ハイドライド・スペシャル

【はいどらいどすぺしゃる】

ジャンル アクションRPG
対応機種 ファミリーコンピュータ
発売元 東芝EMI
開発元 T&Eソフト
発売日 1986年3月18日
定価 4,900円
配信 ゲームアーカイブス:2019年12月13日/315円(税5%込)
プロジェクトEGG:2020年5月19日/350円(税別)
判定 なし
ハイドライドシリーズ


概要

魔王バラリスの手によって3人の妖精に変えられたアン王女を助け出すため、主人公・ジムは3人の妖精を助けバラリスの待つ城を目指す。
内容的には『ハイドライド』の設定をほぼそのまま踏襲しつつ、パソコンで既に出ていた『ハイドライドII』で追加された要素である「魔法」を一部取り入れた移植作品である。

システム

  • シンプルなシステムのARPG。
    • 攻撃は体当たりのみ。"ATTACK"と"DEFENSE"の切り替えが可能。前者は攻撃力が高く、防御力が低い。後者はその逆。双方の差は大きく、使い分けが必要。
    • "LIFE"(HPにあたる)と"MAGIC"(MPに当たる)は時間とともに自然に回復するが、場所によって時間に差がある。
  • PC版にはない五種類の魔法が加えられた。
    • 敵を混乱させる"TURN"、火の玉を飛ばす"FIRE"、氷の塊を飛ばす"ICE"(こちらは障害物を通り抜ける)、敵を貫通する"WAVE"、画面全ての敵にダメージを与える"FLASH"がある。"TURN"以外は全て攻撃魔法。
    • "MAGIC"を消費して使用する。
    • ただし、魔法で敵を倒しても、経験値は得られない。
  • 中断機能はSAVE/LOAD方式とPASSWORD方式の2種類
    • 前者は電源を付けている間のみの記録方式。
    • 後者は電源を切る際の為の保存方式。こちらでは経験値だけは保存できない。
      • レベルが上がって上昇した数値は保存できるので、レベル上げの途中までの経験値のみが無駄になる形。

評価点

  • FC最初の本格RPG。システムはシンプルで、理解さえすればプレイしやすいもの。
    • RPGの基本である、キャラクターの成長や、冒険要素を楽しめるものになっている。
      • PC版と違い魔法が使えるので、戦いも楽になっている。特にダンジョンでの戦闘では、かなり助かる。
    • マップは掘で区切られており、その先に未踏破地域が見える。それらが冒険心をくすぐる。
  • 魔法の追加
    • 元が体当たりのみの単調なアクションRPGだった為、魔法の追加で攻撃方法が多彩になったのはうれしい追加要素。
      • 魔法では経験値が得られないが、利便性と元が魔法無しのゲームだった事を考えると妥当だろう。"TURN"の魔法はかなり便利で、攻撃魔法も謎解きに専念する時には便利である。
  • セーブ方式が2種類も搭載されていてこの時代のゲームとしては非常に便利。
    • セーブ機能は電源を付けている間のみしか使えないが、パスワードの記述ミスなどの心配もなく、手軽に継続したプレイが可能。
    • もう一方のパスワード方式も存在するおかげで日をまたいでのプレイも可能になっており、また好きなタイミングのデータも残しやすい。
      • 説明書でも「1(いち)とI(アイ)、0(ゼロ)とO(オー)とQ(キュー)、3(さん)と8(はち)とB(ビー)、U(ユー)とV(ブイ)、6(ろく)とG(ジー)を特に注意して!!」と、見間違いやすい文字には注意もされている。
  • 移植という点からすれば、移植レベルは高い。
  • 各種パソコン版ではアイテム表示が完全にアイコンのみだったのに対し、入手時に一応アイテム名が表示されるようになった(用途は分からないし誤植もあるが、原作よりは改善されている)。
  • BGMが追加された事
    • 後述の通りそのBGMに問題を抱えているとはいえ、やはり無音に比べるとBGMがあるだけで嬉しい。
    • PC-88版ではBeep音のみで無理やりBGMを作るという暴挙に頼らざるを得ず、他のプラットフォームでも概ね短めのBGMが1曲のみ。曲数が増えた点は評価するべきだろう。

問題点

説明不足と理解を妨げる要素

  • 何をどうゲームを進めれば良いか遊び方が分からず投げ出すプレイヤーが続出した。
    • ゲームの最終目的はアン王女の救出と明言されているものの、当面の目的がハッキリと提示されず、何から手を付けていいかがわからない。またヒントもゲーム中では登場しない。
      • 自ら目標を探し出す当時のPCゲームのスタイルをそのままFCへ持ってきた結果、メインターゲットである子供は困惑してしまった。
      • タイトル画面でしばらく何もせずに放っておくとアーケードゲームのようにデモプレイに切り替わり、どういったゲームなのかを伝えてはいるものの明確に分かるわけではない。
  • RPGというコンシューマーではまだまだ知名度の低いジャンルのゲームをするには、説明書の出来があまりよくない。
    • "ATTACK"、"DEFENSE"の各状態と攻撃力、防御力の関係、"LIFE"の回復方法、敵は正面しか攻撃しないなどが書いておらず、プレイ方法そのものを試行錯誤で見出す必要があった。
      • また、ボス・中ボス戦では"ATTACK"ではなく"DEFENSE"状態で攻撃しないと、ほぼ即死してしまうという仕様なので、中ボスである「ウォータードラゴン」が倒せないというプレイヤーもいた。悪い事に、ここに来るまでは全て"ATTACK"状態で問題なく敵を倒せるため、敵によっては"DEFENSE"状態で攻撃する必要があるという事に気付きにくい。
  • ゲーム中の少ない情報はフォント等の都合上『すべて英語表記』。
    • 説明書にはアイテムや敵がイラストと共に日本語で説明されているが、やはり子供向けのゲームとしてはハードルが高い。
  • ゲームの攻略が異常に難しい。
    • 元がユーザーの年齢層が高いPCゲームであり、PCゲーマー向けの難易度をそのまま持ってきてしまっている。一応、謎解きの難易度はPC版より心持ち下がってはいるのだが。
    • 特に魔法の概念が追加されたおかげでPC版の攻略方法が一部変更された部分がある為、結果的に難易度が更に上がってしまった箇所もある*1
      • それでもPCで有名だっただけに本作は攻略本が発売されただけでなく、雑誌で漫画連載も始まり攻略情報を入手しやすい方ではあった。

その他

  • BGMに関する問題
    • 『II』のオープニングBGMをゲーム中のメインBGMとして使っている為、『II』プレイ済みの人からは延々タイトル曲を流される事が気になるという声が聞かれた。
      • ただFM-7やX-1などのオリジナル版のフィールドBGMも「ちょっと平和的すぎる」という評価が多かった為、それを受けての変更という事かもしれない。

総評

「RPGに初めて触れる子供たち」をターゲットにしていながら、ゲーム目的の不明瞭さ、PCゲーム特有の高難易度など、その層に対する配慮が足りない為に、クソゲー扱いされる事も多かったゲームである。
アクションRPGとしての基礎部分の出来は良いのだが、結局は子供には理解しづらいソフトになってしまった。


余談

  • 歌手のちわきまゆみが歌う本作公式イメージソング『エンジェル・ブルー』という曲がある。ゲーム内ではなくテレビCMに起用された。
  • T&E製のPSソフト『Sonata』(恋愛RPG)にて、ギャラリーを全て埋めると『ハイドライド・スペシャル』がプレイできるので、興味がある人はそれ経由でプレイしてみるのも一興だろう。
    • ただし『Sonata』ではアルバムを埋めることが難しい(特に「徳川学園編」のプール・初詣のCG(全ヒロイン分ある)と全員分のエンディングムービー)ため、その苦労に見合ったおまけと言えるかは微妙だが。
      • 2コントローラーのL1+R1+○+×+△+□を押しながらアルバムを立ち上げると全て埋まるという裏技があるので、Sonataを100円で買ってきてすぐハイドライドスペシャルをプレイすることもできる。
    • 2019年12月13日より、この『Sonata』に収録されていた『ハイドライド・スペシャル』がゲームアーカイブスにて配信開始。ハードを所持しているユーザーにとってプレイのハードルはグッと下がったといえるだろう。
  • 『プロジェクトEGG』より発売されるT&Eソフトとクリスタルソフトの代表作19タイトルを纏めた『ザ・トリロジーズ -T&E SOFT / XTAL SOFT COLLECTION-』に、ハイドライドシリーズの一作として本作も収録される。
  • 『ハイドライドII』はファミコン未発売だが『ハイドライド3』は移植され、1989年2月17日にナムコから発売している。
  • 当時の雑誌で募集されたアイデアやキャラクターが『一定時間、魔法が使い放題になる裏ワザ』として採用されている。
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  • T&Eソフト
  • ARPG
  • ハイドライド

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最終更新:2024年02月10日 21:52

*1 謎解きの一部にとある攻撃魔法に依存した攻略に変更されてしまい、ここに関してはかなり不評になっている。後述の裏ワザを使えば多少は軽減されるものの、攻略条件自体は変わらないのでそれでもかなり辛い。なおこれ等に関してもノーヒント。