顔のない月 DVD-ROM COLLECTORS EDITION RENEWAL

【かおのないつき でぃーぶいでぃーろむこれくたーずえでぃしょん りにゅーある】

ジャンル 伝奇恋愛アドベンチャーゲーム
対応機種 Windows 98SE~XP
発売・開発元 ROOT
発売日 2005年4月15日(詳細は後述)
定価 通常版:6,090円
ダウンロード販売版:2,800円*1
レーティング アダルトゲーム
判定 なし
ポイント CGはズバ抜けて高レベル
メインヒロインは大人気
シナリオは難解で描写不足も目立つ


概要

アダルトゲームメーカーである有限会社オービット(現:ARIDESIGN株式会社)のデビュー作『顔のない月(以下「無印」)』のリニューアル版。
無印の発売からの発売歴は以下のようになる。

+ クリックで展開

()内は定価。全て税込表示。

  • 2000年12月22日 - CD-ROM初回限定版
  • 2000年12月28日 - CD-ROM通常版 (共に9,240円)
  • 2001年8月10日 - Limited Collection版 (8,190円)
    • 外伝の『アフェクション』と『死角』を収録。
  • 2002年5月24日 - DVD-ROM COLLECTERS EDITION初回版 (7,140円)
  • 2002年5月31日 - DVD-ROM COLLECTERS EDITION通常版 (6,090円)
    • 以上2つはゲームシステムを再調整して『Limited Collection』に収録されていた外伝を収録。メディアもDVD-ROMへ、倫理審査もメディ倫*2へ変更。更にルートが追加、再構成されている。
  • 2005年4月15日 - DVD-ROM COLLECTORS EDITION RENEWAL初回版 (7,140円)
  • 2005年4月30日 - DVD-ROM COLLECTORS EDITION RENEWAL通常版 (6,090円)
    • 以上2つはDVD-ROM COLLECTERS EDITION版の廉価版。以下2つも併せて本項で扱う。
  • 2007年12月28日 - ダウンロードDigiket.com独占先行販売版
  • 2008年1月11日 - ダウンロード一般販売版 (共に2,800円)
    • 2021年現在は配信停止。
ゲーム自体は、2002年の『DVD-ROM COLLECTERS EDITION』で完成していると言っていい。しかしUIが変更されている、既にロットアップされているなどといった事情を鑑みて、この項目では最終バージョンであり記事名にもなっているリニューアル版を扱う。

ストーリー

主人公・羽山浩一は養父母の事故死をきっかけに、恩師希望の本山教授の勧めもあって実家の本家である倉木家を訪れる事になる。
しかし、浩一は疲れからか――それとも養父母の死の前から見続けていた悪夢のせいか、倉木家にたどり着く前に倒れてしまう。
担ぎ込まれるように倉木家へとたどり着いた浩一は見知らぬ部屋のベッドの上で目を覚まし、そして少女の顔を見る。「女性の顔を識別できない」という奇妙な病を持つ浩一にとって、それは初めての経験だった。
その時見た少女の名は倉木鈴菜――彼女が自分の許婚である事を知るのは、それから間もなくしての事だった。

ゲーム構成

『顔のない月』本編

  • 内容としては所謂「館モノ」であり、同時に伝奇物でもある。
    主人公である羽山浩一は信州の奥深くにある倉木家の当主として自由に過ごし、その中で物語において重要な鍵を握る儀式「月待ちの儀」に関わる様々な出来事に巻き込まれつつも、許婚の少女・倉木鈴菜を始めとするヒロインと接したり、12年前に訪れた事のあるこの地で自身のルーツを求める事となる。
    • 尚、一部の場面を除けば浩一視点で物語が進む。
  • ゲームの流れとしては、選択肢によって各ヒロインの「思慕値」と「情欲値」が上昇し、この2つの値によってシナリオが分岐するという形をとっている。
    • この数値が上がる条件としては、思慕値はヒロインのことを慮る選択をすれば上がる傾向にあり、情欲値は逆に欲望優先の選択をする事で上がる傾向にある。
      また、各ヒロインに会いに行った時点で両数値が上昇するようになっている。
    • 2つの値はいつでも確認可能なので、パラメータの調整自体は難しくない。基本的な調整自体は、だが。
  • 1つのエンディングを迎えたからと言って、謎が簡単に解決する訳ではない。一部の謎に対する答えが導き出されても尚多くの謎は残り、更なる謎が増えたりする事もある。
    よって、決められた複数のエンディングを見る事で初めて、解決編となるトゥルールートが開放される。
    • トゥルールートは鈴菜ルートからの派生となる。今まではどのエンドでも問題が全て解決したとは言えなかったが、トゥルールートではとあるキャラが登場する事で問題解決への道筋が示される事になる。
    • 今までに攻略したルートで明かされた情報を照らし合わせつつシナリオを読み進めていく事で、作中で提示された謎が解決していくようになっている。前提となるルートをプレイせずにトゥルールートだけをプレイしても、意味不明になるだけだろう。

『死角』

  • 本編の前日談であり、インストールしてすぐにプレイ可能。内容としてはちょっとしたビジュアルノベル。
    • 本編同様に浩一視点で進むのだが、悪夢にうなされている時期の話という事もあって非常にややこしい事になっている。
    • 尚、ボイスは付いておらずCGも写真や本編CGを加工したものになっている。
  • 本編では浩一が、養父母の死は自分に責任があると語っているのだが、その「原因」もこの話で明かされる。逆を言えば本編では明かされない。

『アフェクション』

  • 本編トゥルーエンドの後日談であり、当然トゥルーエンドを見なければプレイ出来ない。
    • 1年後の話と言うだけあって新たな立ち絵を与えられたキャラが多く、新キャラも存在する*3
  • 1つだけ選択肢が存在するのだが、内容が内容だけに非常にプレイヤーを悩ませる事になる。命に関わるとかそういう選択肢ではないのだが、究極の選択である。
    • どちらを選んでも結末は全く同じになるが、選択肢によってそこに至るまでの過程が変化する。

キャラクター

+ クリックで展開
  • 羽山浩一
    • 主人公。民俗学の専攻を希望する既に成人済みの大学生。ヘビースモーカー。
    • 長身で端正な顔立ちの美青年、そしてクールかつどことなくミステリアスな雰囲気と、女性からモテる要素は揃っている。
    • 前述した通り女性の顔を認識出来ないという奇妙な病を持っているのだが、それを悪用してホストのバイトをやっていたという経歴を持つため、女性経験は豊富。しかし、実際は初心だったりする。
    • 突然倉木家の当主を継ぐ事になってしまった訳だが、「優しい旦那様」として過ごすも良し、「鬼畜な旦那様」として過ごすも良しである。
    • 何かが欠けたような感覚を覚えているのだが、一体何が欠けているのかは己の目で確かめて欲しい。
  • 倉木鈴菜
    • メインヒロイン。倉木家のお嬢様であり、浩一の許婚。尚、既に高校を卒業した19歳(ギリギリ18歳の可能性有り)である。
    • 黒髪ポニーテールの童顔な美少女で、スリーサイズは不明だが立ち絵からしてスタイルも抜群。
      • しかし、間違いなく巨乳キャラと断言できる描写があった割には、他のシーンではそれほど大きくないように言われている。後述するファンディスクでは明確に巨乳キャラとして描かれてあり、後発のOVAやファングッズでも胸のサイズに上方修正が掛けられている。
    • 倉木家の令嬢であると同時に倉木神社の巫女として、物語の鍵を握る「月待ちの儀」において非常に重要な役割を持っている。
      • だが、残念ながら普通の巫女姿を拝む事はほとんど出来ない。広義の巫女装束(儀式装束)ならば何度も見るのだが、オーソドックスなものは立ち絵すら無い。版権イラストで我慢するしかない。
    • そんな彼女の特徴を一言で表すならばツンデレ。最初はハリネズミと評されるほどに浩一を嫌悪しているのだが、接していく内に次第に心を許して、本当の自分を曝け出してくれるようになる。
      • パッと見る限りでは強気なキャラなのだが、実はかなり気弱で寂しがりである。
    • 押しに弱い上にその場の雰囲気に流されやすく、「嫌よ嫌よも好きの内」を地で行くキャラでもある。つまり、こちらが望むならば割と好き放題に出来たりする。
      • ファンディスクでは特に顕著であり、何だかんだと言いながらコスプレを楽しんでいる。
  • 春川知美
    • サブヒロイン。倉木家のメイドであり、看護師としての役目も持っている。
    • 性格は非常に大人しく、おっとりとしている。天然ボケっぽい性格なのは、彼女も浩一と同じく「欠けた」人間であるからである。
    • 茶髪のツインテールで眼鏡っ娘と外見的な魅力もあるが、やはり何と言っても目を引くのはその巨乳。鈴菜を完全に圧倒しており、それだけではなく非常に従順である。
      • つまり、こちらが「奉仕」を求めれば……。
    • 普段は大人しく、主人である浩一に従順なのだが、彼女のルートの終盤では文字通り「イメージチェンジ」する。
  • 栗原沙也加
    • サブヒロイン。知美と同じく倉木家のメイドなのだが、倉木家に来てから1年程しか経っていない。
    • 金髪のショートカットで、大人びた印象のある知美とは逆に可愛らしさが前面に押し出された印象がある小柄な美少女。スタイル(主に胸)も実に対照的。
    • 性格は非常に明るいのだが、人を小ばかにしているようにも感じる仕草や時折見せるコケティッシュな魅力など、妙に芝居じみた印象を感じる仕草が多い。
    • しかし、例によって彼女も正体はとんでもないものだったりする。彼女がこの屋敷に来る事になった背景も悲惨。
      • その関係で、しばしば貧血になったりする。この文章だけでは貧血とは無縁に見えるが、決して無縁ではない。
  • 沢口千賀子
    • 本山教授の事実上の助手である聴講生。『DVD-ROM COLLECTERS EDITION』で個別ルートが追加された。
    • クールな印象を与える美人でいい女ではあるのだが、しばしば吐かれる毒は強烈。
    • 実は浩一の元彼女であるが、関係が無くなった今でも交流自体は続いている。
    • 左手には常に手袋を付けているのだが、その理由は語ってくれない。
      • 一部ルートでは一時的に手袋を外す事になる。
    • 倉木家に妙に積極的について来る事になるのだが、その割には本山教授とは行動せず単独行動する事が多い。しかし、突然東京へ帰ったりとその行動には謎が多い。
  • 倉木由利子
    • 鈴菜の母親で、現在の倉木家で絶大な権力を持つ。千賀子と同じく、『DVD-ROM COLLECTERS EDITION』で個別ルートが追加された。
    • とにかく若々しい美女。本当に一児の母なのかと疑いを持ちたくなるほどに若い。
      • 娘の年齢から言えば四十歳前後のはずなのだが、二十代だと言っても普通に通用するレベルで若い、若すぎる。
    • 知美同様におっとりとしており、人の意思(たとえ、娘の鈴菜だろうと)を無視して話をする事も多いなど色々とインパクトが強い人物。しかし、突然現れたり突然消えたりするなど、リアルに影が薄い。
    • 時々だが浩一に対する呼び方が変わり、口調も若干変化する。この事がシナリオにおいても重要となる。
    • そして、彼女を象徴するのがこのゲームにおいて重要な花である椿の花。屋敷の中庭に生えている椿の木の下にいる事が度々ある他、彼女と椿の木は切っても切れない関係がある。
  • 東衣緒
    • 鈴菜の従兄妹で、倉木家の分家である東家の跡取り。浩一が来る前から倉木家に居候している。
    • パッと見る限りでは女にも見える中性的な美少年。故に本山教授には間違えられたが、浩一にはすぐに男だと見抜かれた。
    • 民俗学に興味を持っており、倉木家の研究が主である本山教授を慕う事になる。エンディング次第ではそれなりに有名(であると思われる)な大学に主席合格した事が語られるなど、頭もいい。
    • お姉さんタイプの女性が好みらしく、まさにお姉さんタイプの女性である知美に想いを寄せている。
    • ルート次第では主人公と同棲する事も。
  • 本山教授
    • 浩一の恩師希望の大学教授。倉木家について調べており、浩一が倉木家縁の者と知ってゼミに誘ったのも彼。
    • とにかく女に目が無い。フィールドワークと称してナンパ紛いの事もしているらしい。
      • だが、民俗学者として有能なのも事実。情報が限られた中から新事実を見つけ出すなど、腐っても学者である。
    • 尚、モラルは完璧に崩壊している。奥さんに逃げられるのも当たり前。
  • 春川一平
    • 知美の祖父であり、倉木家の医者。
    • 春川家は倉木家の分家なので、「月待ちの儀」では神官を務めるためにいつもとは異なる衣装に身を包む。
    • 倉木家当主となった浩一が気に入らないかのような素振りを見せている。
      • だが、本質的には倉木家の存続のために動いている。
  • 春川五平
    • 一平の双子の弟で、倉木家の庭師。庭師ではあるが、参道の補修や倉の管理などもしている模様。
    • 雰囲気からして只者ではないオーラを漂わせており、声も同様に特徴がある。
      • 具体的には、砂漠で青い機動兵器に乗って強敵として立ち塞がっていそうな声。
    • 浩一の彼に対する印象は単純に「気に入らない」。だが、プレイヤーからすれば「気に入らない」どころではなく間違いなく殺意が沸くレベル。外道の極み・犬畜生以下の人間である。
    • ゲーム中ではこの男に対して、奇襲をかける選択肢が存在するのだが…。
  • 倉木チヨ
    • 鈴菜の曾祖母であり、本来は倉木家において最も権力が強いのは彼女。館の離れに住んでおり、当主の座を継いだ浩一も離れには近づけない。
    • およそ100年も生き続けているだけあって、既に耄碌してしまっている。
      • だが、巫女としての能力は今でも持ち続けている。
    • 由利子とは方針が異なり、一平の行動は彼女の意志による所が大きい。
  • ???
    • 公式の紹介ページには載っていないキャラ。
      • いくつかのイベントでその存在が断片的に語られるが、トゥルールートにて本格的に物語に関わってくる事になる。
    • 尚、今ではファングッズや版権イラストでその姿を見る事が出来る。
      • 実は、発売前から一部イラストに堂々と登場している。それが彼女であると気付けた人はまずいないだろうが。
+ 「???」の詳細。物語の根幹に関わるネタバレ注意
  • 倉木水菜
    • 鈴菜の双子の姉。つまり、上記の一部記述は真っ赤なである。
    • 陰の気が強い鈴菜とは逆に、陽の気が強い。
      • そして、スタイルも実に対照的である。とは言え意外と胸があるため、発売前のイラストにて公開された時には鈴菜と間違えていたプレイヤーが多数*4
    • 神官の家系において双子は凶兆である。そのため、鈴菜とは引き離されて育てられてきた。
      • 言葉は喋れず精神年齢は幼児そのもので純真無垢。精神的には所謂ロリキャラどころではないので、手を出すのはかなり問題がある。
    • 尚、その存在は色々な意味で常人とは全く異なる。そしてそれは、彼女と関わりの深い鈴菜、浩一も同様である。
    • 余談だが、由利子は二児の母ではない。この辺りは別作品で語られている。

評価点

  • 初出が2000年でありながら、CGは現在の「CGが凄い」ゲームと比べても全く遜色ないレベル。原画家であるCARNELIANの本領発揮である。
    • あるCGは全体像が画面に納まりきらないサイズとなっており、そのシチュエーションも相まって非常に印象深いものとなっている。
    • そして、その美麗なCGによって所謂「実用面」での評価も高まっている。質だけではなく数もなかなかの物がある。
  • 無印ではUIが使いづらい、ゲームエンジンがかなり重いといったプレイヤーに不親切な設計だったものの、本作ではその点が解消されている。
    • 無印の時点でかなりの人気があり評価も高い作品ではあったのだが、UIの不便さはプレイヤーの許容範囲を超えてしまっていたため、結果としてゲーム全体の評価自体に大きなマイナスが付けられてしまっていた。
    • UIの不便さが目に付いてシナリオを楽しめないという無印の問題点が解決されたのは明確なプラスになっていると言って良い。
  • シナリオはキャラ描写に関しては間違いなく高評価。
    • キャラの特徴自体に幅が広く、それに加えてほとんど全てのキャラに表向きの顔とは全く異なる裏の顔があり、それがシナリオにも大きく関わって前面に押し出される事でプレイヤーをシナリオへと引き込んでくる。
      • 後述するように冷静にシナリオだけを見れば粗も結構な数が出てくるのだが、粗の分を補ってプレイヤーをゲームに引き込み牽引するだけの魅力はあると言って良い。
      • キャラの癖は強いものの、その癖の強さが印象深さと直結している。そのため、女性キャラは当然として男性キャラもなかなか魅力的。
    • 特にメインヒロインである鈴菜はその立ち位置のために描写の量自体も他のキャラに比べてかなり多いのだが、描写の多さがそのまま魅力に繋がっており、プレイヤーから圧倒的な支持を受けている。
      • 最初は険悪な関係だったのが次第に打ち解けていき、最後には見ているこちらが恥ずかしくなるほどの相思相愛っぷりを見せるようになる。
        ツンデレヒロインとしての魅力をこれでもかと言うほどに引き出しており、伝奇ゲーとしての難解なシナリオは程々に恋愛をメインに楽しむべきという見方もある。
      • 伝奇要素を度外視して鈴菜との恋愛要素に焦点を合わせると、そのシナリオは(過激な)少女マンガを思わせる所がある。少女マンガ的なシナリオは賛否分かれやすいところではあるのだが、その賛否の分かれやすさをキャラの魅力で押し切っている。
    • また、シナリオに粗こそ見られるもののストーリーに漂う雰囲気そのものは紛れも無く伝奇ゲーのそれであり、BGMも伝奇ゲーらしさを後押しする要素の1つとなっており、雰囲気と魅力的なキャラを楽しむ分には問題は無い。
      • シナリオ自体も粗こそあれど、土台の部分がしっかりしているためにシナリオそのものが破綻していると言うほどではない。そのため、伝奇ゲーとして高評価を下す人も決して少ないとは言い難い。

賛否両論点

  • 「館モノ」かつ「伝奇物」というゲームジャンルの性質上、合わないプレイヤーも多い。当然ながら、作品の雰囲気も暗い。
    • ストーリーや設定が難解である。ゲーム中の解説だけでは全てを理解するのは困難であり、何回もプレイしたプレイヤーでも誤解する事が有り得る。
    • 陵辱色が強いため、そちらに耐性がない人には辛い。そもそも、ゲーム中におけるエロシーンの数から言えば所謂抜きゲーとしての色も濃い。
      • 尤も、これは好みの問題でしかないと言えばそれまでではあるが。
  • BL要素がある。
    • 高品質なCGが高い魅力を出しているし、BL要素が好みな人には当然問題ない。しかし、男性向けのエロゲーで耐性のある人がどれだけいるかと言われれば…。
      • しかも、トゥルールートを開放するためにはそのルートを攻略しなければならない。
      • 実は、上記のルート以外にも僅かながらも男の同性愛描写があるシーンが存在したりする。
    • この作品が原因で「目覚めた」人もいるようだが、比率から言えばどれだけいるのか…。尤も、鈴菜同様に根強いファンは意外にもいるようなのだが。
      • CARNELIANはBLゲーや乙女ゲーにも関わっているため、女性ファンも一定数付いているという背景がある。そのため、この作品の女性人気の獲得には一役買っていたりする。
  • 隠しヒロインはエロゲー的な意味で若干不遇。設定的に仕方がないのだが。

問題点

  • 昔のゲームだけあって、難易度が高い。特にトゥルールートへの派生条件は実質ノーヒント*5
    • ただし、主要イベントの発生条件が載ったフローチャートがゲーム中にいつでも閲覧可能なので、それを見ながらプレイする事で容易に攻略可能である。
      • だが、フローチャートを使うと先の展開のネタバレにも繋がってしまうのが難点。使うならば、最初からネタバレ覚悟で使わなければならない。
      • また、大抵のイベントの発生条件はゲーム構成の項で述べた2つのパラメータの数値が条件を満たしているか否かであり、基本的な攻略方は「攻略したいヒロインにのみ会いに行く」の一点であるため、発生条件の難しい一部のイベントを除けば極端に難しいという程ではない。難しいイベントは本当にややこしいのが問題なのだが。
  • 演出面に物足りない面があり、プレイヤーの理解を妨げる一因となっている。
    • 立ち絵が大きく変化する事が少なく、地の文における登場人物の動きの描写、擬音表現などと言った演出が不十分なシーンがチラホラ見られるため、登場人物の動きが分かりにくい。
      • また、最後の最後まですぐ近くに崖があることが分からない沙也加ルート終盤など、人物の位置関係が把握しづらいシーンもある。
  • 設定はかなり練りこまれており、そこがこの作品の魅力の1つではあるのだが、その反面練りこまれた設定が活かしきれていない面も多い。
    • 浩一は女性の顔を認識出来なかったが、鈴菜の顔を見た事で突然その病が完治したという事は前述した通りである。
      しかし、そもそも何故女性の顔を認識出来なかったのか、何故鈴菜の顔を見た事でその症状が消えたのかについて、理由が説明されない。
      • 一応、プレイヤー側である程度予想する事が出来ない訳ではないが、ゲーム中では浩一が一人で勝手に納得しているために、予想が正しいのか確かめる術は無い*6
      • ゲーム序盤において一度だけこの病が再発するのだが、あくまで一瞬の事でありこれが何だったのかについても説明されず、後の伏線となる事も無い。
    • トゥルールートにおいて、他のルートで明かされた一部の情報(主に知美と沙也加の正体)が活かされない。
      • 沙也加に至っては、その正体故にトゥルールートでは蚊帳の外なのもマイナスポイント。出しゃばられても困るのは確かだが。
      • 他ルートで明かされた情報は、あくまでシナリオへの理解を深めるための補助として考えるべきなのだろう。
    • また、ページ名にもなっているRENEWAL版には付属していない「顔のない月 Encyclopedia」を読まなければまず分からないであろう設定も存在し、それが黒幕の正体などと言った重要な要素にも関係しているため、尚更分かり辛く、誤解を招きやすい。
  • シナリオの所々にご都合主義感のある展開が見られる。
    • 隠しヒロインの行動が、性格設定を差し引いて考えても前提からして破綻している。
      トゥルールート以外では特定のイベントで後ろ姿を見せる他、沙也加ルートの終盤でシルエットだけにはなっているものの、ハッキリとその姿を浩一の前に現している。
      そして、肝心のトゥルールートでは浩一の前に何度も姿を現す他、鈴菜の前にも姿を現している。
      • だが、鈴菜が彼女の存在を忘れてしまうほど長い間、鈴菜の前に姿を現していない。一応、彼女と鈴菜は引き離されているという設定があるものの、屋敷の周りを度々うろついており、その気になればいつでも会えるという事は上記の通りである。
        また、幼少期には何度も鈴菜の前に姿を現していた事が語られている。それ故に、突然姿を現さなくなった事が納得しづらい。
      • 「今頃、現れてどうしようというのよ!」とは彼女と再会した鈴菜の弁だが、まさにその通りだと言わざるを得ない。事実、彼女が今更になって現れたがために事態が深刻化したとも言えるからだ。
    • トゥルールートにおいて浩一を導くキャラの発言が不明瞭な所がある。
      • 一応、訳あって全てを語る事は出来ないとも発言しているのだが、それでもある程度正確に伝える事が出来るはずだと思わされる場面がしばしばある*7
      • そして、アフェクションにおいても発言が曖昧なのは相変わらずである。こちらは、まだ物語が続くという予告の要素も含まれているため仕方が無いと言えばそうなのだが、全てを語る事は出来ないからこそご都合主義であるとも言える。
  • 消化不良気味に終わるエンディングがいくつか存在する。
    • あからさまに次回作を意識したものがあり、トゥルーエンドも後日談のアフェクションでは新たな物語を予感させる終わり方となっている。
    • これは当時の創作においてはある程度見られた傾向ではあるが、今となってはこの傾向は拒絶されやすい。そして、明かされなかった謎が2018年現在においても明かされていないというのも問題であろう。
  • フラグの管理ミスなのかテキストの確認不足なのか細かい点で矛盾がいくつかあり、知っているはずの情報を知らない事になっていたりする。
  • 浩一が煙草を吸うシーンが度々入るのだが、その演出に難がある。
    • 何度も「カチッ、シュボッ」と言った感じの効果音が入るため、クリックを要求される事も含めてこれが微妙にテンポを悪くしているのである。人によっては良くも悪くもこの煙草描写が特に印象に残るとも。
      • ただしこれについてはロード時間を誤魔化すための演出であるとも言われている。
      • ちなみにアフェクションでは設定的な理由もあって、一転して煙草シーンが全く入らなくなる。
  • 各種エンディングでのキャラの待遇にかなりの格差がある。
    • 最も優遇されている鈴菜が人気においても一番になったためあまり注目されていないが、扱いの差はかなり激しい。
+ ネタバレ注意。隠しヒロインについても言及あり。
  • 鈴菜ルート通常ハッピーエンド
    • 何事も起きずにエンディングを迎える。沙也加の問題や水菜についての問題等は何も解決しないものの、黒幕は協力者の裏切りによって道連れにされ、最悪の事態は免れた上で鈴菜との結婚式を迎える。
      • (そもそも己の不幸を理解できない)水菜を除けば誰も不幸にならない結末であるため、ある意味では最も平和的な結末*8
  • 鈴菜ルート特殊バッドエンド
    • 黒幕の思惑通りに事が進み、月待ちの儀によって知美、沙也加、衣緒などが生贄となり、浩一は浩一の姿をした別の存在へと変貌して儀式を行った人間を皆殺しにする。その後、「浩一」と幼児退行した鈴菜は誰もいなくなった屋敷で2人きりで過ごす。
      • 人によっては、浩一と鈴菜が最も深く愛し合ったルートはこれであるとも。
  • 知美ルート通常ハッピーエンド
    • 千賀子が自身の計画通りに大虐殺を始め、その千賀子も浩一に止めを刺そうとしたところで知美に射殺される。その後、一命を取り留めた(?)浩一と知美は虐殺後の誰もいない屋敷で過ごす。
      • 結末の文面は鈴菜バッドエンドに似ているが、中身は完全に別物。
  • 知美ルート特殊ハッピーエンド
    • 千賀子が大虐殺を始めるまでは同じだが、浩一は二度と倉木家に近づかない事を条件に千賀子に見逃され、知美と衣緒を連れての脱出に成功する。脱出の過程において正体不明の人物から、12年後に再びこの地を訪れ、千賀子から守るために止むを得ず封印する事になった鈴菜ともう1人(水菜)を救うように頼まれる。また、後に東京に戻った浩一の部屋に衣緒と知美が押しかけてくる。
      • 知美ルートと言うよりは衣緒ルートと言う方が正しいかも知れない結末。また、このエンディングでの描写を見る限りでは他のルートで千賀子が虐殺を始めた場合も、鈴菜と水菜だけは確実に助かっていると窺える。
  • 沙也加ハッピーエンド
    • 浩一は五平の追撃を受けつつも辛うじて倉木家から脱出し、本来の記憶と名前・立場を取り戻した彼女と共に同棲を始める。しかし、脱出途中に出会った謎の少女(水菜)とその少女から貰った鈴が気になって仕方ない浩一は、倉木家に戻らなければならないと感じていた。
      • 紛れも無く沙也加のハッピーエンドなのだが、その先にある破局が確定してしまっている。
  • 由利子エンド
    • 実は浩一の初恋の人が由利子であり、亡霊でしかない由利子は結ばれた後に鈴菜を浩一に託して消滅する。由利子の消滅によって完全に心が折れた浩一だったが、鈴菜の献身と由利子の象徴でもあった椿の花が再び花を開いた事で、浩一の再起を予感させて結末を迎える。
      • 鈴菜エンドほどではないが、このエンドも平和的な解決を迎えている。
  • 千賀子エンド
    • 黒幕の策略によって暴走を始めた浩一を止めるため、千賀子は止むを得ず「左手」を使って浩一の精神ごと「鬼」を破壊し、倉木家の抹殺を完遂する。それから時が経ち、千賀子は自らの過ちを償うために壊れた浩一を支える事を決意する。
      • 無印には存在しなかったルートであるためか、由利子同様にハッピー、バッドの区別は無い。
  • トゥルーエンド
    • 鈴菜が黒幕によって体を乗っ取られるものの、月待ちの儀で黒幕を消滅させる事に成功する。無事に解放された鈴菜と、諸問題がクリアされて表に出られるようになった水菜を連れて上京する。
      • 沙也加も当然問題が解決しているのだが、後日談であるアフェクションを見ると沙也加は倉木家での記憶を全て失っている。確かに倉木家での記憶は、鈴菜や知美が友人であった以外はロクな物ではなかったが。

見れば分かるとおり、この作品において幸せになれると言っていいのは鈴菜とトゥルーエンドでの水菜のみである。
知美はハッピーエンドにおいても何か歪んだ形となっており、沙也加に至っては他の作品ならばバッドエンドでもおかしくない結末であるどころか、トゥルーエンドでも割を食っている感がある。
千賀子エンドは元々ハッピー、バッドの区別が無いとは言え中身はバッドエンドそのものであり、由利子エンドも大局的に見れば平和的な解決なのだが、一種の鈴菜エンドと化している。


総評

なんと言ってもCARNELIAN氏による美麗なCGが持ち味。本作が人気を得た最大の理由でもある。ファンからは、この時期のCGを評価して「氏が手がけたゲームの最高傑作」との声も多い*9
素直にエロゲーとして見た場合、所謂「実用面」での評価は高品質なCG故に高めであり、キャラクターは魅力に溢れ、伝奇ゲーとしての高い評価を付ける人も多い。
しかし、シナリオは題材からして人を選ぶものであり、内容も難解で全容を把握しづらく好みが分かれやすい。それらを差し引いても、設定の齟齬・消化不良・描写不足な部分があり、上記の問題点の項目を見れば分かる通り細かな粗を探せばキリがない。
シナリオ評価の賛否が大きく分かれる事、演出やテンポの面に抱える問題等々がネックであり、「数々の問題点をヒロインの魅力(とそれを引き立てる美麗なCG)でカバーしている」佳作という評価に落ち着く。
半陵辱ゲーと言っていい内容、難解な伝奇ゲーと言った点から、人によって合うか合わないかが大きく分かれるゲームであるが、合えばとことんハマるゲームである。

2019年現在ではDL販売も停止しているため、新たに入手するには中古品を探すしかないのが難点となっている。


余談

  • 本作のメインヒロインである鈴菜は非常に高い人気を得ており、後にORBITファンクラブ限定*10のファンディスクとして『鈴菜日記』が製作され、初出から10年以上が経った2011年にも新規グッズが作られる等、ORBITを代表するヒロインとして看板娘的な立ち位置を得ている。
    • 某雑誌の人気投票では長期に渡って1位を獲得するなど、所謂王道をしっかりと押さえたキャラ造形が人気を博したと言える。
  • ROOTブランドから発売された『ヤミと帽子と本の旅人』において、本作から数人のキャラが登場している。
    • また、同作の重要人物は本作に登場したとあるキャラの実の妹であったり、本作の黒幕が姿形こそ違えど堂々と登場しているなど、関係は深い。
  • 実質的な続編として『桃華月憚』が発売されている。
    • しかしこの作品、本当は副題に『顔のない月2』と付くはずだった作品であり、他にも色々と迷走の跡が見える作品となってしまった。
    • 桃華月憚のPS2移植版DXパック(所謂限定版)には、鈴菜ルートが収録された簡易移植版『顔のない月 ~Select Story~』が同梱されている。
      • ちなみに、本作の鈴菜ハッピーエンドと桃華月憚には物語上の繋がりは無い。この事は実際に『Select Story』の最後で断りが入れられている。
        何故このような事になっているかと言うと、本作は18禁要素が設定に深く食い込んでいるため、他のルートはCERO:Dレベルに修正する事もほぼ不可能である事が理由として挙げられるだろう。
        そのため、『Select Story』以外はコンシューマ機への移植はされていない。むしろエロ無しの本作は「誰得」だったりするが。
  • ROOTブランドは解散しており、大本の有限会社オービットもサポート以外は活動停止している。
  • 2012年12月29日にCARNELIAN氏が同人誌として本作の原画集を発売。boothでのダウンロード販売もされている。
  • 2024年にリメイク版『顔のない月-待宵の双椿-』が発表された。

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最終更新:2024年03月23日 00:04

*1 2021年現在は配信停止。新規購入は不可能。

*2 現:映像倫。尚、以前のバージョンではソフ倫に依頼していた。

*3 ただし、『死角』で存在がさりげなく語られている。

*4 しかし、『桃華月憚』のとあるキャラの設定から考えればAカップ相当のはずなのだが…。

*5 特定のタイミングで、通常攻略とは違う行動を取らなくてはならない。

*6 小説版では2つの説が挙げられるのだが、こちらでも理由はハッキリとしない。

*7 アフェクションでは浩一もその事をモノローグの中で指摘している。

*8 ただし、千賀子だけは時系列的に少々怪しかったりするのだが。

*9 ただし、CARNELIANが関わったゲーム自体に評価が高い作品があまり無かったりするのだが……。

*10 現在はファンクラブメンバー以外にもDL販売されている。