SIMPLE DSシリーズ Vol.25 THE 交渉人

【しんぷるでぃーえすしりーず ぼりゅーむにじゅうご ざ こうしょうにん】

ジャンル 交渉人体験アドベンチャー
対応機種 ニンテンドーDS
メディア 256MbitDSカード
発売元 D3パブリッシャー
開発元 アフェクト
発売日 2007年10月25日
定価 2,800円(税抜)
判定 なし
ポイント システムの大半がハリボテ
ボリュームも少なめ
シナリオは辛うじてマシ?
SIMPLE DSシリーズ


概要

映画・ドラマなどでも題材となっている*1「交渉人」をテーマにしたアドベンチャーゲーム。低価格ソフトシリーズ『SIMPLE DSシリーズ』のVol.25である。
プレイヤーは警察の交渉人となり、立てこもり犯や誘拐犯に向けて通信機器などを通して交渉や説得を行う。


ストーリー

主人公は新人交渉人・根越渉(ねごしわたる)。
ニューヨークでの交渉人研修から帰還した根越は、北町右京署の特殊捜査課交渉班に配属される。
根越に厳しくアドバイスをするチーフ・徳尾悠、勝気な性格のプロファイリング担当・花下リナらと共に、根越は事件を「誰の血も流さず」終わらせるため奔走する。


ゲーム内容

  • 開発元はアフェクトで、この手のアドベンチャーをSIMPLEでよく作るトムキャットシステムではないが、10話足らずの中編が纏められている全体的な構成はトムキャットの『THE 鑑識官』シリーズに割と似ている。
    • 全9話。最初の1話はオープニング、最後の1話は隠しシナリオとなっている。
  • 基本的にはアドベンチャーとして読み進めながら、要所要所で犯人との会話の返答を3択で決定する。
    • 返答によって犯人の態度がパラメータとして変わるだけでなく、いくつかの返答は事件の様相にも直接影響を与える。
      • 下画面左上に犯人の投降意思を示すゲージがあり、良い選択肢を選ぶとゲージが増えるようになっている。
    • 特定の場面では「情報SP」ボタンで事件の情報を確認したり、花下に事件に関連する物品を調査してもらうよう要請できる。
      • 情報SPコマンドでは、会話に出てきた単語を「重要単語」として3つまで登録できる。
      • 特定の単語を重要単語に予め登録しておくことで、会話に返答する際の選択肢に影響がある(と、ゲーム内では説明される)。
    • 選択肢のミスが累積したり重要な選択肢を間違えたりすると、犯人が狙撃班に撃ち殺されたり人質が殺されたりしてバッドエンド。
      • バッドエンド以外のエンディングも、選択肢によっていくつかに分岐する。明確なグッドエンドは各話1つずつ。
    • 無事ストーリーを終わらせた場合、選択肢のミス数や消費した時間などから各話ごとにランクが付けられる。
  • ストーリー開始時のトークや、ストーリー終了時の会話・決め台詞などでボイスが入る。
    • 主人公・根越役の石田彰氏を始めとして、杉田智和氏、茅原実里氏、小杉十郎太氏と人気・ベテラン声優揃い。
    • ただDSという媒体の都合もあるのだろうが、これだけの声優を使っているのにボイスの入るシーンが多くないのは少々勿体無い。
    • 発売時点で公式サイトに声優が記載されておらず、この声優陣に驚いたプレイヤーも見られた。
  • D3パブリッシャーの他ゲームからのゲストキャラも登場する。
    • SIMPLEシリーズおなじみ双葉理保をはじめ、定番教師キャラの水咲麗子、理保のマネージャーの響健太郎など。
      • 双葉理保最大の問題作、『THE 大美人』もイラストつきでネタにされている。「変な仕事ばかり」という自虐ネタは相変わらず。
    • ホストクラブを題材にしたD3の乙女ゲーム『ラスト・エスコート』のキャラクターがゲスト出演するシナリオもある。

評価点

  • 交渉人という緊張感のあるテーマ。シナリオや演出だけでなく、画面構成などからも雰囲気を出している。
    • 上画面右上には現在時刻のほか交渉のタイムリミット、現金の受け渡し時刻などが常時表示されてプレイヤーの緊迫感を煽る。
  • ストーリーの出来はそこそこ。メインキャラは少ない分一応の個性は出ていて、空気キャラはいない。
    • 要所で「交渉SP」ボタンを押すとチーフの徳尾からアドバイスが聞けるのだが、場面によって逐一用意されているためやたらパターンが豊富。
      • 真面目なアドバイスが多く長々と講釈を垂れる場合もあるが、たまにネタ会話もある。
      • 声優関連の中の人ネタ*2のほか、水咲麗子や双葉理保を「ステキな女性だ」と褒めたり、あまつさえ双葉理保のバストサイズを聞いて興奮していたりする。

問題点

  • メッセージスキップが存在しない。
    • 選択肢をミスしてグッドエンディングに行けずやり直した場合でも、何ら2周目でスキップすることはできない。
    • せっかく用意された色々なエンディングを見ようというプレイヤーもいるのに、この仕様では複数周回する気が明らかに失せる。
    • 文字送りに使うAボタンを押しっぱなしにすることで自動送りにすることはできるが、スキップと言えるほど速くはない。
    • 時間経過も評価に通じるゲームなので飛ばせるようにするとまずいという解釈もできなくはないが、それにしたって一度読んだ文章を毎回読ませる道理はない。
  • 「交渉人」をリアルに再現するというには微妙な基本システム。
    • 最後までただ3択の選択肢を選ぶだけという構成は妥協するとしても、選択肢を選ぶ基準が不明確で説得力が弱い。
    • 明らかに犯人を怒らせるような態度やセオリーに反した態度を取るとチーフなどに叱られるが、似たような選択肢なのに一方だけが正解などという例も少なからず見られる。
    • 画面左上のゲージ増減でその選択肢が正解だったかは確認できるが、逆に言えばカンで選んだ選択肢のゲージ変動を確認するだけの総当たり作業になりやすい。
  • その他のシステムも色々と問題点が見られ、システムの大部分は単に入れただけで殆ど機能していない。
    • 「重要登録」であるが、実はシナリオ上で使わなければならない場面が全くと言っていいほど存在しない。
      • 具体的には、あるシナリオでは特定の重要単語1つをある場面で登録しておかないとグッドエンドに行けないというもの。このゲームで重要登録が必要なシーンはそれで以上。
      • 特定の重要単語を登録しておくと選択肢が変わる場面もあるが、そのような機会は片手で数えても指が余裕で余るぐらいに少ない。
    • 「情報SP」ボタンでは重要登録の他にも過去の情報を確認したりバックログから用語を見たりできるが、犯人との会話で役立つことはまずない。
      • このゲームには一応ながら制限時間もあるので、最初は物珍しさで見ることはあってもゲームに慣れたら一切見なくなるプレイヤーが大半だろう。
    • どのシナリオでも特定の場面で花下に画面に映っているものを調べてもらう調査依頼パートが挟まれるが、これも完全スルーでも全く問題なく話が進んでしまう。
    • チーフのアドバイスを貰う「交渉SP」にしても、実際の選択肢のヒントになることは少ない。
    • シナリオ内の制限時間も、一切意識せず悠長に読み進めてもまず影響ない。
  • セーブはシナリオを数分割した一定のセクション単位でしかできない。
    • 分かりやすく言うと、セーブポイントから再開するとシナリオの特定のチェックポイントまで戻されてしまうという仕様である。
    • 前述の構成から、こまめにセーブしないと面倒な最初からのやり直しをさせられるというのにこの仕打ち。
  • ストーリーも、特に完成度が高いということはない。
    • 全体的に小ボケがちょくちょく挟まれるノリを面白いと思えるかどうかで、好みは分かれる。
    • その場の勢いで事件を決行したような計画性の低い犯人や突かれると弱い犯人が多く、犯人との知能のぶつかり合いのようなものが味わえるシナリオは少ない。
  • ボリュームも少なめ。
    • 先述の通り全9話だが、最初の1話はチュートリアルで5分もかからず、他にも番外的な10分程度で終わるシナリオが2話あるので実質的には7話分程度。
    • 通常のシナリオについても30~40分あれば終わるボリュームで、似たような進行形式の『THE 鑑識官』や『THE 爆弾処理班』と比べても短い。
    • 分岐をミスした際のやり直しを含めても、エンディングまで6時間程度で辿り着けるだろうボリュームはSIMPLEとしてもやや浅い。

総評

システム的に一見やれることが多く最初は戸惑いながらも面白そうに感じるだろうが、結局はそれっぽい選択肢を総当たりで選ぶだけに終始してしまう。
売りとしているシナリオ分岐も魅力が全くない訳ではないものの、必然的に要求されるやり直し行為とシステムが噛み合っていないため明らかにデメリットのほうが大きい。
一方アドベンチャーで肝心要なシナリオに関しては比較的無難で、一応の纏まりがあるのは救いである。
ただし及第点程度ということであり、伏線などが練られていることはなくテーマの割に緊張感も薄いため特段の評価はできない。

全体的に多くの欠点を指摘せざるを得ず、特にシステムとボリュームの2点で様々な不足点がよく目立つ。
題材の助けかクソゲーとまでは行かないが、かなり詰めが甘く薦めづらい作品だと評価するのが妥当なところだろう。

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最終更新:2022年12月22日 19:41

*1 海外作品も含めると90年代後半頃から交渉人をテーマにした作品が増えてきているが、時期や知名度などを考えると本作には2005年公開の映画『交渉人 真下正義』あたりの影響が強いのだろう。

*2 『ラスト・エスコート』のマサトと、本作の徳尾悠の声優はともに杉田智和氏。