテムすら必要なくなる。

合体技「守護防壁」が強すぎる

  • 3人で発動する特別なスキルで、敵から受けるダメージを軽減する。主に、全体攻撃魔法で瞬殺できないボス戦で利用される。
  • 軽減率が凄まじく、中盤までのボスはこのスキルを利用するだけで完封できる。
  • 他のダメージ軽減系のスキルと併用すればラスボスどころか、ほぼ全ての敵をノーダメージ撃破も可能なレベル。
  • これや上述の強力な攻撃魔法を使わない縛りプレイをすることで一応は一定のバランスを保てるようにはなるが、今度は敵が使ってくる攻撃魔法が強力すぎて難易度が跳ね上がってしまう。

その他の合体技も強すぎる物が多い

  • 同性二人で発動する特別なスキル「いちごミルク」「男魂」や4人で発動する合体技「狂喜乱舞」などが揃って壊れ性能。
    • 一応"消費MP"+"コマンド入力*1"という足枷はあるものの威力は普通に攻撃するよりもはるかに高く、前者は敵一列に、後者は敵全員に大ダメージを叩き込める。
  • 上で魔法が弱いと述べたが、その期間を埋めるには十分な性能。ボス級でもこれ一撃でカタが付くこと多々。
    MP消費という足枷も前述のように回復アイテム購入し放題の仕様下では意味を成さない。

錬金の法則性が予測困難に

  • 前作までには各種武器、防具に"装備レベル"が存在していたが、今作ではなぜかマスクデータに仕様変更。
  • この結果新規にこのシリーズを遊ぶ人にとっては錬金レシピの法則が凄まじくわかりづらいものになっている。
  • 一応”○○の錬金書”というものが各種売店で売り出されており、それを購入することで8割がたの錬金方法は判別できる。
    • ちなみに"ゲームバランスを豪快にぶち壊す錬金レシピ"が前述したように序盤から楽々作れてしまうが、それらは全て『ととモノ。』になってから追加されたレシピというのがなんとも。
  • なお、アイテムレベルは魔力増強+や盗賊技能+などの付加能力の性能にも影響しているのだが、この改変の結果それすらも非常に解り難くなってしまった。

賛否両論点

最初に選ぶ学園によって難易度が大きく変わる

  • プリシアナが最も簡単で、序盤のダンジョンが簡単、防具を揃えやすい、専用学科が優秀、難易度的な山場もあまりないと優遇されている。
  • 逆にタカチホは難易度が高く、序盤の敵が強い、ダンジョンの罠が多い、専用学科がイマイチとプリシアナと対照的になっている。
  • 中盤以降はどの学園を選んでも殆ど差が無くなるし、難易度差があるのも自分の好みや力量によって適切なものを選択できるとも言えるので一概に問題ではないが、せめて学園選択時に目安となる説明は欲しかったところ。

序盤から最強クラスの武器を作れる

  • 学園のショップに置いてある素材だけで、終盤で使うような攻撃力100超えの武器を作成できてしまう。
  • アイテム収集の楽しみがなくなるという意味で否定的な意見も多いが、それなりに資金集めをしなければならない点や、他のRPGでも金策に時間はかかるが結果として序盤に強い装備を作れるといった要素のあるものは珍しくないため、あくまでプレイスタイルによるものと位置付けることもできる。

評価点

プレイスタイルの幅が広い

  • 術師系の学科が1人いれば何とかなるバランスのため、序盤さえ乗り切れば、以降はどんなパーティでも効率的に進めることができる。
  • 「6人パーティは不自然」という人は3人パーティで*2、「戦士系を入れたくない」という人は全員術師系でプレイできる。
  • 「妄想プレイが楽しい」という3DダンジョンRPGの特徴と、ある意味マッチしていると言える。

初心者向けwizとしてのスタイルを確立した

  • 前作までは萌え系のイラストや世界観で新たなプレイヤー層の獲得を狙っていた一方、中身は従来の和製wizと同じく初心者に対する不親切さや理不尽さが目立ち、ややちぐはぐな印象があったが、今作では後述するように大幅なシステム面の変更により全体的に簡潔かつ明瞭になり取っつきやすさが増した。
  • 死亡や灰、ロストといった従来的な要素が無くなるなどシリーズを通してかなりマイルドな調整がされている一方、最序盤から敵が強い、初見殺し的なトラップもあるなどお約束的な部分もあり、決してヌルゲーという訳ではない。

前作の問題点の改善

  • 前作にはプレイスタイルを縛るシステムが多く存在したが、その大半が本作で改善されている。
  • キャラクターメイキングの実装
    • グラフィックが固定ではなく、立ち絵や髪型を複数あるパターンのうちから自由に設定できるようになった。
      • 職業別のグラフィックが実質なくなったので、キャラによっては「前衛を担当させたいのに杖を持っている」や「後衛を担当させたいのに斧を持っている」といったあべこべ状況も。
      • 性別に関しても同様であり、所謂「男の娘」や「男装の麗人」も作れる。本作発売前後に一般にも浸透しつつあった男の娘ブームもあり、この点は公式でも少なからず推していた。
  • アンチスペル+ディープゾーン(スキル「浮遊」持ち以外回避不能の即死トラップ)の廃止。
    • スキル「浮遊」付きアイテムの装備を強要されなくなった。
      • ただアンチスペル+ダメージゾーンはしっかりあるので、浮遊装備があるに越したことはない。
  • 善悪中立、種族間相性の廃止。
    • どんな種族の組み合わせでもペナルティが発生しなくなった。
  • 装備の種族・学科制限の廃止。上下装備の統一。
    • 剣+弓や、二丁拳銃が可能になった。

戦闘バランスの一部改善

  • 前作で猛威を振るった術師系魔法の「ラグナロク」は消費MPがおよそ10倍、発動スキルが完全ランダム化と大幅な弱体化を受けた。
    これでも有用な魔法なのでいかに前作の性能がトチ狂っていたかという話ではあるが。
  • その他、前作では非常に強力な精霊をパーティの7人目に召喚できた精霊使いの精霊魔法は発動ターンのみの攻撃となって他の攻撃魔法と同じになったり、全職最速から全魔法中最強クラスの攻撃魔法を打てた賢者は最強魔法のイペリオンの没収とただでさえ低いHPにさらにマイナス補正がかかるなどの弱体化された。

総評

ゲームバランスの悪さは大きな問題点だが、それを除けばととモノ。シリーズの中では比較的遊び易く、挫折しにくい。自由度を高めるための変更・追加要素もゲーム性と上手くマッチしている。

「萌え」系のキャラクターデザインと冗長なストーリーは人を選ぶが、ゲーム中で語られない部分を自分で妄想するのが好きな人であれば楽しめる作品と言える。

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  • 剣と魔法と学園モノ。

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最終更新:2022年11月11日 15:25

*1 一定時間内に求められる。△○×□↑→↓←など。間違えてもデメリットほぼ無しの模様

*2 ライバルパーティーはいずれも3人パーティーであるため、「3人に6人掛かりで勝っても虚しくないか?」という人もいるだろう。