注意:ここではアーケード版『餓狼伝説3 遥かなる闘い』(「判定なし」)と、その移植であるNCD版、SS版(共に「劣化ゲー」判定)について紹介する。


餓狼伝説3 遥かなる闘い

【がろうでんせつすりー はるかなるたたかい】

ジャンル 対戦格闘アクション
対応機種 アーケード(MVS/業務用ネオジオ)
発売・開発元 SNK
稼働開始日 1995年
プレイ人数 1~2人(同時プレイ)
レーティング CERO:B(12歳以上対象)
配信 バーチャルコンソール
【Wii】2010年4月20日/926ポイント
アケアカNEOGEO
【PS4/One】2017年8月31日/823円
【Switch】2018年2月15日/823円(税8%込)
判定 なし
ポイント 過去作よりも操作性が悪化&大味かつ微妙なシステムとバランス
裏技を使わないと見れなかった潜在能力
あまりウケが良くない新キャラクター達
不親切でハードルが高すぎるCPU戦
一方で演出面は高い完成度で高評価
後の『リアルバウト餓狼伝説』シリーズのプロトタイプにあたる
餓狼伝説シリーズ

概要

過去3本続けて大ヒットした『餓狼伝説』シリーズの通算4作目にあたる作品。
時系列そっちのけのお祭りゲーだった前作『餓狼伝説スペシャル』(以下SP)と違い、本作は時系列的には『餓狼伝説2 新たなる闘い』からの流れを汲む正統な続編とされている。


特徴

  • 本作は多くの新システムを搭載した意欲作である。後のシリーズにも引き継がれた、代表的なシステムを以下に例示する。
    • 新ラインシステム「オーバースウェー」と「クイックスウェー」
      • 本作の最も特徴的なシステム。本作のラインシステムは前作までの2つから一つ増え、中央・奥・手前の3つが存在する。しかし、普段通りの動きが出来るのは中央のみで、手前・奥のラインは「オーバースウェー」というシステムで利用する補助的なもの。
      • A+Bを同時に押すと手前側に、B+Cを同時に押すと奥側に移動する。移動している間は中央にいる相手の攻撃は当たらない。ラインに移動している間は前後に移動できる他、中央ラインに復帰しながら攻撃を出すこともできるが、ガードやジャンプなどは不可能。
      • 前作では別ラインは遠くにあり、跳躍するように移動し時間がかかっていたため今ひとつ使いにくかった(ガン逃げも可能だった)が、本作のライン移動はスウェー*1という名前の通り動作がコンパクトなため、回避→反撃の流れが行いやすい。
      • 相手が手前や奥のラインに移動している間、自分はライン移動できず、ライン移動操作をすると代わりに「対ライン攻撃」としてそのラインに向けて攻撃を出すことができる。(手前ラインにいる相手に攻撃するにはA+B同時押しを行う)
      • 回避に使うだけでなく、一部の攻撃には相手をライン側に吹き飛ばす効果もあり対ライン攻撃で追撃も可能など攻撃的にも使えるシステムでもある。
      • 本作限りの「クイックスウェー」というシステムもある。レバーを前斜め下に一瞬だけ入れることで、一瞬だけ上半身を(手前側の)ラインに移動させながら避けるというもの。クイックスウェー中にボタンを押すとクイックスウェー専用攻撃を出せ、相手を(奥側の)ラインに吹き飛ばす効果がある(ものもある)。
    • 前ダッシュと小ジャンプ(と大ジャンプ)
    • 特定のボタンを順番に入力することで連続攻撃ができる「コンビネーションアーツ」
    • 超必殺技をも上回る強力な技「潜在能力」
      • 本作の潜在能力は超必殺技の上位版と位置付けられており、基本的に超必殺技と同じ技の強化版となっている。
      • ただし発動条件は非常に厳しい(後述)
    • 必殺技…と見せかけて実は「フェイント」
      • 必殺技のコマンドで、別に割り振られたボタンを押すと、その必殺技の出掛かりだけが出る。これで(隙を見せて)相手を誘い込み、迎撃すると言う戦法も有効。
  • キャラクターは使用可能キャラクター10人+ボスキャラクター3人。主人公3人(テリー・ボガード、アンディ・ボガード、ジョー・ヒガシ)と『2』の人気キャラクターである不知火舞、『SP』で特に人気を博した悪役のギース・ハワードを残して一新されている。
    • 『1』に登場した(『SP』には登場しなかった)カポエラ使いリチャードの弟子であるボブ・ウィルソン、重量級かつ技巧派のキックボクサーのフランコ・バッシュ、コマンドサンボ使い*2の女性キャラクターのブルー・マリー、九州弁が特徴のヌンチャク使い*3の香港の刑事ホンフゥ、編笠を深く被った僧侶のような見た目で呪文のような攻撃を繰り出す望月双角、の5人の新キャラクターが登場。
      旧キャラクターも衣装や技が変更されたり、中には声優が変更されたキャラクターもいる。
      • 本作のストーリーはいわゆる格闘大会ではなく、10人それぞれが目的を胸にサウスタウンに乗り込むという『龍虎の拳』に似たストーリー展開が行われる。
    • ボスキャラクターは日本出身の元ヤクザ・現闇のブローカー*4の山崎竜二と、山崎と行動を共にしており、本作のストーリーの中心となる「秦の秘伝書」を所有する幼い二人の秦兄弟(秦崇秀と秦崇雷)。
      • 通常は使用できず、家庭用版で条件を満たせばプレイヤーも使用可能だが、アーケード版でも家庭用ネオジオのメモリーカードを使うことで使用できた模様。

問題点

  • 多彩な新システムを持つ本作ではあるが、まだ作りが粗かった。
    • オーバースウェーシステムはメインライン側がオーバースウェー側に対抗するための操作が複雑で面倒。そのため余程慣れていない限り、オーバースウェー側が強すぎ、対人戦のバランスは逃げ有利となる。
      • ただし、『SP』のライン移動システムはこれよりさらに逃げ有利であり、自粛しなければまともな対戦が成り立たなかったことを付け加えておく。
    • コンビネーションアーツはほとんどが初段をガードされると止まってしまう物ばかりで、使い勝手が悪い(このゲームは投げ以外にガード崩し手段がほとんど無い)。
      • さらには「普通に密着して出しても最後まで当たらない」という物だったり、密着してるのであれば「立ちB×5」の方がコマンドが簡単な上に減る等、調整が超中途半端。
    • 出せる条件が厳しすぎて実戦ではまず使えない潜在能力。
      • 通常は超必殺技を出した時に一定の確率で変化するというものなのだが、その確率は1/1024という変化しないも同然の低さ。
      • それどころか実際はプログラムにミス(確率を抽選するプログラム自体はあるが、抽選先のデータが全部ハズレ)があり、超必殺技から変化することは決してない。近年(2021年現在)発覚したことだが、以前から変化の報告例も全く見受けられなかったため、疑っていた人も少なからずいた模様。
      • 裏技*5を使えば超必殺技とは別のコマンドで任意に潜在能力を出せるようになる……のだが、こちらは体力低下時かつ1ラウンド1回しか出せない上に、キャラクターによっては「挑発が必要」「タイムが奇数の時限定」「前方ダッシュ減速中」といったような特殊な発動条件が指定されており、裏技使用時でさえ出すのもヒットさせるのも困難になっていたりするため、ほぼロマン技と化している*6
      • 特に秦崇秀の潜在能力に至っては「キャラ同士の距離が一定の状態でコマンドを入力する」というものだが、発動する距離では技そのものが命中しない。相手が壁近くに位置取って、技を出した瞬間にバックステップしてもらい、キャラクター間の距離を適切な位置まで調整するという、相手の協力が不可欠な技となっている。もっとも崇秀はボスキャラクターで、家庭用でしか使用できないが。
      • また、フランコの潜在能力はフルヒットで相手の体力を9割奪えるのだが、それが最後まで繋がるのは5キャラクターのみ(しかも状況限定)*7で他のキャラクターにはまともにヒットしない。おまけに追加入力のコマンドも違うので、通常版から変化したとしても咄嗟の判断が間に合わない可能性大。
      • 以上のように実用性が低いためか、上記2名の潜在能力のみ確率変化からの除外対象とされており(実際は上述の通り全キャラ確率変化は起こらないわけだが…)、攻略本でも「フランコと崇秀には潜在能力が存在しない」とされていたりした。
  • キャラバランスもまだまだ問題点が目立つ。
    • テリーの立ち状態の相手に(しゃがみ強P>強クラックシュート)×nという永久コンボが非常に良く知られている。
      • 前述の通り崩し要素が少ないことや、座高が普通のキャラのしゃがみ状態に決まらないこと、ジョーのようにくらい判定が後ろ気味のキャラクターに決めづらいことなど、実戦ではそうそう簡単に決まるものではない。強クラックシュートはガードされても有利だったり空中の相手にも2HITしたりと、強力な連携でもあるが、前述のオーバースウェーを使えば全キャラ簡単に固めを抜け出せることもあり、一般に思われているほど(=ゲームバランスを完全破壊しているほど)強力というわけではない。
      • ちなみにかのゲーメストによると最強キャラはボブとフランコとテリーの3名。また、餓狼3のゲーメスト杯では、テリーは全員敗退している。
  • 操作性の悪化
    • 必殺技の入力がシビアで、明らかに過去作よりも技が出しづらくなっている。
  • 難易度が高い上に不親切なCPU戦
    • 過去作や同時期のSNK、ネオジオの格闘ゲーム全般に言える話だが、本作のCPU戦の難易度は当時の格ゲーの中でも高い部類に入る。しかも本作は真の(キャラ別)エンディングを観るにも以下の厳しい条件が必要であり、ストーリーを楽しみたい一般層をふるい落としていたこともあって、初心者や一般層からは不評だった。
    • その条件とは、勝利時、各ラウンド毎にプレイの腕前のファイティングレベル(S~Eランク)が表記されるのだが、この結果によりCPU戦にてエンディング、及びボスの登場数が変化するようになっている。ランクが条件規定値より低いと、正規のエンディングが見れないばかりか、真のラスボスである秦兄弟と戦えずにゲームが終了する事すらあり得る。
      難易度が高いことも相まって、この仕様は、コンティニューを重ねてでもクリアとエンディングを目指したいプレイヤーの根気と努力に水を差すものだと批判された。
      • より良いエンディングを目指すなら、アクシデントの山崎戦(1回目)には要注意。彼をストレートで倒すか、1本取られてしまうかで大分条件が変わる。当然、ストレートで勝ったほうが良い結果になりやすい。
      • このようなエンディングに条件が必要な制度は本作の時点で不評を買っていたにもかかわらず、同社だと翌年の『サムライスピリッツ 天草降臨』(天サム)でも採用してしまっていた*8
      • そしてその厳しい条件を満たした末に待っている真のボス、秦兄弟はというと....やはりそれまでの条件自体が厳しくそもそも辿り着くまでの道中の難易度も高いだけあって、弟・崇秀と兄・崇雷どちらも非常に手強い。技構成こそ主に無敵対空に飛び道具に突進技とオーソドックスであるものの、そのどれもが隙が少なくて威力も高めと基本CPU専用であるのを前提にしたような調整で高性能。加えて超反応である。
    • 特定の隠しコマンドを入力してスタートすることで「EXPERT」モードが遊べるようになり*9、このモードでは道中の結果問わず最後に必ず真ボスの秦兄弟どちらも登場、即ちクリアだけでエンディングが確定しているが、その引き換えとして、モード名の通り、難易度が基板設定から選べる最高のレベル8をも超える鬼のような難易度に変化し、結局のところストーリーを楽しみたくてエンディングを見たい一般プレイヤーへの救済措置にもなっているとはお世辞にも言い難い。
    • 流石に不評が集まったせいか、次回作では大分難易度が抑えられ、キャラ別エンディングを観るに必要な条件も撤廃された。なお、ファイティングレベルによる評価制はは最終作『餓狼MOW』まで存続*10
      • キャラ別エンディングを観るに条件が要る制度は『餓狼MOW』で復活するが、こちらは本作程の高難易度でもなかったこともあり、そこまで強く批判されていない。
  • 山崎のサドマゾバグ
    • アクシデントと表のラスボスとして二度戦うことになる山崎竜二の当て身技「サドマゾ」の反撃部分を回避した場合、多くのキャラで挙動やダメージがおかしくなる。
      • ギースの「ダブル烈風拳」の初段部分のエフェクトと攻撃判定がなくなる、ホンフゥの「カデンツァの嵐」の初段ヒット時のロックが無くなり乱舞なのにつながらない、など一方的に不利になるキャラもいれば、アンディの「蜘蛛絡み」はダメージが増加、など恩恵を受けるキャラもいる。
      • 山崎側は最後に受けた攻撃の判定を残しているらしく、ライン移動攻撃を受けた後別の攻撃でとどめとなった場合は画面手前や奥に吹き飛ぶ。場合によっては特殊ダウン演出後山崎が立ち上がりゲームがフリーズする。

キャラクター関連

  • 過去作から大半のキャラクターが入れ替わり、新キャラクターが増えた反面、リストラされたキャラクターも多かった。決して新キャラクターの魅力が薄かった訳ではないが、過去作に比べると人気が伸び悩んだ感は否めないところ。
    • ブルー・マリーや山崎竜二は後にKOFに抜擢されるほどの人気を獲得したが、その他の新キャラクターはぱっとしなかった。ラスボスもひねくれた双子(『ドラゴンボール』テイスト)はあまり受けなかったようで、次作品ではギースがラスボスに返り咲いている。
    • フレディ・マーキュリーそっくりなフランコを筆頭に、男性新キャラクターの人気は全体に振るわなかった。
    • ちなみに不評の秦兄弟、設定身長が169㎝(次回作では170㎝)もあるのだが、ほぼ同じ身長のアンディの胸の下程度と、見た目はどうみても小学生程度にしか見えない。
    • また、不知火舞のおなじみのあのエロコスチュームが露出控えめになりレオタードに腰巻き布などの装飾を装着したような衣装に変更されたが、これも一部ファンからはやや不評。ただこちらはキャラクター像(イメージ)自体そこまで変わっておらず、一方で「ファッションセンスが良くなった」「露骨なエロさが消えて爽やかさが増した」と評価する者もいる。特に女性ファンやコスプレイヤーからは「旧コスも良かったが、これはこれで可愛い」と受け入れられた模様。これに関連して、前作まで足袋だったのがほとんど裸足になってしまったのは当時としては衝撃的だった。
      • 結局このコスチュームで登場したのは次回作までで、そこからは再び旧コスチュームに戻っている(厳密には過去のものとは異なる)。まぁほとんど裸足なのは変わらずだが…。
        一方で、一部ファンからは本作のコスチュームも偶には(3D作品のアナザーコスなどとして)復活して欲しいという声もある。
  • 前作から引き続いて登場している5人のキャラクターの内、実に3人までが声優変更されている(例:アンディとジョーがアニメ版の難波圭一氏と檜山修之氏にそれぞれ変更。また、ギースはコング桑田氏に変更)。なお、ビリー・カーンはプレイヤーキャラクターではないが、難波氏の声で開始デモを喋っている。
    • また、新キャラクターのブルー・マリーには生駒治美氏が採用されており、「SNK格ゲー=生駒治美」の印象を植え付けた(『龍虎の拳』シリーズのキング(『初代』はユリも。当時の『KOF』音声は再使用)、『サムライスピリッツ』シリーズ(ナコルル、シャルロット、他)。
  • ストーリー面では「秦の秘伝書」がクローズアップされているのだが、「(ギースが絡むのは当然として)テリーら旧キャラ4人に関係ない」と言う部分が「『餓狼伝説(=主人公はテリー&アンディのボガード兄弟)』として相応しくない」と、マイナス要素になっている。
    • 分類するなら「巻き込まれ型」のストーリーの主人公。一応、「ギースが生きていた(サウスタウンに帰ってくる)」という点から、ボガード兄弟(と、縁の深いジョー東と不知火舞)が関わる余地はあるのだが、それ以上に新キャラクターの方(5名中の3名、ないしは4名)が必然性が高いので、旧キャラクター4人に対する違和感が払拭できない。
      • 喧嘩好きな迷惑キャラであるジョーはさておき、テリー、アンディ、舞が互いに闘う理由がよくわからない。ギースという共通の敵がいるのなら共闘した方が良いと思うのだが…。
      • もっとも、舞は後述のように当初本作登場する予定はなかったが急遽復活参戦することになったため、はっきりと戦う理由が無いのも已む無しとも言える。
    • ホンフゥは山崎竜二を追っており、フランコ・バッシュは山崎に息子を人質に取られている。望月双角は秦の秘伝書を追っており…と、この3名こそ主役的なポジションにある(ブルー・マリーはギース絡み)。その点、カポエラ使いのボブ・ウィルソンは「リチャード・マイヤーの後継者」以外に取り上げる部分がない(メインストーリーから見た場合に)。なお、フランコとホンフゥは、天獅子悦也氏の漫画でクローズアップされている。
  • 主人公格のジョー東だが、マリーに「パンツ一枚で町をうろつくヘンタイ男」と指摘される場面があったり、対戦前後でのメッセージ画面での顔が顎がしゃくれたギャグ顔になっていたり、他の面子のスタイリッシュな衣装に対してジョーは頑なに硬派なムエタイの衣装のままで浮いていたり…等々、ジョー自体の方向性が徐々に怪しくなり始めている点もある。
    • これ自体は前作時点でボガード兄弟に対し「2人そろって目立ちすぎなんだよ」「今日からジョー伝説で行くからよろしくな!」と言っていた事から既に兆しが見えていたのだが、今作で噴出したと言える。
    • そして次回作での主人公格からの降格や、KOFでの尻出し挑発でのイロモノ化というように、ジョー自体の扱いも酷くなっていくのであった。
    • 企画の初期段階ではプレイヤーから消える予定すらあった。
    • 一方で本作からジョー役を担当している檜山氏は、本作ではオープニングデモのナレーションも担当している。こちらは渋くかっこいいと好評。

評価点

  • グラフィック、背景、BGMを始めとした各種演出面の完成度は非常に高い
    • 特にライン飛ばしKOの演出やストーリーが凝っているなど、ゲーム部分以外の作りはしっかりしていた。
      • ライン飛ばしKOの演出:手前ラインに吹き飛ばされると、プレイヤー側に向かって敗者が飛んでくる。逆に、奥ラインに飛ばされた場合は、障害物(背景)に敗者が激突し、それが再現される(例:舞ステージで奥に飛ばした際、水族館のガラス部分に当てるとにヒビが入るが柱部分だと当たるだけ。ジョーステージで奥に飛ばすと、通常は川に落ちるが、サンドバッグに当たる場合、ちゃんとこれに当たるなど)。
      • ラインではないが、マリーステージの場合、アッパー系の技でフィニッシュすると上方に高く浮き上がり、天井に当たりシャンデリアごと落ちてくる。
    • 他のグラフィックについては、キャラクターの個性を立たせる部分は、マップでのアイコンにまで配慮されている。通常のキャラクターは必殺技など(例:テリーならバーンナックル、アンディなら斬影拳)での移動が表示されるが、ギースは高級車に乗っている、と言うものである。
    • また、パーフェクト勝ち専用のグラフィック(演出)は、餓狼シリーズでは本作で初めて採用された。勝利デモのセリフはどの技で倒したかで4種類ある。なぜかフランコのみ日本語字幕の英語音声。
    • 演出の例としては、テリーまたはジョー東で勝ち進むと、アンディ戦の前に「舞がアンディに泣きついている」という演出がある(このステージ順は固定)。また、当然ながら(?)テリーらがボブと戦う際にはリチャードも登場し、対戦メッセージを送ってくる。さらに、ボブはギースの事を聞き知っており、ギースに険しい表情で挑戦の意思を露にする、など。ギース関連では、テリーらの場合、ビリーが棒(三節棍?)を持って立ちはだかる、など、細かく設定されている。
    • 各種デモムービーや、一枚絵のみだがエンディングの評価も高い。
      • オープニングデモ(前項でも記したようにジョー役の檜山修之氏がナレーション(語り部)、主に山崎とテリー、そしてギースにスポットを当てた内容)、主人公3人ことテリー、アンディ、ジョーでギースを倒した後の山崎戦までの専用のデモや、山崎以降のボス戦で流れるデモなどはよく描き込まれており、オープニングを始めとしたデモに見られる渋い雰囲気もストーリー性を引き立てていて好評。
  • キャラクター面(ストーリー面)においては、「ギース生存」が正史に組み込まれた事が大きい(前作『SP』は時系列を無視したお祭りイベントだったため、「ギースは『1』で死んでいる」が公式設定だった)。
  • ボスのひとりである山崎竜二は、主にギースとはまた異なった性格及びバックストーリーを持つ悪役としての一面や、ハードボイルドな渋い雰囲気が人気を博し、『KOF』シリーズや『CAPCOM vs SNK』シリーズなどにも登場している。
  • また『SP』に続いて、隠しキャラクターが使用できる仕様である事も特筆に価する。
    • 『SP』と『龍虎の拳』では対戦のみ条件付きで使用可能、その他の多く(『餓狼伝説』『餓狼伝説2』『龍虎の拳2』『サムライスピリッツ』『真サムライスピリッツ』)では使用不可能、と言う点から大幅にグレードアップされ、プレイヤーの楽しみが増えている。
      • 使えるのは基本的に家庭用のみで、アーケードでは一応ながら使えるもののメモリーカード対応筐体かつクリアデータの入ったメモリーカード必須というハードルの高さから、極端な強キャラがゲーセンで理不尽な暴力を振るう事もなかった。
  • キャラクター選択画面も「並んだ四角いアイコン」では無く、『餓狼伝説2』のような「全身絵のキャラクターが並んでいる」という、各キャラクターの個性を表すもので好評。

総評

新システムの調整が甘く、対戦バランスは悪い。
とはいえ、前作『SP』では自発的ライン移動や弱P連打コンボなどを自重しなければまともな対戦が成り立たなかった事を考えれば、マシにはなっている。
前ダッシュと小ジャンプの採用やライン移動の高速化により攻めるゲームを目指した事は、後のシリーズや『KOF』シリーズの成功に繋がっており、本作の評価点ともいえる。
キャラクター面でも不満は多かったが、マリーと山崎という人気キャラクター2人も輩出している。

失敗も多いが、色々な意味で後のシリーズの礎になった一作と言えるだろう。


その後の展開

  • その後のシリーズでは本作の路線を概ね引き継いでいる。
    • ただし、問題点の多かった本作の新システムは続編の『リアルバウト餓狼伝説』シリーズ以降で大幅にブラッシュアップされて改善され、好評を得る事になった。まさに「失敗は成功の母」というべき存在だろう。
  • キャラクターについての不満が多かったためか、この後の『リアルバウト餓狼伝説』シリーズでは過去作の人気キャラクターが復活したり、さらなる新キャラクターが追加されることになる。

余談

  • 当時アーケードで人気を二分していたSNKとカプコンの格闘ゲームシリーズにおいて、長らく「3(ないしはIII)」を冠したナンバリングタイトルが無く、巷では冗談めかして「格ゲーシリーズに3は出ない」と言われていたが、本作によってそのジンクスは打ち破られた。
  • 過去作ほどにはヒットしなかったが、その背景にはKOFシリーズの登場があったことは忘れてはならないだろう。(KOF94は94年8月、餓狼3は95年3月、KOF95は95年7月にそれぞれ稼働)
    KOFの登場により、別に「餓狼」でなくでも餓狼の人気キャラクターが使えるようになっていたのである。
    同じキャラクターを使うなら、リョウ・サカザキなどがいて、見た目も派手で分かりやすいKOFを遊ぼうと考えたプレイヤーが多かったのは致し方ないかもしれない。
    • それでも餓狼は餓狼で続いていくわけだが、これ以降SNKのメイン格闘はKOFに移り、餓狼やサムスピはKOFの後塵を拝することになる(龍虎は消滅)。SNK倒産までこのパワーバランスが変化することはなかった。
    • しかもSNK倒産により、『餓狼伝説』および『龍虎の拳』の製作スタッフは離散してしまったため、両者ともシリーズ復活は絶望とみられている。
  • 開発中は舞は本作に登場する予定ではなく、新女性キャラクターとしてテリーのファンでキムの弟子の「アリス・クライスラー」が登場する予定だった。
    • しかし舞が登場することが決定したためその煽りを食らってアリスは没になり、後の作品では背景キャラクターやストーリー上のサブキャラクター等で登場することになった。
    • その後、パチスロ餓狼伝説でメインヒロインの「アリス」として大幅にデザインを変えて復活するも、エロ要員だったことなどから批判を受けて、続編以降は「アリス・ガーネット・ナカタ」という名前でクライスラーとは他人の空似の別人ということになった。ただしテリーの真似をしているなどの設定は引き継がれている。
  • 本作のボブ・ウィルソンのステージの左端に草薙京と椎拳崇がゲスト出演しているが、よく見ないとわからない。
  • 本作で初登場して以降、様々な作品に出演する人気キャラクターとなった山崎竜二だが、本作ではラウンドコールはファーストネームの「竜二」となっている。経緯は不明だが、次回作の『リアルバウト餓狼伝説』以降はもっぱら「山崎」呼びで定着することになるので何気にレアである。

移植

  • ネオジオROM版
    • 当然ながら、ほぼアーケードからの完全移植である。
  • ネオジオCD版、SS版
    • 両者ともロード時間の長さがネックとなっている。SS版の本タイトルは、拡張RAM方式が定着する前の移植というのが災いした。詳細は下記。
  • その他は、Windows、PS2『餓狼伝説 バトルアーカイブズ1』、アケアカNEOGEO(PS4・XboxOne・Switch)にも移植された。また、Wiiのバーチャルコンソールでもネオジオ版が配信されていた。
    • 本来、本作は『リアルバウト』のプロトタイプにあたるのだが、ナンバリングタイトルであるためか『初代』から『SP』までの初期タイトル群の『アーカイブズ1』に収録されている。
    • 『アーカイブズ1』ではクリアデータこそ不要なものの、ボス使用にやはりコマンドが入力必須となっている。一応説明書に出現コマンドは記載されているが…。

餓狼伝説3 遥かなる闘い (NCD/SS)

【がろうでんせつすりー はるかなるたたかい】

ジャンル 対戦格闘アクション
対応機種 ネオジオCD
セガサターン
発売・開発元【NCD】
発売元【SS】
SNK
開発元【SS】 シムス
発売日 【NCD】1995年4月28日
【SS】1996年6月28日
価格 5,800円
判定 劣化ゲー
ポイント 例によってロードが長い(両機種)
潜在能力がようやく本来の仕様へ戻った(SS版)
バトル開始直後に謎の画面暗転(NCD版)

概要 (NCD/SS)

  • ネオジオCD版とセガサターン版は登場キャラクターの潜在能力のコマンドがアーケード版とネオジオROM版から変更されている。
  • 両機種ともBGMはアレンジ版となっており、本作で初めてSNKの他機種移植で共通のアレンジが採用された。
    • またED曲はボーカルアレンジ(歌:生駒治美)されており、本作以降CD版のボーカルアレンジ楽曲は『リアルバウトSP』まで収録されている。

評価点 (NCD/SS)

  • セガサターン版は拡張RAM無しでもゲームをプレイ可能。
    • 3か月前に発売されたセガサターン版『THE KING OF FIGHTERS '95』は専用拡張ROMが必要だったので、この点は画期的である。
  • またセガサターン版は潜在能力のプログラムミスが修正され、本来発表された仕様の通り超必殺技が変化するようになっている(それでもやはり1/1024という低確率ではあるが…)。その他、後述するネオジオCD版の暗転する不具合も修正されている。

問題点 (NCD/SS)

  • ネオジオCD版は、ハード独特の超絶長いロード時間にて大きな時間を待たされ、挙句の果てにバトルが始まる直前及び相手をK.O時に一瞬画面が暗転するという不具合がある。
  • 本体とCDのロットによっては、コマンドで秦兄弟&山崎を出した状態で遊んでいると、コピーガードが発動してセーブデータが飛ぶ場合がある。
    このコマンドを使うためには秦兄を倒したセーブデータが必要であり、この頃のSNKらしくその難易度が高いので、一度飛んでしまうと再出現させるまでかなり苦労する。
  • セガサターン版は、まだ拡張RAM発売以前であり読み込みが長い。
    • 拡張RAM発売以降のSNK作品が拡張RAMカートリッジを使用し良好な移植なのに対し、本作品はCD単体なのでロード時間はサターンとは思えない程長く、キャラクターのアニメーションパターンが大幅に削られている。また、処理落ちも多発する。

総評 (NCD/SS)

両者ともこの時期の移植版特有のロード時間周りで評価を落とした他、CD版は暗転が、サターン版は削られた部分や処理落ちがそれぞれ気にかかり良移植とは言えない出来となってしまった。サターン版に関しては潜在能力が本来の仕様に戻っている点が辛うじて評価できるだろう。


余談 (NCD/SS)

  • CD版は、あまりにもソフトを大量に作りすぎたせいで値崩れを起こし、ゲームショップでは一時期100円かそこらでワゴンに投売りされていた。
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最終更新:2024年02月10日 03:32

*1 体を反らせる動作のこと。ボクシングで回避動作として使われている。

*2 これに関連して本作では「関節を極めている」という演出の投げ技が導入されている。食らっている最中は痛がる吹き出しが出て、食らって起き上がった後も痛がる動作を行うなど演出も細かい。

*3 ジャッキー・チェンと映画『刑事物語』の武田鉄矢演じる片山刑事がモチーフとされている。顔はジャッキーに似ていると言われたお笑いコンビ・ウッチャンナンチャンの内村光良に似ているとも。

*4 厳密に言うと、主に武器や麻薬の密売などを行っているという設定。

*5 ラウンド開始前にABCD同時押し(ネオジオCD版ではACD、セガサターン版ではABX)を押し続けた状態で、開始時の「GO!」の文字が出るタイミングでスタートボタンを押す(連打でも可能)。成功すると、通常は白文字の名前表示が黄色くなる。

*6 テリーやギースなど実用的な技性能のキャラもいる。

*7 ジョー、舞、ボブ、ホンフゥ、ギースの5キャラ。なお舞とホンフゥに対しては上記の裏技で出す(テリーやギースと同じコンビネーションタイプ)場合、直前のコンビネーション攻撃をディレイ入力して出さないと空振ってしまう。

*8 天サムもCPUの難易度は高めかつ条件が制限時間以内に規定人数を倒す内容となっていたこともあり、「急かされる」などと評判はやはり良くなかった。

*9 入力に成功すると、本来は難易度レベルが表示されている(基板設定で非表示にも可)中央最下段に「EXPERT」と表示される。

*10 厳密には『餓狼MOW』の前作にあたる『リアルバウト餓狼伝説2』で一時的に撤廃されている。