プロ野球ファミリースタジアム'88年度版

【ぷろやきゅうふぁみりーすたじあむ はちじゅうはちねんどばん】

ジャンル SPG
対応機種 ファミリーコンピュータ
メディア 1M+512KbitROMカートリッジ
発売・開発元 ナムコ
発売日 1988年12月20日
定価 4,900円
プレイ人数 1~2人
判定 なし
ポイント 12球団勢ぞろい
新要素多数導入
無念の選手名変更
パスワード廃止により1Pモードの攻略が困難に
ファミスタシリーズリンク


概要

1988年12月にナムコから発売された大人気野球ゲームの第3弾。基本的なゲームシステムは前作『プロ野球ファミリースタジアム'87年度版』及び前々作『プロ野球ファミリースタジアム』(以下「従来作」と記述)とほぼ同様。同年3月に発売された業務用『プロ野球ワールドスタジアム』にて採用された球場選択・打順変更の要素を取り入れた他、チーム数の増加や選手データ更新、好調選手、エラー、ファインプレー、チームエディットなどの新しい要素が数多く盛り込まれている。また従来作に於いて選手名を無許可で使用したことが問題視され、本作より選手名が微妙に変えられてしまった。


システムの変更点

  • 容量の関係などの事情から「レイルウェイズ」「フーズフーズ」という連合チームとなっていたチームが全て独立し3作目にしてセパ12球団(をモチーフとした球団)が勢ぞろい。これに'87年度版から引き続きの登場となるN・Mチームを加えた14球団でジャパンリーグが形成される。この他投手枠が2名増え6名となった。
  • 1Pモードの仕様が、任意の対戦相手と球場を選択して開始するように変更された。ただし2試合目以降の対戦相手と球場は自動的に決められ、プレイヤーには選択権は無い。また従来作のように敗れても即ゲームオーバーにはならずそのまま13試合を戦い抜くまでゲームを続行できる(敗北した時点でエンディングが見られなくなるのは過去作同様)。
  • ピッカリ球場に代わり実在の球場をモデルとした4つの球場が登場。球場毎に外見やスペックが異なるが両翼中堅・フェンス高以外にプレイに関係する要素は無い。
    • これまでのピッカリ球場に相当する球場は「どうむ」となる。
球場名 モデル球場 両翼 中堅
どうむ 東京ドーム 100m 122m
ろっこうさん 甲子園球場 91m 120m
しゃちほこ ナゴヤ球場 91m 119m
かせんじき 巨人軍多摩川グランド 85m 110m
  • 打順の変更が可能となり、スタメン8人の範囲内で自由に変更ができる。ただし控え選手との入れ替えは出来ず、好調選手が誰なのかはこの時点ではまだわからない。1Pモードで打順を変更した場合、変更した打順はそのまま次の試合に持ち込まれる。この他、球場選択や打順変更時には業務用と同じBGMが流れるようになっている。
  • ファインプレー・エラーの採用。打球に近づいた状態で十字ボタンとAボタンを同時に押すと上下左右の方向に野手がダイビングまたはジャンプをする。飛びついた野手は捕球の成否に関わらず約1秒ほどその場で静止するため、外野手の場合ファインプレーに失敗すると打球の処理に多大な支障をきたすことになる。なおCOMはファインプレーの動作はしない。エラーに関しては『プロ野球ワールドスタジアム (PCE)』にて記述したため省略。
  • 「好調選手」システムが導入された。対人・COM戦ともにスタメン野手8名の中からランダムで2名が「好調選手」となり、本塁打データが20本増し*1で計算される。また7回になると「ラッキー7」ということで、表裏ともに全選手が好調選手となる、打席に立った投手も好調選手となるため、投手でも本塁打を打てるようになった。ただし既に好調選手であった場合、「ラッキー7」時の打撃データ上乗せは無い*2
  • タイトル画面でセレクトを押してカーソルを1周以上させることにより「先攻びいき」「後攻びいき」というものが登場、「ひいき」された側は全選手が好調選手となる一方、されなかった側はラッキー7による恩恵が受けられなくなる他、得点するとブーイングのような効果音が起こり、ホームラン時にも歓声が起こらなくなる。ただし試合開始時の好調選手はひいきされない側にも適用される。
  • チームエディット機能が搭載され、予め用意されたサンプルチームのデータを自由に変更しナムコスターズと入れ替える形で試合に使うことができる*3。選手名に関しては制約は無いが、投手・打者ともデータに上限・下限が設けられている他、選手全体のパラメータの合計値が定められているため、全選手を能力を高く設定するといったことはできない。
  • 試合結果を報じる情報媒体が「ナムコットスポーツ」から「NAMCOT SPORTS NEWS」へと変更され、球場別に登場する4人の女性キャスターが番組を担当する。この他、従来作にあった試合結果によって算定された年俸も引き続き表示されるが、1Pモードの仕様変更に伴いパスワードは表示されない。なお優勝した場合は球場に関係なく、『トイポップ』に登場する「アチャ」がニュースキャスターを務める。

評価点

  • 「好調選手」システムの導入。好調選手には本塁打データが20本上乗せされる仕様のため、従来作に於いて代打と交代させられるケースもあった下位打線の選手にも、活躍の場が与えられるようになった。
  • 選択チームに12球団が出揃った。単独チームとして選択できなかったF・O・H・Buチームがそれぞれ独立したため、これら4球団のファンにとっては嬉しい仕様変更。
    • 本作が発売された1988年を最後に経営権がダイエーに譲渡されたため、本家ファミスタシリーズでは消滅した南海ホークス(もどき)が選択できる唯一の作品となった*4
  • 成功すると爽快なファインプレー。通常操作ではあと一歩届かないような打球もファインプレーで処理できるようになり、打撃時のみならず守備時もプレイヤーの操作技術の幅が広くなった。
  • 塁タッチ(ボールを持った野手を指定した塁まで移動させる操作)の移動スピードの上昇。従来作では塁タッチの動きが遅いため、狭殺プレーとなった場合走者を追い詰めることが難しかったが、本作ではその動作が非常に速くなり、走者が挟まれるとほとんどの場合タッチアウトとなる。
  • 「ひいき」の要素でハンデ設定ができる。対人戦で彼我の実力差がある場合にそれを補ったり、1Pモードが難しいあるいは物足りないプレイヤーの難易度調整に利用できる。
  • 選手名に使われる文字数が1文字増え5文字までとなった。濁点・半濁点も1文字とみなされるため、この1文字の差は大きい。
    • …筈なのだが、肝心の選手名が偽名に変更されたため、さほど生かされていない。
    • もっとも、偽名自体は妙な味わいのあるものも多く、『ファミスタクライマックス』で実在OB選手が当時の偽名を使用してナムコスターズ所属選手になるなど、ある意味でシリーズを象徴する要素となっていった。

問題点

  • 1Pモードに於けるパスワードの廃止。優勝するためには最終戦まで電源を切らずに勝ち進む必要があり、1試合平均20分としても13試合で4時間半程度かかるというハードなシステムとなった。中断したい場合は、試合中にタイムをかけるか試合後のスポーツニュース画面やオーダー変更画面などで電源を入れたまま放置するしかなく、ハードウェア的にも電気代的にも優しくない要素となった。
  • すぐ疲れる投手。
    • 投手が4人から6人に増えたのはいいが相対的に個々のスタミナが落ちており*5、速球もフォークも使わずスローボールのみでも早い投手は3回で疲れ始め、結局継投に頼らざるを得ない。しかし先発投手を全員継投で使ってしまうと、次の試合ではリリーフ投手2人で凌がなくてはならないという苦しい状況に陥る。
      • 投手が無駄遣いできない関係上、回の先頭やチャンスで投手が打席に立ったときにも安易に代打を出すことができず、打線に明確な穴を抱えたままでの試合運びを余儀なくされる。
    • 前作まではパスワードが投手の登板のデータを記録しないことから、リセットしてパスを入力すれば同じ投手を連投させることができたが、上述の通りパスワード自体が廃止されたためこの手段は使用できなくなった。
    • CPU側はそんなプレイヤーの事情などお構いなしに、過去作同様どのチームも先発にはチーム1のエースをぶつけ、継投には控えの先発投手を惜しみなくつぎ込んでくるのだから余計にタチが悪い。
    • このため毎試合コールド勝ちを狙うつもりで相手投手を滅多打ちにし、味方投手の負担を軽くするプレイが要求される。
  • 失敗するとドツボに嵌るファインプレーと、手間のかかるチームエディット*6
    • 前者は「打球に近づいてキー入力をする」という仕様であるため、十字ボタンとボタンの同時入力さえすれば、野手は打球の方向に関係無くダイビングなどの動作をする。このため十字ボタンの入力をミスすると、打球は右なのに野手は左に飛ぶ、正面のゴロをジャンプしてかわすといった常識外の守備行為を取ってしまう。
    • 後者に関しては、本作はバッテリーバックアップ機能を搭載していないため、電源を切るとエディットしたチームは消えてしまい、一から作り直しとなる。AまたはBボタンで平仮名を一文字ずつ順繰り逆繰りする仕様のため、選手名データの再入力にはかなりの時間を要する。
  • 野手の送球が非常に遅くなった。内野安打や盗塁の成功率が高くなった上、打球が外野に飛ぶとほぼ長打が確定する。その際カットプレイ*7を用いなければ、走者一掃・ランニングホームランも容易に出来てしまう。
    • 翌年以降では送球スピードが元に戻されている。

総評

ファインプレーや好調選手システム、チームエディットなど、現在の野球ゲームでは定番となった要素を導入したことは評価に値するが、一方で無視できない粗も目立つ。特にシリーズのメインである1Pモードのパス廃止は、休み無しでプレイしても同モード攻略まで3~4時間はかかるため、「1日1時間」といった具合にゲームの時間が決められていた当時の子供にとっては大きな痛手となった*8


余談

  • 前作でも見られた阪神(Tチーム)への優遇措置は今作でも健在。この年の開幕早々1カ月で帰国・退団したバース(ゲーム中の登録名「ばうむ」)が収録漏れしていないどころか、全盛期に近い能力で代打に入っている。
    • 現実の阪神は2年連続の最下位に終わり、いよいよ暗黒時代に差し掛かる時期であり、バースの退団に続いて掛布がこの年を最後に引退した(こちらはほぼ史実通りに、能力を落としたうえで代打に入っている)。以降の作品では実際の戦績低迷に伴い弱体化が進み、『'92年度版』ではV9時代の巨人を再現した「ビクトリーズ」とともに85年の日本一達成時の阪神を復刻させた「ダイナマイツ」が登場。
    • なお、史実において「バースの再来」と呼ばれ、その穴埋めを期待されたものの遠く及ばない成績に終わったルパート・ジョーンズは収録漏れとなっている*9
  • ナムコスターズが前作までに比べ妙に強くなっている。相変わらず極端に足が速い「ぴの」に加えて、4番「ぱつく」が打率.332、本塁打32本というメジャーリーガーズ以外の4番が霞むほどの大打者に変貌し*10、投手陣も他球団に見劣りしない成績となった。が、さすがにスタッフもやりすぎだと思ったのか、翌年以降は再び弱体化。「ファミコン時代では最強」との声も。
    • 「ぴの」の陰に隠れて目立たない存在だったが、それに次ぐNo.2の俊足で初代では1番を務めていた「まつぴ」が姿を消した。
    • 前年度版にいた元々二次版権キャラ「るうく」「さんま」が権利関係の問題かいなくなっている。
    • 「きやらか」がこの年続編の'88が発売されたことを考慮してか「はちじゅうはち」を加味して「きやらはち」にモデルチェンジしている。これは少々わかりにくい。
  • 本作から『'90年度版』まで、1塁塁審・3塁塁審がなぜかコーチャーズボックス*11に立っている。
    • 厳密には塁審の立つ場所自体は変わっておらず、その位置にボックスが新たに追加された形となっている。
  • 内野手の足が極端に速くなったが、実は思考パターンは変わっておらず、それ以上に速い選手なら前作までと同様、「セカンドが追ってきたら1塁まで戻って再び2塁まで走り出すと、それを捕球したショートは誰もいない左中間に投げてしまう」が発生する。
    • ただそれをやるためには、エディットで1人に走力をほぼ全振りする必要があるが。
  • 選手名が変名された中で、わかりにくさが際立ったのが「近鉄バファローズ」の「阿波野秀幸」の変名「むぎの」である。
    • 「粟」と「麦」の穀物繋がりで付けられたのだが、当時のゲームプレイヤー層は「粟」自体なじみのないものだったので無理もない。そもそも「阿波野」であって「粟野」ではないため、当時の大人でもそれが理解できたかどうか微妙である。
  • それまでファミスタシリーズは『ファミリーコンピュータMagazine(徳間書店)』の「ファミマガゲーム大賞」ではスポーツゲーム部門のトップに輝いていたが、本作は初めてそれを取れなかった。
    • というのも上記企画は前年12月から当年11月発売作品が対象となるため、本作は1989年度(1986年12月発売の『無印』は1987年度、1987年12月発売の『'87』は1988年度)として扱われ、異例の夏季発売となった次作『ファミスタ'89 開幕版!!』と同年度で被ってしまったことによる。その結果、最新作である次作にトップを奪われ、本作は5位にとどまった*12
  • ファミスタ30周年記念作品である3DS『ファミスタクライマックス』の初回特典として本作をベースにした「ファミスタレトロ」がダウンロードできるコードが付属していた。
    • レトロではチームのユニフォーム(ホーム・ビジターの2種類あり)や選手データが2017年度相応に変更されている他、球場の名前に変更が加わっている。
      • 選手名は当然実名であり、名前が長い選手にも対応している。
      • また、メジャーリーガーズ(Mチーム)は千葉ロッテマリーンズ(本作発売当時はオリオンズ=Oチーム)と頭文字が重複するため、後年の作品で使用されたチーム名「アメリカンズ(Aチーム)」へと改称された。この他、横浜DeNAベイスターズ(本作発売当時はホエールズ=Wチーム)は、『クライマックス』より前に販売されたファミスタ30周年記念グッズでは「B」一文字で表されていたが、『クライマックス』本編やメディアの表記に合わせ「DB」となっている。
    • 本作がベースである為、パ・リーグ球団を選択してもDH制はなく投手が打席に入るが、日本ハムの大谷投手のみ「二刀流」を反映し、打者能力が高めに設定されている。CPU操作時はアルゴリズムの関係上、リードされているとすぐ代打を出されてしまうが。
    • 当然といえば当然なのだが、上記変更点以外の部分は問題点も含め基本的に据え置かれている。
      • 中断セーブにも非対応。好意的に見れば当時と同じ感覚でプレイできるともいえるが、果たしてこの仕様を残してありがたがるプレイヤーはいるのだろうか?3DSに移行した分テレビの占有は起こりえないし、中断時の電力使用量の問題もスリープ機能で軽減できるが…。
  • 本作はシリーズで初めて単独でCMが制作された。
    • 一見地味臭く感じられるようなCMだが、当時ナムコのCMは1987年後期作品から続いていた「ナムコ隊シリーズ」が定番だったが、敢えてそれを起用しない点に拘りが感じられる。
    • またCMでは「ファミスタはちはち」と呼称していたため、この頃から愛称「ファミスタ」を正式名将に採用する予定があったとも取れる。

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最終更新:2024年03月09日 15:21

*1 ファミコン通信1988年12月(日にち不明)号より。

*2 マル勝ファミコン1988年12月号より。

*3 チーム名表記は"Y"(Yours)で、ユニフォームはグレーと白。

*4 ファミコン以外の作品では初代ワールドスタジアムやMSX版に南海ホークスモデルのチームが登場している。

*5 プロ野球ファミリースタジアム'88必勝攻略法(双葉社刊)より。

*6 共にファミコン通信ゲームカタログ1991より。

*7 野球用語で、野手が投げた球をほかの野手が捕り、目的の塁の野手に投げる、リレーのような送球。中継プレイとも。

*8 ファミリーコンピュータMagazine1989年1月号より。

*9 ただし、バースはこの年に限って言えば22試合で本塁打2本とジョーンズ以上に活躍できていない。また以後阪神入りした外国人で特に期待され「バースの再来」と呼ばれた者が以後30年以上で何十人といたが皆結果的には平凡以下の成績に終わった者ばかりで(後に彼らは「再来軍団」と揶揄された)その中ではジョーンズは打撃だけならそこそこの成績は残した方。

*10 前作までは打率はギリギリの3割、本塁打20本と中距離ヒッター程度でしかなかった。

*11 走者に指示を送る攻撃側のコーチが立つ区画。

*12 2位『超人ウルトラベースボール』(カルチャーブレーン)・3位『激闘プロレス!! 闘魂伝説』(テクモ)・4位『究極ハリキリスタジアム平成元年版』(タイトー)。