ルパン三世 ルパンには死を、銭形には恋を

【るぱんさんせい るぱんにはしを ぜにがたにはこいを】

ジャンル シネマティックアクションアドベンチャー
対応機種 プレイステーション2
発売元 バンプレスト
開発元 ネクスエンタテインメント
発売日 2007年2月22日
価格 6,980円(税抜)
レーティング CERO:B(12歳以上対象)
判定 なし
ポイント 演出は完璧
ゲームとしては微妙
ルパン三世ゲームリンク


概要

『魔術王の遺産』『コロンブスの遺産は朱に染まる』に次ぐPS2ルパンゲー第三作にして最終作。
今回はタイトル通り銭形が「もう一人の主人公」として活躍するのが売り。

ストーリー

アジアの古都、蒼海市。峰不二子から依頼を受けてやってきたルパンたちは、不二子が地元マフィア「天龍界」に誘拐されたことを知る。
不二子奪還には成功するものの、ルパンは天龍界ボス「光琳」に謎の暗殺拳を食らってしまう。
それは食らった者は例外なく3日で死に至るという「霧影掌(むえいしょう)」であった。
果たしてルパンは蒼海市に眠る秘宝の謎を解き、死から逃れることができるのであろうか――。

時を同じくしてルパンを追い、蒼海市に降り立った銭形警部。
ルパンが狙うという秘宝「桃水晶」が賞品として手に入る巫女コンテスト。その優勝候補である「銀麗」を警護することでルパン逮捕を目指す。
初めは銭形を冷たくあしらう銀麗。しかし、素朴で一本気なその姿に次第に銀麗の心は揺れ動き――。

システム

  • オーソドックスなアクションアドベンチャーだった前二作と異なり、本作はチャプター選択式。ルパンパート、銭形パートをプレイしつつ物語を進めていく。
    • 各チャプタークリア後にはそのチャプター内での行動を元に評価が下され、様々な特典が手に入る。
      • セーブは各チャプタークリア後にのみできる仕様。
    • それぞれの物語は同時進行しており、両者の側面から見ることで全体像がわかるようになっている。
      • 全30チャプター。最初にルパン編「余命三日」銭形編「禁断の恋」をクリアした後、同じ時間軸で展開の異なる「真実の秘宝」「真実の愛」編をプレイすることになる。
  • ルパンパートは主にアドベンチャー。変装などを駆使しつつ、敵に気づかれないように目的を果たす。
    • 万が一敵に見つかった場合は、「いなし技」という様々な回避アクションを用いて安全地帯まで逃げ込むことになる。
      • ストーリーを進める途中で新アクションを入手することもある。
    • 前二作と異なり、武器や持ち歩けるアイテムは基本的に存在せず、敵を気絶させたり足止めさせることは出来ない。ゴミ箱などに隠れることも出来ないので、回避手段は安全地帯に逃げ込むのみ。
      • 前二作では殺意のある悪党以外の人間にワルサーP38を撃つとゲームオーバーになった*1が、今回は実弾が必要なシチュエーション以外では花を出して驚かせるアクションに変わる為、そのシステムも廃止された。
  • 銭形パートは主にアクション。持ち前の腕っ節で並み居る敵をなぎ払う。
    • こちらもストーリー途中で新アクションが手に入ることがある。
  • 両パートに共通する回復アイテムは体力回復の「カップラーメン」と、大技に使うテンションゲージを回復させる「ドリンク」の2つとシンプル。従って、ストックできる回復アイテムは存在しない。
  • 一部のチャプターでは次元、五ェ門、不二子を操作する。
    • 次元パートではガンシューティングとなる。あるチャプターでは『タイムクライシス』のような銃撃戦が楽しめる。
    • 五ェ門パートは100人もの敵を斬り伏せるアクションステージ。指定範囲内の敵を一瞬で斬り伏せるなど、五ェ門ならではの超人アクションが用意されている。
    • 不二子パートはタイミング良くボタンを押して華麗に舞うリズムゲーム。前作ではサブ主人公的立場だった不二子はこのステージでのみ操作する。
  • 終盤はルパンと銭形が合体*2した最終兵器「アルセーヌ・幸一」を操作する。
    • 基本的に現在プレイ中のシナリオ側でのアクションが主体となり、ルパンパート側では回避、銭形パート側では格闘をメインに進む。
  • ムービー中随所で「LAE(ルパンティックアクションイベント)」として制限時間内にボタン操作が求められることがある。
    • いわゆる「QTE」である。ミスしてもダメージを受ける程度で済む場合が多く、即座にゲームオーバーという場所は少ない。但し、クリア後の評価や新アクションの入手に関わるので是非ともクリアしたい。
    • 失敗時にはルパンらしいコミカルな演出が見られるのも特徴。失敗時のストレスの緩和にも一役買っている。
      • 例えば「カーチェイスのLAEを失敗→回しすぎてハンドルがもげ、そのままスピンしながら突っ込む」*3
        「五ェ門が敵を倒すシーンのLAEを失敗→敵を倒せずパンツ一丁にするだけ」「天龍界の下っ端を殴り飛ばす銭形のLAEを失敗→とっつぁんが逆にフクロにされる」。

評価点

  • とにかくルパンゲーとしての演出が非常にいい。制作者がルパンを愛していることが伝わってくる。
    • 各チャプター開始時にはチャプタータイトルが出るのだが、これがまさしくアニメのサブタイトルそのまま。
      • またクリア後にも次回予告として次のチャプターの紹介が入るのだが、これも実にいい感じにアニメ版をリスペクトしている。
      • 同じ次回予告でも別バージョンも存在し、本作のゲストキャラが予告をやってくれたりと芸が細かい。
    • 第一章がいきなりカーチェイスから始まり、次元が敵の車のタイヤをぶち抜くのは『カリオストロの城』を彷彿とさせる。
    • シナリオも奇想天外。随所にある仕掛けの攻略方法も実にルパンらしい。
      • ちなみに今回の不二子は、珍しく最初から最後まで一度も裏切らない完全なヒロインとなっている。
      • 終盤はルパンと銭形が一時休戦して手を組むと言う、劇場版やTVスペシャルを彷彿させる熱い展開が待っている。二人が合体した「アルセーヌ・幸一」は見た目こそ不恰好でコミカルだが、背中合わせで縛られているという制約すら物ともしない抜群のコンビネーションで敵を追い詰めていく。寧ろ単体より強い、正に合体である。「最終兵器」の名は伊達ではない。
      • 五ェ門がむっつりスケベな一面を垣間見せる、不二子にルパンダイブして返り討ちに遭う、などのお約束も完備。物語の最後を飾る「真実の秘宝」編のエンディング*4も正にいつものルパンのノリである。最近のTVスペシャルよりも面白いかもしれない…
  • 銭形無双。
    • 前二作では強力なお邪魔キャラとしての登場だった銭形だが、今回はもう一人の主人公として大活躍*5。タイトル通り、ルパンが体を張ったアドベンチャーを繰り広げる傍ら、銭形の方はなんと顔に似合わぬラブロマンスを展開する。
    • 途中でヒロイン・銀麗(声:能登麻美子)との会食のシーンもあるのだが、ここはほとんど完全にギャルゲーと化している。
      • 質問に答えていくと、正解の度に銀麗が次第に席を近づけてきて、一定以上正解すると特別な演出が入る。クリアするだけなら全て間違えても問題なしという辺り、制作サイドのこのパートへの姿勢がわかるというもの。
      • ただヒントはないので初見完全クリアは結構難しい(間違っていることは分かるので二回目以降ならクリアは容易)。銀麗は気取った男よりもありのままを見せてくれる男が好み、とだけ書いておこう。
    • またその一方で襲い来る天龍界の刺客相手に、さながら『無双シリーズ』のごとく立ち向かう男気あふれるシーンも多数。
      • アクションとしての爽快感はけっこうある。初めの頃は出来ることも少ないので単調になりがちだが、ゲージ消費技「昭和の回転投げ」を習得すると一気に面白くなってくる。
      • 技の名前も「公務執行三連突き」「警視庁背負い投げ」「頑固一徹抱え投げ」と、いかにもとっつぁんらしい抜群のネーミングである。
  • グラフィックレベルはかなり高い。演出の良さもあり、さながらルパン映画を見ているよう。
    • 上海をモデルとしたと思われる舞台「蒼海」は華やかなホテルからゴミゴミとしたスラム街までしっかり作り込まれており、BGMも相俟って雰囲気が非常によく出ている。
    • ただし、随所に入るムービーとゲーム本編には画質の差が出てしまっている。
  • BGMはTVシリーズでも馴染みの大野雄二氏が手掛けており、雰囲気も非常にいい*6。ルパンパートではおなじみ『ルパンのテーマ』を始めとした派手目の曲、銭形パートでは『銭形マーチ』を元にした渋めの曲と曲調自体が変わってくる。
    • 逃走パートや潜入パートではTVスペシャルの人気作『アルカトラズコネクション』の曲も使用されており、ファンの心をくすぐる選曲となっている。
    • 不二子パートのリズムゲームでは『THEME FROM LUPIN III '89』*7が流れる。何故巫女コンテストでこの曲が使用されるのかは気にしてはいけない

問題点

  • 純粋にゲームとして見ると、中途半端な点がチラホラ。
    • 特に比重の高いルパンパートが面倒なのが大きい。全体的にテンポが悪く、行ったり来たりさせられることが多い。
      • スニーキング系のゲームとしてはそこまで難しくはないが、走ると簡単に怪しまれるため常にスティックちょっと倒しが求められるのはつらい。間違って大きく倒すとあっという間に見つかる。
      • 前二作にはあった、敵を眠らせるリキッドガンや足止めするコショウ爆弾などの装備品も存在しない。
    • また、「余命三日」編と「真実の秘宝」編、「禁断の恋」編と「真実の愛」編は連続している訳ではなく、上述した通り同一時間軸で展開が違うと言う、所謂パラレルワールドに近いシナリオの為、同じ内容のイベントを見せられる事もしばしば。特に「余命三日」「真実の秘宝」両編でほぼ同じミッションがあることも多い。
      • 難易度が違うだけなのに、イベント、ムービーが飛ばせなかったりしてこちらもテンポが悪い。
    • ルパンと言えば多彩な変装が魅力の一つなのだが、変装できる場面があまり多くないのは残念なところ。
      • 前二作では状況に応じて変装する服を選択すると言った戦略性が存在したが、本作では変装可能な服が少なく、そもそも複数の服を一度に所持する事はないので選択する事自体出来ず、面白みが薄い。
  • 残念ながらフルボイスではない。
    • ムービーはフルボイスだが、チャプター中の台詞はかけ声程度しか入っておらず、それ以外は字幕で説明されるなど惜しい部分がある。
    • ムービー以外は掛け声程度、という点は前二作も同じだが、今回はムービーではないオートイベントも多いので前二作よりも気になってしまう。
  • ボリュームもそこまで多くはない。
    • やりこみ要素もあまりなく、各チャプターでSランクを狙うぐらいしかない。
  • 銭形パート「禁断の恋」「真実の愛」編はどちらも切ないEDなのだが、後からプレイ可能になる「真実の愛」編の方が辛い結末を迎えてしまうのは好みが分かれるかもしれない。

総評

シナリオ・演出面に限って言えばルパン三世のエッセンスを存分に活かした作風であり、その出来は映画やTVスペシャルの名作・人気作にも劣らない。が、純粋なゲームとしてはあまり面白くない。
ルパンPS2三部作は新作が出る毎にシナリオ・演出の比重が大きくなっていく一方でゲーム性が低くなっていく傾向にあったが、本作はその極め付けと言えよう。

本作におけるシナリオ・演出の比重は過去作と比してより大きくなっているため、純粋なゲームではなく「オリジナルルパン映画」と見做し、「ムービーを見る合間にゲームをやるんだ」ぐらいに割り切った方が楽しめるかもしれない。

余談

  • CERO判定はBだが、その割には妙にコンテンツアイコンが多い。
    • 恋愛・セクシュアル・暴力・犯罪の4つ。確かに判定はコンテンツアイコンの数で決まるわけではないが、それにしても結構な数である。
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最終更新:2021年06月17日 23:44

*1 普段は殺しはしない主義だが、外道には容赦しないというルパンの性格を表現したシステム。

*2 実際は背中合わせで縄に縛られているだけ。縄抜けの名人であるルパンでさえ解けない結び方だった為、仕方なくそのままの格好で行動する。

*3 画面手前で一瞬止まり、次元の「冗談だろ!?」の台詞と共にクラッシュという凝った演出が更に笑いを誘う。

*4 ステージ順では「真実の愛」編が最後だが、時系列ではこちらのエピローグが最後にあたる。

*5 『魔術王』では最後まで敵キャラであり、終盤は殆ど出番が無く見せ場はエンディングでヒロインを病院に運ぶ位だった。『コロンブス』では共闘こそしないものの、ルパンの頼みを聞き入れて瀕死のヒロインを飛行船から脱出させ、黒幕を追い詰めるのはルパンに託している。

*6 上述の会食パートやクリア特典には大野氏自身がカメオ出演している。

*7 TVスペシャルで最も多くOPに使用されているバージョン。PS2三部作は一貫して『ルパン三世'79』がテーマ曲となっている為、この曲が聴けるのはここだけである。