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ファザナドゥ

【ふぁざなどぅ】

ジャンル アクションRPG
対応機種 ファミリーコンピュータ
発売元 ハドソン
発売日 1987年11月16日
定価 5,900円(税別)
配信 バーチャルコンソール
【Wii】2010年10月5日/500Wiiポイント
判定 良作
ポイント ザナドゥの名前が足枷に
単体で見れば良作
ドラゴンスレイヤー&英雄伝説シリーズ
ハドソン マル超シリーズ
ボンバーキング / ファザナドゥ / 桃太郎伝説


ストーリー

世界樹を中心とした世界のお話。
エルフ族とドワーフ族が共に仲良く暮らしていた。ところがある日のこと、流星が世界樹にぶつかり、そのバランスが崩れることとなる。
エルフ族とドワーフ族は争い、麓の都エオリスも水が枯れてしまった。
そんな中、ある1人の男が自分の生まれ故郷エオリスに戻ってきたところから物語は始まる。
再び平和を取り戻すには、狂ったモンスターたちがあちこちで暴れ出している巨大な世界樹の中をつき進み、魔界丘に棲む悪の魔王を倒さなければならない。
人々の期待を背負い、一人の勇士が今、旅に出る。


概要

パソコンゲーム史に残るヒット作となった、ファルコムのアクションRPG『ザナドゥ』。
本作は、その『ザナドゥ』のライセンスを、ハドソンがファルコムから受けて製作したファミコンソフトである*1
「ファ」ミコンの「ザナドゥ」ということで「ファザナドゥ」と名づけられた。

一応は「移植版」としての製作だが、ユーザー層等を考慮して作成された結果、パズル要素などは排除されたアクション重視の作品となっている。
その結果、原作とは全くの別物となっており、原作ファンからはそっぽを向かれてしまったが、ハドソンが製作しただけあってゲーム自体はそれなりにまとまった出来になっている。

ちなみに本作はハドソンの「マル超シリーズ」第2弾でもあるが、発売延期を繰り返した結果、第3弾の『桃太郎伝説』よりも後の発売となっている。


特徴

RPGのように武具の買い物による強化や、パスワードを使用した継続プレイが可能になっている。
装備品やアイテム

  • 装備は魔法(攻撃魔法)も含めて4箇所。WEAPON(武器)、ARMOR(鎧)、SHIELD(盾・兜)、MAGIC(魔法)。
    • 装備品の強化が本作唯一の主人公強化方法である。
      レベルが上がって称号が変わってもパラメータの変化は無く、武具を良くする事でのみ主人公を強化できる。
  • アイテムも、KEY(鍵)などの消耗品、別エリアへの通行証となるアイテムなど、様々なものが用意されている。
  • 食品店と病院はどちらも回復所となっている。食品店は安いが回復量が少なく、病院は割高だが全回復できる。

パスワード

  • 基本的にアクションメインのゲームであるが、パスワードを使用してRPGのように継続したプレイが可能。
    • 当時のFCのアクションゲームは遊んだ日の内に最後までプレイするものが多く、こういう仕様は珍しかった。
    • パスワードでは全てのデータが保存されるわけではなく、保存されるのは、称号、所持品、セーブした教会の場所、ゲーム進行状況のみ。
      • 詳しくは下記『称号』項目で記載するが、経験値と所持金は保存されない。

『称号』

  • レベル表示の代わりであり、経験値が溜まると次の称号へ変化する。
    • ただし称号による影響があるのは『再開時の所持金』『再開時の経験値』『ダッシュまでの助走時間』『ウイングブーツの効果時間』のみ。
      • 称号が上がる毎に再開時の所持金が増え、助走距離も短くなるが、称号が上がる毎にウイングブーツの効果時間は減ってしまう。
    • 経験値はその称号の初期値になる。
      • その為、称号が変わる前にパスワードを聞くと経験値が無駄になってしまう。
      • 反面、パスワードを聞く前に所持金を使い切って買い物をするのは得。

評価点

世界観

  • 巨大な世界樹の中に広がる世界という世界観は評価が高い。
    • 物語冒頭、麓の村に歩いていくシーンで始まるのだが、主人公がどんどん小さくなっていく事で樹の巨大さが伝わってくる。
    • 外観となる場所では明るく空が見える一方、内部には霧の深い場所や人工的な建築物が建造されている場所もあり、まさに「巨大樹と共にある王国」が描かれている。
    • 敵も独特な姿をしているものが多く、世界観構築に一役買っている。
      • ボスクラスになるとドラゴン等の勇ましい物もいる。
      • 全体的にややグロテスクな風貌の敵が多いが、「元は善良だったドワーフが謎の隕石の影響でミュータント化してしまったもの」という設定にマッチして雰囲気を高めている。

アクションRPGとしての出来

  • ハドソン製だけあってアクションゲームとしてのバランスは良い。
    • 最初の町中からして「ピョンピョン跳ねるだけの敵」「足元を歩いておりジャンプで避けられるが魔法がなければ倒せない敵」等が存在しており、アクション要素、RPG要素がうまく配置されている。
      • もちろんこれら初期の雑魚敵はどちらも攻撃方法は体当たりのみである為、初心者でも対処は簡単。
    • 物語が進む毎に敵の動きも多彩になっていくが、こちらもRPGのようにお金を貯めて買った武具や魔法で出来る事も増えていくちょうど良いバランス。
      • 時間をかけた探索型RPGとして、RPG的な強化とアクションゲームとしての両立が出来ている。
    • 体力制な事に加え落下による即死がなく*2、倒すと回復アイテムを落とす敵も多いので、当時のアクションゲームによくあった死にまくる展開とは無縁。
      • そういった点で遊びやすさを確保しつつ、いやらしい位置に配置されたトラップアイテムや、厄介な動きをする敵等もいる為、歯ごたえもあり適度な難易度に収まっている。
      • ボスを中心に後半はダメージも厳しくなってくるが、防具がかなり強力な為、しっかり更新していけばこれも対応可能。

BGMも良好

  • ボンバーマン』等で有名な竹間淳が担当しており、音楽は全体的に評価が高い。
    • 独特なBGMで雰囲気をうまく盛り上げている。霧のこもったエリアや終盤のエリアではおどろおどろしい雰囲気も良く出ている。

独自フォントによる見やすい文字

  • 会話シーンで使われるフォントは独自で用意しており、この時代にしては珍しく漢字を使用している
    • 漢字を使うためか文字は大きくなっており、非常に見やすくなっている。

問題点

ほとんど残っていないザナドゥ要素

  • 原作ファンからの本作の評価を大きく落とした原因。
    • 称号や武具の名称にザナドゥの名残はあるものの、横視点の探索型アクションゲームとなっており、原作のようなパズル要素などは皆無。
      • ザナドゥを期待して買うとその違いに唖然とすることになる。

最終的なRPG要素の弱さ

  • あくまでメインはアクションであり、武具購入や入手による強化は出来ても一般的なRPGのようにレベルアップによるステータス強化は出来ない。
    • その為、クリアに躓いた際にレベルアップによるごり押し等は出来ない。
      • ゲームが進むほどにいやらしい動きをする敵が増えていくので、ザコ敵一匹一匹に真剣に対処していかなければクリアは困難。
      • また基本的にレベルアップで損をする事はないが、ウイングブーツの効果時間のみレベルが上がる毎に短くなってしまう。これにより一部の戦闘難易度が上がってしまう。
    • とはいえ、パスワードによる継続や強力な武具の探索などRPG的な楽しみという側面は十分存在する。

説明書とゲーム内容の齟齬

  • 設定が変わったのか設定ミスか、説明書とゲーム内容にズレがある。
    • ダンジョンのうちの一つ「サファーの塔」にあるアイテム「ペンダント」は、説明書では「剣による攻撃力をアップさせてくれる」とあるが、実際は攻撃力が下がる。
      • サファーの塔には他に必須アイテムやイベントがあるわけでもない為、完全にトラップダンジョンになってしまっている。一応、経験値やお金は稼げるが、サファーの塔はスルーした方が良い。ゲーム全体が素直なつくりでこういった形のトラップは他にないので、設定ミスと思われる。
    • 最強装備のうちの一つ「バトルヘルメット」は、説明書によると「魔力のほとんどをさえぎる」(敵の放つ魔法弾のダメージをほぼ無効にする)とあるが、実際は何の効果もない。
    • 説明書には「『ドラゴンスレイヤー』という最強武器でないとラスボスは倒せない」とあるが、実際はどんな武器でもダメージを与えられる。
      • また、ゲーム中においても「ラスボスには一切魔法が効かない」という情報を得られるが、実際はどんな魔法でもダメージを与える事ができる。ゲーム中の情報提供者が勘違いしてるだけの可能性もあるが、やはり設定変更か設定ミスだろう。
    • 強化アイテムである「オイル」は説明書には「一定時間、主人公が無敵状態になる。」とあるが、効果時間中であっても、魔法弾を盾で防いだ時のみ何故かダメージを受ける。
      • 恐らくは体で受ける際にオイルによる無敵処理をするはずが、盾でダメージを軽減する処理の方が優先されている為。元々魔法は別として作られた可能性もあるが、誤解を招く表記には違いない。
  • 上述の盾の仕様にもクセがあり、説明書には「敵の魔法による攻撃から身を守ってくれる」とあるが、プレイヤーが盾を構えている状態で、盾の部分に魔法弾が当たった時のみ、盾によって防御したとみなされ、ダメージが軽減される。
    • プレイヤーの攻撃モーション中に弾を受けたり、盾で防ぎきれない頭部や足に弾を受けた場合は、盾によって防御したとはみなされない。飛んでくる魔法弾一発一発に真剣に対処しなければならないのである。
  • 無意味な施設
    • 何故か回復施設には無駄が多い。
      • 各町の食品店と病院では、食品店で全快まで何度も回復する方が割安の事が多い為、病院の意味が手間を減らす以外にはない。
    • 最初の街「麓の街エオリス」には、武道の道場と魔法の道場があり、金を払って利用する事が出来るが、効果はそれぞれ体力を一定量回復させる、魔力を回復させる、というだけのもの。この時点では他にいくらでも回復手段はあるので、ほぼ無意味な施設になってしまっている。
      • 説明書には「武道(魔法)の道場。旅立つ主人公に武器(魔法)の使い方を教えてくれる。」という説明があり、それとも食い違っている為、製作段階では開始直後用の別目的の施設だったのではないかと思われる。
      • 原作ザナドゥではゲームスタート時に王様からもらったお金でパラメータを上げるのに使われた施設である。キャラクターの強化が装備の更新だけでなく、原作同様にキャラのパラメータが存在したのだろうか。
  • フラグ管理が甘く詰んでしまう場面がある
    • イベントアイテムのマトックは道を塞いでいる壁を破壊するアイテムなのだが、使用して壁を破壊した後、本来進むべき右方向ではなく元来た道の左方向へ進んでしまうと壁が復活してしまう。しかもマトックは1度使うと失われる上にボスを倒してももう落とさないため、二度と壁を壊せず、完全に詰み状況になってしまう。
      • かなり序盤の方なのでやり直しもそこまできつくないのがまだマシではある。
  • ウイングブーツ
    • 空を飛べるアイテムなのだが、使用後わずか30秒で効果が切れてしまう。
    • これを使って飛ぶところは結構迷わされるため、上まで辿り着けず消えてしまうことも多い。しかも、1つ2800Gと高価なので、買い直すのも面倒。

総評

一言で言うならば『ザナドゥを期待するとガッカリゲー、単独で見るなら十分良作』である。
ハドソン製だけあってゲームシステムはしっかり作りこまれており、アクションRPGとしての出来は非常に高い。
ただ『ザナドゥ』を冠した事は結果的に失敗だったといえる。
『ザナドゥ』を期待した原作ファンの多くを落胆させてしまった結果、クソゲーレベルで叩かれる事もあり、本作を楽しんだプレイヤーからも「別タイトルで出した方が良かったんじゃ?」と言われてしまっている。

独自のゲームであることをきちんと踏まえれば、難易度やボリューム、背景世界の設定やシナリオ、フォントが大きく見やすいメッセージウィンドウ等、当時としてはかなり高いレベルでまとめられた良作ではある。
ただ、やや難解な部分が多く、本作品のターゲット層である子供向けというよりは、もう少し上の年齢向けとなってしまったようだ。


余談

開発の経緯

高橋名人が後年公式ブログで、以下のように述べている。

実際に、移植する段階では、「ザナドゥ」そのままのゲームでは、小学生には難しすぎるのではないか?
という事で、パズル的な要素を排除して、アクションRPGに特化しました。
これにより、ザナドゥのファンからは、別な作品だと言われたことも有りますが、それは正しいと思います。
 
でも、今でも言いますが、パソコンのあのスタイルを小学生にもというのは、やはり違うと思いますので
ファザナドウでの施策は合っていたと思います。

PC版をそのまま移植した『バンゲリング ベイ』で同じような事(小学生には難しい)を言われたのも要因との事。
まぁ、実際『ザナドゥ』のまま移植していたら小学生には難しすぎるのは確かである。
PCのRPGをそのまま持ってきて理解されなかった『ハイドライド・スペシャル』や、難しいが高評価の『ウィザードリィ』のような例もあるし、どちらが正しいかは難しい所だろう。

とはいえ、本作の仕上がりにはファルコムの人が激怒したらしく、その後『イースI・II』の移植許可を得るための交渉はかなり難航したという。
そちらのメインプログラマーであった岩崎啓眞氏が20年以上後にブログで語ったところによると「普通なら諦めると思う程度のライセンス料をふっかけられた」とのこと。

また、その後岩崎氏が関係者に取材した結果によれば、上記の高橋名人の記述は表向きの理由であった可能性が高く、実際には「原作をよく知らなかった人物に開発を任せた」「様々な社内事情に巻き込まれて充分な開発期間が取れなかった」「当時の容量やスペックでは忠実な移植はそもそも無理だった」といった理由により、ほぼオリジナルのゲームを短期間で作って出さざるを得なかったというのが実情のようだ。(参考:岩崎氏のブログ1/2

その他

  • ファミコンと言う名称は日本のみ(海外はNES)なのだが、本作は海外版においても「Faxanadu」という名称で発売されている。
  • 任天堂ハードにおけるザナドゥ
    • 長らくは任天堂機種での唯一のザナドゥシリーズであった本作だったが、本作の36年後にSwitchにて『東亰ザナドゥ』が移植され唯一ではなくなった。
    • また本家本元のPC8801mkIISR版ザナドゥも同ハードでEGGコンソールで配信、という形で初めて任天堂ハードでプレイ出来るようになった。

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最終更新:2024年03月18日 22:33
添付ファイル

*1 高橋名人曰く「ハドソンがザナドゥの名を騙って勝手に作った」という風説もあるが、「紛れもなく日本ファルコムからライセンスを受けて製作された作品です」との事。

*2 下のマップに落ちるだけ。