美少女戦士セーラームーン
【びしょうじょせんしせーらーむーん】
ジャンル
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ベルトアクション
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対応機種
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アーケード
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販売元
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バンプレスト
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開発元
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ガゼル
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稼動開始日
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1995年3月22日
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プレイ人数
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1人~2人
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判定
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ゲームバランスが不安定
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ポイント
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セーラー戦士が低性能 序盤から殺す気満々のゲームバランス ハメて余裕ハメなきゃ即死の世紀末 至高のカットイン。キャラクターゲームとしては◎ 未使用データ多数
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美少女戦士セーラームーンシリーズリンク
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概要
バンプレストから発売のベルトスクロールアクション。言わずと知れた大人気国民的アニメ『美少女戦士セーラームーン』をもとにしたキャラクターゲーム。
開発を担当したのは、東亜プランの遺伝子を継いだ会社の一つであるガゼル。
稼働開始時はアニメはスーパーズまで進行していたが、本作のストーリーは無印(ダーク・キングダム編)をベースとしている。
SFC版・MD版と同じく5人のキャラクターから1人を選んでステージを攻略していく。2人プレイ可能。
操作方法・ゲームシステム
基本的な操作方法やシステムは『ファイナルファイト』系と同じ。別会社による作品のため、同ジャンルの他のセラムン作品にあった飛び道具システムやプレイ評価はなくなっている。
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ダッシュやMD版にあったダッシュジャンプが可能。攻撃ボタンを押すことでダッシュ攻撃へと派生する。
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クリスタルを拾い集めることで強力な全体攻撃である『必殺技』を放つことができる。このシステムはSFC版に近い。
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クリスタルの数によって演出と威力が異なり、それぞれに派手なカットインが入る。
プレイヤーキャラクター
本作ではキャラクター間の攻撃力と防御力の差は無く、判定の広さといった部分で差別化している。
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月野うさぎ(セーラームーン)
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本作の主人公。主人公らしく中性能なバランスタイプなのだが、攻撃のリーチが短い割りに隙の大きめな技ばかりでかなり使いにくい。おそらくクリア最難キャラクター。
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水野亜美(セーラーマーキュリー)
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移動速度が速いスピードタイプ。連打攻撃の一段目は比較的良性能でパンチハメ(後述)は行いやすい。しかしジャンプ攻撃の判定が狭かったり掴み蹴りと投げの隙が大きかったりするので、他キャラクター以上に喰らわない立ち回りを要求される。クリアは難しめ。
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火野レイ(セーラーマーズ)
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ムーンと同じくバランスタイプ。こちらは比較的リーチが長く、やや隙の大きい連打攻撃に気をつけさえすれば、ムーンよりはるかに使い易い。5人の中では中程度の強さを持つキャラクター。
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木野まこと(セーラージュピター)
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各種攻撃のリーチが短いが、その分最後まできちんと連続攻撃が繋がる。使いこなせば楽な方。
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愛野美奈子(セーラーヴィーナス)
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ジャンプ攻撃が強力。地上連打攻撃の性能も平均以上に良く、リーチ・隙のなさも及第点。1コインクリアに最も近いキャラクターと言われている。
問題点
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ベルトアクションゲームの多分に漏れず、とにかく難易度が高い。闇雲に攻撃するだけでは最初のマップでも普通にゲームオーバーに成りうる。
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少女でもクリアできるとか、キャラクター目当てのライト層が楽しめるとかそんな次元ではない。緻密な攻略法とプレイヤースキルが要求されるコアユーザー向けである。
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プレイヤーキャラクターの性能が低い。いわゆる「出し得」な技が存在せず、常に紙一重の戦いを強いられる。全体的に見てプレイヤーキャラクターの攻撃力が低めで、敵の攻撃力が高めに設定されているのも一因。
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こちらのジャブ攻撃はリーチが短く、ただ連打しているだけだと間合いの外から一方的に殴られる。攻撃を当てるためには相手との位置取りが重要になる。
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キャラ固有のラッシュ攻撃は華麗であるが、その分一発の威力が低くフィニッシュまでに時間がかかる。悠長に攻撃を繋いでいてはすぐに取り囲まれてボコボコにされる。
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このジャンルでは頼りになるはずのジャンプ攻撃だが、意外と判定が弱くあっさりと潰される。とりあえず飛び蹴りで転ばせて仕切りなおすという方法は本作では取りにくい。
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ダッシュ攻撃もこれまた弱い。リーチも発生も判定も弱く、逆に返り討ちにあう可能性大。これで敵の大群に突っ込むなど自殺行為にも等しい。
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ザコ敵の数が多い。
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ACの性能を見せ付けるかのように四方からザコ敵がうじゃうじゃと湧いてくる。1画面に5体以上は当たり前。前述のようにセーラー戦士はかなり弱いので、蹴散らすだけでも一苦労。もちろんリンチされればそのまま死が見える。
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ボスが強すぎる。
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攻撃力もさることながら、各種行動の無敵時間が嘘のように長い。こちらの攻撃力が低めなので、結果的に耐久力まで高くなっている。正攻法で勝てるボスは存在せず、攻略法の確立(ぶっちゃけハメパターン探し)が必須になる。
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最初のステージから2体のボス(アニメでは中盤に登場したはずのカストル&ポルクス)が登場してくる上、移動・攻撃方法がトリッキーでどういう所に隙があるのかが分かりにくい。一見で見極められる人はそういないだろう…。
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なお、原作・アニメで最初に戦った妖魔であるはずのモルガは何故かステージ2のボスに回されている。
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アイテムが少ない。
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回復アイテムやクリスタルは敵がランダムで落とすものを拾うのが基本であり、固定のアイテムはほぼない。
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回復量も少なく体力の2~3割程度しか増えない。常にジリ貧の状態が続くことになる。
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特定のボス戦で現れる「タキシード仮面」が投げてくれる薔薇は体力全回復の効果があり、まさに命綱。しかしボスの右側に置かれるので拾えない場合がある。こういった数少ないプレイヤー有利なギミックを逃さず、損をせずに使い切る精密さが求められる。
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制限時間が短い。
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1場面ごとの制限時間はわずか1分間であり、特定の地点まで進むと制限時間が延長されるが、明らかに時間が足りない。常に急いで敵を打破していかないと、とてもではないが間に合わない。この仕様が高難易度ゲーに更に拍車をかけている。
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本作のストーリーデモはステージ2クリア時に流れるもの以外は一切ない。最終ボス撃破後もエンディングデモはなくスタッフクレジットのみと非常に淡泊。このため、前提として原作・アニメを知らないとストーリーはほぼ分からない。
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唯一流れる2面クリア時デモにはダーク・キングダム四天王のジェダイトが登場し、「このジェダイトにお任せを」とセーラー戦士の始末を宣言するものの、彼はゲーム本編では一切登場しない。
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本作で戦う四天王はゾイサイトとクンツァイトのみ。ネフライトに至っては、明らかにアニメ版で彼が登場する話を意識したと思われるステージが存在するにもかかわらず影も形もない。おそらく開発期間の関係で四天王全員を登場させられなかったものと推測されるが……。
評価点
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グラフィックが素晴らしく綺麗。ドット絵の美しさもさることながら、特に必殺を使うときに表示されるカットインアニメは秀逸。
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カットインはアニメ版のバンクシーンや雰囲気をそのままに再現しておりファンからの評価は非常に高い。
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演出シーンが凝っている。
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捕まったクラスメート達や、いちいち登場するタキシード仮面など再現度は折り紙つき。またステージ3ボスがタワーに昇るまでの演出は特に評価が高い。
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ただしストーリー表現に関しては上記の通り、2面クリア時に文章付きのデモが挟まれる程度しかないため、原作・アニメを知っている人向けとなっている。
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キャラクターのモーションが可愛い。顔のグラフィックも様々な状況に応じて色々と変化する。
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攻撃もさることながら、やられシーンまでも非常に凝っており、スタッフの力の入れようが窺える。感電・黒コゲなどの変化も綿密に描き込まれていて、一部の攻撃を受けたときにしか見られない隠しモーションも存在する。
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キャラクターの性能に難はあるもののパンチハメは可能。これさえマスターすればある程度突き進むことはできる。
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操作キャラクターを後ろに振り向かせるだけで、パンチ連続攻撃の段階が初段に戻るため、操作がしやすくなっている。
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制限時間の問題があるので、積極的に狙わないときつい部分もある。
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特殊技も少々勝手が悪いだけで使いどころがないわけではなく、危険な状況で出さなければ問題なく役立ってくれる。
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ボスは確かに強敵揃いだが、それぞれに明確な攻略法が存在する。パターンに持ち込めばノーダメージも可能である。
総評
セーラームーンのアクションキャラクターゲームとして見ると作りこみは素晴らしく、傑作のレベルである。
しかし一見さんお断りとも取れる高難易度はどうしようもなく、万人向けとは言い難い。
ただベルトアクションゲームとしてまともに攻略ができる程度の余地は残されており、攻略法を研究してやり込んだ硬派なユーザーにとっては評価はそこそこ高いようである。
ガゼルと言えば、高難度のシューティングゲームを製作するイメージが強いが、ベルトアクションゲーム全般が高難度傾向にあったとはいえ、本来想定された原作視聴者層に向けた内容になっていないのが悔やまれる作品であった。
余談
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原作を連載していた「なかよし」の最新ゲーム紹介コーナーで本作が紹介されていた。難易度が完全にヘビーゲーマー向けで女児向けではないとは言え、連載中の漫画を原作とした本作の紹介はしなければならなかったのだろう。
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本作はその日に多く使用されたキャラクターランキングが表示されるのだが、アニメ版で人気のあったマーキュリーが高いランクを獲得していた。
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おバカか気が強いか、その両方かのセーラー戦士たちの中で、マーキュリーは「か弱さ」があったので、大きなお友達からの人気が一番高かった。余談だが「大きなお友達」と最初に言いだしたのはマーキュリー役の声優だとされる。
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本作のBGMは使用料を抑えるためかアニメ版のBGMは一切使用されていないが、似た雰囲気の作りとなっておりタキシード仮面登場時やエンディングは非常にそれらしい曲が流れる。
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難易度の設定がやけに多いが、変化するのは敵の体力値のみ。
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最も簡単なエクストライージーではほとんどの敵が1コンボで倒せるくらいにはなるので、ベルスクに慣れた人ならさくさく進める難易度になる。
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1996年放送の特撮番組「ビーファイターカブト」の第3話において、本作が劇中でプレイされているシーンが映っている。
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MOSSの社長である駒澤敏宣氏によると「やりきれない状態なのでグラフィックを手伝ってほしいとバンプレスト経由で依頼が入り、うちも開発を手伝った」旨の証言がある。
大量の未使用データの発覚
有志によってデータが解析された結果、多数の未使用要素が発掘された。
下記の通りあまりにも未使用要素が多いことから、本作のスタッフの間で納期絡みのゴタゴタがあり、それが全体的な出来に影響した可能性が高い。
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本編未搭載のエンディングデモ(しかも全員生還のハッピーエンド)
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本編未登場だったルナやアルテミス、ネフライトのグラフィック
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なるとネフライトの絆に関するイベントの搭載を思わせる未使用グラフィック
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必殺技における、アニメーションのカットインとは別に用意されていたと思われる専用モーション
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ストーリーデモ用の多数の顔グラフィック
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大量の未使用ボイス・SE(セーラー戦士やタキシード仮面に加え、未登場のルナのものもある)
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2P、3Pのアイコン(最大4人プレイを想定した?)
また、ゲーム雑誌に掲載された開発中の画面写真も後に発掘された。
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その画面写真にはテティスの部下の海水怪人も登場している。こちらに至ってはグラフィックのデータごと削除されている。
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データ上に存在するものの未使用になった銀行前のステージの画面写真などもあり、そこにラウンド5に登場した覆面の雑魚敵を引き連れているセーラーVの姿がある。
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開発中バージョンのキュレネ戦の画面写真も発掘され、製品版では未使用になったキュレネの技が映っている。
またその画面写真にはジュピターの未使用モーションも映っているが、これはおそらくクリスタル2個で発動するジュピターの必殺投げのものと思われる。
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開発中の画面写真ではライフバーが製品版より長めになっており、この長さであればゲームバランスも多少はマシになっただろうが、これに関しては回転率の事情も絡んでいるのかもしれない。
最終更新:2022年11月16日 03:17