愛・超兄貴

【あい ちょうあにき】

ジャンル ポージングゲーム(横スクロールシューティング)
対応機種 PCエンジン スーパーCD-ROM2
発売元 メサイヤ(日本コンピュータシステム)
開発元 ヴァンガード
ビッツラボラトリー
発売日 1995年2月24日
定価 8,900円
配信 バーチャルコンソール
【Wii】2007年12月18日/800Wiiポイント
【WiiU】2016年4月21日/823円
判定 バカゲー
ポイント マッチョ二人が宇宙をゆく
弾を撃たずに心を打つポージングシステム
ボリュームは少なめ
超兄貴シリーズ
超兄貴愛・超兄貴/超兄貴 爆烈乱闘篇/超兄貴~究極無敵銀河最強男~
超兄貴~究極…男の逆襲~/超兄貴 男の魂札/超兄貴~聖なるプロテイン伝説~/零・超兄貴



弾を撃たずに心を打つ



概要

  • 多くのレトロゲーマーにバカゲーとしての名を轟かせた『超兄貴』の続編であり、自機のオプション役で登場していた「アドン&サムソン」を主役に据えている。あえてジャンル分けするなら、一応前作と同じシューティングゲームにあたる。
  • 「ボ帝ビル」との戦いを描いた前作から2年後。平和だったビルダー星系に生じた不穏な動きを察知したイダテンは、単身調査に向かい、行方不明となってしまう。ベンテンはイダテンを救出するべく、アドン&サムソンをビルダー星系に差し向ける。
    • アドン&サムソンは、ムキムキのビルダー体型+スキンヘッドで手足にバンドウエイトの他はパンツ一丁という異様ないでだち。敵のビルダー軍に侵略を受けた星の王子だったが、前作主人公コンビの男女「イダテン」「ベンテン」に窮地を救われたという背景を持つ。
      • ちなみに前作『超兄貴』に登場した際は投獄されていたためか、上記のウェイト+パンツではなく手枷足枷に貞操帯という、より危なげなスタイルだった。
    • こうした設定面の濃さは『超兄貴』シリーズ共通の特徴となっている。
  • 全4ステージ。1ステージは3つのゾーンに分かれ、それぞれにボス敵がいる。基本は横スクロールだが、縦スクロールの箇所も一部存在する。

特徴

STGとしてのシステム面は、前作とは全く異なっている。

  • 本作の攻撃方法は「ポージング」と呼ばれている。ポージングは格闘ゲームのようなコマンド入力によって発動、マッチョな自機がコマンドに対応するポーズを決めることで、何故か攻撃判定が発生する。
    • IIボタンのみで出るいわゆる通常ショット「悦楽吐息」は、小ダメージのホーミング攻撃。他には、「←・→・II」で右方向を攻撃する「男魂 (逆方向に撃つ場合はコマンドを逆に入れる)」「→・←・↓・II」で画面全体攻撃の「男性地震」など、いろいろなポーズがある。
    • Iボタンを押すと、押している間は全身無敵になるポージング「汗汁乱舞」が発動する。使用制限や大きな隙は無いので、これを使い続ければどんな攻撃でもほぼ無傷でやり過ごす事が可能*1
    • 悦楽吐息と汗汁乱舞以外のポージングにはSTG基準としてはやや大きめの隙があり、局面ごとの使い分けが事の外重要。
    • ちなみに、自機のサイズはかなり大き目。一般的なSTGを基準にざっくりと目安を示すなら、「横STG自機くらいの幅×縦STG自機の2倍くらいの高さ」で、細かな筋肉まできっちり描き込まれている。
  • ポージングアクションで敵を悩殺していく内に、アドンとサムソンには気合やら男のエネルギーやらがどんどん溜まっていく。これが頂点に達した時、「↓・右下・→・II (右撃ち時。逆も可)」のコマンドを入力すると、通常時のポージング「倒錯兄弟」に代わり、極太の直線攻撃判定が一定時間出続ける必殺技「メンズビーム」を頭の穴から発射する。
    • メンズビームは強力で見た目も派手な攻撃だが、長時間身動きが取れなくなる上、特に無敵時間などは無い。慣れない内は、メンズビームを放出しながら昇天するアドン&サムソンの姿を見ることも多いだろう。これが普通のゲームであれば撃った者勝ちの出し得技となっていたかもしれないが、現実には隙だらけの大技なので、使用は慎重に。
  • 特定ポイントで「イッツ・ショーターイム!」と登場するベンテンは、ランダムでアイテム(砂時計やライフの回復、パワーアップ等)を出す。
  • ゲームオーバー条件は「時間切れ」のみ。これ以外には存在しない。
    • 画面上部には砂時計が表示され、一定時間ごとに1つずつ消えていく。
    • 減った砂時計を回復する方法は、前述のアイテム効果と、クリアした際のスコア画面で点数に応じて得られるボーナスの2つ。
    • 自機は初期状態で3点のライフを持っている。敵の攻撃を受けてこれが尽きると1ミスとなり、砂時計を1個消費してその場復活する。
  • コンティニュー等という軟弱な救済措置はありません!(説明書より)」
    • 余談だが、実はシリーズで「コンティニューが存在していない」のは本作だけだったりする。
  • 2人同時プレイが可能。見た目も性能もほとんど違いは無いが、1Pはアドン、2Pはサムソンを操作する。
  • マルチエンディング制。ラスボス撃破後に、クリアスコアに応じたランクと後日談テキストが表示される。

その他の見所

  • 美麗で、細かく、マッシヴなグラフィック。
    • ポージング技の1つ1つには、胸筋をキュッと持ち上げたり、上腕筋をグッと隆起させたり、腹筋にフンッと気合を込めたり、虚空に汗をきらめかせたりといった、様々なモーションが用意されている。
    • アド&サムに負けないビジュアルと派手な演出で意表をつく個性豊かなボス(大型の雑魚敵含む)たちも、本作の大きな魅力のひとつ。
    • 砂時計の管理役である時の番人は、砂が落ちきるまでの待ち時間中にスクワットをしている。
    • よく描きこまれ、多重スクロールする背景。ハード末期のソフトに多いことだが、本作もまたハイクオリティである。
    • ボイス付きのステージクリア*2及びゲームオーバー映像も、クセになりそうなインパクトがある。
  • 本作はBGMも人気がある。荘厳な曲調に珍妙なスキャットを加えたBGMは、リアルタッチの筋肉ワールドがかもし出す特殊な空気にマッチしている。
    • よく誤解されてしまうが、本作は岩崎琢氏*3*4が担当しており、前作の葉山宏治氏はノータッチである。ただし、オープニングでは前作の曲をサンプリングで使用している。
    • ハードな音で攻撃的に仕上げた曲に威勢の良い合いの手が「ハイハイハイ!」と入る1面BGMの「上海パワースラム」、落ち着いたメロディーラインに「あ~~に~~き~~」というバックコーラスの流れ続ける2面BGM「A・NI・KI」が代表的。
  • 意外と味わい深く、初心者に優しいゲーム性。
    • 自機が何人やられようと、とりあえず砂時計の残る限りは遊べる。特定の一ヵ所が苦手でも他でフォローでき、初心者でも楽しく遊べる時間の最低ラインが高い。気軽に練習しているうちにコツを掴んで上達していける、ゲームに不慣れな人にもフレンドリーな設計と言える。
    • 簡単コマンドでいつでも好きなだけ全身無敵になれる汗汁乱舞は「難所の突破」という意味ではこれ以上ない救済措置として働くが、砂時計の残量も含めたステージ攻略の観点からは乱用できない。普段は男らしく前のめりにスコアを稼ぎ、引くべき時には男らしく潔く退く、という緩急ある攻略が求められる。

賛否両論点

  • やはり濃すぎる世界観。
    • 正直、万人受けする内容とは言えない。

問題点

  • ボリュームが少ない。
    • 大型キャラやポージングアクションなど様々な要素をひっくるめて言えば「てんこ盛り」とも言える本作だが、ステージ的なボリュームは薄い方である。
  • 意外と窮屈なゲームバランス。
    • 弾を避けにくい自機のデカさ、そもそも弾避けに適しているとは思えないコマンド入力などの理由から、深く考えずにいるとすぐに砂時計が切れてしまうという繊細さを持つ。コンティニューも無いので、強気にいきたい気持ちとは裏腹に自ずと引っ込み思案なプレイになってしまい、思うように稼ぎができないプレイヤーも多いことだろう。
    • 砂時計システムは、上手くなってきて「クリアまであと一息」の段階に入ると、潜在していた煩わしさが強まってくる。弾除けやスコア稼ぎといったプレイ全般に対し、質の向上を求めて序盤の立ち回りから抜本的な見直しを迫られるわけだが、一般的なSTGの「やった・やられた」と比べて目標が具体的でないためモチベーションを維持しにくい。
    • 序盤はボス戦の多くがぬるく、ラストステージではザコ敵の耐久力を含めた全体的な難易度が高騰するバランスとなっている。「前半戦の難易度に物足りなさを感じていたら、後半になって突然稼ぎにくくなり息切れフェードアウト」という地味~な感じのゲームオーバーは、わりとありがちな展開。
  • エンディングはスコアに応じて変動するのだが、1人プレイで最高ランク「A」を取ろうとするとかなり厳しい設定になっている。冗談抜きで、敵を1匹も逃してはならないぐらいの気合いで望まないと無理。
    • もっともこれは稼ぎ無しの場合。稼ぎ方が分かっていて稼ぎを行うのなら、慣れればそこまで難しくはない…時間は多少かかってしまうが。
  • コマンドの暴発。
    • 他の2DSTG同様に自機の移動を十字キーで行う都合でポージングと入力操作が被ることもあり、細かい操作はままならない。「多少の誤爆は味の内」と割り切る必要がある。

総評

グラフィックの筋肉美や技名のはっちゃけ具体はストレートにおバカであり、システムの方も、STGのようでありながら格ゲーさながらのコマンド入力を要求してくるなど、相当に風変わり。様々な要素を大胆にどかんと盛りつけた、演出重視の魅せるバカゲーである。
難点は大まかに3つ、STGとしては直感性に欠ける時間制限システム、暴発上等の大雑把な操作性、ボリュームの無さ。先の2点は本作ならではの特徴と背中合わせでもある欠点だが、ボリュームにはやはり批判が集まりやすい。またバカゲー的世界観の面は前作の正当後継路線ということで、幾分パンチ力が控えめかもしれない。
とにかく全方位的に目立っていた前作と比較される事の多い作品だが、単体で見れば十分すぎるほど個性溢れる存在ではある。何より、続編ものはおろか単体のゲームとしても意欲的なゲームデザインを、クセが強いなりにひとつの形へとまとめ上げたその手腕には恐れ入る。
結局のところ本作の価値は「筋肉をどれだけ愛せるか」に大きく左右されるが、現在はVC配信などで手頃に試せる環境となっている。「愛」をもって臨めば「愛」でしっかりと応えてくれるポテンシャルを秘めた本作に、今からでも触れてみる価値は大いにあるだろう。

余談

  • 本作のキャッチコピーは「玉を無くした兄貴」である。
    • システムを正しく言い表したキャッチコピーなのだが、やはり超兄貴センスである。
  • 本作のエンディングのうち、以降の正史扱いとなっているのはなんと「Cランク」となっている。
    • 実はこのエンディング、イダテン本人はまだしもアドンやサムソンにとってはバッドエンドに近いものであり、これを正史としてしまうのはやはり何というか超兄貴センスと言わざるを得ない。
  • ステージクリア時に流れる「ずんちゃっちゃ」のボイスだが、これは前作『超兄貴』*5のステージクリアジングルのメロディを口ずさんだもの。
    • 後のシリーズ作である『究極無敵銀河最強男』『究極…男の逆襲』でも同様の演出が取り入れられた。
  • 本作で声を当てた、アドン役の「戸谷公次」・サムソン役の「郷里大輔」・ベンテン&ボ帝コンシャス役の「新山志保」各氏は、全員若くして鬼籍に入ってしまわれている。
    • 実力派のベテラン声優として57歳までは活躍されていた戸谷公次氏と郷里大輔氏はまだしも、新山志保氏はまだまだこれからというところの29歳で亡くなってしまったため、本当に早逝であった。

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最終更新:2023年02月25日 04:19

*1 ラスボスのある攻撃だけは、汗汁乱舞中でもダメージを受けてしまう。

*2 「ずんちゃっちゃ、ずんちゃっちゃ」の掛け声とともにポージングを披露し、最後に画面いっぱいの顔面どアップで締めるという、なかなかに迫力のあるもの。

*3 当時KLON(現:デュアル)所属、現在では『R.O.D -READ OR DIE-』『文豪ストレイドッグス』等の劇伴作家として有名な作曲家。

*4 ちなみに本作が縁となったのか『超兄貴 ~究極無敵銀河最強男~』の楽曲にも参加している。

*5 さらに遡ると同社の作品である『ジノーグ』でも使用されていた。