プリルラ

【ぷりるら】

ジャンル ベルトスクロールアクションゲーム


対応機種 アーケード(F2システム)
発売・開発元 タイトー
稼動開始日 1991年
判定 バカゲー
ポイント パステルカラーのファンシーなゲームと思いきや…
病的、狂気的な演出だらけの中盤以降
メルたん萌え
メルヘンというよりむしろメンヘル


概要

時間の流れを守っていた時計のネジが悪いやつに奪われた!?
「ザック」と「メル」がおじいさんから託された魔法の杖を使い、全6面の攻略を目指すベルトスクロールアクションゲーム。


ゲーム内容

  • ベルトアクションにありがちなバイオレンスやリアルとは相反する、ファンシーさやメルヘンを題材にし、このジャンルでは珍しい空気を持つ。
    • 敵キャラは、悪いやつに魔物に変えられた動物や人間であり、彼らを魔法の杖で元の姿に戻しながら先に進んでいく。
    • 元の姿に戻した動物に触れるとスコアボーナスが加算される*1
  • システムはシンプル。複数を巻き込める当たり判定の大きいロッドアタックとジャンプの操作に、使用回数制限がある計7種類のミラクルマジック(いわゆるメガクラッシュ)がある。*2

評価点

  • グラフィックは一部を除けば美麗で、序盤ステージはパステルカラーで描かれている。
    • キャラクターの影もそれぞれしっかり表現されている。見た目だけではなく、縦軸合わせが重要になるゲームでは攻略上でも重要な要素。また2面では地面が水晶のような素材でできているので、影ではなくキャラクターの鏡像が写る。
  • キャラパターンがとても多く、キャラクターは生き生きと動きまわる。
  • 効果音やBGMも秀逸。基本的にはノリのいい曲が多い。またシーンごとの雰囲気作りを助けるのに曲数やバリエーションも豊富。何とマジック発動時専用の曲まで複数用意されている。尚、後述の経緯から基板上には未使用曲のデータも数曲ほど存在している。
    • BGMは海野和子氏と渡部恭久氏の両名が担当している(メイン担当は海野氏)。
  • 難易度は基本的には高くなく、初心者にも安心して楽しめるバランスになっている。
    • ただしノーコンティニュークリアを目指そうとすると実はかなり難しい。中盤以降のボスが一筋縄ではいかない強さを持ち、攻略法を十分に知らないとダメージレースになりがちで、しかもゲーム性がシンプルすぎる故に、立ち回りの未熟な部分や単純なミスがあっても他の要素で切り抜けるといった事ができず、次第に追い込まれる状況になりやすい。

ここまでみると初心者向けの普通のゲームに見えるが、本作は「3面」の存在でそのバカゲーとしてのインパクトを絶大なものにしている。


妄想は爆発だ!?

序盤は見た目の通りのファンシーでメルヘンな流れで展開するが、2面ボスが「なにかいやな予感」を感じさせるイカれたデザインでバカゲーの片鱗を見せ始める。
そして、その2面ボスを撃破した後、本作最大の問題にして見どころである3面「誇大妄想家の町」に突入する。 内容は以下の通りである。

  • このステージ、なぜか実写画像(当時の社員によるもの)が使われている。
    • まずステージが始まると、地面に対して水平姿勢で棒につかまっている女(実写)が登場、なぜかくるくる回っている。そこに青髪のデカイ男の顔(もちろん実写、なぜか髪だけCG?)が現れるも、回ってる棒女に蹴り飛ばされ? 画面手前にすっ飛ばされて退場する。
      • この文だけでは恐らくよく伝わらないと思われるので、下記のプレイ動画を呼吸を整えてから見て欲しい。
    • 次は、奥に見える2つのゲートから突き出した、女性的な赤いタイツを履いた巨大な脚。その脚の間にも意味深なドアがあり、開けるとボーナスキャラの「ゾウさん」が出てくる。あまり深く考えないようにしたい
      • なお、そのドアを開けると宇宙が見える。地球も見える。上記同様にあまり深く考えないようにしたい。ちなみに海外版では見事に検閲に引っかかり脚がカットされている。
    • その次は、背景に横倒しのマリア様?の顔が張り付いていて、近づくと長い舌で舐められる。また、この辺りでトンボの様な敵の編隊が「とびます、とびます」と声付きでやってくる。プレイヤーの頭の方がとびそうである
    • その後は雑魚と戦いながら進むといよいよボス戦となるが、ここで出てくるのはステージの狂いっぷりからすると意外すぎる「ただの歌舞伎野郎」(目張入之助)である。畳敷きの部屋に毛振り獅子の衣装そのものも世界観的には十分おかしいのだが、ここまでの展開で頭が慣れていると、それすら「ネタ切れか」と思えてしまう不思議
    • そして激闘の末”目張入之助”を倒すと、町は元に戻り、誇大妄想家も目を覚ます。
      • それに対しての主人公の発言は「もう変な夢は見ないでね」。全くである。
+ 実際の動画:自己責任でご覧下さい

  • 次の砂漠ステージは案外普通な為、これで変なステージは終わり…と思いきや、その後の展開もまだまだイカれたステージやキャラクターのオンパレードである。以下詳細。
    • ステージ5…前のステージから打って変わって物語の設定に忠実な「時が止まった街」が舞台となるのだが、少し進むとステージの背景が大量のミイラで埋め尽くされている物に変化してしまう。どうしてこうなる。
      また、このステージから登場する雑魚敵の中には自らの鼻をほじって鼻糞を飛び道具として放ってくるという物も。正直言って汚いと言わざるを得ない。
      ボス戦に突入すると、街中のはずの光景がまた一変し、謎の未開民族風な情景に変化。ボス自体も半裸に仮面や装飾とペ○スケースを着けたシャーマンという制作者のセンスを疑わせるような奴が相手となる。
    • ボーナスステージ…ステージ5をクリアするとボーナスステージに突入するが、こちらも斜め上な内容であった。
      というのも、前ステージ突入時に引き起こした大雨が時間を戻した影響で大洪水となって押し寄せてくるが、その中で溺れながら敵を倒していくという、常人には理解しがたい全く新しい形式のボーナスステージである。
    • ステージ6…遂に敵の本拠地に突入といったところだが、まるでエッシャーの様な騙し絵っぽい奇妙な背景が印象的で「敵の本拠地に来た」とは言いがたい。まるで異世界に来たようである。ファンタジー?
      最後に待ち受けるラスボス「ジャックおこるそん」は「顔が地球儀でマントを付けた怪人」という、案外普通な見た目をしているため、ここで奇怪な世界と遂におさらば…といいたい所だが、ラスボスが攻撃を放つ毎に背景に大量の目玉がウヨウヨとギョロつく。正直言ってグロいと言わざるを得ない。
  • マジックも一癖ふた癖あり、「覆面にパンツ、透明なマント(食品用ラップ?)というおかしな出で立ちのラップマンを召喚、彼が次々に画面上の雑魚をラップにくるんで巨大な電子レンジに放り込み、チンして動物に変える」「謎の雄叫びで動物の大群を呼び、行進中に触れた敵にダメージ(このため移動が遅い動物の方が有効で、何故かたまに混じっているカタツムリが異様に強い)」「タイトーのとある没ゲーキャラのミカタ氏を召喚」などというものも。さらに2人同時プレイ時に双方のプレイヤーが同時にマジックボタンを押すと、カーニバル風の羽飾りをまとった謎の人物「ショックのパーの助」を呼び出し、「しょっくのパー」の掛け声とともに突如としてステージ切り替え画面に視点が変わり…そのマップ上で大爆発が起こる。
    • ショックのパーの助の大爆発は最終盤のボスにすら大ダメージを与え、それ以外なら全て一撃で倒すことができる。
    • マジックは上手く使えばほとんどの局面をワンボタンで打開してしまうという、演出だけではなく性能のほうも強烈なのだが、入手手段が極めて限られているため乱発できず、全体としてはゲームバランスを壊すほどではない。
  • こうした電波展開やハチャメチャさも「不思議の国のアリス」の様なシュール路線を目指したとすれば、ある意味メルヘンしていると言えるのかもしれない。
    メルヘンを目指すのに実写や下ネタが必要だったかは謎だが。

2Pキャラ「メル」

  • このゲームもう一つの見どころが、とにかく動くキャラクター、中でも2Pキャラ「メル」である。
    • 仕草の一つ一つが当時のゲームとしては驚異的に作りこまれており、とにかく動かすだけで可愛らしく楽しくなってくる。
    • それだけでなく実は性能面でもメルのほうが恵まれている。攻撃のリーチ・隙・当たり判定など、ザックよりも僅かながら優遇されている部分が多いのだ。これは小さいようでいて、攻略上で実に響いてくる。
    • マジックは2人とも共通で格差は無い…と思ったら広く知られている「一人しょっくのぱー」という、システムの隙を突いた裏技が利用できるのも2P側のみ。前述の通り凶悪な威力のマジックをソロプレイでも条件付きながら使えるので、これも攻略の助けになる。
      + 「一人しょっくのぱー」のやり方 1、アトラクトデモを1巡させる
      2、メル(2P側のキャラ)で1人プレイを始める
      3、予め使用したいステージで前もって1回魔法を使ったら、後はステージ内の使用可能なタイミングで1P側と2P側のマジックボタンを同時に押す

賛否両論点

  • キャラクターやステージのデザイン全般
    • ……まあ、上の紹介の通りである。
  • 雑魚敵が全体的に柔らかい。
    • 本作の雑魚敵のほとんどは攻撃を一発当てるだけで倒すことができ、ボス以外で複数回の攻撃が必要な相手は数えるほどしか居ない(実際に全ステージ合わせて両手の指で足りてしまう)。
    • ベルトスクロールアクションゲームに登場する雑魚は耐久力のある物が多く、本作の雑魚耐久力の低さはベルスク愛好家から異端として見られやすい。
    • とは言うものの、本作の雑魚は一発当てるだけで吹っ飛ばせる仕様になっているため、特有の柔らかさも相まって独特の爽快感を生んでいる。一概に批判に上がる物では無い。
    • また、耐久力が画一的であってもスピードや攻撃性能、当たり判定の大きさなどにそれぞれ特徴があり、攻撃を確実に当てようとすると相応の立ち回りや読みが必要な相手も多く「簡単に倒せるが、実際に倒すのは簡単ではない」といった事もよくある。

問題点

  • 制限時間が表示されず、かつ、制限時間に引っかかる状況が少なからずある
    • 攻略にあまり時間をかけすぎるといわゆる永久パターン防止キャラ*3が出てくるのだが、その制限時間がどこにも表示されない。またボス戦の途中でも普通に出現する上に、中盤以降のボスは動きの見極めが必要だったり、そもそも攻略手段を見つけるのに時間がかかる状況も多く、落ち着いて攻略したい局面に限って必要以上に難度が上がってしまうという状況はしばしば見られる。
    • ただし「ファイナルファイト」などに代表されるカプコン系ベルトスクロールとは違い、時間切れ=即時1ミスとはならないので、一応は対処の余地はあるが。
  • 攻撃アクションの種類が少ない
    • 本作のメイン攻撃となるロッドアクションはニュートラル、レバー前入れ、レバー下入れ、ジャンプ攻撃の4種類。これにマジックまで含めても基本的に攻撃は5種類しか存在しない。
    • ベルトスクロールアクションゲームは通常攻撃を組み合わせての連続技やつかみからの投げ、ステージに落ちている武器を拾うなど豊富な攻撃アクションが特徴的であるため*4本作における攻撃アクションの少なさに関して肯定的な評価はほとんど無い。本作キャラクターの様々な所作の細やかさを考えると尚更惜しい部分でもある。
  • アイテムの種類も非常に少ない。
    • 本作のアイテム類はステージ中に現れるカボチャを叩くと出現するが、アイテム自体の種類がライフ及びマジック回復の2種類の妖精しか存在しない。
    • ベルトスクロールアクションゲームといったらナイフや刀などの武器類や、ジュースから肉までの体力回復類といったアイテムの種類の豊富さも華ではあるが、それらに対して本作のアイテム種類の少なさは異常である。
    • スコアアイテムについては、敵を倒して元の姿に戻った動物がその役目を果たしている。

総評

アクションゲームとしてはとてもシンプルでプレイしやすい。軽快な操作、よく動くキャラクター達と魅力的な箇所は多い。が…電波あり下ネタありの中盤以降は本当に人によっては受け付けないので、とても万人にはお勧めできない、もどかしいゲームである。
シュールかつサイケデリックな作風のバカゲー好きならば、触ってみて損はない。……かも知れない。


余談

  • こんな内容なのでゲーセンでの出回りは悪く、現在では基版も非常に入手困難に近い。のちのタイメモ収録時も作品解説に「の名作」との文字がある始末であった。更に元々は一度開発中止でお蔵入りになりかけたものの、当時の上層部に直談判して正式に出るという経緯を経ている。
  • 元々、海外向けに作ったらしく、国内での展開は予定外だったらしい。
    • 当時のタイトーは海外展開に関してどのようなリサーチをしていたのだろうか? 実際、その海外版で上記の「脚」が検閲に引っかかっている訳で…
    • ちなみに、この時期のタイトーのアーケード作品は、ファンシーなキャラクターが主役のアクションゲームから、海外市場を意識した筋肉ムキムキのマッチョキャラクターが闊歩するハードなテイストのアクションゲームへと作品の主流が移り変わっていた時期でもあった。
    • 『奇々怪界』の制作・デザイナーである藪崎久也氏によれば、本作はそうした時勢の中で登場した、タイトーのファンシー路線ゲームの系譜に連なる最後の作品であったという。
  • 開発中のタイトルは『リリック』というタイトルだったが、BGMを手掛けた海野和子氏のアイデアにより『プリルラ』になった。
  • 本作でも使われている「F2システム」基板だが、開発メンバーの1人である加藤久和氏の話によると「プリルラで使われているものは回転用のサブボードが乗ってて、フルスペックに近いものだった*5。当時はこのサブボードを付けるとコストが嵩むため、付けていない作品も多い」旨を述べている*6
  • 後に発売した『バブルシンフォニー』では本作モチーフのステージが存在する。
    • そちらではザコが本作のモノになり、ステージボスとして本作のラスボスが登場する。もっとも、上記の演出の数々まではさすがに再現されてない。

移植

  • ビングによるFM TOWNS版、エクシングのPS/SS版『アーケードギアーズ』シリーズの一作、PS2版『タイトーメモリーズ上巻』に収録という形で移植されている。だが、元のアーケード版が恐ろしく出回りが少なかったので移植度が良いか悪いかの判断が極めて困難、という逸話が有る。

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最終更新:2023年09月13日 10:43

*1 この時に得られるスコアは「敵キャラが動物に戻った後、どのくらいの距離を移動してからプレイヤーが触れたか」によって上下する。そのため、移動してきた距離が長ければ長いほど高得点になる。

*2 尚、1つを除き「その時点でのスコアの10の位により発動するものが変化する」仕様となっている。

*3 上半身は法衣に観音帽子をかぶった骸骨の姿で両手にはボクサーグローブ、下半身は派手な模様の巨大な長靴という姿で、「即身ブーツ」というらしい。今更だがやっぱり色々おかしい。

*4 例示すると「ファイナルファイト」の主人公は通常連続攻撃、つかみ技、投げ技、ジャンプ攻撃2種、緊急回避、武器3種類(ナイフ動作2種類)と本作の倍はある

*5 こういったF2システム基板に追加機能が搭載されている同等のものとしては『キャメルトライ』、『メタルブラック』、『ハットトリックヒーロー』などが該当しており、海外では「F1システム」という別名称で呼ばれることがある。

*6 更に「実はF2基板には元々回転や拡大機能が無く、縮小しかないため、最大サイズのキャラを縮小して使うというテクニックを使っていた」ことも同様に述べている。

*7 理由としては主に出演した当時の社員の肖像権によるもの。