※本稿では、『遊☆戯☆王デュエルモンスターズGX TAG FORCE』(良作)及びそのPS2移植版『遊☆戯☆王デュエルモンスターズGX TAG FORCE EVOLUTION』(劣化ゲー)について解説する。



遊☆戯☆王デュエルモンスターズGX TAG FORCE

【ゆうぎおうでゅえるもんすたーずじーえっくす たっぐふぉーす】

ジャンル 対戦型カードゲーム
対応機種 プレイステーション・ポータブル
発売元 コナミデジタルエンタテインメント
開発元 コナミデジタルエンタテインメント
テンキー
発売日 2006年9月14日
定価 5,229円
レーティング CERO:A(全年齢対象)
判定 良作
ポイント タッグフォースシリーズ1作目
「遊戯王=クソゲー」から脱却
収録カードが大強化
公式ルールでタッグデュエル
徹底してアニメに忠実、演出・ボイス完備
今作のみ主題歌も
遊☆戯☆王シリーズ

概要

週刊少年ジャンプで連載されていた漫画『遊☆戯☆王』に登場するカードゲームを元にした『遊☆戯☆王デュエルモンスターズオフィシャルカードゲーム(以下『OCG』)は爆発的なヒットを飛ばした。

しかし、過去の『遊☆戯☆王』のゲームは、対戦ツールはおろかゲームとしても出来の悪いものが多く見られた(実際のOCGのルールが実装されていないもの、バグや歯抜け(未収録カード)が多い、ゲームバランス最悪…etc)。
特にGBCで発売され、歴代最高の売り上げを記録した『遊戯王デュエルモンスターズ4』は、システム・ゲームバランス・商法とあらゆる面でタチが悪い代物であった。
そのため「遊戯王ゲー=クソ」という風潮ができ、続編の売上が大幅低下する原因にもなり、付属カード目的のみで買う人もいることから「5,000円のカードを買ったらゲームがおまけに付いてきた」などの皮肉まで生まれることとなった。

このような風潮は本作『タッグフォース』(以下TF1)にも影響を与えることとなり、発売当時ではあまり市場が盛り上がっていなかったPSPで出たことと、付属カードの能力もいまひとつだったことからカード目的で買う人にもそっぽを向かれ、発売まで空気同然の状態であった。しかし発売後、良い意味で期待を裏切ることとなった。

システムなど

特徴・評価点

  • 旧作品群は未収録カードが3桁以上存在していたが、当作品では発売時点でOCG化していた「POWER OF THE DUELIST」シリーズまでのカード殆どを収録している。
    • これにより未収録カードは通常30枚、限定カード10枚の40枚以外を使用して戦えるシミュレーターゲームとなった。
    • ルールは完全にOCGならびにアニメ準拠。ルールや処理におけるバグもなく、シミュレーターとしての完成度も高い。
  • OCGは定期的に禁止・制限カードリストの更新が行われる。しかしソフトには自動更新はついていないため、通信による公式配信の制限リストをダウンロードすることで更新する。
    • なおゲームの初期制限は現実のOCGルールにおける05/09/01時点の構成。ゲーム発売の一年以上前の制限改訂となっている。
    • ゲーム内ではとある条件により、禁止・制限カードを1枚デッキに投入できる。デメリットとしてCPUも同じ条件を得る。
    • またメニュー画面で通信を行うことにより、公式のオリジナルカードやデッキレシピを受け取る事ができた*1
  • 遊戯王ゲーム初、2vs2のタッグデュエル導入。様々なアニメ登場キャラとパートナーを組んでタッグデュエルをすることもできる。1vs1の従来のデュエルも勿論可能
  • デュエル中はフルボイスで全てのキャラが喋り、その台詞に合わせてキャラが3Dアニメーションで動く。
    • 《ハネクリボー》を引くと《ハネクリボー》が喋るおまけつき。
    • 台詞は基本的に「モンスターを攻撃表示で召喚」などの汎用台詞が多いが、各々のエースを使用した場合には専用台詞もちゃんとある。
    • しかもデュエル中のテンポが今までの遊戯王ゲームより良く、かなり快適。デュエルフィールドとキャラクターの3Dモデルの切り替えに遅滞が一切ないので、TVアニメ版そのままに決闘が楽しめる。
      • とはいえバグ回避か、毎回処理に対する確認が行われるため、その部分だけはテンポが落ちる。なお○ボタンを押し続けることで、自分のカードにチェーンしたり、相手のドローステップでカウンターを打つことも可能。
  • PSP版に限り、2ndOP曲「99%」やアニメ劇伴などが使用されている。次回作以降ならびにPS2版は「っぽい曲」に変更されており、アニメそのままというのは貴重。
    • アニメサントラ未収録ながら人気の高い「運命のテーマ(仮)」もそのまま採用されており、ファングッズとしても価値がある。
  • 個性ほとばしる主人公「コナミ君(通称)」
    • よくある喋らない主人公ながら、周囲のキャラとのやり取りや証言から驚異の個性が飛び出してくる。ただし、旧シリーズの主人公と同一人物かは物による。
    • ただし本作段階ではそこまでキャラ付けされていない。
  • アニメ準拠の3つのシナリオ
    • 基本的にはキャラと会話、デュエル、購買のパンをプレゼントで好感度を上げていく。デュエルもできるキャラゲーたる所以。
  • 第一部はデュエリスト1のメンバー7人のうち、好感度の高いキャラに毎週日曜毎にタッグデュエルに誘われる。そして大会前日までにパートナーを決める学園生活のシナリオ。
    • なおゲーム1周目はデュエリスト1に属する7人(上記メインキャラ)のみパートナーとして選べる。
  • 第二部はデュエル勝利時に貰えるGXメダルを集め、タッグフォースに出場するシナリオ。
    • 決勝トーナメントはアニメのメインキャラと戦う事になるのだが、いずれかのメンバーをパートナーとしていると、該当するペアが消え迷宮兄弟が出場する。
  • 第三部はセブンスターズが登場し彼らを討伐するシナリオが軸となる。
    • こちらも選んだパートナーとのタッグデュエル。該当人物とタッグを組んでいる場合、本来組むはずだったセブンスターズとのデュエルはキャンセルされる。
  • いずれもアニメ1期に合わせたシナリオとなっているが、設定そのものが2以降と混ざったキャラもいる。
  • アニメ本編で出てきたドローパン*2を実際に買うことができる。
    • 買ったパンはキャラに上げることが出来、中身によって好感度が変化する。この好みの傾向はキャラによって違い、例えば万丈目はステーキパン等の肉類の入ったパンや高級食材を好み、レタスパン等の野菜が入ったパンを嫌うという傾向がある。
      • 好みの傾向はデュエルをすることで情報を得られるデュエリスト名鑑で知ることができる。好みを知るためにはデュエルをして相手を知ることから始めるという入りになりやすい。
      • おなじみの黄金のタマゴパンももちろん存在し、全てのキャラの好感度を大幅に上げる大好物に設定されている代わりに入手難度が高く、一日に一個しか入手できないレアアイテムとなっている。
      • 好みの傾向でもっとも極端で印象に残りやすいのがカイザー(丸藤亮)であり、シンプルなパンが好きということで、なんと具なしパン、まかないパン、黄金のタマゴパン以外では好感度が上がらない仕様となっている。
    • 本編以上に中身がカオスであり、ラーメンパン(スープ入り)などどうやっていれているのかゲーム中のテキストにも書かれているレベルで不明なものも存在する。

賛否両論点

  • OCG準拠ともあり、ルール上越えられない壁は越えられないまま。
    • 一例として十代が《沼地の魔神王》を使ったり、カイザーが《融合呪印生物-光》を投入していたりと、デッキ補強はガチガチに固められている。もっとも大きくイメージが異なるデッキを持たされてるキャラはいないが。
      • この補強があるためか、旧作にしばしば登場した積み込み行為はまず見受けられない。
  • 好感度を上げるための方法が3つあり、そのキャラとデュエルして勝つ、日曜日のタッグデュエルでパートナーになりデュエルに勝利する、キャラの好物が入ったドローパンを上げる、というものなのだが、3番目の方法が手っ取り早いため、ひたすら購買でパンを買って貢ぐ作業になりがちである。
    • もちろんデュエルで勝つことで好感度が上がりやすくなる上に、なおかつ好物の範囲が非常に狭いカイザーはその方法を取ろうにも難しい場合があるので、パンを貢ぐだけではない。
  • パートナーごとのイベントもデュエリスト1のキャラしか用意されておらず、その内容も特定の好感度になったら、会話のみのイベントがあるのみ*3
    後の作品に比べてあっさりとした感はある。
    • イベント発生のタイミング自体も好感度が溜まり次第発生するのではなく、溜まった場所からそのキャラが時間帯による移動をしたあとに話しかけることで発生する。
      キャラの行動が完全に決まっているこの作品の仕様のせいで発生する場所には似合わないイベントも発生しがち。
    • ただし内容は他愛のない挨拶から、原作ネタを盛り込んだ会話までバリエーション自体には富んでいる。
    • なお、キャラの好感度のたまり具合は自室のパソコンで見るか好感度が上がるタイミングのでSEで判断するしか無く、確認の面で不便。

問題点

  • デュエル時にフィールド上のカードを選択する場合、必ず自分のカードにカーソルが合っている。
    • 例えば、フィールド上のカードを1枚破壊する効果を発動した時に初期状態では必ず自分のカードが選択されている。このため誤って自分のカードを破壊してしまう凡ミスが多発する。殆どの場合破壊したいのは相手のカードであるため、わざわざ移動する必要がありテンポが悪い。
    • 次回作以降では相手フィールドから優先される様に改善された。
  • AIの思考ルーチンがまだまだ未熟。旧世代機の酷さに比べれば相当の改善がなされてはいるものの、素直に評価できる領域ではない。
    • 敵味方問わずなので、CPUのプレイングがひどく敗因に繋がることもある。これを理由に「1vs3のデュエル」と揶揄されることも。
      • 十代に合わせてHEROデッキを組むと切り札*4がいないことから事故を起こしやすく、カイザーは《サイバー・ドラゴン》をアドバンス召喚しない、攻撃出来ないタイミングで《パワー・ボンド》を使うなど、問題あり。
    • この問題が顕著に出るのが、開始直後にパートナーから手番が回る場合。CPUのデッキも構成だけはしっかりしているので、カード周りはいいものの、悪手を打ち続け壊滅状態からこっちにパスされることもしばしば。
  • 無論OCGそのもののルールが複雑で、公式裁定やエラッタが頻発する環境上CPUの思考に全てを組み込み最適解を導き出すというのは不可能な話ではあるが、自身の初期デッキすらまともに回せないキャラがそれなりに存在してしまうのは問題点として挙げられる。
    • デュエリスト1のキャラでも明暗が分かれる。デッキが弱いがプレイングに問題が出にくい丸藤翔と明日香はまだいいかもしれないが、堅実に強いのが万丈目と三沢の二人だけというのは問題がある。よりにもよって十代はHEROデッキの軸が未収録、ルーチンに問題を抱えているのか融合も満足にしないなど、はっきりいって弱い。
    • パートナーのデッキをイジることが出来ないため、構築でフォローするというのが難しく、こちらの負担もかなり多い。
  • 膨大な収録内容の為、ロードは長め。マップ移動とデュエル開始時、デッキ編集を開始するまで、編集を完了してメニューに戻るまでが目に見えて長い。
    • デュエル中のロードは上記に比べればほとんど存在しないのが救いか。とはいえ、フィールドのカードの枚数が多くなるとCPUの思考時間がどんどん伸びていく。
  • 《禁止令》《マインドクラッシュ》など、カード名を宣言する時は何千枚とある全カード一覧の中から宣言したいカードを探す必要がある。
    • 一応頭文字毎で括られてはいるが、それならば最初からデッキ構築画面を流用するなりして手間を省いてほしい所。
  • ゲームの初期制限構成が古い。
    • ギャップが1年差、その間に2回の改訂があり*5、当時の実際のOCG環境との間で使用可能・不可能カードの差が大きい。一応制限改訂を変更することも出来るが、CPUのデッキは変更がないため制限を破ってくる。
      • 1年ギャップの理由は製作開始時点の都合と考えられる。左証にあたるかどうかはさておき、06/03/01に制限から禁止カード入りした《強欲な壺》*6のためのボイスがある。
  • パックのまとめ買いが出来ない。○を押し続けるか連打して購入しよう。
  • 後の作品に比べ、ストーリーモードが味気ない。
    • 第一部は三ヶ月間の学園生活の中でタッグパートナーを見つけるという物だが、基本的にイベントが多くなく、3回あるテスト、原作における「ノース校交流試合編」に関するイベント、一部キャラの開放にまつわるサブイベントがあるのみ。
      • 日曜日以外は毎日定刻に授業があるが、チュートリアルも兼ねた最初の数回以外はランダムな短い会話シーンがあるだけ。その数も少なく10回も出れば既視のものが出てくる程。チュートリアル回では授業後にカードが貰えるが、それ以降は出席するメリットは全く無い。というか1度も出席しなくても何ら不利益も無ければそれ専用のイベントなどもない。
      • 3度ある定期テストは高得点を出そうともクロノス先生から褒めてもらえるだけで特典があるわけではない。やはり攻略するメリットが無くサボることにもデメリットがない。そもそも問題が全く同じなので2周目は何も楽しくない。
      • 「ノース校交流試合」にまつわるイベントはNPC同士の特定のAIに沿った決まったパターンのデュエルを観戦できるのみであり、主人公が関わることによるIF要素などはない。すべて見る必要も無く、これでもサボる事ができてしまう。*7
      • キャラの開放も、1周目ではデュエリスト1に属するメインキャラしかパートナーに出来ないため、2周目以降でなければ実質意味をなさず、パートナーにする条件も特定のアイテムを入手して渡すだけで解決できてしまうパターンしかなく、非常に味気ない。
      • パートナーの好感度が上がりやすくなる日曜日のタッグデュエル大会もあるが、大会中はセーブが出来ない上に好感度を上げるためには日常的にパンをあげたり、デュエルをしている方が効率がいいため、参加するメリットが薄い。
        そもそも、日曜日でパートナーになるキャラはその時点でもっとも好感度が高いキャラになり、しかも全員が同じ好感度だと特定のキャラが優先されてしまう。つまり最終的には既に攻略済みパートナーしか出なくなってしまうので好感度稼ぎには使えないのである。
      • よって目的のキャラのパートナー条件を満たしてしまうと、基本的にやることがなくなってしまいがちである。
        日にちを飛ばすこと手段がベッドで寝るしか無いため、大会までの時間を寝て過ごしたコナミ君も多いだろう。
        なお、2周目以降はベッドで大会前日までスキップできる項目が追加される。確かに便利なのだが裏を返せば90日以上もある第一部の中身がそれだけ薄いということでもある。
    • 第二部はこのゲームのメインとなるタッグフォース大会であるが、はっきり言って作業である。
      • 内容はパートナーと共にタッグフォースメダル*8を賭けてタッグデュエルをしてというものなのだが、最初の手持ちが10枚なのにたいして、ストーリーを進めるために必要な枚数は90枚以上。
        一回のデュエルで得られるメダルの枚数は5枚が上限なので、単純計算で最低16戦もする必要がある。
        実際には5枚持ちのデュエリストが16人以上出てくることはほぼ無いので、もっと回数が増える。
      • 大会開始時に対戦相手に入手枚数がランダムで割り振られ、クリアするまで固定という仕様のため、多少の目安はあるものの片っ端からデュエルを申し込んで効率のいい相手を探し出す作業から始まることになる。
        教師やブルー生徒などの強い相手だから多くもらえるという法則があるわけでもないため、デュエルを申し込まないと入手枚数がわからないのである*9
      • 当然相手もタッグを組んでいるのだが、なぜか話しかける相手によって入手枚数が異なるパターンしか無い*10
      • タッグパートナーによるストーリーの変化もほぼなく、パートナー以外のセリフに至っては使い回しのため、女性キャラを連れて決勝戦に挑んでも決勝戦の相手からは「決勝なのにムサイ面子、華がない」、作中(設定上)最強クラスのパートナーを連れていても「楽勝」などという珍言が飛び出すことになり、かなりの違和感がある。
      • 優勝するたびに賞金がもらえるということもないので、第二部をクリアしたパートナーで第三部にいけるというフラグでしか無いのである。
    • 第三部はセブンスターズと戦うシナリオなのだが、セブンスターズのパートナーになるメインキャラは揃いも揃ってセブンスターズに洗脳されているという設定のため、夢の共闘とはいい難いシチュエーションとなっている。
      • パートナーによって一部キャラとの対戦がカットされるわけなのだが、明日香がパートナーの場合ダークネスと戦えないのは詳細は省くがストーリー的にかなりの問題がある。
        それ以外の面を考慮しても、最初に組めるデュエリスト1のうち隼人以外のキャラをパートナーにしているとセブンスターズ全員と戦えないのは不満が残る仕様である。
      • ラスボスは非常に事故率の高いデッキの上にAIがまともに使いこなせないため非常に弱く、ここまで来たプレイヤーならまず負けることはない。
      • こちらもパートナーによって展開が異なるなどの要素はない。
    • 結局のところパートナーに出来るキャラ自体は100人以上いるものの差異は僅かな部分しかなく、上述の作業感が一層際立ってしまう形となっている。
  • 好感度をかなり上昇させるドローパンである黄金のタマゴパンの入手が他のシリーズに比べてルーレットがかなり早く、目押しが難しい。
    一応、ある程度の法則はあるものの、目押しが苦手なプレイヤーでは判断しづらい。
    本作においては入手することで出現するパックや、とある人気キャラをパートナーにするために必要なアイテムであるため、重要性がかなり高い。
  • シリーズ恒例となる切り札級モンスターの3Dムービーが用意されているのだが今作では特定のキャラが召喚、攻撃を行わないとそのムービーを見ることができない。上記のAIの頭の悪さや、そもそもデッキに投入されていないということもありえるため、確実に見れるわけではないという仕様になっている。
    • ムービー化しているモンスターは「当時」としてはほとんど納得のいく面子であるが、なぜか《E・HERO ランパートガンナー》がチョイスされている。
      確かに主人公である遊城十代が使用したカードではあるものの、性能的にはかなり弱い部類に入るカードであり、アニメで活躍したわけでもないこのカードのムービーが存在しているのかは謎である。
  • 公式的にはネット対戦不可。
    • アドホック・パーティなどを使用すれば出来ないわけではないのだが、公式的に場が用意されているわけではない。

総評

シリーズ処女作だけにかなりの問題はあるものの、それまでの遊戯王OCGを題材としたゲームと比べると非常に良い出来に仕上がっており、「遊戯王ゲーム=クソゲー」を根本的に覆した革命的な作品だと言える。アニメのキャラゲーとTCGが超融合を果たした良シリーズの第一歩としてはかなりの出来である。
本作における問題点の多くは後のシリーズで改善されていき、単なるデュエルシミュレーションツールに留まらずキャラゲーとしても一級品の長寿作となっていくことになる。
一方でAIはまだまだこれからで雛形のものが搭載されている状態。パートナーの思考がデッキと噛み合わず酷い場合、こちらがアシストに回る形でプレイングせざるをえないのが難点。こちらに関しては以降のシリーズでも(というか遊戯王のゲーム作品に全般において)長らくの課題となっており、複雑な思考を必要とするカードゲームのプレイングをAIに落とし込む難しさを痛感させられる。


余談

  • 下記の通り、本作をPS2に移植した『遊☆戯☆王デュエルモンスターズGX TAG FORCE EVOLUTION』も発売されている。
  • 本作の同梱カードはゲーム付属にしては珍しくアニメには登場していないOCGオリジナルの「幻獣」というシリーズのカードとなっているのだが、この「幻獣」シリーズはアニメに登場していたが未OCGとなっている「白騎士(ホワイトナイツ)」シリーズと似たような効果を持っている。
    この縁からか、アニメで「白騎士」シリーズを使ったキャラが次作「TF2」にてこの「幻獣」シリーズを使うことがある。

遊☆戯☆王デュエルモンスターズGX TAG FORCE EVOLUTION

【ゆうぎおうでゅえるもんすたーずじーえっくす たっぐふぉーすえう゛ぉりゅーしょん】

ジャンル 対戦型カードゲーム
対応機種 プレイステーション2
発売元 コナミデジタルエンタテインメント
発売日 2007年12月6日
価格 6,980円(税別)
判定 劣化ゲー
ポイント 携帯機から据え置き機への劣化移植という珍品
ボイス撤廃、処理落ち増と踏んだり蹴ったり
カード追加も手抜きで、バランス崩壊の原因にも
劣化点の告知は一切なし
遊☆戯☆王 関連作品リンク

概要(EV)

上記、PSPソフト『遊☆戯☆王デュエルモンスターズGX TAG FORCE』のPS2移植作である。
PS2でこれ以前に2作発売された遊戯王ゲームはOCGとはルールの全く異なる別のゲームで、本作がPS2で初のOCGルールに対応した遊戯王のカードゲームソフトであった。
ディスク容量が多く、処理性能もおおむね上回る据え置き機への移植ということで、新規カードや演出・システム面など、様々な強化が期待されていた。
また、当時は『モンスターハンターポータブル 2nd G』による空前のモンハンブームが起こる前で、PSPの普及率はそこまで高くはなかった。
そのため、たとえ追加要素がなくPS2で同じものが遊べるというだけでも一定の需要があったと思われる。
しかし…

追加・変更点

  • 収録カードの増加
    • 使用できるカードの収録総数は『TAG FORCE』では「アニメオリジナルカード(未OCG化)」20種を含む2448種類だったが、このゲームでは続編『TAG FORCE2』で追加されたものを合わせ2889種類に増加した。
      • 要するに、全体の体裁は『1』、カードの収録内容は『2』に準じた移植作といえる。
  • TF2との連動
    • PSPで発売された『遊☆戯☆王デュエルモンスターズGX タッグフォース2』とのUSBコネクトによる連動要素に対応し一部キャラクターが使用可能となる。
  • 同梱の限定カード3種は新カードに変更。
  • OP主題歌及びキャラクターボイスの削除
    • 主題歌はおそらく歌っていたグループの解散と権利関係によるもの。

問題点(EV)

  • 最大の問題点は、オリジナル版にあったキャラクターボイスが全削除されたことである。
    • モーション等は変わっていないので、キャラクター達は虚しく口パクするばかり。
    • 本シリーズにおいて、デュエル中はターンが回ったりモンスターを召喚したりとあらゆる場面でキャラクターがしゃべるため、そこのボイスが切られたというのは致命的。
      • そもそもPS2時代の単体のソフトとしても、アニメ原作のゲームでありながらボイスなしなどというのは何らかの理由でもなければ問題外である。
    • 一応、字幕はPSP版と同じものが付いているが、喋らなければデュエリストの演出の魅力も大幅ダウンである。
    • 先に述べた通りPS2は多くの点でPSPのスペックを上回っており、PSP→PS2の移植でボイスが切られるなどということは普通あり得ない。
      なぜこんなことになったのかというと、アメリカ・イギリス・ドイツといった他国と共に同時発売されたためという説が有力である。
      • 各他言語版にもボイスはない。要するに全言語に対応させるためにボイスのないバージョンを作った後、その後日本語版のボイスを追加する作業をしなかったのだろう。
  • アニメ2期のオープニングテーマであり、移植前のオリジナル版でもオープニングムービーに使われていた歌『99%』が、別の曲に差し替えられている。
    • PSPの本シリーズでも『2』以降はアニメBGMが使われなくなったので、恐らく版権がらみだろう。
  • 追加カードのバランス未調整
    • 『2』のカードが収録されているのに、適用される禁止・制限カード*11は『1』の時点である2005/09/01のままというバランス崩壊っぷり。
      • このゲームが発売された時点では2007/09/01の改訂が最新。『2』での禁止・制限カードは2007/03/01改訂のもの。普通ならば、本作ではこのどちらかを採用するのが妥当だろう。
      • PSP版であれば通信を通して新しい改訂をダウンロードできるサービスがあるが、本作はPS2なのでそれもできない。
    • この改訂後に追加されたカードが大量に存在するため、《ダンディライオン》《(裁定変更前の)森の番人グリーン・バブーン》《未来融合-フューチャー・フュージョン》《E・HERO エアーマン》《冥府の使者ゴーズ》《N・グラン・モール》等の強力カードが3枚(フル投入)積めてしまうという無法地帯っぷり。
    • 言い換えれば、移植されることで追加された400枚以上のカード(実際のOCGで2年分)に対するバランス調整が一切行われていない
      • カードゲームによくある、新カードの登場に付随して強化されたカードも放置されてしまっているため、ゲームバランスが崩壊している。
      • またこの2005/09/01というのは「このカードが入ってないデッキはデッキではない」とまで言わしめた《強欲な壺》が禁止になる前の制限改訂であり、なんとほぼ全キャラクターが使用し、それぞれが専用の台詞を持つカード*12なのである。そのため《強欲な壺》を禁止にしないために2005/09/01の制限改訂にされたのでは? とまで言われている。
      • だが、それはボイスが付いているPSP版なら分かる話であり、ボイスが付いていない今作では単なる手抜きである。
    • もっとも、下記のようにCPUは新規追加されたカードを使ってこないし、こちらは資金に余裕が出てくるころでなければ新規追加されたカードを手に入れられない。
      • 対人戦もできないので、バランス崩壊するのは既にカードをだいぶ集め終わった後の対CPU戦ぐらいであり、実際はそこまで影響がある訳ではない。
  • カードが大幅に増えたにもかかわらず、対戦相手の使うカードは移植前と何も変わっていない。
    • これが上記の制限リスト未改定の根拠だろう。
  • 400枚以上の追加カードは「チェッカー・フラッグ」というほぼ全カードを収録したパックのみの収録で、専用のパックは用意されていない。
    • そのため、欲しいカードがあるなら3000枚近くの膨大な収録カードから引き当てないといけない。
    • 一応封入率操作がされており所持枚数の少ないカードが出やすくなっているが、枚数が枚数のため欲しいカードを狙って引き当てるのはかなり困難。
    • デッキに入れられる最大枚数である3枚を入手したい場合は、更に困難な作業となる。
    • 「チェッカー・フラッグ」の出現の遅さもあって、新規追加されたカードの入手はどうしても遅くならざるを得ず、はっきり言ってカードの新規追加の意味を削いでいる
    • 一応パスワードを利用すれば入手可能。
  • 『2』では発売時期の関係で「GLADIATOR'S ASSAULT」というパックのカードが一部しか収録されなかったのだが、本作でもこれが補完されていない。
    • 上と合わせて、単に『2』から収録カードをそのまま持ってきただけ、という手抜き仕事が否が応にも目に留まってしまう。
  • 画質や音質の向上は一切なし。単にPSP版の画面を引きのばしただけであると見られる。
    • 画面が広がり画面比率が変わった関係上粗もやや目立ち、はっきり言ってPS2品質としては若干見劣りする。
  • PSP版にはなかった、かなり気になるレベルの処理落ちが存在し、PSP版における微妙なロードの長さも改善されていない。
    • マップに人が増えてきたり、デュエル中にフィールド魔法を使って背景CGが表示されたりすると明らかに重くなる。
    • 上記の制限改訂などの問題も目立つが、実際遊んでいてキャラクターボイスの次に問題となってくるのはこの部分だろう。
  • パートナーのデッキ編集やカードアルバムの拡大機能など、『2』でシステム上追加・改善された点は何も反映されていない
    • これだけのやっつけ移植にかかわらず、パートナーの好感度を上げることができる「ドローパン」を購入する際のルーレットだけが何故か『2』仕様である。
  • 完全に1人プレイ専用で、メモリーカードを持ち寄ってもPSP版でできた対戦・協力プレイは一切できない。
    • 画面が1つしかない関係上、(相手の手札が見えてしまうので)対戦プレイは不可能なのはしょうがないが、協力しての2人プレイぐらいはできてもいいはずである。
    • これも主にハード上の関係ではあるが、ネットを使った対戦もできない。
  • これらの点はどれも公式ページ等で告知されていないため、買ってみるまでわからなかった。
    • 移植作品で告知もなく重要な項目の削除は詐欺と言われても仕方ないレベル。

総評(EV)

据え置き機から携帯機への劣化移植はよくあるが、その逆をやってのけたという珍しい作品である。
ボイス撤廃を筆頭に、ロードや処理落ちの悪化、バランス調整の悪化、2人プレイの撤廃……これだけの劣化が、明らかに単に移植で手を抜いた結果だというのも虚しい。
これらの点を我慢すれば、元のゲームの出来は良いので遊べないことはない。
だが、PSPを持っておらず、どうしてもPS2で遊戯王のOCGのゲームをやりたいとしても購入をあまりお勧めはできないレベルである。


余談(EV)

  • エンディングを見ると、ディレクター以下は明らかに中国人と思しき「李」「洪」「王」などの漢字2~3文字の名前が並んでいる。
    • その後「オリジナルスタッフ」と続いて日本人のスタッフが紹介されており、中国のスタッフが移植を担当したと推測できる。開発企業はスタッフロールからは読み取れない。
    • 必ずしもこういった下請け自体を否定するべきとまでは言えないが、この出来の原因が劣悪な中国企業への外注にもあった可能性は高いだろう。
  • 本作には付属カードが3枚同梱されているが、その1枚である《堕天使ナース-レフィキュル》が遊戯王で【シモッチバーン】と呼ばれるデッキのほぼ必須カード。
    その後の再録もされていないため割と高値で取引されており、2014年現在カード無しのこのゲームの中古価格を完全に上回ってしまっている。
    • こうなってしまうと、やはりこのゲームはカードのおまけとしか言いようが無い。
  • 一応、PSP版の『2』とUSBケーブルによって連動するという機能が備わっている。
    こちら側にはDPとフリーデュエルで対戦できるキャラが増えるがDPはともかく対戦可能になるキャラは『2』でも対戦できるキャラとレシピである。『TF2』側は一部キャラにグラフィックとセリフが追加される。これに価値を感じるかは人次第か。
    『2』のゲーム内容をコンプリートしたい場合はそのためだけに中古を探すのも悪くないが、それにしても『3』以降とは連動が無くなっているため微妙。
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最終更新:2022年05月22日 12:33

*1 現在は連動サイトの消滅により入手不可

*2 購買で売られているパンで中身がランダムという変わったパン。劇中のキャラはこれでドロー運を試しており、メザシパンなどがある

*3 明日香のパートナー確定イベントのみデュエル&専用スチルがある。ただし専用スチルはエンディングのそれの使いまわし

*4 何故か放送当時のHEROデッキの切り札であり、原作でも活躍していた《E・HERO シャイニング・フレア・ウィングマン》がデッキに入っていないパターンが多い。無論普通に収録されている上に本作ではムービーが存在する

*5 06/03/01と、06/09/01に改訂があった

*6 リスク無しにデッキから2枚ドローする強力カード。どんなデッキでも入れない理由がない

*7 一応パターンが複数あるものの、勝敗自体が変わらない

*8 ちなみにデザインは原作第二期で行われたジェネックス大会に使われたメダルとほぼ同一デザインである

*9 申し込んで入手枚数を聞いてから断ることもできる

*10 Aに話しかけてデュエルした場合は二枚、Bに話しかけてデュエルした場合は5枚等

*11 強力すぎてバランスを乱しているカードに課せられる、公式大会などにおけるデッキ内採用枚数の制限。当時は半年に一度、3月と9月に改訂されていた。

*12 基本的に専用台詞はアニメキャラがアニメで使用したカード、または自分のデッキに深い関係があるカードのみ