PCエンジン スーパーCD-ROM2ソフト『百物語 ~ほんとにあった怖い話~』と、その続編に位置するセガサターンソフト『古伝降霊術 百物語 ~ほんとにあった怖い話~』についての紹介をしています。



百物語 ~ほんとにあった怖い話~

【ひゃくものがたり ほんとうにあったこわいはなし】

ジャンル サウンドノベル
対応機種 PCエンジン スーパーCD-ROM2
メディア CD-ROM 1枚
発売・開発元 ハドソン
発売日 1995年8月4日
定価 6,800円
判定 なし
ポイント 一般投稿と稲川淳二の語り手メインの怪談オムニバス
ゲーム性は皆無
おまけゲームを楽しめるかはプレイヤー次第

概要

  • 1995年にてハドソンからPCエンジン スーパーCD-ROM2にリリースしたサウンドノベルメインのソフト。
  • ホラー小説『ほんとにあった怖い話』(朝日ソノラマ刊)にて寄せられた一般投稿による実話怪談をサウンドノベル化した作品である。
    • また、本作の監修は怪談タレントとして有名な稲川淳二氏本人の語りで描かれる怪談シナリオも収録されている。
  • ゲーム本編は原則1人プレイだが、ミニゲーム(下記)は複数人でプレイする事を前提としたものがある。

主なルール

  • 主なゲームの流れについて。
    • ゲームを始めると100本の火の灯った蝋燭がびっしりと並べられた画面に移行し、その蝋燭のどれかを選ぶと何かしらのシナリオが発生する。
      • シナリオを読み終えれば選んだ蝋燭の火が消える。このゲームの最終的な目的は蝋燭100本をすべて選んで100のシナリオを鑑賞し、蝋燭全部を消す事にある
      • シナリオの選出は完全にランダムのため同じ蝋燭でもプレイするたびに変わる。よって、好みのシナリオを任意で選ぶのは実質不可能となっている。
      • どの様な選び方をしようがシナリオ内容に一切変化はなく、最終的には必ずすべてのシナリオを鑑賞できる。よって、特に選び方を意識する必要はない。
    • 100本目の蝋燭のシナリオだけはどう選ぼうが固定(表面上の最後のシナリオ)である。
      • 蝋燭の火を100本すべてを消すと隠された101番目のシナリオが解禁される。すなわち本作は全101のシナリオが収録されている
      • 100本の蝋燭の火すべてを消せばタイトル画面に「おまけ」という項目が追加される。これはいわゆるミニゲーム集に該当し、計3つのミニゲームがプレイ可能となる。
  • シナリオの分類について。
    • 本作のシナリオは主に4つの分類があり、それぞれシナリオの趣旨に相違がある。以下その詳細。
    • 「実話ストーリー」
      • 一般投稿による実話怪談。背景の絵をバックに文章メインで話が進む一般的なサウンドノベルに該当。シナリオによってはボイス演出が交わる事もある。
      • 一部のこの分類のシナリオにはPCEの周辺機器「3D立体サウンド」に対応しており、その環境が整っているならば通常とは違う迫力のあるプレイが可能となる。
      • 全部で72シナリオ存在する。また、101番目のシナリオもこの分類である。
    • 「スペシャルストーリー」
      • 稲川淳二氏本人による実話怪談。この分類は一切の文章表示はなく、稲川氏のボイスと背景絵のみで話が進められる。
      • ボタン操作によるメッセージスキップは一切できず、プレイ中はフルオート鑑賞となる。
      • 全部で10シナリオ存在する。また、100番目のシナリオ(蝋燭100本目)もこの分類である。
    • 「学校の七不思議」
      • 学校の七不思議として有名な話を紹介するシナリオ。このシナリオのみ途中で選択肢があり、どれを選ぶかによってオチが変化する場合がある(1回シナリオを終えればどんなオチでも蝋燭の火は消える。
      • この分類は舞台先をあらかじめ選択できる(一度選んだシナリオは次の蝋燭では選べない)。
      • 題名通り、全部で7シナリオ存在する。
    • 「心霊現象マップ」
      • 東京を中心とした関東周辺にある心霊スポットを紹介するシナリオ。スポットの紹介の他に、地図を交えたスポットの交通手段や心霊ランクも表記される。
      • 学校の七不思議同様、この分類も舞台先をあらかじめ選択可能(すでに選んだシナリオが選択不可なのも同じ)。
      • 全部で13シナリオ存在する。
  • ミニゲームについて。
    • 全蝋燭の火消し後のおまけでプレイできるミニゲームは以下の3種類。
      • 「百物語体験用ろうそく」…火の灯った蝋燭(本編のそれとは別物)が表示され、ボタンを押せば最高100本の蝋燭が順々に表示され続ける。100本すべてを消すと何かが起こるらしい。
      • 「電子こっくりさん」…こっくりさんをTV画面内で忠実再現したもの。PCEコントローラーの十字キーをコインに見立て、最大4人(指4本)でこっくりさんを体験できるらしい。
      • 「ESPカード」…別々のマークが表示された裏向きのカードが5枚あり、それを1枚めくって指定された同じマークのカードを当てるゲーム。正解率が高いとプレイヤーの霊感力が高いらしい。
  • その他の情報について。
    • 本体などにバックアップ機能が搭載されていれば、ゲームをリセットした時点でオートセーブがされ、次回プレイ時にて以前の蝋燭が消された状態での再開が可能。
    • 一度鑑賞したシナリオは蝋燭表示画面にてSELECTボタンを押す事により、鑑賞済みのシナリオリストが表示され、それを選ぶ事により何度でも再鑑賞が可能となっている。
    • シナリオ鑑賞中にリセットしてしまうと、そのシナリオの蝋燭は消された扱いとなってしまう(シナリオ再鑑賞は可能)。邪道ではあるが逆にこの方法を利用してプレイ時間の短縮が可能。
  • 他詳しい事項やシナリオタイトルの詳細に関してはWikipedia参照の事。

特徴

  • ゲーム性は皆無。
    • 上記ルールでも述べた通り、本作はシナリオを読み進める事だけに特化したサウンドノベルである。
      • 学校の七不思議以外の分類シナリオには一切の選択肢はなく、どうプレイしても話が変化するギミックは搭載されていない。七不思議に関してもオチが軽く変わる程度の変化に留まっている。
      • すなわち本作は「101あるシナリオを順々と鑑賞するだけ」のゲームであり、プレイヤー自身が関われるゲーム性はほぼ皆無である。
      • よって、本作は同期に登場したスーパーファミコンソフト『学校であった怖い話』の様な、何度もプレイしてシナリオ分岐を発見するような楽しみは一切存在しない。
  • 1シナリオあたりの話の長さは短編だけあってどれもすぐに終わる。
    • シナリオの長さには強弱があり、長いものは10分以上かかるが、短いものは1分もかからない。その辺はどうしても物足りなさを感じるが、さくさく読み終えられる軽快さは持っている。
  • ミニゲームを楽しめるかは人次第?
    • ミニゲーム3つはどれもゲームというよりは実用ソフトの趣旨が強く、「遊ぶ」類のゲームではない。
      • 「百物語体験用ろうそく」は蝋燭を表示するだけ。「電子こっくりさん」は完全なりきりツールである。「ESPカード」はぶっちゃけこれと同じもの(運ゲーとかいっちゃ駄目)。
      • どのミニゲームも不思議な力を持っていれば楽しめるのだろう。そう解釈しないとミニゲームの存在意義が説明できない…
  • いわくつきなゲーム。
    • 説明書によると「お子様や心臓の弱い人単独のプレイは控えるように」といったお約束な注意事項の他に…
      • ゲームプレイの内容を他人に明かすと災いが降りかかるかもしれない
      • 霊感の強い人はスタッフがプログラムしたものとは無関係なものが見えるかもしれない
      • ヘッドホン使用中は背後の気配に気を付けるように
    • といった表記がされている。なんて恐ろしい…
  • 心霊現象マップのシナリオの情報はこのゲームがリリースされた1995年時のものであり、今とは地域環境が変わっているものが幾つかある。

評価点

  • 話の雰囲気としては上手く描かれており、そういう意味では上質な内容となっている。
    • 何といっても、BGMの入れ方など絶妙なタイミングで入る演出の数々が恐怖感を醸し出しており、純粋にサウンドノベルとしてのクオリティは高い。
    • BGMそのものに関しても気持ち悪さが耳につんざく楽曲が要所に流され、雰囲気を上手く引き立てている。
    • 背景の絵は実写メインとなっているが、PCEの性能ではあまり繊細な映りではなく、すでに本作リリース時にて発売されていた32ビット機に比べると外見上では幾分か劣る。
      しかし、そのチープな絵の映り方が想像を掻き立てられる怖さを見事に表現できており、低スペックであるが故に雰囲気向上に貢献しているという皮肉な結果となっている。
    • 文章表現は極めて巧みに描かれており、一画面あたりの表示される文字が大きいので読みやすさという面では優秀である。

賛否両論点

  • 純粋に怪談ものとしてみれば、良くいえば王道、悪くいえばありがちで新鮮味の薄いシナリオが大半を占める。
    • 本作は一般投稿と稲川氏による実話シナリオを元にした「現実趣向の怪談集」であり、創作物のような話の広さはあまりない。
    • 実際「今の時代ならば軽く耳に挟めるシナリオ」も少なくなく、シナリオの展開に関しても「就寝中に金縛りにあった」「道を歩いていたら霊に遭遇した」といった似た様な展開のシナリオも目立つ。
      • その辺は本作に限らず、現実趣向の怪談全般にいえる事であり、そこはそういう作風と割り切るしかないだろう。
    • 怖さの感じ方は人それぞれなので一概に断定はできないが、シナリオ全般の怖さの範囲は「ゴールデン~深夜のTV番組程度」のものである。
      • せいぜい「後味の悪い」「わだかまりが残る」位の終わらせ方で、そこまで狂気なトラウマ描写はほぼない。大半は平和的に終わるシナリオが数多い。

問題点

  • 稲川氏の他の怪談作品でもいえる事だが、スペシャルストーリーにおける氏の喋り方が早口な上に滑舌がよろしくない。
    • 会話の字幕が一切表示されない為、時々何を喋っているのかがわかり辛い事がある。特に100番目のシナリオのプレイ時間はクライマックスな為か大分長く、より困った事態になりやすい。
  • 一般投稿を元にしているためテキストの表記揺れが激しい。ある意味リアリティがあるのだが、あるシナリオで「T大学」などとイニシャルにしていた組織が別のシナリオでは思いっきり正式名称で書かれたりする。
  • バックログや七不思議用の朗読スキップといった機能が搭載されておらず不親切。
    • とはいえ、シナリオ自体は短いので再鑑賞での再開の負担はあまりない。

総評

  • 良くいえば怪談ゲーム初心者には非常に適任だと思われる作品で、話の雰囲気作りは至って上質である。そういう意味では(ちょっと変な言い方だが)「適度な恐怖を味わえる安定感重視な怪談集」といえる。
  • しかし、ゲーム的にはやり込めるような要素はなく、誰でも確実に全シナリオを拝む事が可能である。そこを「楽」ととるか「面白みが薄い」ととるかで本作の評価は大幅に変わるだろう。


古伝降霊術 百物語 ~ほんとにあった怖い話~

【こでんこうれいじゅつ ひゃくものがたり ほんとにあったこわいはなし】

ジャンル サウンドノベル
対応機種 セガサターン
メディア CD-ROM 2枚
発売・開発元 ハドソン
発売日 1997年8月8日
定価 5,800円
判定 なし
ポイント 100本蝋燭を消す目的は健在
ハード性能向上により外観進化

概要(古伝降霊術)

  • PCE版(以下前作)の2年後にリリースされた新作にあたる。100本の蝋燭を消してシナリオを鑑賞する目的はそのままに、前作から大幅なクオリティが図られている。
  • 本作も前作に引き続きホラー小説『ほんとにあった怖い話』による一般投稿を元にしたシナリオと、監修担当の稲川淳二氏が語るシナリオがメインのサウンドノベル集となっている。
  • 前作と同様に1人プレイ専用。前作のミニゲーム「電子こっくりさん」が本作には収録されておらず、複数人のプレイを想定したモードは一切存在しない。

特徴(古伝降霊術)

  • 前作はCD-ROM 1枚のみだが、本作は2枚組みとなっている。また、シナリオの長さが前作のそれよりも幾分か増している。
  • シナリオは前作からそのほとんどが一新されている。被りシナリオも少数あるが、背景絵などの演出は別のものに差し替えられている。
    • ただし、PCE版から流用されている一部のシナリオについては、怪談の内容と全く関係の無い一枚絵が表示されるだけというものもある。
  • ゲーム開始時に「プレイヤーがこのゲームをプレイして何かのトラブルが起きても当社(ハドソン)は一切の責任は負いかねる事を了承する」といった趣旨の契約書にサインさせられる。
    • さらには説明書に付属している「お札」をパッケージに貼り付けるよう忠告が書かれている(ゲーム内のナレーションでもそれを推奨してくる)。あろう事か、いわくつき度が前作より悪化している
  • 本作は101番目のシナリオが2つあり、必ずどちらかに分岐するようになっている(両方のシナリオは一度に鑑賞できない)。分岐の条件は上記の契約書のサインの仕方が絡んでいる。
  • 前作はシナリオの選出がランダムでプレイするたび順番が変化したが、本作はどう蝋燭を選ぼうが完全なる一本道のシナリオ順番となっている。
    • 本作では「ある話に登場した人物が後の話で再登場する」などのストーリー的なギミックの存在、2枚組となった事により1枚に全シナリオを収録できない容量的問題などで順番を固定化する必要があったものと思われる。
  • 他詳しい事項やシナリオタイトルの詳細に関してはWikipedia参照の事。

変更点・評価点(古伝降霊術)

  • 前作と比べグラフィック周りが格段に綺麗になり、ハード性能向上により前作にはなかったポリゴン描写や一部シナリオの動画映像などが追加された。
    • グラフィックが綺麗になり新世代機の凄さを見せ付けた反面、これのせいで前作の想像力をかきたてられるようなチープなおどろおどろしさが失われたという批判もある模様。
  • 前作にあった「学校の七不思議」「心霊現象マップ」といったストーリー性の低いシナリオは存在せず、そのすべてがストーリー性重視のシナリオのみとなっている。

問題点(古伝降霊術)

  • SS本体の内蔵時計の設定により発生するイベントが幾つか存在する。
    • 現実時間で数日間に渡る大規模な時限イベントが存在し、その内容によってエンディングが分岐する。しかし、ご存知の通りセガサターンの内蔵時計は初期化されやすいため、別の意味で電源を入れるのが怖い。
  • 前作でいうところのミニゲームの類は収録されていない。
  • 前述のように101話目が2種類用意されているが、1つはよりにもよってPCE版に収録されていたものの再収録となっている。
    • サターン版ではムービーの導入などで演出面は強化されているが、話の流れはほぼ同じなため前作プレイ済だとコレがオチのシナリオ?とがっかりしてしまう。
  • ビジュアル強化による弊害
    • ムービー導入の弊害として、一部に途轍もなく棒読みの役者がいるため恐怖よりも失笑を誘う。
    • PCE版と比較して実写画像は非常に鮮明になり役者のアップ画像が増えたが、そのせいで役者の使い回しがバレバレになってしまっている。
      • あるシナリオで語り部となっていた人間(を演じていた役者)が別シナリオで悪霊となっているなどどうしても違和感がある。予算の都合か髪型や化粧等による差別化もされていない*1
      • 「特徴」に書いたように本作では個々の怪談のストーリーが繋がっていたり、同一人物が複数の怪談に登場することがある。このため意図的に同一人物を再登場させているのか、単に役者を使い回しをしているかが分かりにくくなってしまっている。
  • 一部怪談の質の劣化
    • 例を挙げると、オチで出てくる死体=幽霊が実は語り部だったという話があったり、当事者でもない投稿者が話に出てくる未解決の殺人事件被害者が殺される過程や犯人を知っているなど明らかに創作とわかる怪談が増えた。

総評(古伝降霊術)

  • 前作ではできなかった表現が追加され、ボリュームも上がったという正当進化といえる続編。シナリオ関連の恐怖度は前作とほぼ同格だと思われるので、こちらも怪談ゲーム初心者にうってつけな存在といえる。

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最終更新:2022年08月15日 23:11

*1 これによって短髪で日焼けした筋肉ムキムキのタンクトップ姿の男性の幽霊というシュールな幽霊も見られる。