Solatorobo それからCODAへ

【そらとろぼ それからこーだへ】

ジャンル アクションRPG
対応機種 ニンテンドーDS
発売元 バンダイナムコゲームス
開発元 サイバーコネクトツー
発売日 2010年10月28日
定価
(税5%込)
通常版 5,040円
限定版 コレクターズエディション
7,140円
プレイ人数 1~4人
セーブデータ 1個
レーティング CERO:A(全年齢対象)
判定 なし
ポイント 登場キャラは全て犬や猫を模した獣人
難易度易しめでサクサク進む王道的なストーリー
しかし物語は短めでやり込み要素もさほどない
「構想に10年、制作に3年、ワゴン売りに1週間」
世界観(?)は素晴らしく「雰囲気ゲー」との声あり
今に至るまでの嗜好層による根強い支持
予想外の真エンド
リトルテイルブロンクスシリーズ
テイルコンチェルト / Solatorobo / リトルテイルストーリー
戦場のフーガシリーズ
1 / 2


概要

プレイステーションで発売された『テイルコンチェルト』の流れを受け継ぐスピンオフ。構想に10年、制作に3年をかけている。
前作同様キャラクターデザイン協力及びメインビジュアル制作に『天空のエスカフローネ』や劇場用アニメ『宇宙戦艦ヤマト2119』で有名な結城信輝を起用し、メカニックデザイン協力に『サモンナイトシリーズ』や『スーパーロボット大戦シリーズ』のデザインワークに携わった谷口欣孝を起用している。
『テイルコンチェルト』との共通点は、「犬の特徴を持つイヌヒトと猫の特徴を持つネコヒトの2種類のヒトが存在する世界観」と「ロボットに乗って戦う」という点だけでストーリーは直接はつながっていないが、前作では明かされなかったロストテクノロジーについて明かされるなど後継作を意識した部分が多い。
ストーリーはつながっていないが同じ世界を舞台にしていることもあり、前作のキャラクターがゲストとして登場する。


プロローグ

ある重要なファイルを入手してほしいと依頼されたレッドは、それが保管されている貨物船・ヒンデンブルクに潜入する。
首尾よく目的のものを手に入れたうえに、船内にあったメダリオンをみやげがわりに持ち去ろうとするレッド。
だがその瞬間、レッドは目を疑わんばかりの光景を目にする。
天を突くような巨像が突如として現れ、彼の乗るヒンデンブルクに激突したのだ。
船はみるみる炎上し、墜落は時間の問題であった。
火の粉を振り払いながら脱出を試みるレッドは、崩壊が進む船内で倒れているネコヒトを発見する。
この出会いが、のちに世界を揺るがす壮大な戦いの幕開けであった。
(※取扱説明書より)


特徴

大筋の内容

  • 本作を形作る要素として、第一に人間ではなく犬や猫を模した獣人のキャラクターが登場するということ、第二に冒険小説的なところ、これら2つを挙げることができる。
    • 前作のジャンルがアクションゲームだったが、ジャンルがアクションRPGに変更された事で大幅に仕様が変更された。それによりシステムが開発元の前作にあたる「.hack//G.U.」がベースになっている。
  • 本編は話のまとまりごとに1話、2話と分けられており全20話構成である。
    • 1話あたり賞味1時間ほどであり全編通して20時間ほどでクリアとなる。
    • 各話の中でのストーリー進行は基本的にクエストを受注するという形式となっていて本編を進めるためのものの他、横道にそれるものも存在する。
    • また、本編クリア後にプレイできるようになるクエストも存在する。これらのほとんどはDSをネットに接続してダウンロードするという形式であるため、ネット環境がないとプレイできないがどれも無料である。
  • 本作はアクションRPGであるが、そのアクションの基本は「掴んで投げる」ただそれだけである。ダンジョンの探索においてもボス戦においてもこれは変わらない。
    • 主人公は基本ロボットに乗って移動し探索し戦闘する。 そのため強化の対象は主人公本人ではなくロボットになる。 え、このゲーム獣人のRPGじゃ……

グラフィック関連

  • 背景は3Dで人物の立ち絵は2Dといういわゆる2.5Dを採用している。
    • またDSというハードの特性上グラフィック自体は粗いのだが、それゆえに1ドットも無駄にはしないという職人技的な作りがなされている。
      • しかし、立ち絵のドット絵が等倍で表示される場面は少なく、縮小状態が多いためつぶれていることが多い。

評価点

演出面

  • ジャンルがアクションからアクションRPGに変更された事により全体的なイベントシーンの量が増加。
    • 前作では犯人を追いかけるためにダンジョンを攻略していくと言う淡白なもので、全体的なイベントシーンも少なく浮島の人々の関わりも少なかった。今作では全面的に改善され、主人公のレッドがハンター(傭兵稼業)と言う設定のため、基本的にはクエストを受注し、人助けをしながら目的を達成していく物となる。クエストの種類は多岐に渡り、人探しから男女の復縁の手伝い等の身近なものから犯罪者を拘束する物まで短いながらも飽きさせない物となっている。
  • DSのインターフェイスの使い方も非常に良好。
    • 上画面にマップを表示しながらメイン・サブのクエスト問わずに目的地が必ず表示されるので、RPGでよくある「イベントの趣旨が分からずに何処に向かえば良いか分からない」と言う引っ掛かりが少ない。メニューの表示も下画面に即表示されるので処理の重さや引っ掛かりも全くない。また、DSのゲームで失敗しがちな『タッチペンの導入による操作面での煩わしさ』等は一切無く、最初から最後までボタン操作で進行するために操作感は非常に安定している。
    • 依頼人の性格も様々で、悩みや困難にぶつかっていても主人公レッドがクエストを通して問題事を解決すれば肯定的な気持ちになって感謝してくれる。クエストで出番が少なかった不遇なキャラでも何らかの肯定意見が存在し、この手のゲームでよくある後味の悪い結末等は極力抑えられている。その反面、依頼人が良い感情ばかり示す訳では無くクエストの進行を怠ったりすれば素直に怒る等の感情豊かな一面が強い。 当然ながら一部を除いて登場人物の大半が獣人 。妙な味を出している。

個性豊かで根強い人気を誇る獣人たち

  • 登場キャラクターはごく一部を除いて全て獣人であるのは上記の通りである。だからこその、いわゆるケモナー層からの評判が高く、「ゲーム内容は知らないもののキャラは知っている」層を生み出し、ひいてはシリーズの興味関心を現在に至るまで惹きつけている事実が確認できるほどに軒並みその道からの支持は非常に厚い。公式アンソロジーや設定集が後年になって発刊された点からも、キャラ人気の高さが窺える。また、結城信輝氏と谷口欣孝氏描く公式キービジュアルも評価が高く、結城氏が描く いわゆるメスケモ から発せられる色気が凄いと定評があり、谷口氏描くメカビジュアルはいわゆる「機動戦士」的な格好良さが十分に発揮されている。

緻密な街並み

  • 前作がフル3Dだったが、美術も非常に簡素な物でプレイ時間の短さも相まって行けるロケーションも少なかった。しかし今作では「.hack//G.U.」の美術全般を担当した岡部寛正が全面的に携わっているため、町やロケーションの量が増加。戦争の残骸の上に町が成り立ってる「バゼット」や空魚と呼ばれる奇妙な魚が浮遊する漁村「シーリハム」や鉱山を掘り当てながら危険と隣り合わせで生計を立てる町「シェットランド」など町やダンジョンが個性的になった。RPGでありがちな火山ステージ等は 浮島にはマントルが存在しない と言う設定から排除されている。
    • 一方でフル3Dが廃止され、町の美術も板ポリゴンにイラストを張り付けた描き割りに近いものとなり、カメラワークも固定化されてしまったが、複雑で迷いやすいマップ移動が解消された。高所からの落下によるダメージも廃止されたので、些細なミスで体力が奪われる事も無くなった。

改善された戦闘パート

  • 前作では敵の投げた弾を跳ね返して攻撃するカウンター技でしかダメージを与える事が出来ず、跳ね返した弾の軌道が直線的に飛んでいくため、命中させるのでさえ難しかった。今作では大幅に改善され、接近してダハーカの両腕で相手を拘束し腕力ゲージをボタン連打で最大まで上げると敵の防御が崩れて投げ飛ばす事が出来る新要素が追加された。腕力ゲージはダハーカの基本ステータスの一つである「ちから」の高さによって上昇率が変動し、低ければ相手の防御を崩すのに時間が掛かり、拘束している間はスキが多くなってしまう。防御を崩してしまうとダハーカの投げ技が使用可能になり、 フルスイングやプロレス技を仕掛ける事が可能になる。
  • 前作にあった跳ね返し技も続投され、一度跳ね返すと近くの標的に向かって飛んでいくホーミング仕様に変更されたので命中しやすくなった。

盛り上がりのあるシナリオ

  • 序盤こそ小さな異変に立ち向かう物語だったが、異変は徐々に大きなものへと変化していく物語の変化は秀逸。特にラスボスとなる物語の元凶は主人公レッドと大きな関りを持つ人物となり、序盤から中盤までクエストを通して関係性を深めた人物達が結集し、終盤の総力戦に参加するシーンは概ね熱いものとなっている。

充実したミニゲーム

  • 本作には飛行レースゲーム「 エアロボグランプリ 」と特定の場所でプレイ出来る「 ヤドカリ釣り 」等のミニゲームが附属している。前者は本作が浮島である事を最も活かしていると言える出来映えであり、文字通り空を飛ぶ爽快感を味わえるレースゲームである。後者は 雲海に住む戦艦の残骸に寄生した巨大ヤドカリを釣る と言う非常にインパクトの強いものとなっている。その他にも「.hack//G.U.」を踏襲したフリーバトルが楽しめる「デュエルシップ」や制限時間内に指定された残骸を全て破壊するクエスト等、寄り道要素も少なからずあるので、やり甲斐のあるものとなっている。

高クオリティなアニメパート

  • 前作と同様に第1部と第2部それぞれにopアニメーションが挿入されており、制作を担当したマッドハウス*1が本作の映像化を実現している。ゲーム本編では職人芸が光るもののローポリゴンの粗いグラフィックだった為、ファンにとっては新鮮に感じる。
    • 作画に関しても安易な止め絵では無く、獣人キャラは可愛らしく生き生きと動き、ロボットは機動戦士の如くカッコよく躍動する。
      • 続編に当たる作品ではopアニメが自体が廃止された為、(現時点で)本作以降の作品はアニメパートが実装されていない。
+ 登場人物について
  • レッド・サハラン (CV.柿原徹也)
    • 本作の主人公。前作の主人公ワッフルとは打って変わって、妹分の少女ショコラと共に住居兼飛行船のアスモデウスを構え傭兵稼業を営む17歳の青年ハンター。物事に対して柔順な地方公務員のワッフルとは対照的に性格は絵に描いた様な傲慢さを持ち、気に入らない依頼人に対しても遠慮無く嫌味を言う素行の悪さを持つ。しかしワッフル同様、根は真面目であり、困ってる依頼人のためなら何だかんだで嫌味を言いつつ助けようと尽力する情の厚さを持つ。男らしい反面、異性に対してはふしだらで配慮が無く、とある出来事が切っ掛けでヒロイン・エルからビンタされる。
    • 第2部のとある事件が切っ掛けで自分の正体を知ってしまい、 それまで持前であった明るさを失って極端なヒステリーを起こす唐突な展開を迎えてしまう。 その後、仲間たちの助言を受けて徐々に立ち直って行くが、「主人公の挫折から立ち直り」と言う展開は王道的だがやはり唐突感は否めない。
    • とはいえ、職務に忠実で個性が控えめだったワッフルや終始戦争の被害者で出番も見せ場もあまり無かったマルトよりも主人公としてのポテンシャルは十分にあるので、好感が持てる主人公として人気は高い。
  • エル・メルゼ (CV.後藤沙緒里)
    • 本作のヒロインその①。 この世界に突如現れた巨神ラーレスを封印するために旅をする14歳のネコヒトの少女。序章のとある事件が切っ掛けでラーレスを封印するためにハンターであるレッドと契約を結び、協力関係になる。最初はレッドとの関係は疑心暗鬼の関係だったが、少しずつ性根は真面目なレッドを見直して行くが、彼女の本当の目的は 「契約した相手の命を犠牲にしてラーレスを封印する事」 だったので、第1部の序盤でレッドを殺しかける事になる。その後、彼女の旧知の仲であるベルーガによってレッドの生贄は阻止され、何とか諫められる事になる。そうした衝突を経てレッドと関係性を深めていき、次第に恋仲に発展していく。
    • 外見年齢は14歳程だが、巨神を封印する事を使命とする不老不死の一族「契約者の一族」であり、 実年齢は300歳 。序盤の影のある印象もそれが原因だろう。
    • 序盤は男性として性別を偽っていたが、序盤のとあるクエストで体を汚してしまい 「レッドに断りなしに勝手にシャワーを浴びた所を目撃され、性別がバレてしまう」 と言う唐突なイベントシーンが挿入され、本作をプレイしたファンに衝撃を与える事となる。ちなみに無断でシャワーを浴びた動機については一切語られず、 性別がバレた事に逆上してレッドにビンタをするあんまりな結末を迎える事になる。 補足すると態度が軟化した影響だと思われるが、 猫が住処に馴れてしまったせいで気を許してオシッコを漏らしてしまった習性が由縁なのだろうか?
    • 一応タオルで体の大部分は隠しているが、CERO.Aにしては少々際どい描写である。
  • ショコラ・ジェラード (CV. 阿澄佳奈)
    • 本作のヒロインその②。 レッドと共にハンター稼業を営む13歳のイヌヒトの少女。アスモデウスの操縦とレッドの補佐+ 金銭管理 を担当し、ゲーム中ではくの無線通信の甲斐あってゲームの進行が分かりやすくなっている。物語序盤でレッドと共にエルと協力関係になるが、疑心暗鬼に疑うレッドとは対照的にエルとの対立は少なかった。背負い込む性格のエルや感情的なレッドとは異なり、彼女は深く悩む事無く性格は理性的で従順。良くも悪くも二転三転する本作のストーリーに置いて彼女の存在感は非常に安定感のあるものとなっている。
    • レッドとは孤児院時代からの付き合いで、序盤の事件がきっかけでアスモデウスに滞在するエルと3人で共同生活を送る事になったが、この手の展開で良くある 三角関係のドロドロ等の関係には発展しなかった。 後に発売された設定資料集の補足で 彼女には恋愛感情と言うものは存在しない と言う驚きの回答がなされた。 いいのかそれで・・・・。
    • 彼女の声を担当した阿澄佳奈氏はフランス語の音声で On y va!(オニヴァ) と発するが、作中では もにゅぱー★ としか聞こえずに、ファンの間ではネタにされている。

賛否両論点

衝撃的な展開

  • 前作が開発元のデビュー作であったため、力量不足も相まって世界観も深く語られずに獣人も浮島の由縁についても全く触れられなかった。しかし本作はスタッフの前作に当たるSF色が強い「.hack//G.U.」を踏襲しているために終盤にSF要素が絡んでくる事が明かされる。
+ 第2部に関するネタバレ注意
  • 主人公レッドは、第2部の序盤において 純粋な獣人ではなくラスボスであるとある人物から生み出された旧人類、つまり人間のクローンであることが明かされる。 ラスボスはとある計画のために獣人に擬態出来る特殊な超能力をもった人間を育成していて、能力を完全覚醒させる事が自身の計画の遂行に繋がると言う訳らしいが、レッドは覚醒能力の低さから幼少期に研究施設から追放される事が決定されてしまう。孤児となった彼は孤児院に流れ着き、師匠と呼ばれる人物に育てられ数年後ハンターとして生きる事になる。
    • この事実はファンの中で最も賛否を巻き起こし、 『懐かしき獣人が総登場するRPG』と言う触れ込みの本作に期待して購入したユーザ―から拒否反応を示す声も多かった。つまり、「 レッドは悪役の手先であって本当の獣人では無かった 」と言う事であり、シリーズの概念を根幹から破壊しているとも受け取れるあんまりにも無茶な設定である。
    • 一応補足すると、主人公のレッドの変身能力は不完全な物で、特殊な条件が揃わないと変身出来ないので、能力が使えない時は獣人のままである。「獣人でなきゃ意味が無い」と異を唱えるファンも未だに存在するが、これに関しては発売から10年以上経った現在でも賛否両論である。
  • 第2部の8話でラスボスの世界撲滅計画を阻止するための方法を得るために伝説の古代獣の力を借りて浮島と地上を隔てるプラズマ雲海を突破する主人公レッド達だったが、降り立った先に見えたのはかつての オーストラリア大陸 だった事が判明する。そびえ立つ巨塔に住むAI「ユルルングル」から本作の世界が 現実の世界から4000年後の滅亡した地球 だと言う事が明かされる。彼女の話によると一度滅んだ地球を元通りに復活させるにはナノマシンで汚染された海洋を全て浄化させて、地球上を覆う大陸も浄化が全て完了するまでにナノマシンの力で浮遊させないなければいけないと言う事。 獣人達は大陸が浮遊した後に生まれた人間と動物の因子が混合して生まれた新種の人類 で、計画が完了すれば浮島は元の大陸に戻り文字通り新しい地球が誕生すると言う事らしいが、 この事実が判明するのはメインシナリオの終盤であり、 この前作で明かされ無かった怒涛の新設定ラッシュは賛否両論を受ける事となる。
    • 前作で明かされなかった設定を掘り下げるのはシリーズの視野を広げるものとして非常に意欲的だと受け取れば良いが、本作からの大幅な路線変更によって 人類の破滅意識が獣人達にも受け継がれている と言う救いの無い事実が浮き彫りになってしまい、どんなに表層上で物語を明るく描いても破滅的である事には変わり無いと言う事である。本作の続編にあたる作品ではその救いの無さが押し出されていたが、その方向性は今作の時点で示されていたと言える。
  • 第2部最終話で主人公レッドはラスボスと対峙し、激闘の末にラスボスと和解する。改心したラスボスは別の次元に姿を消し、別の次元から獣人達の行く末を見守る事になる。
    • 全てのクエストをクリアするとDLCで配信されたとあるクエストが受注可能となり、浮島と地上を隔てたプラズマ雲海が消滅しかけている事実が明かされるが、種族の代表としてレッド達は『 浮島を地上に還さずに世界をそのまま存続させていくか 』『 浮島を地上に還し地球を元の状態に戻すか 』の選択を突き付けられる事になるが、 回答は自分達ではなく次の世代に託す と言う何とも次回作を示唆する局面で締められている。
      • 一応の区切りは付いたものの、本作の結末は端的に言うと『 真の宿敵=旧世界を滅ぼした人類であり、彼らに打ち勝つ事で獣人達は地球の支配権を得られる 』と言うもので、目的を達成出来ずに次の世代に自分達の想いを託すのは苦味の残る切ない締めとなっている。

誰でも簡単にクリアできるという長さと難易度であること

  • 難易度が低いため、いわゆる「ハマリ」がなくポンポンとテンポ良くストーリーは進行する。
    • これは操作系がシンプルであるのと同時にシビアな操作を必要とする場面もほとんどないからである。
    • 一応補足しておくと快適性はDSのRPGでは随一であり、序盤はダハーカを強化するカスタムパーツが入手し辛いために敵の攻撃を受けやすくバランスにおいてはシビアである。パーツが揃えば自然と難易度は下がる。
    • ただしゲームとしての手軽さは歯ごたえと引き換えとなっているため評価の分かれるところである。

その他

  • ロボ騎乗時と非騎乗時の2つの操作状態があるのだが、使い分ける場所がほぼ決まっており、あまりゲーム性としては機能していない。
  • 前作に比べてイベントシーンの量が増加したが、反面、平成一桁世代の様な展開や回りくどく少々押し付けがましい展開が増えてしまい「感動した」とも「前作の淡白な方が良かった」と双方の意見どちらも見られる。特に後者は前作にあった素朴な動物擬人化物を期待していた客層であり、後半になると無理矢理勢いでSF路線に舵取りし、ストーリーを急展開させたのが作用して人によっては不快感を感じる事もある。

前作にあったフルボイスの廃止

  • 前作は短いながらもキャラクター全員にプロの声優によるフルボイスが当てられ、熱演もあって盛り上がるものとなっていた。しかし今作ではイベントシーンのフルボイス化は廃止され、 代わりに日本人の声優によるフランス語発声のパートボイス が採用されている。これは本作の舞台がフランスと関係してると言う設定故の仕様らしいが、全体的に演技力が低く非常に聞き取り辛いものとなっている。世界規模で売り出す事を考慮しての実装だと思われるが、ボイスの量も非常に少ないために何処か需要がズレている感は否めない。

『テイルコンチェルト2』ではない

  • 本作はテイルコンチェルトの続編的位置づけだが、正確に言うと同一世界観の新規タイトルであり、システムの大部分は継承されているが、テイルコンチェルトと直接的な繋がりはない。
    • そのため、前作にあった素朴で淡白な世界観が大幅に改変され『スーパーロボット物の要素や変身超能力物』等の外連味の強く刺さる人には刺さる濃ゆい作風となっている。しかし、前作との整合性が取れてないのは事実であり、 嚙み合わないSF要素を導入するのは改悪だと批判する声も多い。
  • 前作のキャラも一部のクエストで登場するが、前作のヒロインであるアリシアはテロ活動に加担した事を反省し黒猫団も解散させたが、 本作では黒猫団を再び結成し、本作の舞台であるジェパルト共和国でテロ活動を再開している 等、改悪と言うべき部分も見られる。つまり、 前作で折角更生したヒロインが本作では犯罪者集団の内の一人に戻っている *2と言うことであり、いわゆるサブキャラ扱いなので出番も非常に少なく、とあるクエストでは黒猫団と対決する事になるが倒しても特に更生する事は無く逃走するだけである。
  • 一方で、前作の主人公ワッフルとシリーズの内の一つである 『福岡県防災キャラクターまもるくん』 も一部のクエストで登場し、レッドと協力関係を結ぶなど優遇されている。
    • ワッフルとのクエストをクリアすると、本作に付属している飛行レースゲーム『エアロボグランプリ』で使用できるワッフルの専用機体をベースにした『ポリスジャイロ』が使用可能になると言うファンサービスも。
    • 元々防災広告でしかなかったまもるに関しても専用のクエストが用意され、防災チラシを配るクエスト等の元ネタを意識した要素もあり、ゲストとしての登場ながらも存在感は大いにある。しかも、スタッフロールに 『キャラクター利用協力 福岡県』 と言う記載まである徹底した権利表記も。
  • 前作の直接的な続編にあたる『テイルコンチェルト2 大航海時代』も2003年頃に企画が立ち上がったが、製品化まで辿りつかずに凍結となっている。枝分かれした本作とは異なり、ワッフルを主人公にした続編だったらしく、空中戦がメインのゲームだったとか。

問題点

シンプルすぎるアクション

  • 敵のスキをついて掴んでぶん投げるというのはわかりやすいが、戦略性は低く飽きやすい。一応、敵機体から銃を奪って射撃したり特定のイベントでは砲台を操作して敵の飛行船を狙撃する等の要素もあるが、弾数制限も相まって爽快感はあまりない。また、敵機体のバリエーションも少なく攻撃も大振りなので回避は容易である。

単調なクエスト

  • 本作では本筋のストーリーにおいてもクエストを受注するという形式をとるが、これにはサブクエストも一定数こなしておく必要が常にあるため、本編のクエストのみを追っていくことができない。
    • そのサブクエストも大半がお使い程度。基本的にはレッドと依頼人との掛け合いを見ながら目的を達成するだけなので、やりこみ用のサブイベントと言うよりはイベントシーンの付いたフリーバトルに近い物なのでどうしても全体的に浅く感じてしまう。特定のダンジョンに潜ってアイテムを回収してクエスト完了と言うものばかりである。
    • ただしイベントシーン自体の完成度は高く、ある謎の人物から廃船の調査を依頼されるプレイヤーの涙腺崩壊を誘うクエスト 「あの船を探して」 やアイドル・ココナが乗る飛行船を空賊から護衛し、 侵入してきた空賊たちの意外な犯行動機が明かされる 「アイドルの護衛」 等の評価の高いクエストも存在する。
    • 個性的な獣人達だが、ほぼ固定のイベントでしか出会う事が出来ないため、クエストを消化し過ぎると 大抵の獣人と会う事が出来なくなる 。一応、メインキャラとは特定のとある場所のみで会話する事が出来るが、扱い的には街にいるモブキャラと変わらないために会話のバリエーションも少なく、愛着のあったキャラでもクエストを完了させると姿を現さなくなるのでやはり寂しい。つまり、 ゲームをやり込む程プレイする意義が無くなり、町に行っても特に何もする事が無くなると言う事である。 一応、特定のクエストは何度も受注出来る様になっており、制限時間内にクリアすると特定のアイテムや報酬額が変化するが、使い道が余り無いために何度も受注する必要が無いと言える。

ボリュームに関する問題

  • 2部構成でメインシナリオは10時間程。サブイベントを含めても計20時間程のボリューム程しか作り込まれていない。厳密に言うと前半にあたる1部の方が寄り道要素が多く、2部に突入するとそれまで豊富だったクエスト等が激減し、操作不能のイベントのみが展開する話が多くなってしまう。
    • 極めつけはラスボスとの一騎討ちのみの最終話で、道中のSTGパートとラストバトルしか実装されてないため、実質的なゲーム要素が撤廃されたイベントバトルとなっている。
  • 多くの要素をそれほど長くないストーリーで消化しようとしているためか展開がかなり急ぎ足である。特に登場人物各々の心理描写は、あまり掘り下げが行われない場合も多く、丁寧さを欠いている。
    • ダハーカの別機体の収集や、オマケ要素である「特定条件を満たすと徐々に解禁されるライブラリ」や前作から続投されている写真集めなどの全ての要素をコンプリートしてもそこまでのボリュームはない。
      • おまけ要素も「ひたすら金策をして高価なアイテムを購入」という物だったりと単調で面白みは無い。

DLCに関する問題

  • 発売当初に配信されたDLCはクリア後の後日談と言う位置づけで、全部で2時間程のボリュームしか無いが、登場人物のその後を補完する重要な物ばかりである。 しかし2014年5月20日にWi-Fiコネクションのサービスが終了し、DLCの入手が不可能となってしまった。 何らかの再配信を望むファンは多いが、未だに2024年現在でも公式からのアナウンスは無い。

総評

前作の問題点を改善し、丁寧に練り上げられた世界観やビジュアルとシンプルなアクション、誰でもクリアできる難易度、そしてサクサク進む王道的なストーリーが特徴と言える本作。

ゲームそのものは無難に遊べるものである反面、特徴的な世界観や低い難易度などは、プレイする側の趣味嗜好によりはっきりと好き嫌いが分かれてしまう点といえる。
ただし、後述のファンブックが後年になって発売されるほど、いわゆるケモナー層からしてみれば「国産ケモノキャラ天国」と言えるくらいの、その道を一斉に網羅せんばかりのキャラなどが揃っており、合う人にはとことん合うものであることが窺える。これらの点から本作は、世界観や雰囲気を楽しむためのゲームという見解で概ね落ち着いている。つまり本作は RPGと言うよりはアクションパートの付いたADVに近く 、獣人キャラの紙芝居イベントの合間にロボットを操縦するアクションパートが挿入されている二重構成をしていると言えるが、(それでも前作と比べて大分改善はされてるものの)練り込み不足のアクションパートのせいでゲーム自体が浅く感じでしまうのが非常に惜しい所であり、折角の詰まりにくいテンポの良さがゲーム性にあまり貢献していないのである。

一方で要となるADVパート自体も獣人好きには受け入れられる物となっているが、 満足すればそれまでで、繰り返し見続ければ次第に飽きてしまう と言う浅い物だと言う事が分かってしまう。本作で新たに導入されたSF要素も試みとしては変化球であるが、行き当たりばったりな展開が作用したせいで前作にあった 「牧歌的な動物擬人化世界」を求めるファンから大きく賛否を呼ぶ結果となってしまった。 また、一部回収されてない謎も存在し、評判が芳しくなかったせいか本作を機にリトルテイルブロンクスの家庭用ゲームでの新作*3は発売されておらず、悪く言えば ゲーム要素の削減と無理矢理な迷走展開によりシリーズの息の根を止めたタイトル と、失敗作の烙印を押されてしまったと言えよう。

完成度故に本作の知名度も高くなく万人向けとは言えないが、世界観に惹かれるものを感じたのなら、是非一度は手に取って見てはいかがだろうか。


余談

その後のシリーズ展開

  • 2011年頃に続編の企画が立ち上がったが、諸事情により凍結状態になっている。企画の概要をみると本作を発展させた宇宙飛行士物だったらしく、実現していれば本作の悔やまれた部分も改善されていたかもしれない。ゲーム部分は完全に非公表だが、数枚の背景画と後年に発売された本作のファンブックで主人公の容姿が公開されている。
  • 2014年に配信されたソーシャルゲームRPG『リトルテイルストーリー』は本作以来のリトルテイルブロンクス新作と位置付けられているが、『イヌヒト』『ネコヒト』『ハイブリッド』等の一部の固有名詞が続投されているだけの本作との繋がりは薄い別物と低評価され、シリーズの根幹である浮島やロボが全く登場しない 武器を持った獣人キャラがモンスター相手に戦闘するだけ のよくあるスタミナ制ソーシャルゲームとなってしまい、ゲーム自体の評判も悪く僅か半年でサービス終了してしまった。ただし、前2作とは異なり単調なロボットのアクションを廃止し、RPG要素に注力するなど改善された部分もある。

その他

  • 本作最大の売りはその世界観であるが、設定資料集は発売されておらず、コレクターズエディション付属のものが唯一(サントラも同様)である。
    • 2011年5月以降公式ファンブック・グッズなどが続々発売された。だが価格についてはファンブックは一冊2,000円弱×7巻分、資料集は一冊5,000円×3巻のセットであり、ソフト自体の価格に対して非常に比率が高い。製本の資料集はプレミア化しており入手困難。現在ではKindle版が配信されており、入手がし易くなった。
  • 設定資料集は1巻辺り300ページ分のボリュームであり、ゲーム中で簿かされていた部分も詳しく回答されているのでファンにとっては概ね好評である。 特に3巻目の本作の前史にあたる部分の世界観の構想は必見。 意外な事実が見えてくる。
  • 反面、本作の初期案にあたる部分を読むと発売元からの承諾が得れなかったせいで製品版では多くの案が削られた事が分かる。難易度の低さとボリュームの薄さの要因だと思われ、それが問題点に直結してることが悔やまれる。結局の所本作の問題点の多くは 開発元と発売元の折り合いが付かなくなった 事が要因にあり、この問題点は第2部の突貫工事と思わしき展開にも影響及ぼしてると思われる。
  • 売れ行きは芳しくなく「構想に10年、ワゴン売りに1週間」とネタにされてるが、実際は出荷数が極端に少なかったために2023年現在では 中古価格9000円台 と入手ハードルが非常に高くなっており、WiiUバーチャルコンソール等のDL版も配信されてない。
    • そもそも、この構想に10年と言うのは「10年間練りに練ったゲーム」と言う意味ではなく、「10年前に考えついたが諸事情でなかなか実現に至らなかったゲーム」と言う意味である。企画案の改定が何度も行われたお陰で前作の多くの問題点が改善されたが、反面本作で実現出来なかった部分も数多く存在している。PS1末期から始まり10年以上頓挫し続けた企画なので 「悪く言えば今更感のする時代遅れの古臭いRPG」 と言う率直な感想は否めない。
  • 後年に発売されたファンブックの開発者同士の座談会では 本作の反省会と直喩すべき様な対談 が掲載されており、開発元が既にHD開発の体制に移行した弊害で携帯機での小規模開発に苦戦した事が明かされている。
    • また、本作の売り上げが振るわなかった事に関しても苦言し、 「次回作はいつお届け出来るか分からないがビジネスとしてしっかり成立するプランを考えてお客様にお届けする」 と言う身も蓋もない発言で締めくくられている。*4
  • ライブラリーと写真で使われている画像は後に発売された設定資料集ですべて収録されてるため、 ゲーム内で収集する意義が無くなってしまった。
  • 発売前に大々的に濃密な世界観を誇ったゲームとして宣伝され、現在は休刊している「電撃ゲームズ」でも毎月特集が組まれるほど期待されていた。
  • 本作発売から11年後の2021年7月29日に本作の前日譚にあたり、事実上の続編となる『戦場のフーガ』(Switch/PS4/PS5/One/XSX(S)/Win)がダウンロード専売で配信された。本作で問題視されていたボリュームの薄さとゲームバランスの調整不足さが大幅に改善されたが、シリーズの要である獣人要素の縮小や重いストーリーが起因し、賛否両論を醸し出している。
    • これによりシリーズの再出発は果たせたが、権利関係では完全に切り離されているため、 世界観は共通しているものの、本家リトルテイルの流れを受け継ぐ全く異なるシリーズ と言う微妙な扱いとなった。本作(とテイルコンチェルト)の今後の展開については公式では「 パブリッシャーであるバンダイナムコエンターテインメントさんの裁量次第です 」と発言され、2024年現在でも家庭用ゲーム機での再始動は未だに白紙状態である。
+ タグ編集
  • タグ:
  • 2010年
  • DS
  • ARPG
  • バンダイナムコゲームス
  • サイバーコネクトツー
  • リトルテイルブロンクス

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

最終更新:2024年04月20日 10:25

*1 取締役の丸山正雄氏が過去に前作のアニメ化を打診した経緯があり、本作のアニメーション制作を同社に依頼したのは松山洋氏である

*2 前作のエンディングにおいても『2度と悪事を働かない』と言う決意表明として眼帯を外したのに、本作では再び眼帯を着用していると言う矛盾が起きている

*3 ただし、スマートフォンで展開されたリトルテイルストーリーが実質的な最終作に該当する

*4 ただし、この座談会での発言は続編にあたる作品で発揮される事となる