総括所見:タイ(第2回・2006年)


CRC/C/THA/CO/2(2006年3月17日)
原文:英語(平野裕二仮訳)

1.委員会は、2006年1月24日に開かれた第1113回および第1115回会合(CRC/C/SR.1113 and 1115参照) においてタイの第2回定期報告書(CRC/C/83/Add.15)を検討し、2006年1月27日に開かれた第1120回会合(CRC/C/SR.1120)において以下の総括所見を採択した。

A.序

2.委員会は、締約国が提出した第2回定期報告書および事前質問事項(CRC/C/THA/Q/2)に対する文書回答を歓迎するとともに、多くの懸念領域を明らかにするうえで締約国がとった、開かれたかつ自己批判的な報告アプローチに評価の意を表明する。委員会はさらに、対話の過程で追加的情報を提供するためハイレベルな部門横断型代表団が行なった建設的努力に、評価の意とともに留意するものである。

B.締約国によってとられたフォローアップ措置および達成された進展

3.委員会は、2003年に子ども保護法(B.E. 2546)を採択したことについて締約国を賞賛する。同法は、子どもを、18歳未満であり、差別の禁止および子どもの最善の原則に一致する保護および福祉的援助を受ける資格のある者として定義したものである。委員会はまた、条約の実施を増進させることを目的としたいくつかの法律の採択および改正、とくに国家教育法(1999年)および義務教育法(2002年)ならびに刑事事件における被害者の救済ならびに犯罪者に対する賠償命令および費用支払命令に関する法律(2001年)、ならびに、18歳未満のときに行なわれた犯罪について子どもに死刑および終身刑を科すことはできない旨の刑法改正(2004年)も歓迎する。加えて、委員会は、国家人権委員会および子ども・青少年・家族小委員会、国家子どもの保護委員会ならびに県子どもの保護委員会をはじめ、同国における子どもの権利の促進および保護を増進させる諸機構が設置されたことに、評価の意とともに留意するものである。
4.委員会は、多くの国際人権文書について批准または加入が行なわれたことを歓迎する。
  • (a) 経済的、社会的および文化的権利に関する1966年の国際規約(1999年9月5日)。
  • (b) 最悪の形態の児童労働の禁止および撤廃のための即時の行動に関する1999年のILO第182号条約(2001年2月16日)。
  • (c) 国際的な子の奪取の民事上の側面に関する1980年のハーグ第28号条約(2002年8月14日)。
  • (d) あらゆる形態の人種差別の撤廃に関する1965年の国際条約(2003年1月28日)。
  • (e) 国際的な養子縁組に関する子の保護および協力に関する1993年のハーグ第33号条約(2004年4月29日)。
  • (f) 就業が認められるための最低年齢に関する1973年のILO第138号条約(2004年5月11日)。

C.条約の実施を阻害する要因および困難

5.委員会は、2004年12月26日のインド洋津波によって引き起こされた異例な自然災害によってタイ東南部沿岸が大規模に破壊された結果、多くの経済的および社会的困難が生じ、かつ多くの子どもの生活が影響を受けたことを認知する。委員会はまた、タイ最南部諸県の騒乱が同国における全般的な人権の発展に悪影響を与えた結果として締約国が直面している課題も、認知するものである。

D.主要な懸念領域および勧告

1.実施に関する一般的措置(条約第4条、第42条および第44条6項)

委員会の前回の勧告
6.委員会は、締約国の第1回報告書(CRC/C/11/Add.13)の検討後に採択された総括所見(CRC/C/15/Add.97)に掲げたさまざまな懸念および勧告について立法措置および政策を通じた対応が行なわれてきたことに、満足感とともに留意する。しかしながら、委員会が表明した懸念および行なった勧告の一部、とくに刑事責任に関する最低年齢、出生登録、無国籍、子どもの難民および庇護希望者に関するそれについては、十分な対応が行なわれていない。
7.委員会は、これらの懸念および勧告をあらためて繰り返すとともに、締約国に対し、これらの懸念および勧告に対応し、かつこの総括所見に掲げられた勧告を実施するためにあらゆる努力を行なうよう、促す。
留保
8.委員会は、締約国が自国の留保を見直すために努力を行ない、かつ条約第7条および第22条を部分的に遵守していることには留意するものの、これらの留保が維持されていることを遺憾に思う。
9.委員会は、前回の勧告をあらためて繰り返すとともに、締約国が留保を付さずに批准した、市民的および政治的権利に関する国際規約第2条および第24条に対して締約国の注意を促す。これとの関連で、委員会は、締約国に対し、世界人権会議(1993年)のウィーン宣言および行動計画(A/CONF.157/23)にしたがって、条約第7条および第22条に付した留保を撤回するよう促すものである。
立法
10.委員会は、国内法を条約に一致させるために締約国がとった措置、とくに子ども保護法に、評価の意とともに留意する。しかしながら委員会は、条約の原則および規定の全面的遵守を確保するため、法律に触れた子ども、人身取引、児童労働および子どもに対する暴力のような分野における、とくに地方レベルでのこれらの法律の実施および執行に対し、さらなる注意を払う必要があることに留意するものである。委員会はまた、一部の現行法(たとえば刑事責任に関する最低年齢を7歳と定めた刑法)においていまなお条約が遵守されていないことにも留意する。
11.委員会は、締約国に対し、自国の法律を条約の原則および規定と全面的に調和させるための努力を継続するよう奨励する。委員会はまた、締約国に対し、子どもの権利の保護を向上させる目的で、とくに議員および法執行官に対する普及ならびに意識啓発活動を通じ、国内法の全面的かつ効果的実施を確保するための努力を継続するようにも奨励するものである。
12.委員会は、同国における子どもの権利の促進および保護に多数の政府省庁その他の機関が関与していることに留意する。国家青少年局の役割は認識しながらも、委員会は、とくに県、郡および地方のレベルでこれらの機関間の調整が限られていることを懸念するものである。
13.委員会は、国内法および条約の全面的かつ効果的実施を確保する目的で、締約国があらゆるレベルで調整システムを強化するよう勧告する。
国家的行動計画
14.委員会は、2002年の国連総会子ども特別会期で採択された「子どもにふさわしい世界」と題する成果文書を実施するための国家戦略および行動計画(2005~2015年)が導入されたことを歓迎する。
15.委員会は、国家戦略および行動計画において条約のすべての領域が対象とされ、かつ、あらゆる段階で当該戦略および行動計画を全面的かつ効果的に実施するために十分な人的資源および財源が提供されることを確保するよう、奨励する。委員会はまた、締約国に対し、実施プロセスのあらゆる側面に市民社会(子どもおよび若者を含む)が広く参加することを確保するようにも奨励するものである。委員会は、締約国に対し、国家戦略および行動計画の実施、成果および評価に関する情報を次回定期報告書で提供するよう要請する。
独立の監視
16.委員会は、独立の監視機構、とくに議会オンブズマンならびに国家人権委員会および子ども・青少年・家族小委員会が設置されたことを歓迎する。委員会はとくに小委員会が行なっている活動、とりわけ、子どもの権利の促進および保護に責任を負う機関および施設に対する査察訪問および監視、ならびに、子どもおよび若者に関する苦情の調査のための活動に留意する。にもかかわらず、委員会は、国内のすべての子どもがこれらの機関にアクセスしかつこれを利用できるかどうか、ならびに、これらの機関にどの程度の資源が配分されているかについて懸念を覚えるものである。委員会はまた、国家人権委員会の勧告が関連の公的機関によって十分に実施されかつフォローアップされていないことも懸念する。
17.委員会は、締約国が、独立した国内人権機関の役割の役割に関する委員会の一般的意見2号(2002年、CRC/GC/2002/2参照)を考慮に入れながら、国家人権委員会および議会オンブズマンがすべての子どもにとって容易にアクセス可能であり、かつ利用者にやさしいものとなることを確保するため、あらゆる効果的な措置をとるよう勧告する。委員会はとくに、締約国に対し、子どもが既存の苦情申立て機構を効果的に利用することを促進するための意識啓発の努力を強化するよう奨励するものである。委員会はまた、締約国が、国家人権委員会および議会オンブズマンに対して十分な人的資源および財源が提供されること、ならびに、その勧告が全面的にかつ真剣にフォローアップされることを確保するようにも勧告する。
資源配分
18.委員会は、教育、公衆衛生および社会サービスを対象とする社会開発への予算配分が報告対象期間中に増加したこと、および、子どもとその家族に対して福祉的援助を提供し、かつ県の機関が実施する子どものためのプロジェクトおよび活動を支援する子ども保護基金が創設されたことに留意する。しかしながら委員会は、多くの分野で、とくに県および郡のレベルにおける予算配分ならびにもっとも脆弱な立場におかれた集団の子どもに対して配分されている資源の割合に関する情報が存在しないことを懸念するものである。委員会はまた、社会開発・人間の安全保障省が郡レベルで出先機関を有していないこと、および、タムボンまたはコミュニティのレベルで社会福祉サービスを提供する政府の能力が限られていることにも、懸念とともに留意するものである。
19.委員会は、締約国が、次回定期報告書で、とくにもっとも脆弱な立場に置かれた集団の子どもに重点を置きながら、国および県以下の双方のレベルにおける予算配分について情報を提供するよう勧告する。委員会は、条約第4条に照らし、締約国が、「利用可能な資源を最大限に用いることにより、および必要な場合には国際協力の枠組みの中で」子ども、とくにもっとも脆弱な立場に置かれた集団の子どもの権利の実施を確保するための予算配分を、あらゆるレベルで優先させるよう勧告するものである。委員会は、締約国に対し、タイにおける子どもの権利の実施を促進する目的でマルチセクター的対応をさらに強化するため、国および県以下の双方のレベルにおいて社会開発・人間の安全保障省への十分な資源配分を確保するよう、奨励する。
データ収集
20.委員会は、同国のすべての子どもに関するデータ収集を改善するために行なわれた努力および取り組みに、評価の意とともに留意する。しかしながら委員会は、データ収集機構が依然として縦割りであり、かつ、条約が対象とするすべての分野についての細分化されたデータの体系的かつ包括的収集を確保するには不十分であることを、懸念するものである。
21.委員会は、前回の勧告をあらためて繰り返すとともに、締約国に対し、データ収集システムを強化しかつ中央集権化し、ならびに、もっとも脆弱な立場に置かれた集団(たとえば先住民族およびマイノリティの子ども、最南部諸県の子ども、障害のある子ども、虐待およびネグレクトの対象とされた子ども、貧困下で暮らしている子ども、法律に触れた子ども、子どもの移民および難民、HIV/AIDSに感染した子どもおよびその影響を受けている子どもならびにセックスワーカーの子どもなど)をとくに重視しながら、条約が対象とするすべての分野について、18歳未満のすべての子どもに関する細分化されたデータを体系的に統合しかつ分析するよう、促す。委員会は、締約国に対し、条約の効果的実施を目的とした法律、政策およびプログラムの立案のためにこれらの指標およびデータ効果的に活用するよう、奨励するものである。
条約の普及
22.委員会は、定期報告書の作成に市民社会の構成員(子どもを含む)の参加を得るために締約国が行なった努力に、評価の意とともに留意する。委員会はまた、条約がタイ語およびさまざまな地方方言に翻訳されたことならびに音声および点字で利用可能とされていることを含め、条約を普及するために締約国が行なった努力にも、評価の意とともに留意するものである。委員会は、条約および子どもの権利一般に関するさまざまな研修講座および研修プログラムが開発されており、かつ、子どもの権利の問題が初等中等段階における国全体の公立学校カリキュラムの一部となっていることを、心強く思う。これらの努力にも関わらず、委員会は、条約に関する子どもおよび一般公衆の意識が全体として不十分なままであることを依然として懸念するものである。
23.委員会は、締約国が、条約の規定および原則がおとなによっても子どもによっても広く認識されかつ理解されることを確保するための努力を継続しおよび強化するよう、勧告する。これとの関連で、委員会は、締約国に対し、とくに遠隔地において、子どもおよびおとなの間で引き続き条約を普及しかつ条約に関する意識を高めるよう、奨励するものである。委員会はまた、締約国に対し、条約を促進しおよび教授するための創造的かつ子どもにやさしい手法を引き続き開発することも慫慂する。

2.一般原則(条約第2条、第3条、第6条および第12条)

差別の禁止に対する権利
24.委員会は、とくに女子、先住民族および宗教的または民族的マイノリティ・コミュニティの子ども、難民および庇護希望者の子ども、移住労働者の子ども、ストリートチルドレン、障害のある子ども、農村部に住んでいる子どもならびに貧困下で暮らしている子どもとの関連で、条約第2条に反し、子どもに対する直接差別および間接差別の双方が根強く残っていることを懸念する。委員会はまた、とくに最南部諸県において、社会サービス、保健サービスおよび教育サービスへのアクセスの面で地域格差が存在し続けていることも懸念するものである。
25.委員会は、締約国が、差別の禁止の原則を保障する現行法を効果的に実施することにより、条約第2条にしたがい、その管轄内にあるすべての子どもが差別の禁止を基盤として条約に掲げられたすべての権利を享受できることを確保するため、より効果的な措置をとるよう勧告する。委員会は、締約国が、もっとも脆弱な立場に置かれた集団に属する子ども(イスラム教徒、移民および難民の子どもを含む)のための社会サービスおよび保健サービスに優先的に取り組み、かつこれらの子どもに平等な教育機会を確保するよう勧告するものである。委員会はさらに、締約国が、あらゆる形態の差別を防止しかつこれと闘うための包括的な公衆教育キャンペーンを実施するよう勧告する。
26.委員会は、2001年の「人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容に反対する世界会議」で採択されたダーバン宣言および行動計画をフォローアップするために締約国がとった措置およびプログラムのうち条約に関わるものについての具体的情報を、教育の目的に関する委員会の一般的意見1号(2001年、CRC/GC/2001/1)も考慮にいれながら、次回定期報告書に記載するよう要請する。
生命、生存および発達に対する権利
27.委員会は、同国最南部諸県における暴力および騒乱が子どもおよびその家族に重大な影響を及ぼしており、かつ生命、生存および発達に対する子どもの権利を危険にさらしていることに、懸念とともに留意する。委員会は、これらの諸県で暴力を生き残りおよび目撃した子どもを対象とする、リハビリテーション、カウンセリングその他の援助のためのプログラムが存在しないことに、特段の懸念とともに留意するものである。委員会はまた、同国の元子ども兵士(その一部は難民キャンプにいる可能性がある)の状況についても懸念を覚える。
28.委員会は、締約国に対し、対象を明確にした政策、プログラムおよびサービスを通じて、とくに元子ども兵士および同国最南部諸県の子どもとの関係で締約国のすべての子どもの生命、生存および発達に対する権利の保護を強化するため、あらゆる努力を行なうよう促す。委員会はまた、締約国に対し、騒乱の影響から子どもを保護し、かつ社会への子どもの再統合を確保することも促すものである。委員会はまた、締約国に対し、暴力および紛争の影響を受けた子どもを心理社会的に支援しかつ援助するための包括的システムを、非政府組織および国際機関と連携しながら発展させることも促す。
子どもの意見の尊重
29.委員会は、とくに年1回の子どもの権利フォーラムの開催ならびに青少年評議会および青少年ネットワークの設立を通じ、自己の意見を自由に表明しかつ社会に参加する子どもの権利を促進しかつ尊重するために締約国がとっている行動を、心強く思う。これらの積極的措置にも関わらず、委員会は、ひとつには社会の伝統的態度を理由として、自由な表現および参加に対する子どもの権利が締約国においてはいまなお制限されているという見解に立つものである。委員会はまた、子どもが被害者、証人または犯罪容疑者として関与する裁判手続において、子どもの意見の尊重が全面的に考慮されていない可能性があることも、懸念するものである。
30.委員会は、条約第12条、第13条および第15条にしたがい、締約国が、家庭、学校およびコミュニティにおいて子どもが自己に影響を与えるすべての決定に積極的に参加しかつ関与することを確保するための努力を強化するよう、勧告する。委員会はまた、締約国が、子どもの意見がどのぐらい考慮されており、かつ政策立案、裁判所の決定およびプログラムの実施にどのような影響を与えているかについて、定期的検討を行なうことも勧告するものである。委員会はさらに、締約国が、子どもの犯罪被害者および証人が関わる事案における司法についての国連指針(2005年7月22日の経済社会理事会決議2005/20)にしたがい、子どもに配慮した裁判手続を改善するよう勧告する。

3.市民的権利および自由(条約第7条、第8条、第13~17条、第19条および第37条(a))

出生登録
31.子ども関連法改正小委員会による立法上の提案および「法的地位およびアイデンティティに対する権利の問題に対応するための戦略」の採択(2005年1月)をはじめ、締約国がこの分野で行なっている努力にも関わらず、委員会は、とくに同国の最遠隔地および津波の影響を受けた地域で、出生を登録されないままの子どもが多数存在することを懸念する。委員会はまた、移住労働者、難民および庇護希望者の子どもならびに先住民族およびマイノリティのコミュニティの子ども、とくに病院外で出生したこれらの子どもの登録を確保するうえで困難が根強く残っていることも懸念するものである。委員会はさらに、法執行が弱いことならびに出生登録の重要性および利益についての公衆の意識が限定的であることを懸念する。
32.委員会は、前回の勧告をあらためて繰り返すとともに、条約第7条にしたがい、締約国が、締約国の全領域のすべての子ども、とくに移民および難民である子ども、先住民族およびマイノリティのコミュニティに属する子どもならびに最遠隔地または津波の影響を受けた地域に住んでいる子どもが出生登録システムに平等にアクセスできることを確保するため、国内法、とくに1991年住民登録法(B.E. 2534)の見直しを引き続き進めるよう勧告する。委員会はまた、締約国が、以下の措置をとることによって現行出生登録システムを改善するよう勧告するものである。
  • (a) 領域内の最遠隔地も対象とすることができるようにするため、移動出生登録班および公衆意識啓発キャンペーンを導入すること。
  • (b) 同国における出生登録率の向上を達成するため、出生登録担当機関と産婦人科診療所、病院、助産師および伝統的出産立会人との間の協力を強化すること。
  • (c) 引き続き、出生登録に関する明確な指針および規則を策定し、かつ国および地方レベルの官吏に向けて広く普及すること。
  • (d) 出生を登録されておらず、かつ公式な身分登録書類を有していない子どもが、適正に登録されるまでの間、保健および教育のような基礎的サービスにアクセスできることを確保すること。
名前、国籍およびアイデンティティ
33.委員会は、タイに在留している相当数の子どもが無国籍のままであり、そのため、このような子どもが、教育、発達ならびに社会サービスおよび保健サービスへのアクセスを含む権利を全面的に享受することについて悪影響を受け、かつ虐待、人身取引および搾取の被害を受けやすい状態に置かれていることを懸念する。
34.委員会は、締約国が条約第7条および第22条に付した留保を撤回するべきであるという前回の勧告をあらためて繰り返すとともに、締約国に対し、タイで生まれかつその管轄下で暮らしているすべての無国籍者がいずれかの国の国籍を取得できること(タイ国籍を取得する可能性も含む)を確保するための措置を引き続き実施するよう、促す。委員会はまた、締約国に対し、無国籍者が社会サービスおよび保健サービスならびに教育にアクセスできることを確保するための具体的措置をとることも促すものである。
プライバシーの保護
35.プライバシーに対する子どもの権利を保護する国内法が存在することには留意しながらも、委員会は、締約国の努力にも関わらず、被害を受けた子どもの身元および写真がメディアで公表されていることに、懸念とともに留意する。これは、条約第16条および子どものプライバシーを尊重する国内法の明白な違反である。
36.委員会は、締約国に対し、タイで放送されるすべての素材においてプライバシーに対する子どもの権利が尊重されることを確保するため、行動規範および(または)自主規制のような機構を確立するよう促す。委員会はまた、締約国に対し、メディアの専門家を対象として、プライバシーに対する子どもの権利に特段の注意を払いながら、適切な人権研修が行なわれることを確保するようにも促すものである。
情報へのアクセス
37.委員会は、メディアの子ども向け番組を増やすために締約国がとった措置、および、ゴールデンタイムに放送される子ども、若者および家族向け番組の時間数を評価する。しかしながら委員会は、番組の質について懸念を覚えるものである。刺激的素材抑止措置法案が内閣で検討されていることには留意しながらも、委員会は、メディアで公表される素材およびインターネットで利用可能な素材のなかに子どもにとって有害なものがあることを懸念する。さらに委員会は、情報通信技術省の努力には留意しながらも、メディアおよびインターネットを通じて送出される暴力およびポルノ等の有害な情報にさらされることから子どもを保護するための体系的なメディア監視機構が国および国以下のレベルでなんら存在しないことに、懸念を表明するものである。
38.委員会は、ラジオおよびテレビの放送事業者との協力を通じ、主として子どもおよび若者向けに制作されるメディア番組の質および適正さを監視しかつ向上させるための機構を設置するよう、勧告する。さらに委員会は、条約第17条に照らし、締約国が、メディアおよびインターネットを通じて送出される暴力およびポルノ等の有害な情報にさらされることから子どもを保護するため、親、保護者および教員向けの助言キャンペーンならびにインターネット・サービス・プロバイダとの協力を含む、あらゆる必要な法的その他の措置をとるよう勧告するものである。
体罰
39.委員会は、学校における体罰の使用を禁止しようとする締約国の努力に留意し、かつ、刑事施設における体罰の使用を禁じた最近の省令に留意する。にもかかわらず、委員会は、家庭および代替的養護環境における体罰が法律で明示的に禁じられていないことを遺憾に思うものである。さらに、委員会は、被害を受けた子どもは恐れて苦情申立てを行なわないことが多く、かつ被害を受けた子どもに対して援助が利用可能とされることもめったにないことを締約国が認めたことに留意する。
40.委員会は、体罰は条約の規定と両立せず、かつ、条約第28条2項でとくに求められている子どもの尊厳の尊重の要件と一致しないことをあらためて指摘する。したがって委員会は、締約国に対し、家庭および学校における子どもへの暴力についての一般的討議の日に委員会が採択した勧告(CRC/C/111参照)を考慮に入れながら、家庭および代替的養護環境におけるあらゆる形態の体罰を法律で禁止するよう、促すものである。
41.委員会は、締約国が、体罰の有害な影響に関する公衆意識啓発キャンペーンを実施することにより、親その他の養育者、法執行官ならびに子どもとともにおよび子どものために働く専門家の感受性強化および教育を行なうよう、勧告する。委員会は、締約国に対し、体罰に代わる手段として、積極的かつ非暴力的な形態のしつけおよび規律を促進するよう奨励するものである。委員会はまた、締約国が、子どもに配慮した特定の苦情申立て機構およびサービスを設置し、かつ、すべての子どもがこれらの機構にアクセスできることを確保するようにも勧告する。

4.家庭環境および代替的養護(条約第5条、第18条(1~2項)、第9~11条、第19~21条、第25条、第27条(4項)および第39条)

代替的養護
42.委員会は、さまざまな政府省庁によって運営されている、子どもに代替的養護を提供するためのさまざまなプログラムおよび機構(里親養護制度、福祉ホームおよびその他の施設)に留意する。しかしながら委員会は、代替的養護施設に措置された子どもの状況ならびにこのような施設を規律する基準および規則についての情報が存在しないことを懸念するものである。委員会はまた、このようなプログラムおよび施設を監視しおよび監督する機関についての情報が存在しないことも懸念する。
43.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 施設に措置された子どもの状況(その生活条件、養護計画および提供されているサービスも含む)を評価するための包括的研究を実施すること。
  • (b) 既存の施設および里親養護制度についての明確な基準(条約第9条にしたがって意思決定プロセスに子どもおよびその親の関与を得るための規則を含む)を定めるとともに、条約第25条に照らし、子どもの措置の定期的再審査が行なわれることを確保すること。
  • (c) 子どもの権利の保護を確保する目的で、すべての代替的養護施設およびプログラムが十分に監視されること(独立した苦情申立て機構および非政府組織による監視を含む)を確保するとともに、子どもがこれらの苦情申立て機構に容易にアクセスできるようにすること。
  • (d) 施設に措置された子どもが可能なときは常に家族に復帰できるようにし、かつ施設への子どもの措置を最後の手段として用いるようにするため、あらゆる必要な措置を追求すること。
暴力、虐待、不当な取扱いおよびネグレクト
44.締約国が行なっている努力は認め、かつタイ憲法(1997年)第53条には留意しながらも、委員会は、同国におけるドメスティック・バイオレンス、児童虐待およびネグレクトの報告件数が増えていることを深く懸念する。委員会は、性的虐待を含むあらゆる形態の虐待、ネグレクトおよび不当な取扱いの処罰に関する国内法の顕著な欠陥(たとえば刑法の規定では強姦の被害を受けた女性しか保護されない)に懸念を表明するものである。委員会はまた、子どもに対する暴力事案についての全国的なデータ収集システムが存在しないことにも懸念を表明する。
45.委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促す。
  • (a) 子どもに対するあらゆる形態の虐待(性的虐待を含む)、ネグレクト、不当な取扱いおよび暴力を処罰し、かつ子どもを対象としたこれらの犯罪の定義を明確に定める目的で、国内法を見直すこと。
  • (b) 児童虐待および子どもに対する暴力のあらゆる事案について時宜を得た十分な調査を行なうとともに、暴力および虐待の被害を受けた子どもが、十分なカウンセリングならびに回復および再統合のための学際的援助にアクセスできることを確保すること。
  • (c) 性的虐待の被害者および虐待、ネグレクト、不当な取扱い、暴力または搾取の被害を受けたその他のすべての子どもの身体的および心理的回復ならびに社会的再統合のために利用可能なサービスを設置しまたは拡大すること。
  • (d) 非政府組織との協力等も通じ、被害者が犯罪者として扱われかつスティグマを付与されることを防止するためにあらゆる適当な措置をとること。
  • (e) 被害者が援助を求めることを抑止する社会文化的障壁についても取り上げながら、子どもの不当な取扱いの影響に関する公衆教育キャンペーンおよび意識啓発キャンペーンを実施すること。
  • (f) 子どもに対する暴力についてのデータ収集システムを確立するとともに、この現象を防止しかつ減少させることを目的とした、この問題に関するさらなる分析を行なうこと。
46.子どもに対する暴力の問題に関する事務総長の詳細な研究および政府に対する関連のアンケートとの関係で、委員会は、締約国がアジア・太平洋地域協議(2005年6月14日~16日)の受入れ国を務め、かつアンケートに対する文書回答を提出したことを、評価の意とともに認知する。委員会は、すべての子どもがあらゆる形態の身体的または精神的暴力から保護されることを確保し、ならびに、このような暴力および虐待を防止しおよびこれに対応するための、具体的なかつ適当なときは期限を定めた行動に弾みをつける目的で、締約国が、市民社会と連携しながら、この地域協議の成果を行動のためのツールとして活用するよう勧告するものである。
母親とともに刑務所にいる子ども
47.委員会は、タイにおける女性の収監率が高く、そのなかには妊娠している者または子どもがいる者もいることに、懸念とともに留意する。委員会は、量刑に関する決定において、子どもの最善の利益、および、子どもの養育責任を有する母親としての女性の役割が一貫して考慮されていないことを懸念するものである。委員会はまた、死刑を言い渡された妊婦が分娩後に処刑される可能性があることにも、特段の懸念とともに留意する。母親とともに刑務所で暮らしている子どもについて、委員会は、子どものいる女性は一般の受刑者から分離されていることに留意するものの、過密した劣悪な拘禁環境および不十分な職員体制について懸念を表明するものである。
48.委員会は、被告人が子どもの養育責任を有しているときは、子どもの最善の利益の原則(第3条)が、権限のある専門家によって注意深くかつ独立の立場から考慮され、かつ、拘禁に関するあらゆる決定(公判前の勾留および刑の言い渡しを含む)ならびに子どもの措置に関する決定において考慮されるべきことを勧告する。委員会は、収監された母親から分離された子どもの代替的養護が定期的に再審査され、かつ子どもの身体的および精神的ニーズが適切な形で満たされるべきことを勧告するものである。さらに委員会は、締約国が、代替的養護において子どもが収監されたままの母親との個人的関係および直接の接触を維持できることを、引き続き確保するよう勧告する。母親とともに刑務所で暮らしている子どもについて、委員会は、締約国が、条約第27条にしたがい、刑務所の生活条件が子どもの乳幼児期の発達にとって十分であることを確保するよう勧告する。委員会は、締約国に対し、この点についてとくにユニセフその他の国連機関の援助を求めるよう奨励するものである。

5.基礎保健および福祉(条約第6条、第18条(3項)、第23条、第24条、第26条および第27条(1~3項))

障害のある子ども
49.委員会は、障害のある子どもがすべての人権および基本的自由(普通教育および特別教育ならびに職業訓練へのアクセスを含む)を全面的に享受することを促進するため、締約国が多くの具体的措置をとってきたことに、評価の意とともに留意する。これらの積極的措置にも関わらず、委員会は、同国の遠隔地に住んでいる障害児が十分な保健サービスおよび社会サービスならびに教育にアクセスできていないことを懸念するものである。委員会はまた、障害のある子どもに関するデータが不十分でありかつ整合性を欠いていること、ならびに、これらの子どものための官民のサービスが標準化されていないことに関する締約国の懸念も共有する。
50.委員会は、締約国が、障害者の機会均等化に関する基準規則(国連総会決議48/96)および障害のある子どもの権利に関する一般的討議の日に委員会が採択した勧告(CRC/C/69参照)を考慮に入れながら、以下の目的のためにあらゆる必要な措置をとるよう勧告する。
  • (a) 障害のある子どもに関する包括的な国家的政策を策定しおよび採択し、ならびに計画の実施のために必要な財源および人的資源を配分すること。
  • (b) 障害のある子どもの権利、特別なニーズおよび可能性に関する意識啓発を図ること等により、障害のある子どもに対するあらゆる形態の差別を防止しおよび禁止するとともに、障害のある子どもが生活のあらゆる領域に完全に参加するための平等な機会を確保すること。
  • (c) 障害のある子どものための官民のサービスを標準化し、かつ、これらのサービスのアクセス可能性および質を監視すること。
  • (d) 障害のある子どもに対し、学校への物理的アクセスおよび適当な情報通信手段へのアクセスを提供すること。
  • (e) 国内の遠隔地に住んでいる障害児に特段の注意を払いながら、障害のある子どもに関するデータ収集機構を確立し、かつ、社会への障害児の平等な参加を促進するための政策およびプログラムを発展させる際にこれらのデータを活用すること。
健康および保健サービス
51.プライマリーヘルスケアを向上させるために締約国が行なっている努力、とくに予防接種プログラムに評価の意とともに留意し、かつ、乳幼児および妊産婦の死亡率の削減に関して達成された進展にも留意しながらも、委員会は、にもかかわらず、保健サービスのアクセス可能性に関する地域格差、子どもの栄養不良(とくにヨウ素欠乏症および鉄欠乏症)の蔓延状況ならびに同国における地中海貧血の発生について懸念する。委員会はまた、母乳育児率が低いことも懸念するとともに、「母乳代替品の販売促進に関する国際基準」の規定が法制化されていないことに、懸念の意とともに留意するものである。
52.委員会は、締約国が、以下の目的のためにあらゆる必要な措置をとるよう勧告する。
  • (a) 同国のすべての地域の子ども(遠隔地に住んでいる子どもも含む)が良質な保健サービスに平等にアクセスできることを確保すること。
  • (b) 同国の遠隔地に住んでいる母子に特段の注意を払いながら、産前ケアを向上させ、かつ妊産婦、乳児および5歳未満児の死亡率を削減するための努力を継続すること。
  • (c) とくに、締約国がヨウ素添加塩完全普及(USI)および鉄欠乏症根絶に関する目標を達成することを確保するための法律および政策を導入することを通じ、子どもの栄養状態を向上させること。
  • (d) 働く母親が必要している支援を考慮に入れながら、生後6か月間は母乳のみを与え、その後適切な乳児食を加える育児を引き続き奨励すること。
  • (e) 早期発見治療プログラム等も通じ、同国における地中海貧血の発生件数を削減するための努力を継続すること。
  • (f) この問題に関して、とくに世界保健機関(WHO)および国連児童基金(ユニセフ)と引き続き協力し、かつその技術的援助を求めること。
思春期の健康
53.委員会は、青少年による薬物の使用が犯罪の問題ではなく医学的問題として扱われるようになったことに、評価の意とともに留意する。委員会はさらに、タバコおよびアルコールの広告が禁止されるようになったことを評価するものである。しかしながら委員会は、青少年による薬物およびアルコールの消費率が高いままであることを懸念する。
54.委員会は、子どもおよび青少年をとくに対象とした、薬物およびアルコールに関する意識啓発およびその使用の防止のための効果的プログラムを引き続き促進するよう勧告する。委員会はまた、締約国が、薬物およびアルコールに依存する子どもおよび青少年に対し、治療およびリハビリテーションのためのプログラムを引き続き提供するようにも勧告するものである。
環境衛生
55.委員会は、大気汚染および環境悪化のような広範な環境問題(自治体廃棄物および産業廃棄物の処理に関わる欠点も含む)が子どもの健康および発達に深刻な影響をもたらしていることを懸念する。とくに農村部の家庭にとって水および衛生設備の状況が改善したことには留意しながらも、委員会は、安全な飲料水および衛生設備へのアクセスに関する地域格差に懸念を覚えるものである。
56.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) とくに同国の遠隔地において、安全な飲料水および衛生設備へのアクセスを向上させるための効果的措置を引き続きとること。
  • (b) 学校に環境衛生教育プログラムを導入することにより、環境衛生問題に関する子どもの知識を高めること。
HIV/AIDS
57.委員会は、ミレニアム開発目標6を期限前に達成したことについて締約国を賞賛する。委員会は、HIV/AIDSの予防および削減のためにとられたさまざまな部門横断型の措置を歓迎するとともに、妊婦を対象として任意の相談および無償のHIV検査を実施するHIV/AIDS母子感染予防(PMTCT)国家プログラムに留意するものである。にもかかわらず、委員会は、HIV/AIDSの母子感染のおそれがある状況のもとで出生する子どもの年間割合が相対的に高いことに、懸念を表明する。委員会は、HIV/AIDSに関する青少年の意識水準が低下する一方で、青少年のHIV感染リスクが高まりつつあることに、懸念とともに留意するものである。委員会はまた、セックスワーカーが多数存在することのような、HIV感染の可能性を高めるリスク要因が存在することも懸念する。さらに、委員会は、他のいくつかの国々との間で現在交渉が進められている自由貿易協定により、負担可能な医薬品、とくに抗レトロウィルス薬へのアクセスに悪影響が生じる可能性があることを懸念するものである。
58.委員会は、締約国が、HIV/AIDSと子どもの権利に関する委員会の一般的意見3号(2003年、CRC/GC/2003/3)およびHIV/AIDSと人権に関する国際指針(E/CN.4/1997/37)に照らし、引き続き以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) コミュニティ段階の現実をとくに反映した政策およびプログラムを採択しおよび実施し、ならびに、地域レベルにおけるプログラムの立案、実施および監視に対していっそうの技術的および財政的支援を提供することにより、HIV新規感染を予防するための部門横断型の措置をとること。
  • (b) すべての妊婦に十分な保健サービスおよび社会サービスを無償で提供し、かつ、HIV陽性の母親に抗レトロウィルス薬および乳児用調合乳を提供することにより、HIV/AIDS母子感染予防(PMTCT)国家プログラムを全面的に実施すること。
  • (c) HIV/AIDSに感染した子どもおよびその影響を受けている子どもに対する差別を防止しかつ禁止するとともに、これらの子どもが十分な社会サービスおよび保健サービスにアクセスできることを確保すること。
  • (d) 子どもが必要とするときは、親の同意を得ることなく、子どもに配慮し、かつ秘密が守られるHIV/AIDS相談にアクセスできることを確保すること。
  • (e) 学校および高等教育段階のカリキュラムに、HIV/AIDSに関する正確かつ包括的な情報および性教育(コンドームの利用促進を含む)を体系的に含めるとともに、教員その他の教育担当職員を対象としてHIV/AIDSに関する教育および性教育についての研修を実施すること。
  • (f) 地域的その他の自由貿易協定が、健康に対する権利の子どもによる享受に悪影響を及ぼさないことを確保すること。より具体的には、当該協定により、子どものための医薬品の入手可能性に悪影響が生じないことを確保すること。
  • (g) とくに国連合同エイズ計画の技術的援助を求めること。
59.委員会はまた、締約国が、HIV/AIDSが存在する世界で暮らす子どもに関する一般的討議の日に委員会が採択した勧告(CRC/C/80、パラ243)を考慮すること等により、HIV/AIDSに関する政策および戦略の策定および実施に子どもの権利の尊重を統合し、かつ当該策定および実施に子どもの参加を得るようにも勧告する。
生活水準
60.タイにおける貧困削減のために締約国が行なっている努力(子ども保護基金の設置を含む)がきわめてうまくいっているにも関わらず、委員会は、貧困者の36%が子どもであること、および、地域によって所得水準に大きな格差があること(北部および東北部ならびに最南部3県が経済的にもっとも不利な立場に置かれた地域である)に、懸念とともに留意する。委員会は、貧困下で暮らしている子ども、とくに親を失った子ども、ストリートチルドレン、障害のある子どもならびに先住民族およびマイノリティのコミュニティに属している子どもが、社会サービスおよび保健サービスならびに教育へのアクセスを含む人権の全面的享受に関して困難に直面していることを、深く懸念するものである。
61.条約第27条にしたがい、委員会は、締約国が、とくに北部、東北部および最南部3県における効果的な貧困削減措置のために引き続き資源を配分するよう勧告する。委員会は、締約国が、とくに、地方およびコミュニティのレベルで貧困削減戦略を策定しおよび実施する能力を増進させ、かつ、社会サービスおよび保健サービス、教育ならびに十分な住居へのアクセスを確保することを通じ、貧困下で暮らしている人々の生活水準を向上させるための努力を強化するよう、勧告するものである。委員会はまた、締約国に対し、貧困下にある子どもおよび家族に対して使途が指定された資金ならびに具体的な援助および支援を提供するための努力を強化することも要請する。

6.教育、余暇および文化的活動(条約第28条、第29条および第31条)

教育(職業訓練および職業指導を含む)
62.委員会は、義務教育の就学年数を6年から9年に延長し、最長12年間の無償教育を提供し、ならびに教育へのアクセスを拡大し、教育上の便益を改善しおよび地方言語またはマイノリティ言語で教育を提供するための、さまざまな立法上、行政上、政策上および予算上の措置を歓迎する。とくに委員会は、登録されていない子ども(登録されていない移民の子どもを含む)および無国籍の子どもが普通教育制度にアクセスできるようにする旨の、2005年7月5日の内閣決議を歓迎するものである。これらの積極的措置にも関わらず、委員会は、一部の子ども、とくにもっとも脆弱な立場に置かれた集団に属する子どもおよび遠隔地に住んでいる子どもがいまなお良質な教育に平等にアクセスできていないことを、依然として懸念する。委員会はまた、就学前教育のための便益が限られていることおよび初等中等段階における中退率が依然として高いことも懸念するものである。
63.委員会は、締約国に対し、登録されていない子どもが普通教育制度にアクセスできるようにする旨の内閣決議を全面的に実施し、かつ、地方レベルで同決議を十分に実施するために十分な資源を配分するよう促す。条約第28条に照らし、委員会は、締約国が、以下の目的のために十分な財源、人的資源および技術的資源を配分するよう勧告するものである。
  • (a) 同国のあらゆる地域で、就学前教育のための負担可能な便益を拡大すること。
  • (b) 初等中等学校における中退率を減らすための効果的措置をとること。
  • (c) 先住民族およびマイノリティの子どもが、それぞれに異なる文化的様式を尊重し、かつ先住民族およびマイノリティの言語を使用する良質な教育に平等にアクセスできるようにするための努力を継続すること。
  • (d) 自己の言語および宗教を学ぶマイノリティの権利を尊重しつつも子どもが同一の教育カリキュラムによる教育を受けることを確保し、かつ、教育を受けるすべての子どもが急進的な政治的または宗教的イデオロギーから保護されることを確保するため、締約国の管轄内にあるすべての学校が教育省によって監督されることを確保すること。
  • (e) もっとも脆弱な立場に置かれた集団に属する、締約国の最南部諸県の子どもたちに対して良質な教育への平等なアクセスを確保するため、あらゆる必要な措置をとること。
  • (f) 職業教育の利用可能性を拡大し、かつその質を向上させること。
  • (g) 教育部門の改善のため、とくに国連教育科学文化機関(ユネスコ)およびユニセフ、ならびに非政府組織と協力すること。
教育の目的
64.委員会は、部分的には教授法の質が貧弱であることおよび資格のある教員が足りないことにより、教育の全般的質が低いことを懸念する。委員会は、とくに子どもがより高い学習段階に進むにつれて高まる、教育制度の高度に競争主義的な性質によって、子どもにさらなる負担が課されており、かつ子どもが可能な最大限度まで発達することが損なわれている可能性があることに、懸念とともに留意するものである。これとの関連で、委員会は、一部の子どもが放課後に塾に通っていることにより、休息、余暇、遊び、文化的活動およびレクリエーション活動の可能性が制限されており、かつ追加的費用が生じていることに、留意する。さらに、委員会は、多くの学校でスポーツおよびレクリエーションの機会が不十分であることに留意するものである。委員会はまた、人権および子どもの権利に関する教育学習活動が教員の裁量に委ねられており、すべての学校で義務的とされていないことも懸念する。
65.委員会は、締約国が、教育の目的に関する委員会の一般的意見1号(CRC/GC/2001/1)を考慮に入れながら、以下の目的のためにあらゆる措置をとるよう勧告する。
  • (a) 教員養成および資格のある教員(とくに女性ならびにマイノリティおよび先住民族集団の出身者)の採用拡大等も通じ、教育の質を向上させるための努力をさらに強化すること。
  • (b) 教育制度の競争性の緩和に努め、かつ主体的学習能力を促進するような方法で教育の質を増進させるとともに、学校における文化的生活、芸術、遊びおよびレクリエーション活動の促進等も通じ、子どもの人格、才能および能力を可能な最大限度まで発達させることを促進するための努力を強化すること。
  • (c) カリキュラムの一部としてスポーツおよびレクリエーション活動を提供すること。
  • (d) 子どもの権利に関する教育も含む人権教育の授業が、あらゆる教育段階の、公立および私立双方の学校で義務的とされることを確保すること。

8.特別な保護措置(条約第22条、第30条、第38条、第39条、第40条、第37条(b)~(d)、第32~36条)

難民および庇護希望者の子ども
66.タイで生まれた子どもの出生登録および国籍に関する法律の起草が現在進められていることには留意しながらも、委員会は、タイにおいて難民および庇護希望者の子どもを保護するための法的枠組みが存在せず、かつ国際法に違反する送還の可能性があることを深く懸念する。委員会はまた、虐待および搾取の被害をとくに受けやすい、保護者のいない子どもまたは養育者から分離された子どもについても懸念を覚えるものである。さらに、委員会は、難民キャンプに収容される可能性がある元子ども兵士を含む子どもの安全について懸念を覚える。委員会は、締約国が1951年の難民の地位に関する条約および1967年の同議定書を批准しておらず、かつ条約第7条および第22条に付した留保を撤回していないことを遺憾に思うものである。
67.委員会は、締約国に対し、子どもの庇護希望者および難民を保護するための法律の採択および実施、ならびに、これらの子ども、とくにキャンプにいる子どもの安全を保障する政策およびプログラムが実施されることの確保を緊急に行なうよう促す。委員会はまた、締約国に対し、これらの子ども、とくに元子ども兵士に関わる決定にノン・ルフールマンの原則が反映されることを確保するよう促すものである。委員会はまた、前回の勧告をあらためて繰り返し、締約国に対し、1951年の難民の地位に関する条約および1967年の同議定書を批准するよう促す。
移住労働者の子ども
68.移住労働者の子どもを登録するために締約国が行なっている努力は認めながらも、委員会はなお、このような子どもがタイにおいて脆弱な立場に置かれていることを深く懸念する。地方警察による恣意的逮捕および拘禁のような、移住労働者およびその家族構成員に対する人権侵害の訴えがあることは、重大な懸念の理由となるものである。委員会は、多くの家族が、幼い子どもがいる妊婦でさえも、迫害されるのではないかという恐怖を有しているにも関わらず送還されていることを遺憾に思う。加えて、委員会は、移住労働者の子どもがさまざまな保健サービスおよび教育サービス(HIV/AIDSの予防およびケアに関するものを含む)にアクセスできておらず、その生活環境がしばしば著しく劣悪であり、かつ、その多くが有害な条件下で長時間働いていることに、特段の懸念とともに留意するものである。
69.委員会は、移住労働者の子どもまたはその家族構成員、とくに登録されていない移住者が恣意的に逮捕され、拘禁されまたは迫害されないこと、および、これらの者が出身国に送還されるときはノン・ルフールマンの原則が尊重されるべきことを確保するため、締約国が緊急の措置をとるよう勧告する。委員会は、差別の禁止の原則にしたがい、移住労働者の子どもが保健サービスおよび社会サービスならびに教育へのアクセスを保障されるべきことを勧告するものである。さらに委員会は、締約国が、すべての移住労働者およびその家族構成員の権利に関する国際条約を批准するよう勧告する。
経済的搾取および児童労働
70.委員会は、最悪の形態の児童労働を撤廃するための国家行動計画(2004~2009年)が導入されたことに留意する。委員会はまた、締約国が国際労働機関の児童労働撤廃国際計画(ILO/IPEC)と協力していることにも、評価の意とともに留意するものである。これらの積極的な措置にも関わらず、委員会は、締約国において児童労働を含む経済的搾取が広範に生じていることを依然として懸念する。委員会はまた、労働保護法においてインフォーマル部門(たとえば農業、小規模家内企業および家事労働)で働く子どもが対象とされていないことも懸念するものである。
71.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 国内の労働法を効果的に実施すること。
  • (b) 労働保護法の適用範囲を拡大することにより、インフォーマル部門で働く子どもの保護を確保すること。
  • (c) 子どもが行なう労働が軽易労働であって搾取的なものではないことを保障するために労働監察制度を改善するとともに、当該制度が子どもによる家事労働および農村労働の慣行を監視しかつ報告できるようにすること。
  • (d) 労働に従事する子どもが引き続き教育、訓練およびレクリエーションにアクセスできることを確保すること。
  • (e) 引き続き、ILO/IPECの地域活動および地域間活動に積極的に参加すること。
性的搾取および子どもの人身取引
72.委員会は、売買春防止・抑止法(1996年)ならびに「商業的性的搾取の防止およびこれとの闘いに関する行動計画」の採択をはじめ、子どもの性的搾取と闘うために締約国が行なっている真剣な努力に留意する。しかしながら委員会は、締約国において児童買春、セックス・ツーリズムおよび児童ポルノを含む性的搾取が広範に生じていることに、懸念を表明するものである。
73.人身取引防止・抑止国家委員会の設置(2005年3月)、子どもおよび女性の人身取引問題に対処するための6か年国家計画および行動計画の採択(2003年)ならびに近隣諸国との了解覚書の締結のような、子どもの人身取引と闘うための努力を締約国が強化しているにも関わらず、委員会は、タイが性的搾取および強制労働目的の子どもの人身取引の送り出し国、通過国および目的地国となっていることに、深い懸念を表明する。委員会は、少数民族および部族民に属する女子が北部から南部へ取引されるなどの国内人身取引の事案が報告されていることに、懸念とともに留意するものである。委員会はさらに、脆弱な立場に置かれた集団の子どもにとって人身取引および搾取のおそれがいっそう高まり、かつ人身取引の被害を受けた子どもが送還されていることに、懸念とともに留意する。さらに、締約国において法執行および人身取引対策の実施が弱いことは深刻な懸念の理由となるものである。
74.委員会は、締約国に対し、1996年および2001年の子どもの商業的性的搾取に反対する世界会議で採択された宣言および行動綱領ならびにグローバル・コミットメントにしたがい、性的搾取および(または)人身取引の対象とされた子どもに対して十分な援助および社会的再統合のためのサービスを提供する努力を強化するよう、促す。
75.条約第34条その他の関連条項に照らし、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 関連の法律の効果的執行を確保することにより、国内でおよび国境を越えて行なわれるあらゆる形態の人身取引と闘うための措置を強化すること。
  • (b) 子どもの人身取引を防止するため、他の送り出し国および通過国との二国間および多国間の協定ならびに協力プログラムを強化しかつ拡大すること。
  • (c) すべての人身取引事案が捜査され、ならびに加害者が告発されおよび処罰されることを確保すること。
  • (d) 人身取引の被害を受けた子どもが保護されるのであって犯罪者として扱われないこと、ならびに、このような子どもに対して回復および社会的再統合のための十分なサービスおよびプログラムが提供されることを確保すること。
  • (e) 地域で増加しつつあるセックス・ツーリズムのような既存のリスク要因に特段の注意を払うとともに、この点についてタイ国政府観光庁(TAT)および観光サービス業者と引き続き連携すること。
  • (f) 子どもの人身取引と闘いかつこれを防止するため、子どもの人身取引の悪影響に関する公衆の意識を引き続き高め、かつ、子どもとともにおよび子どものために働く専門家ならびに一般公衆の研修を継続すること。
  • (g) 国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約を補足する人(とくに女性および子ども)の取引を防止し、抑止しおよび処罰するための議定書(2000年)を批准すること。
  • (h) とくにILO/IPEC、国際移住機関および非政府組織との協力を強化すること。
少年司法の運営
76.委員会は、最近行なわれた少年家庭裁判所設置および少年家庭手続導入法(1991年)の改正を歓迎する。2005年2月に施行されたこの改正は、少年家庭裁判所が設けられていない県においてはすべての刑事裁判所で少年家庭裁判所の手続が適用されなければならない旨、定めたものである。委員会は、刑事施設における体罰を禁じた最近の省令に留意する。委員会はまた、罪を犯した少年を対象とするシェルター・ハウスおよびダイバージョン・プログラム、ならびに、修復的司法の概念を促進する家族集団会議プログラムの利用も歓迎するものである。委員会は、毎年、罪を犯した約4500名の少年が拘禁センターに送致されていることに留意する。しかしながら委員会は、一部地域には少年拘禁施設が存在しないために子どもが引き続き成人とともに収容されていることを懸念するものである。委員会はまた、刑事責任に関する最低年齢が低い(7歳)旨の懸念もあらためて繰り返す。
77.委員会は、前回の勧告をあらためて繰り返すとともに、締約国に対し、少年司法に関する法律および実務が、条約の規定、とくに条約第37条、第39条および第40条、ならびに、少年司法の運営に関する国連最低基準規則(北京規則)(国連総会決議40/33)、少年非行の防止に関する国連指針(リャド・ガイドライン)(国連総会決議45/112)、自由を奪われた少年の保護に関する国連規則(国連総会決議45/113)および刑事司法制度における子どもに関する行動についてのウィーン指針(1997年7月21日の国連経済社会決議1997/30添付文書)のような、この分野における他の関連の国際基準と全面的に一致することを確保するよう、促す。これとの関連で、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告するものである。
  • (a) 刑法の関連規定を改正し、刑事責任に関する最低年齢を国際的に受け入れられる水準まで引き上げること。
  • (b) 国内法を改正し、刑事施設における体罰の使用の禁止を強化すること。
  • (c) 18歳未満の被拘禁者が成人から常に分離されること、および、自由の剥奪が最後の手段として、もっとも短い適当な期間で、かつ適切な環境においてのみ用いられることを確保すること。
  • (d) 18歳未満の者のための別の施設および(または)別の拘禁房の整備を迅速に進めることによってこれらの設備があらゆる地区に存在することを確保するとともに、被収監者に対して教育、職業訓練および治療のためのプログラムを提供すること。
  • (e) ダイバージョン、保護観察、カウンセリング、家族・共同体集団会議、地域奉仕活動または刑の執行猶予のような、拘禁に代わる措置を引き続き実施すること。
  • (f) とくに脆弱な立場に置かれた子どもとの関連で、防止のための戦略および措置を支援しかつ強化すること。
  • (g) 法律に触れた子どもおよびその社会への再統合を援助するためのコミュニティを基盤とするプログラムおよびサービスを支援すること。
  • (h) とくにユニセフおよびOHCHRの技術的協力を求めること。
先住民族およびマイノリティのコミュニティに属する子ども
78.委員会は、スティグマおよび差別の両方を受けている、先住民族、部族民およびマイノリティの子どもに属する子どもの状況について懸念を表明する。とくに、委員会は、先住民族およびマイノリティの間で貧困が広がっており、かつ、とくに社会サービスおよび保健サービスならびに教育へのアクセスに関してその人権の享受が制約されていることを、懸念するものである。委員会はまた、先住民族およびマイノリティの子どもに無国籍でありかつ(または)出生登録をされていない者が多く、虐待および搾取の危険性が高まっていることも懸念する。委員会はさらに、タイの山岳民族に関する人口動態データが現時点で不十分であることに留意するものである。
79.委員会は、条約第2条および第30条に基づく締約国の義務を想起し、締約国が、先住民族およびマイノリティの子どもがすべての人権を平等にかつ差別なく全面的に享受できることを確保するよう、勧告する。これとの関連で、委員会は、締約国に対し、自己の歴史的および文化的アイデンティティ、慣習、伝統および言語を維持する先住民族およびマイノリティの子どもの権利を保護するため、先住民族の子どもの権利に関する一般的討議(2003年9月)の日に委員会が採択した勧告を考慮に入れながら十分な措置をとるよう促すものである。委員会はまた、締約国に対し、文化的に適切なサービス(社会サービスおよび保健サービスならびに教育を含む)への平等なアクセスを確保するための政策およびプログラムを引き続き策定しかつ実施するようにも促す。委員会はまた、締約国が、すべての先住民族およびマイノリティの子どもが出生登録にアクセスできることを確保するとともに、無国籍の問題に対処するための措置を引き続き実施するようにも勧告するものである。委員会はさらに、締約国が、山岳民族ならびにすべてのマイノリティおよび先住民族の集団に関する人口動態調査を実施し、かつデータを性別、年齢および県によって細分化するよう勧告する。

9.子どもの権利条約の選択議定書

80.委員会は、締約国が、子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する条約選択議定書に2006年1月に加入したことを歓迎する。委員会は、武力紛争への子どもの関与に関する選択議定書に加盟するという内閣の最近の決定に留意し、締約国が同選択議定書を批准するよう勧告するものである。

10.フォローアップおよび普及

フォローアップ
81.委員会は、締約国が、とくにこれらの勧告を内閣の構成員、議会、関連省庁ならびに適用可能なときは県および郡の当局に送付して適切な検討およびさらなる行動を求めることにより、これらの勧告が全面的に実施されることを確保するためにあらゆる適切な措置をとるよう勧告する。
普及
82.委員会はさらに、条約、その実施および監視に関する議論および意識を喚起する目的で、締約国が提出した第2回定期報告書および文書回答ならびに委員会が採択した関連の勧告(総括所見)を、同国の言語で、インターネット等を通じ(ただしこれにかぎるものではない)、公衆一般、市民社会組織、若者グループ、専門家グループおよび子どもが広く入手できるようにすることを勧告する。

11.次回報告書

83.委員会が採択し、かつ第29会期に関する報告書(CRC/C/114)に掲載した報告の定期性に関する勧告に照らし、委員会は、条約第44条の規定を全面的に遵守した報告実践の重要性を強調する。条約に基づいて締約国が子どもに対して負う責任の重要な側面のひとつは、委員会が条約の実施における進展を審査する定期的機会を持てるようにすることである。委員会は、締約国に対し、第4回報告書の提出期限である2009年4月25日までに、単一の統合報告書として第3回および第4回定期報告書を提出するよう慫慂する。この統合報告書は120ページを超えるべきではない(CRC/C/148参照)。委員会は、締約国に対し、その後は条約で予定されているとおり5年ごとに報告を行なうよう期待するものである。


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