スペースパニック

【すぺーすぱにっく】

ジャンル アクション
対応機種 アーケード
発売・開発元 ユニバーサル
稼働開始日 1980年
判定 なし
ポイント 横視線版平安京エイリアン
一部の敵は穴を多く掘らないと倒せない厄介さ
本作の影響を受けた作品が世界的ヒット


概要

  • 1980年にてユニバーサル*1からアーケードにてリリースされた横視線固定アクションゲーム。
  • 酸素の限られた宇宙にて、主人公を操作してちょこまかと動くエイリアンどもを全滅させるのが目的となる。
  • 一人~二人交互プレイ可能。全16面ループのエンドレスゲーム制。

主なルール

  • 操作方法。
    • 本作はレバーと2ボタン(穴掘り、穴埋め)を使用する。
      • レバー左右で主人公の左右移動。
      • "はしご"に近づいてレバー上下で"はしご"の昇り降り移動。
      • 穴掘りボタンで主人公前方の地形に穴を掘る。
      • 穴埋めボタンで穴のある地形を埋める。
  • 本作における主な操作について。
    • ステージは6つの段差があり、段差のあちこちに"はしご"が架けられている。
      • 段差やはしごを利用し、主人公を移動させながら行動を起こさなければならない。
      • 下記の穴掘りの地形に主人公を落とすと、下の地形に落下する事ができる(ミスなどのペナルティはない)。落下中は無敵である(着地と同時に無敵は解ける)。
    • その場にて穴掘りボタンを連続で何回か押せば、段差にいる主人公前方の地形に穴を掘らせる事ができる。
      • 但し、一番下の段差には穴を掘る事はできない。穴が掘れるのは下から2段目以降の段差のみとなる。また、はしごのある床は穴を掘ることができない。
      • 穴掘りボタンの押す回数が少ないと、不完全な浅い穴ができあがってしまう。穴が浅いと問題を起こしてしまう可能性がある(下記の敵の倒し方の項参照)。
    • 穴を掘った地形の前で穴埋めボタンを何回か押せば、掘っていた穴を埋められる。
    • この「穴掘り」と「穴埋め」の操作は本作を攻略する上で重要課題となる。
  • 敵の倒し方について。
    • 画面内には複数の敵がうろちょろしている。
      • 地形に穴を掘り、敵をその穴におびき寄せれば穴中に閉じ込める事ができる。
      • 閉じ込めた敵に近づいて穴埋めを行えば、敵を穴の下の地形に突き落として倒せる。但し、倒し方が特殊な敵も出現する場合がある(下記の敵の種類の項参照)。
      • 突き落とした敵の下に別の敵がいた場合は、巻き添えでそいつも倒す事が可能である。このときは、落下段数に関係なくボス、ドンも倒せる。
      • 穴の掘りが浅い状態で敵が穴に触れたり、穴に閉じ込めた敵を長時間放置してしまうと、敵がそこから脱出してしまう(穴も埋まる)。何度もこれを繰り返すと敵が成長してしまう(高次面では後者の条件での脱出1回で成長する)。なお、平安京エイリアンと異なり、別の敵が救出するようなことはないが、そこで停止待機して穴が埋まると同時に襲ってくるので危険ではある。
      • 難易度設定(クラス)によって成長しやすさが変わる。First Class<Second Class<Third Class<Top ClassがEasy<Normal<Hard<Very Hardに相当し、難しいほど序盤から少ない脱出回数で敵が成長する。
      • 垂直に貫通させた穴を掘り、複数段落とすことで高得点となる。この時、貫通してモンスターが落ちたすべての穴が自動的に埋まる。
  • 敵の種類について。
    • 本作には3種類の敵がおり、それぞれに倒し方に相違がある。
      • 赤い敵である「モンスター」は、普通に穴に閉じ込めて突き落とせば倒せるが、数段重ねて落とすと高得点。
      • 緑の敵である「ボス」は、あらかじめ下の地形に穴を掘った後に上地形にも穴掘りをし、垂直に穴が2段掘られた状態で上側の穴に閉じ込めて突き落とせば倒せる(2段重ねで落とさないと倒せない)。移動スピードが少し速い。
      • 青の敵である「ドン」は、上記のボスと同じ要領で3段重ねの穴を掘り、上側の穴に閉じ込めて突き落とせば倒せる(3段重ねで落とさないと倒せない)。移動スピードが最も速い。
  • OXYGENゲージについて。
    • 画面上には「OXYGENゲージ」が表示されており、時間経過でこれが段々と消費されていく。
      • OXYGENゲージが3分の1分程度まで消費される(ボーナス得点が0になる)と、ゲージが赤枠に達し主人公の移動速度が低下するペナルティ。このとき、主人公が変色し、警報音が鳴り続ける。
      • OXYGENゲージが完全に尽きるとミスとなる。この直前に数フレーム間、ペナルティ状態よりもさらに移動速度が低下し(この時点で死亡確定)、最期には倒れてしまう。
      • ボーナス得点は面が進むに連れて増えていくが、1カウントでの減産量も増えるので制限時間は変わらない。ボーナス得点が0になるまで120カウント(80カウント以降は2カウント毎に減算)、ボーナス得点が0になってから56カウントで死亡。
  • クリア条件とミス条件について。
    • ステージクリア条件は「画面内のすべての敵を穴掘りを駆使して倒す」事である。
    • ミス条件は「主人公が敵に触れる」「OXYGENゲージが0になる」のいずれか。ミス後の復活はすべての敵の位置がリセットされた状態、つまりステージの最初からやり直しとなる。この時、ハシゴの配置(7種類からランダム)が再選択される。
    • 残機がすべてなくなるとゲームオーバー。当時のゲームの例に漏れずコンティニュー機能はない。

特徴

上記のルールを見て感づいた方も多いと思うが、本作は『平安京エイリアン』(以下"平安京"と表記)や後発の『ロードランナー』に『バーガータイム』(以下"バーガー"と表記)と非常に似通ったルールを採用している。
実際、平安京の情報が記載されているWikipediaに本作が関連作として記載されている程である。
平安京舞台の本家(?)に対して、本作は宇宙の敵を倒すという舞台設定であるが、穴を掘って異型の敵を倒すスタイルは両者共通(ロードランナーも)。
宇宙でのモンスター撃退ものといえば電子銃とかの科学的な武器で敵を倒すイメージがあるが、本作は穴掘りオンリーで敵に挑むのが漢気味が溢れていて(?)素敵だ。

穴掘りと穴埋めの動作はまんま平安京のそれと一緒である反面、横視線のアクションゲームなのであちらとは差別化が図られている。また、横視線アクションではロードランナーとバーガーが近いが、ロードランナーは一掘りで穴が出来(自然修復で修復時に敵味方問わずその中にいるキャラはロスト)、目的がターゲット回収&脱出、バーガーはターゲットを落として敵を潰したり落としたりしていく&ターゲットを全て落としきればクリアと差別化が図られている。
まずは平安京でいうところの縦向きの掘りが仕様上不可能な為、あちらよりは掘りの範囲に制限がかけられる場面が多い。
「一部の敵は複数の穴を掘らないと倒せない」「主人公が穴に落ちる行為も移動確保の手段になる」といった平安京にはない要素もあり、ただ安易に横視線にしただけという作品ではない。
本作の敵の動きは平安京以上にすばしっこく、「なんとなくここに穴を掘っていればいいや」感覚で挑むとあっさりと袋小路にされて昇天するのは必至だと思われ、その難易度はかなり高い模様。

ステージ中ではBGMが一切流されず、主人公を歩かせる度に「ピピピピピピ」「ボボボボボボ」といった、いわゆるビープ音しか聞こえない様が不気味かつ味わい深い雰囲気を醸し出している。
また、敵を穴に落とした時の効果音が『スペースインベーダー』のショット音を流用している模様。

ミス時は平安京エイリアン同様、モンスターに喰われる描写がある。死亡時のポーズにいくらかのバリエーションがある。


評価点

  • 平安京エイリアンとの差別化
    • 穴を掘って埋めるは共通点だが、視点が違うだけでなく、上位の敵は倒し方に工夫が必要な点できちんと差別化が図られている。
  • 後発の作品に通じる要素
    • 後発の横視点アクションである、前述のロードランナーやバーガータイムにも通じる物を感じる。
      • ロードランナーははしご移動&穴を掘って敵を埋めるは共通しているが、移動資源にバーを追加、掘れないブロックや落とし穴を追加、穴は自然修復、ターゲットを全て回収して脱出が目的となっている。
      • バーガータイムははしごを使って上下移動は共通しているが、敵の倒し方が異なる、緊急回避アクション(回数制限あり)がある、ボーナスアイテムがある、ターゲット全て落とせばクリアと差別化。
    • これらとは別にカネコから出た『ベルリンの壁』に至っては、本作のルールほぼそのままである。差別化は攻撃アイテムの存在など。
    • ロードランナーに至ってはパズル要素の強化並びにステージエディタ機能と相まって世界的ヒット作となった。

問題点

  • あまりに高すぎる難易度
    • ボス、ドンを倒すのが単純に難しすぎる。単に縦にまっすぐ穴を掘るだけでも難しい(一歩でもずれていると落とした敵がそこで接地してしまう)のに、その上でその最上段まで誘導する必要がある。
      • もっとも、1段につき1ダメージにして、ボスは多くて2回、ドンは多くて3回落とせば倒せるという仕様にすればゲームバランスもいくらか良くなるのではないだろうか。
    • 平安京エイリアンに比べて逃げ場が少ない。
    • ボス、ドンが登場するステージではゲームスピードまで上がるため、穴をまっすぐ貫通させるのが更に難しくなる。
      • 7面で全体のスピードアップ、10面と13面で敵がスピードアップ。
    • 考えなしに穴を掘りすぎると敵が成長して手がつけられなくなることもある。
      • だからといって、多く掘らない訳にはいかないのが困ったところ。ボス・ドンを倒すための仕込みが敵の成長要素にされるのは辛い。
    • その場復活である平安京エイリアンと違い、戻り復活のためノーミスでステージを最初からクリアしないと先に進めない。
      • 制限時間を消費しすぎていると(制限時間が尽きてエイリアン大量増殖状態になった場合を含む)詰んだままゲームオーバーを待つしかなくなる平安京エイリアンと違い、ミスで制限時間がリセットされるため悪いことばかりではない。
  • 理不尽な運ゲー
    • ハシゴの配置によってクリアしやすさが大きく異なるが、これが7種類のステージから毎回ランダムで選択される。
      • ハシゴのある位置の床は掘ることができないため、ボス・ドンの倒しやすさにも大差がある。
    • ランダム性の大きい敵の動き
      • 敵、特にボスやドンは上の方の段にいてくれないと倒しにくいのに、倒せない下の段でウロウロされると時間が足りなくなることも・・・

総評

  • 既存のゲームを短期間でマッシュアップして新作に仕立て上げるユニバーサルの作風であるが、残念ながら本作はやや不出来な部類に当たる。
    • Mr.Do!やレディバグに比べても稼働期間が短く、当時でもすぐに見かけることが難しい状況になってしまった。
  • アイデアは良かっただけに、本作の失敗は後に活かされることとなる。(余談参照)
    • 因みにそのアイデアの良さを活かした『ロードランナー』という世界的ヒット作が数年後に登場していく。

余談

  • 国内での正規移植はカシオのPV-1000のみで*2、メジャーなPC及びコンシューマー機には移植されることは無かった(海外では幾つかのハードに移植されている)。また、有名クリエイターの中村光一氏がアマチュア時代にてパソコン雑誌「I/O」に本作の移植版を投稿していた過去がある。
  • 同社の『Mr.Do!』の続編『Mr.Do! VSユニコーン』は本作のシステムをモチーフとしており、ある意味本作のアッパーバージョンともいえる。
    • 穴がブロック式になり、ハンマー一発でブロックを落とせるようになった。その代わり、プレイヤーが穴を埋める手段がなくなり、また落下中の無敵がなくなっている。
      • 穴の淵ギリギリに立っていると、対岸の敵に接触してミスになる。追い詰められたらかなり厳しい。また、ハンマーで敵を殴ると一瞬だけ怯ませて後退させることができる。
    • 成長したからと言って倒す条件が厳しくなることはなくなった(ただし、最終段階に成長すると以後分裂するようになった)。そのかわり、単に落とすだけでは倒せなくなり、ブロックで潰す必要がある。このため、最上段(屋上の一つ下)の敵は倒しにくくなった(脱出直前、穴を埋めようとした瞬間に叩くことで生成中のブロックごと落として倒すことはできる)。
      • 屋上にはブロックがなく、屋上にいると完全に無防備になる。アイテムは屋上にあるため、取りに行くにはリスクがある(取ってしまえば一定時間無敵になり、画面上の敵がEXTRAモンスターに変化する。)。
    • ハシゴの他に階段があり、階段は押すことで逆方向に向けることができる(敵の侵入経路を断つ事ができる)。
    • 制限時間が元ネタ同様の秘匿情報になっている。制限時間が尽きた場合のペナルティも「最終段階に勝手に成長してしまい、更に穴から脱出しなくても勝手に分裂するようになる」と元ネタに近くなっている。

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最終更新:2023年10月24日 23:48

*1 後のアルゼ、現ユニバーサル・エンターテインメント。

*2 ノーライセンス移植作としてはハドソンの『来なさい!』(MSX)がある