相撲ファイター 東海道場所
【すもうふぁいたー とうかいどうばしょ】
ジャンル
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アクション
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対応機種
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ゲームボーイ
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発売元
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アイマックス
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開発元
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キッド
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発売日
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1991年4月26日
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定価
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3,500円(税別)
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判定
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バカゲー
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ポイント
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普通に遊べる佳作 力士にあらず、相撲ファイター也
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概要
主人公の力士・凡太郎、通称・凡ちゃんが悪代官にさらわれた許婚かよちゃんを救うべく戦うサイドビューのアクションゲーム。
江戸時代の日本を舞台にしたオーソドックスなアクションゲーム、と思いきや、どこか間違った日本的な要素がちらほら窺えるシュールなバカゲーとなっている。
ストーリー
時は、江戸末期、ところは江戸の下町両国。ここに幸福の絶頂にあるひとりの男がいました。
彼は大相撲本場所で土つかずの優勝を決めるとともに幼なじみの「かよちゃん」との結婚を間近に控えていたのでした。
ところが、連続優勝へ向けて稽古に励む彼のもとに舞い込んだ一通の書状…!?
「かよちゃんは預かった。返してほしくば京都まできなさい。」
差出人は、老舗めがね問屋眼鏡屋半兵衛。
これは眼鏡屋半兵衛と悪代官が手を結び、大相撲の転覆を狙う悪巧でした。1番人気の彼がいなくなれば、今度の京都場所は大混乱!
いいなづけの大ピンチに、彼は褌一丁で長屋を飛び出し、一路東海道を京へと向かうのでした。
しかし行く手には、悪代官の手下の謎の格闘技軍団が次から次へと立ちふさがってきます。
頼りは、己の鍛え上げた肉体のみ。果たして彼の運命は! そして、かよちゃんを無事に取り戻すことができるでしょうか
(説明書より)
ゲーム概要
全5ステージ×3エリアの全15面構成。エリアをクリアするごとに6ケタの数字でパスワードが表示され、パスワードコンティニューによる継続プレイが可能。
敵を倒したり、ステージ上の障害物を破壊するとアイテムが出現する場合もある。
また、本作ではキャラ育成的な要素もあり、経験値を一定値まで溜めると、スタートボタンを押すと出るパラメーター画面にて「張り手」「四股」「ライフ」のいずれかを強化できる。いずれも5段階まで強化可能。
特定の場所には鳥居があり、入ると腕相撲、紙相撲、指相撲のいずれかのミニゲームが発生し、成功すると経験値をたくさんもらえる。いずれのゲームも左右に動くメーターをタイミング良く中央で止めていく仕様になっている。成功するにつれて得られる経験値も大きくなっていくが、同時にメーターの動きも速くなっていく。
操作方法
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十字ボタン+2ボタン(攻撃、ジャンプ)
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十字ボタン2度押し(2度目は押しっぱなし)でダッシュとなり、ダッシュ中にAボタンでダッシュジャンプ、Bボタンでぶちかまし攻撃が出る。
十字ボタン下+Aボタンで四股を踏み、地響きによって画面中の敵にダメージを与える。
アイテム
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団子、チャンコ
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団子はライフが1マス、チャンコ鍋は最大値まで回復する。
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米俵
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取ると十字ボタン上+Bボタンで飛び道具であるスーパー張り手が3回使えるようになる。最大12回まで蓄積可能。
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化粧回し
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四股で1度だけ画面上の敵を全滅出来るようになる。スーパー張り手との併用は不可。
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ドクロ
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スコアアイテムで高得点が獲得できるのと引き換えに、蓄積していた経験値がゼロになってしまう。
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手形
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ステージの最後にあったり、ボスを倒すと出てくる。取るとステージクリア。
おバカな点
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まずストーリーからしてツッコミどころ満載である。
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眼鏡問屋が角界転覆のために悪代官と結託し、名うての力士の凡太郎を誘い出すべく彼の許婚をさらったという流れなのだが、だいたい眼鏡問屋が角界を転覆させたところでなんの得があるというのか。
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また、グラフィック上ではまわし一丁の相撲スタイルに見えるが、説明書上ではなぜか「ふんどし一丁」と書かれている。
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このゲームには日本語の表記は基本的に出てこない。日本(それも江戸時代)が舞台であるにもかかわらずである。
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スタート時のデモで、かよちゃんが悪代官にさらわれ、それを凡太郎が追うのだが、その時のセリフは「HELP HELP」「WAIT!」
鳥居に入ってミニゲームを選択する場面では、3つの大入袋の中から1つ選ぶのだが、必ず1つ混じっているスカを引いた時の表示は「OH MY GOD!」
エンディング時のかよちゃんのセリフは「THANK YOU BONCHAN!」である。
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一昔前のゲームであればメッセージ表記が英文なのは珍しいことではないが…。
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出現するザコ敵は、リアル調のものと、デフォルメ調のものが混在している。
「なんでこんな奴らが凡太郎を襲うんだ?」と言いたくなるような奴らばかりだが、これでも「悪代官配下の謎の格闘技集団」らしい。
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リアル調の敵キャラは、飛脚、武士、木枯らし紋次郎。
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デフォルメ調の敵キャラは、大工、小さな力士人形、米俵らしきものを投げてくるノッポ、2頭身のバカ殿、ウサギ型の弾を飛ばしてくるタヌキの着ぐるみ、画面左方向を指さしているジジイ、唐傘オバケ、ロクロ首。
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1面のボスは「北斗の拳」の主人公「ケンシロウ」に似ている。
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パッケージ絵の凡太郎をよくよく見ると、相撲取りにもかかわらずかなりの筋肉質でマッチョな体つきである。
ただの力士でなくて相撲ファイターだからなのだろうか。
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そんな様を示すかのように、ステージをクリアする度に凡太郎がいちいちボディビルダーのようなポージングを取る。
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発売告知ポスターの作品解説では「旅情誘う東海道の風景をバックに炸裂する力士の豪快な技! 筋肉モリモリの肉体美!!」など謳ったりしている。
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更に、敵に張り手を食らわすと動きを止めた挙句、まるで脳震盪を起こしたかのようガクガク震えだす。この状態でトドメを刺すとフィニッシュ技は必ず上手投げとなり、画面斜め上方に敵をぶん投げる。
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アクションゲームとはいえ、相撲取りとは思えないすごいジャンプ力でまわし一丁の力士が軽快に飛び跳ねる様も実にシュール。
さすが鍛え上げた肉体を持つ相撲ファイターである。
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スーパー張り手は、文字通り、張り手を出すと同時に「手の形をした波動(?)を飛ばす」飛び道具。
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前述のように、ミニゲームの種類は「紙相撲」「腕相撲」「指相撲」。
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テーマの「相撲」にちなんでのことなのは想像に難くはないが、なぜ普通に相撲を取らせてくれないのだろうか。
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更に、「紙相撲」「指相撲」の相手役は忍者だが、「腕相撲」の相手役はなぜか辮髪の中国人らしき釣り目の男である。
評価点
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「これ相撲である必要あるのか?」と思ってしまう要素もあるにはあるが、とりあえず主人公が力士という点はきちんとゲーム内容に活かされている。
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ストーリー含めどこか間違った感のあるシュールな世界観
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全うな世界観描写でもよかったであろうが、これはこれで印象的で味もある。
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グラフィックの書き込みも優れており、舞台である日本の雰囲気はよく出ている。和風情緒感溢れるBGMのカッコよさも相まって東海道の旅という設定ならではの旅情感もよく表れている。
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BGMは数こそ少ないがなかなかの良曲揃い。
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世界観や演出こそお馬鹿だが、曲は極めて全うかつ硬派な純和風テイストであり、和風情緒に溢れていてカッコいい。
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作曲者はファミコン版『サマーカーニバル'92 烈火』を担当した塩田信之氏。
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ゲームの難易度は簡単すぎず難しすぎない良好なバランスをキープしており、きっちり経験値を稼いでいけばクリア出来る。
問題点
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「四股」のパラメーターはほとんど上げる意味が無い。硬直が長すぎて使いづらく、3面ボスの攻略にあたってはどうしても必要な場面があるが、その場合でも初期値で十分だからである。
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後半になるにつれ敵の耐久力が上がり、「張り手」を強化していないと破壊できない障害物も出てくる。「ライフ」と併せ、メインの攻撃手段となる「張り手」を強化しておかないと後半は辛い。
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上方向にジャンプして進むステージもあるが、画面スクロールによる足場の消え方がシビア。
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1度スクロールしてしまうとそのまま下方向へスクロールが戻らないため、うっかり大ジャンプしてしまうと一気に画面がスクロールしてしまい、乗る足場が消えてしまって転落死という事態が起き易い。
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ミニゲームのルールがどれも同じ
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どれもゲージを目押しで止めるだけなので、三種類に分ける意味がない。ルールの差別化くらいはして欲しかったところ。
総評
日本を勘違いしている外国人が作ったような、どこかシュールな雰囲気漂うゲームである。
作風的には純然たるバカゲーと言えるが、ゲーム自体の作りはきちんとしていて普通に遊べる出来であり、決してクソゲーではない。
ゲームボーイ初期の作品で定価3,500円でこの出来なら十分、及第点と言えよう。相撲ファイターの勇士を拝みたい人は、ぜひ。
余談
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本作は海外でも「SUMO FIGHTER」のタイトルでリリースされている。
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パッケージ絵における国外と海外でのギャップと温度差はつきものだったりするが、海外版のパッケージは「富士山をバックに崖際にたたずむ力士」という意外にも平凡な構図で、絵面的に奇抜なアレンジが施されていて何か間違っている……といったこともない。
ただ、画風や構図自体がやたらシュールな雰囲気に包まれているのは、やはり海外ゆえだろうか。
最終更新:2021年01月10日 02:22