チョコボと魔法の絵本 魔女と少女と五人の勇者

【ちょこぼとまほうのえほん まじょとしょうじょとごにんのゆうしゃ】

ジャンル チョコっとアドベンチャー(ミニゲーム集)
対応機種 ニンテンドーDS
メディア 1024MbitDSカード
発売元 スクウェア・エニックス
開発元 ハ・ン・ド
JOE DOWN(音楽アレンジ)
発売日 2008年12月11日
定価 4,800円(税別)
判定 なし
ポイント ミニゲーム集『魔法の絵本』の続編
前作とはまた異なるストーリー展開
ミニゲームは前作からの流用がやや多め
新ゲーム「プルバックデュエル」も微妙な出来
前作から継承された部分やミニゲームの完成度自体は高い
ファイナルファンタジーシリーズ


概要

ファイナルファンタジー(FF)シリーズのマスコットキャラクター・チョコボを主人公としたアドベンチャー型ミニゲーム集で、『チョコボと魔法の絵本』の続編。
(公式で「続編」と明言されている訳ではなく実際リニューアル作品に近い部分もあるのだが、本項では基本的に続編として扱っている)
ただし過去のチョコボシリーズ同様、シリーズ間で設定の共有はなく手塚治虫漫画のスターシステムのような扱いになっており、『魔法の絵本』ともストーリーの繋がりは無い。

ハ・ン・ド製作のチョコボシリーズとしては、『魔法の絵本』『時忘れの迷宮』に次ぐ3作目(移植作である『時忘れの迷宮+』を除く)。


あらすじ

船で荷物を運んでいた運送屋のデブチョコボは、荷物に紛れていた見知らぬチョコボを見つけます。
どうやら船にかくれて乗り込んでいたようです。仕方ないので、デブチョコボはチョコボを目的地まで乗せて行ってやることにしました。

船の行き先は、「幻想絵本アルヴァニカ」シリーズで世界的に有名な絵本作家のシドが住む巨大な豪邸が殆どを占める「ミリオン島」でした。
チョコボはシドの付き人モーグリに手伝いを頼まれますが、肝心のシドは「幻想絵本アルヴァニカ」の新作・第四巻の執筆もままならず病にふせっていました。
「『魔女』が…」とうわ言をつぶやきながらシドが重病に苦しむ中、チョコボは豪邸の一角に置かれた「幻想絵本アルヴァニカ」第一巻を見つけます。
チョコボのそばに現れた謎の少女・シロマとともに絵本を読もうとすると、チョコボは絵本の中に入り込んでしまいました。
絵本のストーリーを辿っていくチョコボでしたが、絵本の主人公である剣士ヴォルグに出会ったところでどこからか怪しい声が。
不思議な力で、次々に物語が歪んだものに描きかえられてしまいました。
果たしてチョコボは、絵本の中の世界と現実のミリオン島を救うことができるのでしょうか?


特徴

ゲーム進行

  • チョコボはシドの屋敷に点在する絵本に入り込み、絵本に描かれたキャラクターと会話したり背景を調べることでストーリーを進めていく。
    • 前作の「絵本」は名作童話をネタにしたミニストーリー程度のものだったが、本作では独自のストーリーが一応のボリュームをもって進行する。
      • 絵本は「第一章」「第二章」…と分かれているが、絵本それぞれのストーリーに繋がりはない。
    • 所謂パートボイスを採用。DSという媒体の都合もあってかフルボイスではないが、全てのセリフに簡単な一言ボイスが付いており、頻出するセリフ等部分的にはフルボイスの箇所もある。
    • 絵本の背景を調べることで、ポップアップデュエル用のカードやプルバックデュエル用のアビリティ、アビリティと交換できる「ちょコイン」も手に入る。
  • 絵本の各所にミニゲームが存在しており、一定の目標値をクリアすることでストーリーが進む。
    • 各ミニゲームに、前作のシルバー、ゴールドに新しく「プラチナ」を加えた3つの目標値が設定されている。
    • こちらもストーリーが進むほかに、カードやアビリティ、ちょコインを手に入れることができる。プラチナランク報酬では貴重な「プラチナちょコイン」を入手可能。
    • 絵本の外にもいくつかミニゲームがあり、ストーリーには関係なく遊べるものもある。
  • ちょコインとプルバックデュエル用アビリティの交換は、絵本の中に点在するドルくんのお店で行う。
    • 更にちょコインを消費することで、アビリティを一定の限界までパワーアップ(発生ダメージ量が増え、消費SPが減る)できる。
  • 前作で登場したポップアップデュエル(カードゲーム)は本作にも収録されているが、前作と異なりストーリー上で強制的に行うシーンはない。
    • 恒例のプレイヤー間Wi-Fi対戦のほか、同時期に発売された『シドとチョコボの不思議なダンジョン 時忘れの迷宮+』とのWi-Fi対戦も可能。
    • 「『盾』マークに強い『槍』マークの登場」「戦闘が行われなかった場合のダメージ上昇効果」など、守備デッキへの牽制を中心に調整が行われシステムが洗練されている。
    • 収録枚数の増加のほか、既存のカードにも若干の調整がある。

プルバックデュエル

  • ポップアップデュエルに代わり前面に押し出されたゲーム。ストーリー上でも、勝たないと進めない戦闘が各絵本それぞれに数回発生する。
    • 絵本の主人公とチョコボを融合させ、絵本のキャラクター達と1対1で戦うために行われる。
    • DSを持ち寄っての通信対戦が可能。Wi-Fi対戦は不可。
  • ルールを一言で説明すれば、「ビリヤード」または「おはじき」。一度に動かせる距離の長さなどを考えればゲームとしては後者に近く、後のゲームアプリ『モンスターストライク』のような操作性である。
    • お互いのプレイヤーは交互に、タッチペンでプルバック(引っ張って離す)の動作を行って自分キャラを弾き飛ばす。
    • 相手キャラにぶつかった場合はHPにダメージを与え、壁にぶつかった場合は反射して跳ね返る。ギミックに接触した場合はそのギミックが発動。
    • 自分ターンが回ってくるごとに、一定量の「SP」が貯まる。SPを消費することでアビリティを発動可能、ただしアビリティにはそれぞれ使用回数制限がある。
    • 特定の位置に、HPやSPの回復ポイント(形態は各章で異なる)が用意される場合もある。
    • HPのなくなったプレイヤーが敗北となる。
  • 各絵本ごとに使用可能アビリティやギミックが大幅に異なる。ギミックを利用して相手のHP・最大HPを減らすことが勝利のカギ。
    • 第一章「ナイツ・オブ・ラウンド」…主なギミックは互いの後ろに付随してついてくる「戦士の魂」で、これを突撃で破壊することで相手の最大HPが激減し大幅に有利になる。
    • 第二章「マジカル・ストーン」…主なギミックは周囲に転がる3色の「魔石」。これにぶつかって弾き飛ばしたり同種の魔石をくっつけて点数を貯め、相手の最大HPを減少させる。
    • 第三章以降でもそれぞれ特有のギミックが存在する。

評価点

ここにないものを含め、前作の評価点についてはだいたいのものが受け継がれている。

  • ストーリー
    • 今までの『魔法の絵本』や『時忘れの迷宮』で描いたイメージとは大きく異なるキャラ造形でプレイヤーを驚かせた。
    • 第一話から例を挙げても、高飛車なライバルキャラだったイルマを可憐なお姫様に、黒チョコボだったヴォルグを人間の剣士にと大幅な改変が目立つ。
  • ミニゲーム
    • 後述する問題点こそあるが、ミニゲーム自体のクオリティは前作と変わらずほぼ一定のものを保っている。
    • 全てのミニゲームで途中リタイアができるようになり、ハイスコア目当ての連続プレイもしやすくなっている。
  • 音楽
    • いくつかは前作『魔法の絵本』からの流用曲もあるが、新曲も多い。プルバックデュエルだけでも10曲近いアレンジ曲が使われている。
    • FFシリーズのアレンジ曲は今作でも質が高い。『ファイナルファンタジー4』における不気味さを感じさせるワルツ曲「踊る人形カルコブリーナ」を激しい戦闘曲にアレンジするなど、極めて大胆なアレンジも敢行されている。
    • 4冊の絵本に設定された各テーマ曲は、前作にはなかった完全オリジナル曲で構成されている。
    • ラストバトルでは、チョコボシリーズファンにはたまらないアレンジが流れ戦闘を盛り上げる。

賛否両論点

  • ストーリー
    • 絵本は「人間の物語」が多くを占めるため、絵本内での登場人物は大半が人間キャラである。
      • 『時忘れの迷宮』ではより顕著だったが、チョコボや亜人、モンスターが大半で人間キャラは少数の定番キャラだけという例が多かった従来シリーズから変化が起こりつつある。
      • もっとも、本作の場合はミニゲーム内にはチョコボシリーズのモンスターも多数登場するし、現実世界であるシド邸宅には前作ほどではないがチョコボが何匹も暮らしている。
    • 絵本のストーリーはそれなりに重い内容のものも散見される。
      • 外観の割にシリアスな部分が入ってくるのが一部のチョコボシリーズの良いところでもあるのだが、いわゆる「鬱展開」も少々あるので前作と比べ好みが分かれやすい。
      • ゲーム全体の結末の持っていき方がやや強引で不満が残るという声も。
    • 声優の導入も、『時忘れの迷宮』に続き不必要という意見は一部に残る。

問題点

  • ミニゲーム
    • 前作で登場した「チョコっとゲーム」が全て本作に使い回されており、おかげで新規性が少なくゲーム全体に焼き直し感が漂っている。
      • 全48のミニゲームのうち、実に半分近い22のゲームが前作からほぼそのまま持ってきたものである。
      • ミニゲームの登場場面に合わせ演出が若干変わっていたり、プラチナランクの追加など目標得点に変化はあるが、前作プレイヤーにとっては「またこれやるの?」という反応になる場合が大半だろう。
    • 前作に多数あった対戦形式のミニゲームが消滅してしまったため、単純にゲームの幅が狭まっている。
      • ミニゲームの総数自体にはほとんど差はないが、他キャラとの対戦という燃える要素がなくなってしまった。1人で黙々とやるミニゲームも面白いことは面白いのだが…
      • CPUとの対戦という要素はプルバックデュエルに任せたかったのかもしれないが、そちらの出来が微妙なので如何ともしがたい。
  • プルバックデュエル
    • 演出面はともかくゲームとしての出来ははっきり言ってそれほど良くなく、本作全体の評価にも少なからぬ打撃を与えている。
    • まずCPUのAIが悪く、対戦相手の頭の悪さで勝たせてもらう場合がそれなりにある。
      • 例外はあるが基本的にCPUはギミックを利用する頭をほとんど持っておらず、使ったとしても効率性をあまり考えないので真面目に対抗すればまず押し勝てる。
      • 第三章の「エリアル・サーカス」が顕著で、相手はギミックである「エアゲート」を積極的に通ろうとしないばかりか、あらぬ方向に飛んでいくことすらある。
    • 第一章、つまり最初の形式であり、チュートリアル的な役割も果たすべきはずの「ナイツ・オブ・ラウンド」が明らかに他よりも頭一つ抜けて難しいという劣悪なバランス。
      • 相手プレイヤーが強力なダメージアビリティを持っているのでギミックを利用されなくとも苦しく、おまけに狭いマップが多く相手の「戦士の魂」を破壊しづらい。相手にはSPの概念がないため、こちらよりも早いペースでアビリティを出してくる。
      • 序盤の難易度に「これから先どんなに難しくなるんだ」と戦慄したプレイヤーは、その先拍子抜けすること必至だろう。
    • ごてごてした印象の割に、実際やってみるとやることは地味で戦っているというイメージに乏しい。
    • Wi-Fi対戦はできないため、ソフトを持ち寄る友達がいない限りクリア後のアビリティ強化は趣味の領域。
      • よって、前作と比べるとクリア後もミニゲームで新記録達成を続けて褒賞を貰う意欲は湧きにくい作り。
    • また、ミニゲームの特性上携帯機に向いていないものもある。
      • 例として『チョコボが、鬼が歩く「だるまさんが転んだ」の要領で自動的に鬼を追跡する』というもの。マイクに向かって息を吹きかけて(あるいは何か言って)移動/停止を切り替えるのだが、例えば新幹線などで遊んだ場合、列車の音にも反応するのでチョコボが操作不能になる。
  • ポップアップデュエル
    • 前作で基礎が出来上がったものが手直しされているので完成度自体は高いが、こちらもやはり焼き直しには違いなく前作プレイヤーには驚きが薄い。
      • 相互通信を可能にするためとは言え収録内容は『時忘れの迷宮+』と全く同じなので、そちらをやったプレイヤーには余計に使い回し感が色濃い。
    • カード総数は「全122枚+販促カード5枚」→「全137枚+販促カード6枚」でプラス16枚。つまり1割程度しか増えていないので、前作プレイヤーにとっては既に見たカードばかりで集めるインセンティブは弱い。
      • とは言えルールの単純さゆえ、カードの総数には限界があるのは事実ではあるが。
    • 前作と違ってWi-Fi対戦を一定回数行わないと起きないサブイベントがあり、Wi-Fi対戦を強要するものになっている。
      • 前作にも登場したミニゲーム「マジックポットのツボ」もしかりで、このミニゲームはWi-Fiで200回もの対戦を行わないと出現しない。
      • 現在は発売後時間が経ってWi-Fi対戦も人が少なく、『時忘れの迷宮+』の方とも通信出来るとは言えこれを達成するのは極めて困難だろう。
    • また自分の作ったデッキとの対戦もできない。そのため、一人でできるのは実質的にストーリーモードで遊べるものと全く同じ。
  • インターフェース
    • 前作と同様に一度行った場所へのショートカットが可能だが、前作はほぼ中心部からだったのに対し邸宅の外側というやや外れの場所に起点があるため便利さが落ちている。
    • それを抜きにしても、今作は「シド邸→絵本→特定のページ(ミニゲーム)」と動かないと多くのミニゲームに辿りつけないなど、前作と比べると移動がやや煩雑。
    • よく使うであろうシド邸のエレベーターが「1階⇔3階」と「3階⇔5階」のものに分かれており、「1階→4階」などが1度で移動できない。小さな点ではあるがこれも少し煩雑。
  • タイトル名/パッケージデザイン
    • おそらく本作の(売り上げにおける)一番の問題点。
      昨今ちょっとしか違わないバージョンアップ版やパッケージ変更やバランス調整程度の所謂「ベスト版」を販売するゲームが非常に多いため、これもベスト版や、ミニゲームやカードを追加しただけだと思い、特に前作の所有者の中には購入どころか調べすらしなかった人も多いと思われる(少なくとも筆者は該当)。
      本作もある意味前作の焼き直しではあるが、ストーリーは全く異なるものであり、一部システムが改良された代わりに移植+αという『時忘れの迷宮+』とは対照的で、前作所有者でも(共通のミニゲームはともかく)普通に楽しめたはず…。

総評

丁寧に作られた欠点のなさが目立った前作に対し、一定のクオリティを保ち壊滅的な欠点はないまでも重要な部分にいくつかの問題点は見られる。
問題点の半数近くは「前作からの流用」が原因であるので新規プレイヤーには比較的関係のない部分であるものの、
売りとなっているプルバックデュエルの出来にやや難があり、ミニゲームの多様性も前作から落ちているという点など一概に新規プレイヤーなら薦められるとも言い難い。
続編としても前作のバージョンアップ版としても中途半端で、売る対象が定まっていない感がある。
同シリーズ・同開発陣である『時忘れの迷宮+』と発売時期が近いことから、前作ほど一本に集中して作られなかったのであろうか。

前作が前評判の悪さからの値崩れ後価格を戻したのに対し、こちらは価格が下げ止まらなかった点もその評価を端的に示している。
もっとも決して駄作ではないので、ジャンルの好みさえ合えば恐らく損はしないだろう作品ではあるが。


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最終更新:2021年12月26日 17:00