一般的意見23(2017年):出身国、通過国、目的地国および帰還国における、国際的移住の文脈にある子どもの人権についての国家の義務


CMW/C/GC/4-CRC/C/GC/23
配布:一般(2017年11月16日)
原文:英語
日本語訳:平野裕二(日本語訳PDF

出身国、通過国、目的地国および帰還国における、国際的移住の文脈にある子どもの人権についての国家の義務に関する合同一般的意見:
すべての移住労働者およびその家族構成員の権利の保護に関する委員会の一般的意見4号(2017年)
および子どもの権利委員会の一般的意見23号(2017年)〔注〕

注/この合同一般的意見は、国際的移住の文脈における子どもの人権についての一般的原則に関する合同一般的意見(すべての移住労働者およびその家族構成員の権利の保護に関する委員会の一般的意見3号〔2017年〕および子どもの権利委員会の一般的意見22号〔2017年〕)とあわせて参照されるべきである。
【訳者注】煩雑さを避けるため、以下の訳では、「すべての移住労働者およびその家族構成員の権利の保護に関する国際条約」は移住労働者権利条約、「すべての移住労働者およびその家族構成員の権利の保護に関する委員会」は移住労働者権利委員会と略称する。/なお、以下の目次は訳者が付け加えたものである。

  • I.はじめに(パラ1-2)
  • II.自国の領域において国際的移住の文脈にある子どもの権利を保護する締約国の法的義務(パラ3-63)
    • A.年齢(パラ3-4))
    • B.身体の自由に対する権利(移住労働者権利条約第16条および第17条;子どもの権利条約第37条)(パラ5-13)
    • C.適正手続上の保障および司法へのアクセス(移住労働者権利条約第16条、第17条および第18条;子どもの権利条約第12条および第40条)(パラ14-19))
    • D.名前、アイデンティおよび国籍に対する権利(移住労働者権利条約第29条;子どもの権利条約第7条および第8条)(パラ20-26)
      • 1.出生登録(パラ20-22)
      • 2.国籍に対する権利および無国籍とならないための保障措置(パラ23-26)
    • E.家族生活(移住労働者権利条約第14条、第17条および第44条;子どもの権利条約第9条、第10条、第11条、第16条、第18条、第19条、第20条および第27条(4))(パラ27-38)
      • 1.分離の禁止(パラ28-31)
      • 2.家族再統合(パラ32-38)
    • F.あらゆる形態の暴力および虐待(搾取、児童労働および誘拐を含む)ならびに子どもの売買または取引からの保護(移住労働者権利条約第11条および第27条;子どもの権利条約第19条、第26条、第32条、第34条、第35条および第36条)(パラ39-44)
    • G.経済的搾取(法定年齢未満の労働および危険な労働を含む)からの保護、雇用条件および社会保障に対する権利(移住労働者権利条約第25条、第27条、第52条、第53条、第54条および第55条;子どもの権利条約第26条および第32条)(パラ45-48)
    • H.十分な生活水準に対する権利(移住労働者権利条約第45条;子どもの権利条約第27条)(パラ49-53)
    • I.健康に対する権利(移住労働者権利条約第28条および第45条;子どもの権利条約第第23条、第24条および第39条)(パラ54-58)
    • J.教育および職業訓練に対する権利(移住労働者権利条約第30条、第43条および第45条;子どもの権利条約第28条、第29条、第30条および第31条)(パラ59-63)
  • III.国際協力(パラ64-65)
  • IV.合同一般的意見の普及および報告(パラ66-68)

I.はじめに

1.移住労働者権利条約と子どもの権利に関する条約には、子どもおよび移住者の人権の保護に一般的にも具体的にも関連する、法的拘束力のある一定の義務が掲げられている。いずれの条約にも、出身国、通過国、目的地国および帰還国における、国際的移住の文脈にある子どもの権利に関連する具体的義務を定めた規定が複数掲げられているところである [1]。
[1] 子どもの権利条約の締約国は、第4条(権利の実施)を第2条(差別の禁止)とあわせて解釈することにより、自国の管轄内にあるすべての子どもに対する経済的、社会的および文化的権利〔の保障〕について、自国の利用可能な手段を最大限に用いることにより、かつ、国際法にしたがって即時的に適用される義務を損なうことなくこれらの権利の全面的実現を漸進的に達成する目的で、措置をとる義務を負っている。子どもの権利委員会・一般的意見19号(子どもの権利実現のための公共予算編成、2016年)、パラ28-34参照。
2.この合同一般的意見は、国際的移住の文脈における子どもの人権についての一般的原則に関する合同一般的意見(すべての移住労働者およびその家族構成員の権利の保護に関する委員会の一般的意見3号〔2017年〕および子どもの権利委員会の一般的意見22号〔2017年〕)と同時に採択されたものである。同一般的意見とこの一般的意見はいずれもそれ自体で独立した文書ではあるが、両者は相互に補完しあうものであり、あわせて参照しかつ実施することが求められる。これらの文書の起草過程では、2017年5月から7月にかけて、バンコク、ベイルート、ベルリン、ダカール、ジュネーブ、マドリードおよびメキシコシティにおいて、主要な関係者および専門家(子どもたちおよび移住者団体を含む)の代表の参加を得て一連の国際的・地域的協議も行なわれた。加えて、両委員会のもとには、2015年11月から2017年8月にかけて、世界のあらゆる地域の国々、国際連合機関および関係組織、市民社会組織、国内人権機関ならびにその他の関係者から80件以上の意見書が寄せられた。

II.自国の領域において国際的移住の文脈にある子どもの権利を保護する締約国の法的義務

A.年齢

3.子どもの権利条約に基づく子どもの定義は、18歳までの権利および保護を定めている。両委員会は、15~18歳の子どもの保護の水準がはるかに低くなる傾向にあり、かつ、この年齢層の子どもが成人として扱われ、または18歳に達するまで移住者資格が曖昧なまま放置されることもあることを懸念するものである。国は、15歳以上の子どもを含むすべての子どもに対し、かつその移住者資格にかかわらず、平等な水準の保護が提供されることを確保するよう促される。子どもの代替的養護に関する指針 [2] にしたがい、国は、子ども(とくに養護環境を離れる子ども)が18歳に近づくにつれてフォローアップ、支援および移行のための十分な措置を提供するべきである。そのための手段には、長期的な正規の移住者資格および教育修了のための合理的機会へのアクセス、人間にふさわしい仕事へのアクセスならびにこれらの子どもが暮らす社会への統合を確保することなどが含まれる [3]。子どもは、このような移行期間中に自立生活に向けて十分な準備をできるようにされるべきであり、また権限のある公的機関は個々の状況の十分なフォローアップを確保するべきである。両委員会は加えて、各国に対し、18歳を超えても保護措置および支援措置をとるよう奨励する。
[2] 国連総会決議64/142付属文書。
[3] 子どもの権利委員会「国際的移住の文脈におけるすべての子どもの権利についての一般的討議(2012年)の報告」、パラ68-69参照。www.ohchr.org/Documents/HRBodies/CRC/Discussions/2012/DGD2012ReportAndRecommendations.pdf より入手可。
4.十分な情報に基づく年齢の推定を行なうため、国は、専門の小児科医または発達のさまざまな側面を統一して理解することに熟達したその他の専門家が実施する、子どもの身体的および心理的発達の包括的評価を行なうべきである。このような評価は、子どもが理解する言語による子ども(および適当な場合には同伴している成人)の面接も含め、迅速な、子どもにやさしい、ジェンダーに配慮したかつ文化的に適切なやり方で行なうことが求められる。利用可能な文書は反証がないかぎり申請の文書と認められるべきであり、また子どもおよびその親または親族による陳述が検討されなければならない。評価の対象とされている者に対しては灰色の利益が認められるべきである。国は、とくに骨および歯の検査による分析に基づく医学的手法の使用を控えることが求められる(このような手法は、大きな誤差をともなう不正確な結果をもたらす場合があるとともに、外傷体験をともない、かつ不必要な法的手続につながる可能性もある)。国は、自国の認定について再審査または適切な独立機関への不服申立てが行なえることを確保するべきである。

B.身体の自由に対する権利(移住労働者権利条約第16条および第17条;子どもの権利条約第37条)

5.すべての子どもは、いかなるときにも、身体の自由および入管収容からの自由に対する基本的権利を有する [4]。子どもの権利委員会は、子ども自身またはその親の移住者資格を理由とするいかなる子どもの拘禁も子どもの権利の侵害であり、かつ子どもの最善の利益の原則に違反すると主張してきた [5]。このことに照らし、両委員会とも、子ども自身またはその親の移住者資格に関連した理由による子どもの収容はけっして行なわれるべきではないと主張してきたのであり、国は、子どもの入管収容を迅速かつ完全に中止しまたは根絶することが求められる。いかなる種類の子どもの入管収容も法律で禁止されるべきであり、かつ当該禁止規定が実務上も全面的に実施されるべきである。
[4] 子どもの権利条約第37条;移住労働者権利条約第16条および第17条;世界人権宣言第3条および第9条;市民的および政治的権利に関する国際規約第9条。
[5] 子どもの権利委員会・2012年の一般的討議の報告、パラ78参照。また、自由を奪われたすべての者の裁判所における提訴の権利についての救済措置および手続に関する国際連合基本原則および指針(A/HRC/30/37付属文書)の、とくに原則21(パラ46)および指針21も参照。
6.入管収容とは、両委員会の理解によれば、子どもから自由を剥奪する行為の名称および理由または子どもが自由を奪われる施設もしくは場所の名称にかかわらず、子ども自身またはその親の移住者資格に関連した理由で子どもが自由を奪われるすべての場面をいう [6]。「移住者資格に関連した理由」とは、両委員会の理解によれば、両委員会がこれまで示してきた指針にのっとって非正規な入国または滞在に関わるものか否かにかかわらず、ある者の移住者資格もしくは在留資格またはその欠如をいう。
[6] 自由の剥奪は、拷問および他の残虐な、非人道的なまたは品位を傷つける取扱いまたは刑罰を禁止する条約の選択議定書第4条(2)において、「いずれかの司法機関、行政機関その他の公的機関の命令によるあらゆる形態の拘禁もしくは収監または公的もしくは私的な身柄拘束環境への措置であって、対象とされた者がみずからの意思で離れることを許されないもの」と定義されている。自由を奪われた少年の保護に関する国際連合規則の規則11は、「本規則の適用上、以下の定義が用いられなければならない。…… (b) 自由の剥奪とは、いずれかの司法機関、行政機関その他の公的機関の命令によるあらゆる形態の拘禁もしくは収監または公的もしくは私的な身柄拘束環境への措置であって、対象とされた者がみずからの意思で離れることを許されないものを指す」としている。
7.加えて、子どもの権利委員会と移住労働者権利委員会はいずれも、子どもは子ども自身またはその親の移住者資格を理由として犯罪者として扱われまたは懲罰的措置(収容など)の対象とされるべきではないと強調してきた [7]。非正規な入国および滞在は、それ自体、人身、財産または国の安全に対する犯罪ではない [8]。非正規な入国および滞在を犯罪化することは、非正規な移住を管理しかつ規制する締約国の正当な利益を超えており、かつ不必要な拘禁につながる。
[7] 子どもの権利委員会・2012年の一般的討議の報告、パラ78参照。
[8] 移住労働者権利委員会・一般的意見2号(非正規な状態にある移住労働者およびその家族構成員の権利、2013年)、パラ24。
8.子どもの権利委員会は、保護者のいない子どもおよび養育者から分離された子どもとの関連で、子どもはその自由を奪われるべきではなく、かつ、子どもが保護者のいないもしくは養育者から分離された状態にあることまたはその移住者資格もしくは在留資格もしくはその欠如のみを理由として収容を正当化することはできない旨、2005年に指摘した [9]。
[9] 子どもの権利委員会・一般的意見6号(出身国外にあって保護者のいない子どもおよび養育者から分離された子どもの取扱い、2005年)、パラ61参照。
9.両委員会は、いかなる自由の剥奪にも内在する有害性、および、入管収容が、たとえ子どもが短期間または家族とともに収容される場合であっても、子どもの身体的および精神的健康ならびに発達に及ぼす悪影響を強調する。拷問および他の残虐な、非人道的なまたは品位を傷つける取扱いまたは刑罰関する特別報告者は、「入管行政執行の文脈において……子ども自身またはその親の移住者資格を理由とする子どもの自由の剥奪は、けっして子どもの最善の利益に合致せず、必要性の要件を逸脱しており、かつ著しく比例性を欠いたものとなるとともに、移住者である子どもの残虐な、非人道的なまたは品位を傷つける取扱いに相当する場合がある」と指摘している [10]。
[10] A/HRC/28/68、パラ80参照。
10.子どもの権利条約第37条(b)は、子どもの自由の剥奪は最後の手段としてかつもっとも短い適切な期間でのみ行なうことができるという一般的原則を定めている。しかし、非正規な入国または滞在に関わる法律違反は、いかなる状況下でも、犯罪の実行から生じるものと同様の結果はもたらさない [11]。したがって、最後の手段としての子どもの拘禁が認められていることは、少年刑事司法のような他の分野では適用できる場合があっても、出入国管理手続においては適用されない。このような場合の拘禁は、子どもの最善の利益の原則および発達に対する権利に抵触するためである。
[11] 移住労働者権利委員会・一般的意見2号、パラ24参照。また、子どもの権利委員会・2012年の一般的討議の報告、パラ78も参照。同趣旨の指摘として、恣意的拘禁に関する作業部会の報告書(A/HRC/13/30)、パラ58ならびに移住者の人権に関する特別報告者の報告書(A/HRC/20/24)、パラ31および38参照。
11.このような対応に代えて、国は、子どもが、その出入国管理上の地位についての解決が図られ、かつ子どもの最善の利益評価が行なわれている間および子どもが帰還するまでの間、収容をともなわない、コミュニティを基盤とする環境において家族構成員および(または)後見人とともに滞在できるようにする立法、政策および実務を通じ、子どもの最善の利益を、人身の自由および家族生活に対する子どもの権利とともに充足する解決策をとるべきである [12]。子どもに保護者がいない場合、このような子どもは、子どもの代替的養護に関する指針にしたがい、代替的な養護および居住場所の形態をとった、国による特別な保護および援助を受ける資格を有する [13]。子どもに保護者がいる場合、家族がともにいられるようにする必要性は、子どもの自由の剥奪を正当化する有効な理由とはならない。家族がともにいられるようにすることが子どもの最善の利益によって求められるときは、子どもから自由を剥奪してはならないという絶対的要件が子どもの親に対しても及ぶのであり、公的機関は、家族全体を対象として収容をともなわない措置を選択しなければならない [14]。
[12] 子どもの権利委員会・2012年の一般的討議の報告、パラ79参照。
[13] 子どもの権利委員会・一般的意見6号、パラ39-40参照。
[14] A/HRC/20/24、パラ40、米州人権裁判所「移住の文脈にある子どもおよび(または)国際保護を必要とする子どもの権利および保障」(勧告的意見OC.21/14、2014年8月19日)、パラ159およびA/HRC/28/68、パラ80参照。
12.したがって、子どもおよび家族の入管収容は法律で禁じられるべきであり、かつ政策および実務においてその廃止が確保されるべきである。収容に充てられる資源は、子どもおよび該当する場合にはその家族に対応する権限のある子ども保護機関が実施する、収容をともなわない解決策に向けることが求められる。子どもおよび家族に対して用意される措置は、子どもまたは家族の自由を何らかの形で剥奪することをともなうものであるべきではなく、かつ、執行ではなくケアおよび保護の倫理に基づいたものであるべきである [15]。これらの措置は、子どもの最善の利益にのっとった事案の解決に焦点を当て、かつ、子どもの権利の包括的保護を確保することによって子どものホリスティックな発達を可能にするために必要なあらゆる物質的、社会的および情緒的条件を提供するようなものであることが求められる。独立の公的機関および市民社会組織が、これらの便益または措置を恒常的に監視できるようにされるべきである。子どもおよび家族は、何らかの入管収容が執行された場合には効果的救済措置にアクセスできるべきである。
[15] 子どもの代替的養護に関する指針参照。
13.両委員会の見解では、国際的移住の文脈にある子どもについては子どもの保護および福祉に関連する機関が第一次的責任を負うべきである。移住者である子どもが最初に出入国管理当局によって発見された場合、子どもの保護または福祉を担当する行政官が直ちに通告を受け、かつ保護、滞在場所その他のニーズに関わる子どものスクリーニングを担当することが求められる。保護者のいない子どもおよび養育者から分離された子どもは、国/地方の代替的養護制度に措置するべきである(家庭的養護が利用可能な場合には子ども自身の家族とともに当該養護に、家庭が利用できない場合にはその他の形態のコミュニティ養護に、措置することが望ましい)。これらの決定は、子どもに配慮した適正手続の枠組み(意見を聴かれ、司法にアクセスし、かつ自由の剥奪につながりうるいかなる決定についても裁判官に対して異議を申し立てる子どもの権利を含む)の枠組みのなかで行なわれなければならず [16]、かつ、ジェンダー、障害、年齢、精神的健康、妊娠その他の状態に基づくものを含む子どもの脆弱性およびニーズを考慮したものであることが求められる。
[16] 自由を奪われたすべての者の裁判所における提訴の権利についての救済措置および手続に関する国際連合基本原則および指針の、とくに指針18参照(A/HRC/30/37、パラ100)。

C.適正手続上の保障および司法へのアクセス(移住労働者権利条約第16条、第17条および第18条;子どもの権利条約第12条および第40条)

14.司法へのアクセスはそれ自体が基本的権利であり、かつ他のすべての人権の保護および促進の前提条件であるので、国際的移住の文脈にある子どもが自己の権利を主張できるようエンパワーされるうえで何よりも重要である。締約国は、その責任として、司法への公正、実効的かつ迅速なアクセスを確保するための構造的および積極的介入を行なわなければならない。子どもの権利委員会は、条約の実施に関する一般的措置についての一般的意見5号(2003年)で、実効的な救済のためには効果的かつ子どもに配慮した手続が必要であると指摘した。委員会はさらに、当該手続においては、行政上および司法上の手続が子どものニーズおよび発達に適合したものとなり、かつこのようなあらゆる手続において子どもの最善の利益が第一次的に考慮されることを確保するため、一定の具体的措置がとられることを保障するべきであるとしている。
15.両委員会は、国が、自国の法律、政策、措置および実務において、子どもおよび(または)その親の権利に影響を及ぼす、移住および庇護に関わるすべての行政手続および司法手続における子どもに配慮した適正手続が保障されることを確保するべきであるという見解に立つ。すべての子ども(親その他の法定保護者とともにいる子どもを含む)は権利を保有する個人として扱われるべきであり、その子ども特有のニーズが平等にかつ個別に考慮されなければならず、またその意見は適切に聴取されかつ正当に重視されなければならない。子どもは、すべての決定が子どもの最善の利益にのっとって行なわれることを保障するため、自分自身またはその親の状況に関する決定に対する行政上および司法上の救済措置にアクセスできなければならない [17]。子どもの権利に悪影響を及ぼす可能性のある移住/庇護手続(家族再統合手続を含む)における不当な遅延を回避するための措置がとられるべきである。子どもの最善の利益に反しないかぎり、いかなる適正手続上の保障も制限されないことを条件として、速やかな手続を奨励することが求められる。
[17] 子どもの権利委員会・2012年の一般的討議の報告、パラ75参照。
16.子どもは、その権利が侵害された場合には、裁判所、行政審判所、または子どもが容易にアクセスできるより下層の他の機関(たとえば子ども保護施設および若者施設、学校ならびに国内人権機関)において苦情を申し立てることができるべきであり、かつ、子どもおよび移住問題について専門的知識を有する専門家の、子どもにやさしいやり方による助言および代理を受けられるべきである。国は、移住者、庇護希望者および難民である子どもに対して無償のかつ良質な法的助言および代理を提供すること(地方公的機関の養護を受けている保護者のいない子どもおよび養育者から分離された子どもならびに在留資格のない子どもが平等にアクセスできることを含む)についての指針を公的機関に示すための、統一的政策を確保することが求められる [18]。
[18] 人権理事会決議25/6。米州人権裁判所・勧告的意見OC.21/14(2014年8月19日)、パラ108-143も参照。
17.より具体的には、かつとくに最善の利益評価の文脈および最善の利益認定手続においては、子どもに対して以下の権利が保障されるべきである。
  • (a) 必要書類の有無にかかわらず領域にアクセスする権利、および、手続的保障を確保しながら子どもの権利の保護観点によるニーズ評価を担当する公的機関に付託される権利。
  • (b) 手続の存在、ならびに、出入国管理手続および庇護手続の文脈で行なわれた決定、その意味するところおよび不服申立ての可能性について告知される権利。
  • (c) 出入国管理手続を専門行政官または裁判官に行なわせる権利、および、面接が実施される場合、子どもとのコミュニケーションの訓練を受けた専門家による本人面接を実施させる権利。
  • (d) 手続のあらゆる段階で意見を聴かれかつ参加する権利、および、翻訳者および(または)通訳者による無償の援助を受ける権利。
  • (e) 領事官との連絡手段および領事官による援助に実効的にアクセスし、かつ子どもに配慮した、権利を基盤とする領事保護を受ける権利。
  • (f) 子どもの代理に関する訓練を受けかつ(または)経験を有する弁護士の援助を手続のあらゆる段階で受け、かつ代理人と自由に連絡する権利および無償の法的援助にアクセスする権利。
  • (g) 子どもが当事者である申請および手続を、手続のために十分な時間があることおよびあらゆる適正手続上の保障が維持されることを確保しつつ、優先的に取り扱わせる権利。
  • (h) 決定について、上訴裁判所または独立の公的機関に対し、執行停止効をともなう不服申立てを行なう権利。
  • (i) 保護者のいない子どもおよび養育者から分離された子どもについて、その最善の利益の尊重を確保するための主要な手続的保障として機能する、資格のある後見人を可能なかぎり迅速に任命される権利 [19]。
  • (j) 手続全体を通じて、その後見人および法的助言者とともに、自己の権利に関する情報および自己に影響を与える可能性のあるすべての関連情報を含む情報を全面的に提供される権利。
[19] 子どもの権利委員会・一般的意見6号、パラ20-21および33-38参照。
18.両委員会は、移住者資格が不安定かつ不確かであることが子どものウェルビーイングに及ぼす悪影響を認識する。したがって両委員会は、国が、子どもがさまざまな根拠(在留期間など)によって自己の地位を正規化できるようにするための、明確なかつアクセスしやすい地位認定手続が存在することを確保するよう勧告するものである。
19.両委員会は、移住労働者権利条約第7条(a)、第23条および第65条(2)とあわせて子どもの権利条約を包括的に解釈することにより、子どもの権利の保護に向けた具体的措置(領事職員を対象として2つの条約およびその他の人権文書に関する継続的研修を実施すること、領事保護業務に関する標準業務要綱を推進することなど)を含む、効果的な領事保護政策の策定および実施が求められると理解するべきであるとの見解に立つ。

D.名前、アイデンティおよび国籍に対する権利(移住労働者権利条約第29条;子どもの権利条約第7条および第8条)

1.出生登録

20.出生登録が行なわれない場合、児童婚、人身取引、強制徴集および児童労働など、子どもの権利の享受に多くの悪影響が生じる可能性がある。出生登録はまた、子どもの人権侵害を行なった者に有罪判決を言い渡すうえでも役立つ可能性がある。登録されていない子どもは、非正規な移住状況にある親から生まれた場合、親の出身国における国籍の取得ならびに出生地における出生登録および国籍へのアクセスを妨げる障壁のために、無国籍となるおそれがとりわけ強い [20]。
[20] 無国籍者の地位に関する条約第1条によれば、無国籍者とは「いずれの国家によっても、その法の運用において国民と認められない者」をいう。
21.両委員会は、締約国に対し、すべての子どもが、子ども自身の移住者資格またはその親の移住者資格にかかわらず、出生時に直ちに登録され、かつ出生証明書を発行されることを確保するためにあらゆる必要な措置をとるよう促す。出生登録を妨げる法律上および実務上の障壁は取り除かれるべきである。そのための手段には、保健サービス提供者または登録担当の公務員と出入国管理執行機関とのデータの共有を禁止すること、および、親に対して移住者資格に関する書類の提出を要求しないことなどが含まれる。期限後の出生登録を促進し、かつ期限後の登録に対する金銭的処罰を行なわないようにするための措置もとられるべきである。登録されていない子どもに対しても、保健ケア、保護、教育その他の社会サービスへの平等なアクセスを確保することが求められる。
22.子どもの身分証明書類が本人に代わって非正規に取得されたものであり、子どもが自己の身分証明書類の回復を要請する場合、締約国は、具体的には訂正された書類を発行し、かつ偽造が行なわれた場合の訴追を行なわないようにすることにより、子どもの最善の利益にのっとった柔軟な措置をとるよう奨励される。

2.国籍に対する権利および無国籍とならないための保障措置

23.子どもの権利条約第7条は、締約国は子どもの登録される権利、名前に対する権利、国籍を取得する権利および親を知りかつ親によって養育される権利の実施を確保しなければならないと規定することにより、無国籍の防止を強調している。同じ権利は、すべての移住労働者の子どもを対象として、移住労働者権利条約第29条にも掲げられている。
24.国は、自国の領域で出生したすべての子どもに国籍を付与する義務は負わないものの、すべての子どもが出生時に国籍を有していることを確保するため、国内的に、かつ他国とも協力しながら、すべての適切な措置をとるよう要求される。重要な措置のひとつは、自国の領域で出生した子どもに対し、国籍を付与しなければその子どもが無国籍となる場合に、出生時にまたは出生後可能なかぎり早期に国籍を付与することである。
25.子どもおよび(または)その親の人種、民族、宗教、ジェンダー、障害および移住者資格に関連するものを含む禁止事由に基づいて国籍の承継または取得についての差別を行なっている国籍法は、廃止されるべきである。さらに、あらゆる国籍法は、国籍に対するすべての子どもの権利が尊重され、保護されかつ充足されることを確保するため、滞在期間要件に関わる在留資格との関連も含めて非差別的な方法で実施することが求められる。
26.国は、自国の領域で出生した子どもに対し、国籍を付与しなければ無国籍となる状況下で国籍を付与するための措置を強化するべきである。母の国籍国の法律で子どもおよび(または)配偶者に国籍を付与する女性の権利が認められていない場合、子どもは無国籍のおそれに直面する可能性がある。同様に、婚姻に際して国籍を取得し、変更しまたは維持する女性の自律的権利が国籍法で保障されていない場合、国際的移住の状況にあって18歳未満で婚姻した女子は、無国籍となるおそれに直面し、または無国籍となることへの恐れのため人権侵害的婚姻から逃れられなくなる可能性がある。国は、女性差別である国籍法の改正のために即時的措置をとり、子どもおよび配偶者に国籍を付与する権利および国籍の取得、変更または維持に関わる権利を男女に平等に認めるべきである。

E.家族生活(移住労働者権利条約第14条、第17条および第44条;子どもの権利条約第9条、第10条、第11条、第16条、第18条、第19条、第20条および第27条(4))

27.家族生活の保護に対する権利は、子どもの権利条約および移住労働者権利条約を含む国際的・地域的人権文書で認められている。したがってこの権利は、すべての子どもとの関連で、その在留資格または国籍上の地位にかかわらず、いかなる種類の差別もなく全面的に尊重され、保護されかつ充足されるべきである。国は、子どもの代替的養護に関する指針にしたがって主たる焦点として位置づけられるべきである家族の一体性(きょうだいを含む)の維持および分離の防止に関わる、自国の国際法上の義務を遵守することが求められる。家族環境に対する権利を保護しようとすれば、国は、家族の分離または家族生活に対する権利に対するその他の恣意的介入につながる可能性のある行動をとらないようにするだけではなく、家族の一体性を維持する(分離された家族構成員の再結合を含む)ための積極的措置もとらなければならないことが多い。子どもの権利委員会は、自己の最善の利益を第一次的に考慮される子どもの権利についての一般的意見14号(2013年)において、「親」〔訳者注/正しくは「家族」〕という文言は、生物学的親、養親もしくは里親、または適用可能なときは地方の慣習により定められている拡大家族もしくは共同体の構成員を含むものとして広義に解されなければならないと指摘している。

1.分離の禁止

28.移住者にとっての家族の一体性に対する権利は、国民ではない者の入域または自国の領域での滞在に関する決定を行なう際の国の正当な利益と交錯する場合がある。しかし、国際的移住の文脈にある子どもおよび家族は、そのプライバシーおよび家族生活に対する恣意的または不法な干渉の対象とされるべきではない [21]。ある家族構成員を締約国の領域から送還しもしくは退去させることによって家族を分離させること、またはその他の方法である家族構成員の入域もしくは領域での在留を許可しないことは、家族生活に対する恣意的または不法な干渉に相当する場合がある [22]。
[21] 自由権規約委員会・一般的意見15号(規約上の外国人の立場、1986年)、パラ7参照。
[22] 自由権規約委員会の、通報第2009/2010号(Ilyasov v. Kazakhstan 事件)における見解(2014年7月23日採択)、通報第2243/2013号(Husseini v. Denmark 事件)における見解(2014年10月24日採択)、通報第1875/2009号(M.G.C. v. Australia 事件)における見解(2015年3月26日採択)、通報第1937/2010号(Leghaei and others v. Australia 事件)における見解(2015年3月26日採択)および通報第2081/2011号(D.T. v. Canada 事件)における見解(2006年7月15日採択)。
29.両委員会は、入国または滞在関連の出入国管理法違反に基づく一方または双方の親の追放によって家族の一体性を破壊することは比例性を欠くという見解に立つ。家族生活の制限に固有の犠牲および子どもの生命および発達に対する影響が、出入国管理関連の不法行為を理由として領域を離れるよう親に強制することから得られる利益を下回ることはないからである [23]。移住者である子どもおよびその家族はまた、追放が家族生活および私生活に対する権利への恣意的干渉である場合にも保護されるべきである [24]。両委員会は、国が、非正規な状況下で子どもとともに在留している移住者を対象として、とくに子どもが目的地国で出生しておりもしくは長期間生活している場合または親の出身国への帰還が子どもの最善の利益に反する場合には、地位の正規化のための経路を用意するよう勧告する。親の追放が刑事犯罪を理由とするものである場合、比例性の原則ならびに人権に関わるその他の原則および基準も考慮しながら、その子どもの権利(自己の最善の利益を第一次的に考慮される権利および意見を聴かれ、かつ意見を真剣に受けとめられる権利を含む)が確保されるべきである。
[23] 米州人権裁判所・勧告的意見OC.21/14(2014年8月19日)、パラ280参照。
[24] 移住労働者権利委員会・一般的意見2号(2013年)、パラ50参照。
30.両委員会は、親による虐待およびネグレクト関連の懸念がないときに、子ども保護制度によって子どもが親から分離されて代替的養護に措置される場合があることを懸念する。金銭的もしくは物質的貧困またはこのような貧困を直接かつ唯一の原因とする環境が、子どもを親による養育から分離すること、子どもを代替的養護に受け入れることまたは子どもの社会的再統合を妨げることの唯一の正当化事由とされることは、けっしてあるべきではない。これとの関連で、国は、親または子どもの移住者資格にかかわらず、社会給付および子ども手当その他の社会支援サービスを提供すること等の手段により、親および法定保護者が子どもの養育責任を果たすにあたって適切な援助を提供するべきである。
31.両委員会はまた、子どもの権利条約第18条に基づき、移住の文脈における家族環境への子どもの権利に対する包括的アプローチにおいて、親が子どもの発達に関わる義務を履行できるようにすることを目的とした措置が構想されるべきであるとの見解に立つ。子どもおよび(または)その親の非正規な移住者資格がこのような目標を阻害しかねないことを考慮し、国は、正規のかつ非差別的な移住経路を利用できるようにするとともに、子どもおよびその家族が、家族の結合、労働関係および社会統合等の事由を根拠として長期的な正規の移住者としての地位または在留許可にアクセスできるようにするための、恒久的なかつアクセスしやすい機構を設けるべきである [25]。
[25] 子どもの権利委員会・2012年の一般的討議の報告、パラ91参照。また、移住労働者権利条約第69条も参照。

2.家族再統合

32.子どもの権利条約第10条に基づき、締約国は、家族再統合の申請が積極的、人道的および迅速な方法で取り扱われること(子どもと親の再統合の便宜を図ることも含む)を確保するものとされる。子どもとその親および(または)きょうだいとの関係が移住(親が子どもをともなわずに移住する場合または子どもが親および(または)きょうだいをともなわずに移住する場合)によって切断されている場合、家族再統合に関する決定において子どもの最善の利益を評価する際に、家族の一体性の保全について考慮するべきである [26]。
[26] 子どもの権利委員会・一般的意見14号(自己の最善の利益を第一次的に考慮される子どもの権利、2013年)、パラ66。
33.国際的移住の文脈にある在留資格のない子どもについて、国は、期限、裁量権限および(または)行政手続における不透明さによって家族再統合に対する子どもの権利が阻害されるべきではないことにとりわけ配慮しながら、指針を策定しかつ実施しなければならない。
34.保護者のいない子どもまたは養育者から分離された子ども(親の収容など出入国管理法の執行によって親から分離された子どもを含む)について、このような子どものために持続可能な、権利を基盤とする解決策(家族再統合の可能性を含む)を見出すための努力が、遅滞なく開始されかつ実施されるべきである。子どもの家族が目的地国、出身国または第三国にいる場合、通過国または目的地国の子ども保護・福祉機関は、できるかぎり早く家族構成員と連絡をとることが求められる。子どもが出身国、通過国および(または)目的地国にいる家族と再統合されるべきか否かの決定は、子どもの最善の利益が第一次的考慮事項として確認され、かつ家族再統合が考慮される、確固たる評価に基づいて行なわれるべきである。当該評価には、子どもがプロセスへの参加を保障される、持続可能な再統合計画も含めることが求められる。
35.出身国における家族再統合は、そのような帰還が子どもの人権侵害につながるであろう「合理的おそれ」がある場合には追求されるべきではない。出身国における家族再統合が子どもの最善の利益にかなうものではない場合または帰還を妨げる法的その他の障壁のために不可能である場合は、子どもの権利条約第9条および第10条に基づく義務が発動されるのであり、このような場合における、家族再統合に関する国の決定はこれらの義務によって規律されるべきである。親がその子どもと再統合できるようにし、かつ(または)子どもの最善の利益に基づいて親の地位を正規化するための措置を整備することが求められる。国は、子どもの最善の利益にのっとって家族再統合手続を迅速なやり方で終了させるため、このような手続を容易にするべきである。国は、家族再統合を確定する際、最善の利益認定手続を適用するよう勧告される。
36.目的地国が子どもとのおよび(または)その家族との再統合を拒否するときは、目的地国は、拒否の理由および不服申立てを行なう子どもの権利についての詳細な情報を、子どもに対し、子どもにやさしくかつ年齢にふさわしい方法で提供するべきである。
37.出身国に留まっている子どもは、目的地国にいる親および(または)年長のきょうだいと再統合しようとして、結果的に非正規なかつ安全ではない移住を行なってしまう場合がある。国は、子ども(出身国に留まっていて非正規に移住する可能性がある子どもを含む)が正規に移住できるようにするための、実効的なかつアクセスしやすい家族再統合手続を発展させるべきである。国は、移住者が分離を避けるために家族を正規に同伴できるようにする政策を策定するよう奨励される。手続においては、家族生活を促進し、かつ、いかなる制限も法律適合性、必要性および比例性を備えたものであることを確保することが追求されるべきである。この義務は第一次的には受入れ国および通過国が負うものだが、出身国も家族再統合を促進するための措置をとることが求められる。
38.両委員会は、財源が不十分であるために家族再統合に対する権利の行使がしばしば妨げられていること、および、十分な家族所得の証明がないことが再統合手続の障壁となりうることを認識する。国は、これらの子どもならびにその(両)親、きょうだいおよび該当する場合にはその他の親族に対し、十分な金銭的支援およびその他の社会サービスを提供するよう奨励される。

F.あらゆる形態の暴力および虐待(搾取、児童労働および誘拐を含む)ならびに子どもの売買または取引からの保護(移住労働者権利条約第11条および第27条;子どもの権利条約第19条、第26条、第32条、第34条、第35条および第36条)

39.国際的移住の文脈にある子ども、とくに在留資格のない子ども、無国籍の子ども、保護者のいない子どもまたは家族から分離された子どもは、移住のプロセス全体を通じ、出身国、通過国、目的地国および帰還先の国において、さまざまな形態の暴力(ネグレクト、虐待、誘拐および略奪、人身取引、性的搾取、経済的搾取、児童労働、物乞いまたは犯罪的活動および不法な活動への関与を含む)の被害を受けやすい立場に置かれる。このような子どもは、とくに非正規な形で渡航しまたは在留しているときに、国もしくは国以外の主体による暴力を経験し、または自分の親その他の者への暴力を目的するおそれがある。両委員会は、親責任および子どもの保護措置に関する管轄権、準拠法、承認、執行および協力に関する1996年10月19日のハーグ条約第6条に対し、各国の注意を喚起するものである。同条に基づき、締約国の司法当局または行政当局は、子どもの難民、および、自国で生じた騒乱のために国内避難民化し、かつその避難の結果として自国の領域にいる子どもとの関連で、子どもの人身または財産の保護のための措置をとる管轄権を有する。
40.両委員会はまた、制限的な移住政策または庇護政策(非正規な移住が犯罪とされていること、安全な、秩序だった、アクセスしやすくかつ負担可能な正規の移住経路が十分な形で存在しないことまたは十分な子ども保護制度が設けられていないことを含む)によって、移住者である子ども(保護者のいない子どもまたは養育者から分離された子どもを含む)が、移住のための渡航の最中におよび目的地国において、暴力および虐待の被害をとりわけ受けやすい立場に置かれるようになっていることも認識する。
41.子どもの不法な移送および不返還ならびに最悪な形態の児童労働(あらゆる形態の奴隷制、商業的性的搾取、物乞いを含む不法な活動のための子どもの使用および危険な労働を含む)を防止しかつこれと闘い、かつ暴力および経済的搾取から子どもを保護するために、国があらゆる必要な措置をとることが不可欠である。両委員会は、子どもがジェンダー特有のリスクおよび脆弱性に直面しており、これらのリスクおよび脆弱性を特定して具体的に対処するべきであることを認識する。女子および男子(障害をもっている可能性がある子どもを含む)ならびにレズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダーまたはインターセックスである子どもが、性的搾取および虐待を目的とする人身取引の被害をとりわけ受けやすい状況に置かれていることに対処するため、追加的措置がとられるべきである。
42.在留資格のない移住者である子ども、および、在留許可または就労許可に依存している親(これらの者は保証人/雇用主によって容易に在留資格のない立場にされうる)は、公共役務の提供者もしくはその他の公的職員または私人によって出入国管理当局に通報されるおそれに直面する。これにより、このような者は保護および司法へのアクセスを含む人権の享受を制限され、かつ暴力ならびに労働関連その他の態様の搾取および虐待の被害をいっそう受けやすい立場に置かれる [27]。このような状況は、非正規な地位にある移住者を暴力、虐待および搾取から保護することではなく収容することを優先させる政策の結果である場合もあり、これによって子どもは暴力を経験しまたは家族構成員に対する暴力を目的する立場にいっそう置かれやすくなる。とくに、子ども保護サービスと出入国管理の執行との間の実効的な遮断措置が確保されるべきである。
[27] 移住労働者権利委員会・一般的意見2号、パラ2参照。
43.移住者である子どものうち、人身取引、売買その他の形態の性的搾取の兆候がある子どもまたはそのような行為もしくは児童婚の被害を受けるおそれがある可能性のある子どもについて、国は以下の措置をとるべきである。
  • 売買、取引および虐待の被害者を見つけ出すための早期発見措置および付託のための機構を確立するとともに、この点について、ソーシャルワーカー、国境警察、弁護士、医療専門家および子どもと接触する他のすべてのスタッフを対象とする義務的研修を実施すること。
  • 複数の異なる移住者資格が利用可能であるときは保護にもっとも寄与する資格(すなわち庇護資格または人道的理由による在留資格)が付与されるべきであり、かつ、このような地位の付与に関する決定は、子どもの最善の利益にしたがい、個別の事案ごとに行なわれるべきであること。
  • 売買、取引またはその他の形態の性的搾取の被害を受けた移住者である子どもへの在留資格または援助の付与に際し、刑事手続の開始または法執行機関への協力が条件とされないことを確保すること。
44.さらに、国は、移住者である子どもがあらゆる形態の暴力および虐待から全面的かつ実効的に保護されることを確保するため、以下の行動をとるべきである。
  • これらの子どもが、あらゆる形態の奴隷制および商業的性的搾取ならびに不法な活動のための使用、または、その健康、安全もしくは道徳を危険にさらすあらゆる労働から保護されることを確保するための効果的措置をとること。そのための手段には、国際労働機関の関連の条約の締約国となることも含まれる。
  • これらの子どもを、その移住者資格にかかわらず、あらゆる形態の暴力および虐待から保護するための効果的措置をとること。
  • 女子および男子ならびに障害のある子どもならびに性的搾取、労働搾取および他のあらゆる形態の搾取の潜在的被害者が置かれている、ジェンダーに固有の脆弱な状況を認識しかつこれに対応すること。
  • 暴力、虐待または搾取の事案を警察に通報した移住者である子どもおよびその家族に対し、その移住者資格にかかわらず、包括的な保護、支援サービスおよび実効的な救済機構へのアクセス(心理社会的援助およびこれらの救済措置に関する情報を含む)を確保すること。子どもおよび親は、通報の結果として出入国管理の執行を受けるいかなるおそれもなく、被害者または目撃者として、警察その他の公的機関に対する通報を安全に行なうことができなければならない。
  • 移住者である子どもの保護に関してコミュニティサービス機関および市民社会組織が果たしうる重要な役割を認識すること。
  • 移住者である子どもに対するあらゆる形態の暴力、搾取および虐待の根本的原因への対応を目的とする包括的政策(その適正な実施のための十分な資源を含む)を策定すること。

G.経済的搾取(法定年齢未満の労働および危険な労働を含む)からの保護、雇用条件および社会保障に対する権利(移住労働者権利条約第25条、第27条、第52条、第53条、第54条および第55条;子どもの権利条約第26条および第32条)

45.就労が認められる最低年齢ならびに最悪の形態の児童労働の禁止および撤廃に関連する国際労働基準を正当に尊重しつつ、法律上の就労年齢を超えた移住者である子どもが従事するすべての労働が搾取的でありまたは危険な条件下で行なわれるわけではない。両委員会は、各国に対し、就労年齢を超えた移住者である子どもは、その地位にかかわらず、報酬、その他の労働条件および雇用条件に関して国民である子どもと平等な取扱いを享受するべきであることを想起するよう求める。
46.国は、最低就労年齢および危険な労働との関連で移住者である子どもの雇用を規制しかつ保護するため、ジェンダーの側面を含むすべての適切な立法上および行政上の措置をとるべきである。移住者である子どもがさらされる特有のリスクに鑑み、国はまた、法律上も実務上も、子どもの権利条約および関連の国際基準の規定の効果的執行を保障するためのあらゆる必要な措置(適切な処罰を定めることも含む)が権限のある当局によってとられること、および、移住者である子どもが以下の取扱いを保障されることも確保するべきである。
  • 国際的に受け入れられた基準にのっとり、公正な雇用条件および人間にふさわしい労働条件を享受すること。
  • 子どもが労働できる時間および条件を規制する具体的な保護措置を享受すること。
  • 子どもが労働に適していることを証明する定期的な医学的検診を受けること。
  • 実効的な苦情申立て機構および労働権の保障と出入国管理の執行との間の遮断措置を確保する等の手段により、公的機関または私人による権利侵害があった場合に司法にアクセスできること。
47.社会保障に関して、移住者である子どもおよびその家族は、適用される国の法律ならびに適用される二国間条約および多国間条約で定められた要件を満たしているかぎり、国民に対して与えられるものと同一の取扱いを受ける権利が与えられなければならない。両委員会としては、国は、必要な場合、移住者である子どもおよびその家族に対し、その移住者資格にかかわらず、いかなる差別もなく緊急社会援助を提供するべきであると考える。
48.移住者の家族(移住者を親として生まれた子どもがいる家族を含む)について、両委員会は、子どもの養育および発達に対する親の責任(子どもの権利条約第5条および第18条)と、移住労働者権利条約の関連規定に基づく移住労働者の労働権とは相互に依存していることを強調する。したがって国は、移住者である親(非正規な状況にある者を含む)の職場における権利が全面的に尊重されることを確保するための措置を、可能なかぎりとるべきである。

H.十分な生活水準に対する権利(移住労働者権利条約第45条;子どもの権利条約第27条)

49.国は、国際的移住の文脈にある子どもが、その身体的、精神的、霊的および道徳的発達のために十分な生活水準を享受することを確保するべきである。子どもの権利条約第27条(3)で規定されているように、国は、国内条件にしたがいかつ自国の財源の及ぶ範囲で、この権利の実施のために、親および子どもに責任を負う他の者を援助するための適切な措置をとらなければならず、かつ、必要な場合には、とくに栄養、衣服および住居との関連で物質的援助および支援プログラムを提供しなければならない。
50.締約国は、受入れ施設の水準に関する詳細な指針を策定し、子どもおよびその家族に対して十分な空間およびプライバシーを保障するべきである。国は、受入れ施設ならびに公式および非公式のキャンプのような一時滞在場所において十分な生活水準を確保するための措置をとり、これらの施設が子どもおよびその親(障害のある人、妊婦および授乳中の母親を含む)にとってアクセス可能であることを確保するよう求められる。国は、居住施設において子どもの日常的移動が不必要に制限されないこと(事実上の移動の制限を含む)を確保するべきである。
51.国は、移住者の物件賃貸を妨げる措置をとることにより、子どもの居住権に干渉するべきではない。移住者である子どもが、その地位にかかわらず、ホームレス向けシェルターにアクセスできることを確保するための措置がとられるべきである。
52.国は、公的または私的なサービス提供機関(公的または私的な住宅供給機関を含む)と出入国管理執行当局との間に遮断措置を設けるための手続および基準を発展させるべきである。同様に、国は、非正規移住者である子どもが居住権の行使を理由として犯罪者として扱われないこと、および、子どもによる居住権の行使の便宜を図った私人(家主および市民社会組織など)も犯罪者して扱われないことを確保するよう求められる。
53.子どもの権利条約は、締約国が、自国の管轄内にある子ども1人ひとりに対し、いかなる種類の差別もなく、条約に掲げられた権利を尊重しかつ確保しなければならないと規定している。これには、子どもまたはその親の移住者資格に基づいて行なわれる、子どもに対する差別も含まれる。したがって両委員会は、締約国に対し、経済的、社会的および文化的権利に公正にアクセスできるようにすることを促すものである。国は、移住者である子どもおよびその家族(非正規な状況にある者を含む)を差別し、またはこれらの者がサービスおよび給付(たとえば社会扶助)に効果的にアクセスすることを妨げる法律、政策および実務の迅速な改革を図るよう奨励される [28]。
[28] 子どもの権利委員会・2012年の一般的討議の報告、パラ86参照。

I.健康に対する権利(移住労働者権利条約第28条および第45条;子どもの権利条約第第23条、第24条および第39条)

54.両委員会は、子どもの身体的および精神的健康が、貧困、失業、移住および住民の避難、暴力、差別ならびに周縁化のような構造的決定要因を含む、さまざまな要因によって影響されうることを認める。両委員会は、移住者および難民である子どもに、重度の感情的苦痛を経験する可能性があり、また特別な、かつしばしば緊急の精神保健上のニーズを有している可能性があることを認識するものである。したがって、子どもによるストレスの経験のあり方は大人とは異なることを認め、子どもは特有のケアおよび心理的支援にアクセスできるべきである。
55.移住者であるすべての子どもは、その移住者資格にかかわらず、国民と平等な保健ケアにアクセスできるべきである。これには、コミュニティまたは保健ケア施設で提供されるすべての保健サービス(予防サービスか治療サービスかを問わない)および精神的、身体的または心理社会的ケアが含まれる。国は、脆弱性を助長する重要な要因のひとつである差別の結果として子どもの健康が阻害されないことを確保する義務を負う。複合的形態の差別の影響にも対処するべきである [29]。サービスにアクセスしにくくなることによってもたらされるジェンダー特有の影響への対処に、注意を払うことが求められる [30]。加えて、移住者である子どもは、セクシュアルヘルスおよびリプロダクティブヘルスのための、年齢にふさわしい情報およびサービスに全面的にアクセスできるようにされるべきである。
[29] 〔子どもの権利委員会・〕一般的意見15号(到達可能な最高水準の健康を享受する子どもの権利、2013年)、パラ5および8参照。
[30] 子どもの権利委員会・2012年の一般的討議の報告、パラ86参照。
56.各国は、健康権に対するホリスティックなアプローチを重視するよう奨励される。国家的な計画、政策および戦略において、移住者である子どもの健康上のニーズおよびこれらの子どもが直面している可能性のある脆弱な状況をとりあげるべきである。移住者である子どもは、在留許可症または庇護登録証の提示を要件とされることなく保健サービスにアクセスできることが求められる。サービスへのアクセスを妨げる行政上および金銭上の障壁は、身元および居住を証明する代替的手段(供述証拠など)を認める等の対応を通じ、取り除くべきである [31]。加えて、両委員会は、各国に対し、保健機関と出入国管理当局が患者のデータを共有すること、および、公的な保健施設でまたはその近くで出入国管理法制執行のための組織的活動を行なうことを禁止するよう促す。このような行動は、非正規な状況にある移住者である子どもまたは非正規な状況にある移住者を親として生まれた子どもの健康権を実質的に制限しまたは剥奪することになるためである [32]。これらの子どもの健康権を確保するため、実効的な遮断措置を設けることが求められる。
[31] 子どもの権利委員会・2012年の一般的討議の報告、パラ86参照。
[32] 移住労働者権利委員会・一般的意見2号、パラ74参照。
57.不十分な金銭的および法的保護は差別によってしばしば悪化する可能性があり、そのため、移住者である子どもは重篤になるまで治療の延期を余儀なくされる場合がある。迅速かつ広範な対応が必要とされる複雑な保健サービスにおいては、差別的なアプローチがとられることで移住者である子どもの健康に深刻な影響が生じ、かつその治療および回復の期間が相当に長引く可能性もあるため、これらの保健サービスを取り巻く諸問題の解決に注意が払われるべきである。保健専門家は、自分の患者に、また人権としての子どもの健康を擁護することに、まず専心することが求められる。
58.国籍または移住者資格を理由として健康に対する成人移住者の権利を制限することも、健康、生命および発達に対するその子どもの権利に影響を及ぼす可能性がある。したがって、子どもの権利に対する包括的アプローチには、移住者資格にかかわらずすべての移住労働者およびその家族の健康権を確保することに向けられた措置、および、保健分野の政策、プログラムおよび実務に対する異文化アプローチを確保するための措置が含まれるべきである。

J.教育および職業訓練に対する権利(移住労働者権利条約第30条、第43条および第45条;子どもの権利条約第28条、第29条、第30条および第31条)

59.国際的移住の文脈にあるすべての子どもは、地位の如何を問わず、その子どもが住んでいる国の国民との平等を基礎として、あらゆる段階およびあらゆる側面の教育(乳幼児期教育および職業訓練を含む)に全面的にアクセスできなければならない。この義務が意味するところにより、国は、移住者であるすべての子どもに対し、その移住者資格にかかわらず、良質のかつインクルーシブな教育への平等なアクセスを確保するよう求められる。移住者である子どもは、必要なときは代替的学習プログラムにアクセスできるべきであり、また試験に全面的に参加しかつ学習証明書を受領するべきである。
60.両委員会は、各国に対し、移住者である子ども(とくに在留資格のない子ども)の学校および教育機関への登録を妨げる規則および実務を改革するよう、強く促す。国はまた、教育機関と出入国管理当局とのあいだに実効的な遮断措置を設けるとともに、生徒のデータを共有すること、および、教育施設でまたはその近くで出入国管理法制執行のための組織的活動を行なうことを禁止するべきである。このような実務は、非正規な状況にある移住者である子どもまたは非正規な状況にある移住者を親として生まれた子どもの教育に対する権利を制限しまたは剥奪することになるためである。教育に対する子どもの権利を尊重するため、各国はまた、移住関連の手続中に中断が生じないようにすることにより、可能であれば子どもが学年の途中で移動しなくて済むようにするとともに、子どもが義務教育および継続教育を受けている場合、成年に達するまでに当該教育課程を修了するよう支援することも奨励される。上級段階の教育へのアクセスは義務的なものではないものの、差別の禁止の原則により、国には、子どもの移住者資格または他の差別禁止事由に基づいて差別することなく、すべての子どもに対して利用可能なサービスを提要する義務がある。
61.国は、スティグマまたは懲罰効果が生じることを回避するため、過去に取得した在学証明書を承認することおよび(または)子どもの知的能力その他の能力に基づいて新たな証明書を発行することにより、子どもが過去に受けた教育を承認するための十分な措置を整備するべきである。このことは、子どもが帰還する場合には出身国または第三国に対しても平等に当てはまる。
62.処遇の平等の原則により、国は、移住者である子どもに対するいかなる差別も解消するとともに、教育上の障壁を克服するための適切なかつジェンダーに配慮した対応をとらなければならない。すなわち、必要な場合には、追加的な言語教育 [33]、スタッフの加算およびその他の異文化支援を含む、いかなる種類の差別もない対象特化型の措置がとられなければならないということである。国は、移住者である子どもが教育にアクセスするための便宜を図り、かつ移住者である子どもの学校への統合を促進することに専念するスタッフを配置するよう奨励される。加えて、国は、移住者である子どもが効果的統合の手段としての新たな言語を学習することを確保するため、いかなる種類の教育的隔離も禁止しかつ防止するための措置をとるべきである。国の取り組みには、乳幼児期教育の提供および心理社会的支援も含めることが求められる。国はまた、公式および非公式な学習機会の提供、教員研修の実施およびライフスキル学級の設置も行なうべきである。
[33] 移住労働者権利条約第45条参照。
63.国は、移住者コミュニティと受入れコミュニティとの異文化間対話を醸成し、かつ、移住者である子どもに対する排外主義もしくはあらゆる態様の差別または関連の不寛容に対応しかつこれを防止するための具体的措置を発展させるべきである。加えて、教育カリキュラムに人権教育(差別の禁止に関する教育ならびに移住ならびに移住者の権利および子どもの権利に関する教育を含む)を統合することは、移住者の統合に長期的に影響しかねない排外主義的態度およびその他の形態の差別的態度の防止に貢献するだろう。

III.国際協力

64.両委員会は、人権を全面的に尊重し、かつ移住者である子どもの脆弱性を高めかねないアプローチを回避しながら安全な、秩序だったかつ正規の移住を確保する目的で、国際的移住の文脈にある子どもの人権の促進および保護における出身国、通過国、目的地国および帰還先の国の役割および責任を認めながら、国際的な、地域的なまたは二国間の協力および対話ならびに包括的なかつバランスのとれたアプローチを通じて国際的移住に対応していく必要があることを再確認する。とくに、子どもの権利条約、移住労働者権利条約、難民の地位に関する1951年の条約および1967年の同議定書ならびに親責任および子どもの保護措置に関する管轄権、準拠法、承認、執行および協力に関する1996年のハーグ条約にのっとった、国境を越えた事案対応手続が速やかに設置されるべきである。加えて、協力に、他国から子どもを含む多数の避難民を受け入れており、かつ援助を必要としている国々への金銭的および技術的援助ならびに第三国定住プログラムの強化を目的とする取り組みを含めることも考えられる。すべての実践は、国際人権法および国際難民法上の義務に全面的にのっとったものであるべきである。
65.この包括的なかつバランスのとれたアプローチが子どもの最善の利益と両立することを確保するため、国際的移住の文脈にある子どもの権利および処遇に影響を与えるいかなる国際協定、地域協定および二国間協定の策定においても、子どもの保護/福祉を担当する機関に主要な役割が与えられるべきである。家族再統合を容易にし、最善の利益評価・認定を実施し、かつ意見を聴かれる子どもの権利および適正手続上の保障を保証するため、二国間の取り組みならびに地域的および国際的な取り組みを奨励することが求められる。このような取り組みにおいては、通過国または目的地国で自己の権利に影響を受けた子どもが出身国に帰還しまたは第三国に行った後に司法にアクセスする必要が生じた場合に、国境を越えた状況下で司法にアクセスできることが確保されるべきである。加えて、国は、これらのプロセスへの子どもおよび市民社会組織(地域的政府間機関を含む)の参加を確保することが求められる。国はまた、子どもに関わる移住政策をこの合同一般的意見にのっとって実施するため、国際社会および国際連合機関(国連児童基金および国際移住機関を含む)の技術的援助も活用するべきである。

IV.合同一般的意見の普及および報告

66.締約国は、この合同一般的意見を、国、広域行政圏および地方のあらゆるレベルすべての関係者、とくに議会、政府機関(子どもの保護および移住を担当している機関および職員を含む)および司法機関に対して広く普及するべきである。この合同一般的意見は、すべての子ども、ならびに、子どものためにおよび子どもとともに働く者(すなわち裁判官、弁護士、警察その他の法執行機関、教員、保護者、ソーシャルワーカー、公立または私立の福祉施設およびシェルターの職員ならびに保健ケア提供者)を含むすべての関連の専門家および関係者、メディアならびに市民社会一般に対して周知することが求められる。
67.この合同一般的意見は関連の言語に翻訳されるべきであり、また子どもにやさしい/適切な版および障害のある人がアクセス可能な形式でも利用可能とされるべきである。この合同一般的意見を実施する最善の方法に関する優れた実践を共有するため、会議、セミナー、ワークショップその他のイベントを開催することが求められる。この合同一般的意見はまた、あらゆる関連の専門家およびとくに専門職員ならびに子どもの保護、移住および法執行を担当する機関および職員を対象とする正式な就任前研修および現職者研修にも編入されるべきであり、かつ、国および地方のあらゆる人権機関ならびに人権問題に取り組む他の市民社会組織に対しても利用可能とされるべきである。
68.締約国は、移住労働者権利条約第73条および子どもの権利条約第44条に基づく定期報告書に、この合同一般的意見を指針として実施した措置およびその結果に関する情報を記載するべきである。


  • 更新履歴:ページ作成(2018年5月11日)。/パラ14第1文「~何よりも重要性である」を「何よりも重要である」に、パラ15第3文「すべえの決定」を「すべての決定」に修正(2021年8月13日)。
最終更新:2018年05月11日 22:49
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