このページでは1996年頃に海外でのみ稼働したゲームについて取り扱います。
1987年に稼働開始した海外版が同名となっているゲームについては『熱血高校ドッジボール部』をご参照ください。


SUPER DODGE BALL

【すーぱーどっじぼーる】

ジャンル アクション
対応機種 アーケード(MVS)
販売・開発元 テクノスジャパン
稼働開始日 1996年頃
プレイ人数 1人~2人
備考 日本未稼働
判定 なし
ポイント テクノスジャパンの遺作
海外では発売されるも、日本では発売前に倒産したため幻に
格ゲー色の強いドッジボール
不謹慎すぎるラスボス
くにおくんシリーズリンク


概要

テクノスジャパンがMVS用に開発したくにおくんシリーズのひとつで、国内に先駆けで『SUPER DODGE BALL』のタイトルで海外で先行販売された。
国内では『くにおの熱血闘球伝説(くにおのねっけつドッジボールでんせつ)』という名前で1995年秋のアミューズメントマシンショーに出展はされていたものの、発売前にテクノスジャパンが倒産してしまったために未発売となっている。

設定や登場人物は「熱血硬派シリーズ」寄りであり、絵柄やキャラクターのグラフィックも「ダウンタウンシリーズ」以降のデフォルメデザインではなく、SFC版『新・熱血硬派 くにおたちの挽歌』に近くなっている*1


ストーリー

熱血高校ドッジボール部の部長であるくにおの元に「ドッジボール魔王」と名乗る人物から草ドッジボール大会の招待状が届く。
時同じくして、りきを始めとする過去に因縁のあった面々の元にも招待状が届き、皆それぞれの目的の為に参加を決意する。


ゲームシステム

基本的なルールは『熱血高校ドッジボール部』などと同様。
それ以外の点で大まかな概要を説明する。

操作方法

※「攻撃時」はボールを所持している状態で、「防御時」はボールを所持していない状態を指す。
※レバー操作に関してはプレイヤーが左側コートであることを前提とし、右側コートである時は反対になる。

操作 攻撃時 防御時
レバー8方向 入力した方向に移動
レバー右に2回 ダッシュ
レバー左に2回 バックステップ
Aボタン シュート キャッチ
Bボタン パス ドッジ(避け)
Cボタン ジャンプ
Dボタン フェイント*2 挑発
A+Bボタン
同時押し
パワー溜め

必殺シュート

必殺シュートが過去作と異なり、ダッシュの歩数やジャンプ中の特定タイミングによってではなく、格ゲーのようなコマンド入力で技を繰り出すのが特徴。

更に、ダメージを受けたり与えたり、任意でパワー溜めをする事で対戦中の画面下部にあるゲージが溜まり、ゲージが最大になっている時にコマンドを入れることでメンバー全員による「合体攻撃」を繰り出すことが出来、それを命中させることが出来れば当たった敵1人に一撃必殺に近いほどの大ダメージを与えることが出来る。
ただし、合体攻撃は各チームのリーダーに当たるキャラクター(くにおやりきなど)でなければ発動させることが出来ず、初期状態でお供にいる2名は合体攻撃を発動出来ない。

基本的にシュートはジャストタイミングでキャッチすればダメージを受けることはないが、必殺シュートはキャッチタイミングがズレていれば格ゲーで言うところの「削り」のようなダメージが発生し、合体攻撃に至ってはジャストタイミングであっても削りダメージが発生するため、必殺シュートと合体攻撃はキャッチしても残体力やキャッチタイミング次第ではキャッチしきれずに「削り殺し」のような形になることもある。

必殺シュートのコマンド

本作では技を使う上で使用するコマンドが固定されている。
以降では便宜上それぞれのコマンドをA~Eと表記する。
このコマンドも上記操作同様に左側コートである時のもので、右側コートの時は入力するコマンドが反転する。
なお、レバー入力はテンキー表示とする。

種類 コマンド 内容
A 623+A キャラクター固有の必殺シュート。
お供キャラクターはこの必殺シュートしか持たない。
B 236+A キャラクター固有の必殺シュート。
各チームのリーダーのみが使用出来る。
C 防御時に623+A ボールが来るタイミングに合わせて使うことでボールを跳ね返すカウンター技。
全キャラクター使用可能。
D ゲージ最大時に641236+A チーム全員での合体攻撃。
チームリーダーのみ発動可能。
E 623+B 味方にパスを回し、受け取った味方が強力なシュートを繰り出す連係攻撃。
全キャラクター使用可能。

対戦ルール

各チームメンバーは3人で、先に3人全員がアウト(体力が0)になったチームの負けで、対戦は1本勝負となっている。

また、対戦には制限時間があり、時間内に決着が付かなかった場合はメンバー全員の合計残体力の多いチームが勝利となる。
極端な例として、「3人内野にいるが、いずれも残体力10%程しかない」チームと「1人しか内野にいないものの、残体力が100%」というチームとでは 後者のチームが勝ちとなる

その他

対戦開始時点では外野にキャラクターはおらず、対戦中にアウトになったキャラクターが外野に出てそのまま外野を担当することになる。
従って、外野の外れの方にボールが行ってしまって誰も拾えないという状況に陥ることもあるが、その際はコートに立っている審判がボールを拾い、改めてジャンプボールで仕切り直しになる。
それ以外にも一定時間自コートや自チーム外野にあるボールを拾わずに放置していた場合も同様に審判がボールを拾いに来て、拾われてしまうとまたジャンプボールで仕切り直しになってしまう。

なお、外野に出ていても必殺シュートは問題無く使用することが可能となっており、合体攻撃を行う時は一時的に内野に復帰して技を繰り出し、その後でまた外野に戻ることになる。

ボールをキャッチした後、自チームの内野・外野のパス廻しを続けて一定時間内に相手の内野に投げ入れなかった場合はファールになり、相手チームのボールになる。


キャラクター

下記の7人がそれぞれリーダーとなるチームから、1つを選んでプレイする。

キャラクター 概要
くにお シリーズの顔である白ラン熱血硬派。
OPデモや勝利リザルトではいつも以上にリアルでかっこいい顔を拝める。
りき くにおの永遠のライバル。
日本語版ではくにおチームに勝つと「いつでも主役交代してやるぜ!」とメタ発言したりも。
しんじ 第1作2面ボスの暴走族のヘッド。
第1作とは違いリーゼント・鉢巻き・特攻服のいかにも暴走族な格好*3
くにおに一泡吹かせる為に参加。
みすず 第1作3面ボスの怪物スケバン。
ただし今回はディスコ通いのダンサー風の格好。日本語版では口調も女っぽくなっている。
さぶ 第1作ラスボスの暴力団組長。
スーツ姿ではなく極道・任侠といった感じの和装で、体格もやや筋肉質に。
第1作でくにおに敗れた事によって組が衰退していたが、ようやく復興を成し遂げた為、復讐の為に参加する。
ケンジ 本作オリジナル枠その1。
上半身裸で身体中に養成ギプスを着けた少年。
元プロのドッジボーラーだった父親にスパルタ教育を受け、プロのドッジボーラーになる事を夢見ている。
見た目や設定に加え、キャラクター担当声優が古谷徹氏であることもあり、モチーフは『巨人の星』の「星飛雄馬」と思われる*4
みゆき 本作オリジナル枠その2。
ピンクの髪を二つに結った女の子*5
巨大遊園地「ネズミーランド」でバイトをする女子校生で、ケンジの幼馴染という設定。

リーダーキャラクターとその技

本作に登場するリーダーキャラクターとその技についてまとめる。
表記は海外版MVSの技表からの出典だが、当時の国内のゲーム情報誌に記載されていた技名も異なる場合は別途で記述する。
A~Eは上の必殺技のコマンドに対応した技となっている。

キャラクター名 A B C D E
くにお 熱血ナッツシュート 熱血ローリングショット 熱血カウンター 熱血ロイヤルストライク スペシャルパス
りき スカイラークショット マッハシュート 花園カウンター バーニングアッパー
みゆき メガウェンディーズ マウスフラッシュ*6 マウスリフレクト*7 ラブ・メリーゴーランド
ケンジ マッスルキラー ロイヤルガストシュート フィストカウンター フレンドリーローリング
しんじ バリバリローリング ロリロリローリング シャープフリップ*8 バリバリツーリング
みすず 百貫ラブ セクシー・イン・ザ・スカイ コングリフレクト ダイナミックヒップ*9
さぶ 仁義ウァール*10 やくざファイア*11 やくざリフレクト*12 任侠エクスプロージョン*13

その他のキャラクター

各チームには初期状態でリーダーの他にお供が2名つくが、敵チームと戦い、勝利した時にプレイヤーの任意でその勝利したチームのリーダーを仲間に加えることが出来る。
最初の2名はお供と入れ替えになるが、3回目以降敵リーダーを仲間に加える時は先に仲間に加えたキャラクターと順次入れ替えとなる*14
勿論、仲間に加えたキャラクターも合体攻撃を発動させたり、コマンドBの技を使用することが出来る。

最初からいるお供キャラクターはシュートの速度やパワーで劣り、必殺シュートも1種類しか使えないため、リーダー格のキャラクターに比べると弱い。また一度でも外すと二度と登場しなくなってしまう。

また、上記キャラクターの他にプレイヤーが使用することの出来ないキャラクターとして「ドッジボール魔王*15」というキャラクターがおり、これは本作のラスボスとなっている。


問題点

基本的な難易度が高い

  • デフォルト設定だと序盤から本気で殺しにかかってくると言っても過言ではない位の強さとなっている。
    • それでも最初の2ステージ位はまだ何とかなるのだが、それ以降のステージは最低でも各種必殺技やカウンター技などのテクニックを的確に使いこなせなければ、まず勝つことは不可能と言える難易度である。
      • 筐体レベルが1~2位であれば、最低限必殺技を上手く使えればどうにかクリアを目指せる。

不謹慎なパロディネタ

  • 前述した「ドッジボール魔王」に関して、このキャラクターは1回体力を0にしてもアウトにならず、第2形態に移行するのだが、その姿がどう見ても麻原彰晃*16*17
    • 更にはラストステージの背景が巨大な仏像の前でボールを持ちながら何度も土下座をする信者、コートに書かれているものが仏教を連想する絵である為、明らかに「オウム真理教」が元ネタのパロディである*18
    • 本作が海外で発売された1996年頃と言えば、日本では麻原率いるオウム真理教による「地下鉄サリン事件」が1995年3月に起きたばかりの頃であり、いくら何でも不謹慎すぎると言わざるを得ない。
      • 実際はテクノスジャパンの倒産の煽りで日本では未発売だったのだが、一部で「このキャラクターのせいで日本では発売出来なかった」という噂がまことしやかに囁かれた程。
+ 第2形態撃破後のエンディングは…
  • 本作の一件は、「ドッジボール魔王」が将来有望になるであろうドッジボール選手を潰すために開催した裏大会であった事が判明する。
    • 「ドッジボール魔王」は元々ドッジボールのスタープレイヤーであったのだが、それ故の驕りもあったのか、試合中の自身のミスから生じた事故で妻を喪い、その事に対する絶望から生じたドッジボールというスポーツそのものへの憎しみから今回の一件に至っている。
    • ゲーム中の全ての試合は、1人の審判の少女によってボールトスが行われていたが、この少女は彼の娘だった事が明らかになる。
      • 最後は娘の説得もあり改心し、「次はクリーンな大会を開催する」と約束し去っていくという、上記のパロネタとは裏腹に落ち着いた内容になっている。

非操作キャラクターの扱い

  • 非操作キャラクターは操作キャラクターを追従するように元々のフォーメーションを崩さないように動くのだが、操作キャラクターに合わせてくっついてくるだけであり、それ以外に何かすることがないため、何かしらのシュートの巻き添えを食いやすい。
    • 一応、シュートは両チーム共に操作キャラクターを狙うようになっているが、合体攻撃などを移動で回避しようものなら、大抵の場合は非操作キャラクターが巻き込まれて直撃を受ける。
  • それ以外にもボールが自コートにあり、操作キャラクターがダウンしていてもボールを拾うといったこともせずに棒立ち(あくまで操作キャラクターを追従するだけなため)になるため、そのまま審判にボールを拾われて反撃のチャンスを潰されてしまうことも。

評価点

最低限ドッジボールの体は成している

  • 一部の必殺技や合体攻撃がもはや直接攻撃の跳び蹴りだったりヒップアタックだったり等々、「ドッジボール…?」と言いたくなるところも多々あるが、少なくともボールがなければ出来ないアクションであり、かなり好意的な見方になってしまうが、あくまで「演出を少々やりすぎた」と言うことも可能ではある。
    • 飛び蹴りやヒップアタックはボールを蹴り飛ばしたり乗っかったりしながら突き進むものであり、さぶのやくざファイア(鉄砲玉)も銃で直接相手を撃てばいいものをわざわざボールを撃って軌道を変えながらぶつけるというもの。最終的なダメージは必ずボールが当たった事によるものとなる。
    • 後に出たDS版ドッジのように直接殴る蹴るした方がボールを使って何かするよりも手っ取り早く終わるというのと違い、ボールを使っての対戦という体は辛くも成しており、ボールがない時に殴る蹴るといった暴力行為が出来るという訳ではないので、ケンカドッジボールとして「ドッジボール」を題材としたゲームと一応は呼べる。
      • その辺に拘らなければ、アクションのバリエーションが豊富で楽しめるだろう。暴走族らしくボールをバイクに見立てて突っ走る「しんじ」や銃を使う「さぶ」など、熱血硬派シリーズのキャラクターらしさが存分に出ていると言える。

チームエディット

  • 倒した敵チームのリーダーを仲間に出来る要素のおかげで幾分かはクリアも目指しやすくはある。
    • もっとも、これが無いと必殺シュートなどが絶望的に使いづらいキャラクターもいるので非常に苦しいことになるが。
      • 逆に初期状態のまま、しかもお供以外使わないといったプレイも出来たりとプレイのバリエーションを広げる上では一役買っている。

BGMの質が良い

  • これまでの作品でもBGMの評価の高いテクノスジャパン作品だが、本作もそれに漏れず高品質のBGMが用意されている。

総評

デフォルトレベルで序盤から殺しにかかってくるとしても過言ではないほどの高難易度は流石に問題だが、それでもレベルを下げた上である程度慣れてくれば楽しめるゲームにはなっている。
一応、ゲームのコツを掴めればデフォルトレベルもクリア可能ではあり、そういう意味では難しすぎるとまでは言いがたいものの、気軽に楽しめる良作かと言われても非常に困る作品である。

また、難易度とは別にラスボスの言い逃れ出来ないレベルの不謹慎なパロディネタは流石に限度を超えていると言わざるを得ない。

本作は日本未発売のために日本国内ではプレイする手段が極端に限られており、遊べる環境があったとしても筐体設定では大抵はデフォルト設定のため、気軽にプレイを勧められない点もある。
アクションで見れば決して出来が悪い訳ではないのだが、難易度調整などの面がそれを無にしているところがある惜しい作品であると言えるだろう。


余談

  • テクノスジャパン倒産後、テクノス作品のIPは紆余曲折を経て今ではアークシステムワークスが保有しているが、その中にはこのMVS版『SUPER DODGE BALL』は含まれておらず、公式HPのリストにも記載が無い。
    • 『熱血硬派くにおくん外伝 River City Girls』では本作に登場した「ケンジ」も登場しているものの、名前が「???」と全登場人物の中でも唯一伏せられてしまっている。

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最終更新:2024年04月24日 08:53

*1 くにおもドッジボールシリーズのようなユニフォーム姿ではなく、熱血硬派シリーズと同様に白ランを着たまま戦う。

*2 ボールを投げるフリをする。

*3 『くにおたちの挽歌』でのデザインに近い。

*4 見た目や設定こそ星飛雄馬だが、バトル時のかけ声はむしろ同じく古谷氏が演じる『機動戦士ガンダム』の「アムロ・レイ」に近くなっている。

*5 ダウンタウンシリーズのももぞの(桃園里美)に近い。また、同名のキャラがシリーズの別作品に登場したりもするが、特に関係はない。

*6 ネズミフラッシュ

*7 ネズミリフレクト

*8 ピーキーフリップ

*9 ダイナマイト臀部

*10 仁義走馬灯

*11 鉄砲玉

*12 外道流転壁

*13 任侠大爆発

*14 最初にりきを、その次にケンジを仲間に加えた状態でその次にさぶを仲間に加えたとすると、さぶと入れ替わりでりきがチームから外れてしまう。その次にまた違うキャラクターを仲間に加えた時はそのキャラクターと入れ替わりでケンジがチームから外れる。

*15 ゲーム中の表記は「D.B.MAOU」。なお日本語表記は当時のゲーム雑誌で公表されている。

*16 ご丁寧なことに移動は空中浮遊になっている。空中浮遊もまた麻原に関連して何かと話題になったものである。

*17 オープニングでも一瞬だけ座禅をした状態で正体を現す。

*18 オウム真理教は仏教系の新興宗教。