総括所見:イラク(OPSC・2015年)


CRC/C/OPSC/IRQ/CO/1(2015年3月5日)/第68会期
原文:英語(平野裕二仮訳)

1.委員会は、2015年1月22日に開かれた第1962回会合(CRC/C/SR.1962参照)においてイラクの第1回報告書(CRC/C/OPSC/IRQ/1)を検討し、2015年1月30日に開かれた第1983回会合において以下の総括所見を採択した。

I.序

2.委員会は、締約国の第1回報告書および事前質問事項に対する文書回答(CRC/C/OPSC/IRQ/Q/1/Add.1)の提出を歓迎する。委員会は、ハイレベルなかつ部門横断型の締約国代表団との間に持たれた建設的対話に評価の意を表するものである。
3.委員会は、締約国に対し、この総括所見は、2015年1月30日に採択された、子どもの権利条約に基づく締約国の第2~4回統合定期報告書についての総括所見(CRC/C/IRQ/CO/2-4)および武力紛争への子どもの関与に関する選択議定書に基づく第1回報告書についての総括所見(CRC/C/OPAC/IRQ/CO/1)とあわせて読まれるべきであることを想起するよう求める。

II.一般的所見

積極的側面
4.委員会は、選択議定書の実施に関連する分野で締約国がとった以下の措置を歓迎する。
  • (a) 人身取引対策法(法律第28号、2012年)。
  • (b) アフターケアおよび家族統合プログラム。
  • (c) 2つのチャイルドヘルプラインの開設。
  • (d) 被害者支援部署、人身取引被害者のための国営シェルターおよび家族保護部署の設置。
5.委員会はまた、締約国が以下の文書を批准したことにも、評価の意とともに留意する。
  • (a) 国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約を補足する、陸路、海路および空路により移民を密入国させることの防止に関する議定書(2009年2月)。
  • (b) 国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約を補足する、人(とくに女性および子ども)の取引を防止し、抑止しおよび処罰するための議定書(2009年2月)。
  • (c) 国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約(2008年3月)。
  • (d) 最悪の形態の児童労働の禁止および撲滅のための即時的行動に関する国際労働機関(ILO)第182号条約(1999年)(2001年7月)。

III.データ

データ収集
6.委員会は、締約国が、選択議定書で対象とされている犯罪についての体系的データを収集するためのいかなる機構も有していないことに、懸念とともに留意する。
7.委員会は、締約国が、選択議定書で対象とされているすべての分野のデータ収集、分析、監視および影響評価のための包括的かつ体系的な機構を発展させかつ実施するよう勧告する。データは、もっとも被害を受けやすい状況に置かれている子どもに特段の注意を払いながら、とくに性別、年齢、国民的および民族的出身、地理的所在、先住民族としての地位ならびに社会経済的背景別に細分化されるべきである。犯罪の性質別に細分化された、起訴件数および有罪判決件数についてのデータを収集することも求められる。

IV.一般的実施措置

立法
8.選択議定書のさまざまな規定を締約国の法律に統合しようとする努力は歓迎しながらも、委員会は、このような努力において、ほぼ人身取引および買売春だけにしか焦点が当てられていないことを懸念する。委員会はまた、選択議定書で対象とされているすべての犯罪が現行法で明示的に取り上げられているわけではないこと、および、締約国の法律における子どもの売買の定義が議定書と一致していないことも懸念するものである。
9.委員会は、締約国が、選択議定書を国内法体系に全面的に編入し、かつ、選択議定書に掲げられた子どもの売買に関する規定を十分に実施する目的で国内法における子どもの売買(これは人身取引と類似してはいるものの同一ではない)の定義を改正するため、あらゆる必要な措置をとるよう勧告する。
包括的な政策および戦略
10.委員会は、情報がないことを遺憾に思うとともに、締約国が、選択議定書上のすべての犯罪と闘うための包括的な政策および戦略を直ちに採択し、かつ、その作成および実施に市民社会の関与を得るよう勧告する。
調整および評価
11.委員会は、情報がないことを遺憾に思うとともに、締約国が、選択議定書上のすべての犯罪と効果的に闘うための調整機構を速やかに設置するよう勧告する。
市民社会との協力
12.被害者を保護サービスに付託するために法執行官が時として非政府組織(NGO)および国際機関と協力していることには留意しながらも、委員会は、選択議定書の実施に関して締約国と市民社会との間で全般的に協力が行なわれていないことを懸念する。委員会は、以下のことをとりわけ懸念するものである。
  • (a) NGOに対し、選択議定書の犯罪の被害を受けた子どもまたはそのおそれがある子ども全員の収容保護が認められているわけではないこと。
  • (b) NGOが、国から必要な保護を与えられないまま、依然として過激主義集団による暴力の脅威にさらされていること。
  • (c) 被害者に保護サービスを提供しているNGOに対し、締約国が資金または現物による援助を提供していないこと。
13.委員会は、締約国が、選択議定書の実施に関する市民社会との協力を強化するとともに、選択議定書で対象とされている犯罪の被害者となった子どもに保護および支援を提供しているNGOに対し、十分な技術的資源および財源を配分するよう勧告する。委員会は、締約国に対し、NGOが過激主義集団による攻撃から全面的に保護され、かつ活動の遂行に際していかなる法的障害にも直面しないことを確保するため、あらゆる必要な措置をとるよう促すものである。
普及、意識啓発および研修
14.委員会は、裁判官、法執行官ならびに子どもとともにおよび(または)子どものために働く専門家を対象とする研修が不十分であることを遺憾に思う。委員会はまた、親および子どもたち自身を含む公衆の間で子どもの性的搾取に関する意識が欠けていること、ならびに、慣習および伝統により、性的虐待および性的搾取の被害を受けた子どもおよびその家族が辱めの対象とされており、そのためこれらの犯罪の通報が十分に行なわれていないことも、懸念するものである。
15.委員会は、締約国が、選択議定書を広く周知するためにあらゆる必要な措置をとるとともに、以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 裁判官、法執行官(とくに警察)ならびに子どもとともにおよび(または)子どものために働くその他の専門家が、選択議定書で対象とされている犯罪から子どもを保護するために自己の知識およびスキルを効果的に実践できるようにすることを目的として、これらの専門家を対象とする学際的な研修プログラムを発展させること。
  • (b) コミュニティ、地元の教員、若者グループおよび子どもグループの関与を得ながら、選択議定書の規定に関する集中的な意識啓発活動(マスメディア上のキャンペーンを含む)を実施すること。これらの意識啓発活動においては、性的搾取の防止、被害者に付与されるスティグマへの対処、ならびに、とくに被害者がアクセスできるすべての通報方法についての情報を被害者に提供することによるこれらの犯罪の通報の強調および奨励に対し、特段の注意が払われるべきである。

V.子どもの売買、児童買春および児童ポルノの防止(選択議定書第9条第1項および第2項)

選択議定書で禁じられた犯罪を防止するためにとられた措置
16.委員会は、現行の政策およびプログラムが、子どもの売買、児童買春および児童ポルノの根本的原因(ジェンダーを理由とする深刻な差別および暴力、貧困、マイノリティに属する子どもの差別、国内避難および移住、教育へのアクセスの欠如、ならびに、子どもが路上で生活しかつ(または)働くことを余儀なくされる状況を含む)に対応するためには不十分であることに、懸念とともに留意する。委員会は、以下のことを著しく懸念するものである。
  • (a) 多くの子どもが依然として登録されていないために、選択議定書上の犯罪の被害をとりわけ受けやすい状況に置かれていること。
  • (b) シリア・アラブ共和国からイラクに帰還した子どものイラク人難民(とくに女子)が、帰るべきコミュニティを持たないことが多く、かつ国からのいかなる種類の支援にもアクセスできないために、あらゆる形態の搾取および人身取引の被害をとりわけ受けやすい状況に置かれていること。
17.委員会は、締約国に対し、選択議定書上の犯罪の根本的原因に対応し、かつもっとも被害を受けやすい状況に置かれている家族および子どもを明確に対象とするために包括的アプローチおよび具体的措置をとるよう促す。とくに委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告するものである。
  • (a) 委員会が条約に基づいて行なった勧告(CRC/C/IRQ/CO/2-4)、とくに生活水準(パラ63)、差別の禁止(パラ17)、子どもの国内避難民および難民(パラ67)、路上の状況にある子ども(パラ75)、職業訓練および職業指導を含む教育(パラ65)ならびに家庭環境を奪われた子ども(パラ47および49)に関連するものの全面的実施を確保すること。
  • (b) いわゆるイラク・レバントのイスラム国(ISIL)の支配下にある子どもを救出するためにあらゆる必要な措置をとり、かつ、これらの子どもが回復および再統合のための十分なサービスにアクセスできるようにすること。
  • (c) すべての子どもが出生時に登録されることを確保するための措置を継続しかつ強化すること。
  • (d) 帰還民に対して支援へのアクセスを確保するとともに、もっとも被害を受けやすい状況に置かれている子どもを対象とする防止プログラムを発展させ、かつ、とくに、子どもの国内避難民、移住の状況にある子どもおよび路上の状況にある子どもに対して十分かつ安全なシェルター、保健ケア、教育および衣服が提供されることを確保するためにあらゆる必要な措置をとること。
子どもの売買
18.委員会は、いわゆるISILの支配下に置かれたままの子どもが多数にのぼっており、かつ、誘拐された子どもおよび女性(とくにマイノリティ集団出身の子どもおよび女性)がISILの構成員間で性奴隷として売買される「市場」が存在することに、深い懸念とともに留意する。委員会はまた、以下のことを深く懸念するものである。
  • (a) 女子が引き続き「贈り物」「報酬」または「取引手段」として利用され、または部族間の紛争解決のための「賠償品」として交換されていること。
  • (b) 婚姻した後に女子に売春を強要するための「一時的婚姻」であるムタア(muta'a)の慣習が締約国でふたたび行なわれるようになり、多数の家族が、しばしば貧困および(または)失業をきっかけとして、娘(11歳という低年齢の女子も多い)をこのような結婚のために売り渡していること。
  • (c) 誘拐および(または)売買の被害者となった女子が深刻なスティグマに直面するために、これらの女子に対して行なわれた犯罪の通報が十分に行なわれず、かつ、これらの女子が家族から拒絶され、誘拐犯との婚姻を余儀なくされ、またはいわゆる「名誉」の名のもとに行なわれる犯罪の被害者となるおそれが高まっていること。
  • (d) 女子が締約国の内外で(国外の目的地国にはヨルダン、シリア・アラブ共和国、アラブ首長国連邦およびイエメンが含まれる)売買および取引の対象とされており、かつ、シリア・アラブ共和国に逃亡したイラク人女子の多くが性産業に売られているという報告があること。
  • (e) 女子(非常に低年齢の者を含む)が、偽造旅券により、かつ(または)「夫」とされる者と同伴してきわめて容易に渡航しえいると報告されていること。
19.委員会は、締約国に対し、女子および女性のいかなる形態の売買(とくに、奴隷市場におけるもの、ムタアによるものおよび部族裁判所または宗教裁判所における紛争解決を背景として行なわれるものを含む、女子および女性の売買もしくは交換または贈り物もしくは賠償品としての使用)も全面的に犯罪化され、捜査されかつ訴追されることを確保するため、あらゆる必要な措置をとるよう促す。委員会はまた、委員会が条約に基づいて行なった早期婚および強制婚についての勧告(CRC/C/IRQ/CO/2-4、パラ42)に対する注意も喚起し、かつ、締約国に対し、貧困下で暮らしている家族を支援するためにあらゆる必要な措置をとることおよび以下の措置をとることを促すものである。
  • (a) 売買および(または)誘拐の被害者となった女子に対する差別的態度を変革するためにあらゆる必要な措置をとること。
  • (b) 国境を越える女子の売買と闘い、入国審査を強化し、かつ女子の身元を同伴者とは別に確認するため、近隣諸国と緊密に協力すること。

VI.子どもの売買、児童ポルノおよび児童買春の禁止ならびに関連の事項(選択議定書第3条、第4条第2項および3項ならびに第5~7条)

現行刑事法令
20.委員会は、人身取引が最近犯罪化された一方、締約国の国内法で選択議定書上のすべての犯罪(子どもの売買など)が網羅されているわけではないことに、懸念とともに留意する。さらに委員会は、刑法(法律第111号(1969年))第398条において、子どもに対する性犯罪の加害者が被害者である子どもと有効に婚姻したときは罪を免除されると定められていることを、非常に懸念するものである。
21.委員会は、締約国に対し、選択議定書上のすべての犯罪が全面的に犯罪化されることを確保するために迅速な法的措置をとるとともに、刑法(法律第111号(1969年))第398条、および、子どもの性的虐待の加害者の罪を免除するために用いられうるすべての法的規定を速やかに廃止するよう、促す。
不処罰
22.委員会は、選択議定書上の犯罪に関する捜査、訴追および有罪判決の件数がきわめて限られていることに、懸念とともに留意する。さらに委員会は、警察その他の法執行当局が子どもの人身取引の共犯者になっているという多数の報告(政府職員による書類の偽造の援助および警察官による売春宿の庇護を含む)について深い懸念を覚えるものである。委員会は、政府職員が人身取引関係の犯罪の共犯者となった事件に関する捜査および訴追がきわめてまれにしか行なわれないことを懸念する。
23.委員会は、締約国に対し、選択議定書上の犯罪の実行犯(政府職員を含む)の捜査、訴追および処罰を精力的に進めるよう促す。
域外裁判権および犯罪人引渡し
24.委員会は、刑事訴訟法において、選択議定書第3条第1項に掲げられているすべての犯罪についての明示的な域外裁判権が設定されているわけではないことに、懸念とともに留意する。
25.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 犯罪を行なったとされる者が締約国の国民でありまたは締約国の領域に常居所を有する者である場合または被害者が締約国の国民である場合に、選択議定書第3条第1項に基づく犯罪についての域外裁判権を設定すること。
  • (b) 二国間条約の存在を条件とすることなく、選択議定書を犯罪人引渡しの法的根拠として用いることを検討すること。

VII.被害を受けた子どもの権利の保護(選択議定書第8条ならびに第9条第3項および第4項)

選択議定書で禁じられた犯罪の被害を受けた子どもの権利および利益を保護するためにとられた措置
26.委員会は、15歳未満の子どもが犯罪の被害者または証人である場合、その証言が正当に考慮されないことがあり、かつ15歳未満の子どもは親の同意がなければ告訴ができないことを非常に懸念する。さらに委員会は、以下のことに懸念とともに留意するものである。
  • (a) 人身取引および買春の被害者が、尋問中に不当な取扱いまたは虐待を受け、かつ、売春および出入国管理法違反のような不法行為を理由として収監され、罰金を科され、有罪判決を受け、退去を強制されまたはその他の形で処罰されているという報告があること。
  • (b) 買売春のために売られた女子が、家族/コミュニティに恥をかかせたことに対する報復から「保護」するために刑務所に収容されたままとなる場合があること。
  • (c) 選択議定書上の犯罪の被害を受けた子どもを特定するための機構が整備されておらず、かつ、官吏に対し、被害を受けた子どもまたはとくにリスクの高い状況にある子ども(在留資格を有していない外国籍の子どもの移住者または買春容疑で逮捕された子どもなど)を特定するための研修または指針の提供が行なわれていないこと。
27.委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促す。
  • (a) 子どもの証言が完全な証拠とみなされることおよび子ども自身による告訴が認められることを確保するために迅速な措置をとること。
  • (b) 保護のためと称して拘禁されているすべての女性および女子を刑務所から直ちに釈放するとともに、これらの女性および女子に対し、必要なあらゆる支援を提供すること。
  • (c) 子どものプライバシーおよび尊厳が全面的に保護される、子どもに配慮した調査手続および司法手続を備えた効果的な通報制度を確立すること。
  • (d) 被害を受けやすい状況に置かれていて選択議定書上の犯罪の被害者となるおそれのある子どもを特定し、発見しかつモニターするための効果的機構を確立するとともに、これらの機構に対し、選択議定書上の犯罪の被害を受けた子どもまたはそのおそれがある子どもを特定するために必要な人的資源、財源および技術的資源ならびに研修の機会を提供すること。
  • (e) 選択議定書上のいずれかの犯罪の被害者となったすべての子どもが、いかなる場合にも犯罪者として扱われず、常に被害者として扱われること、ならびに、これらの子どもに対し、必要な保護、支援ならびに再統合および回復のためのサービスにアクセスする機会が提供されることを確保すること。
  • (f) 人身取引の被害者が、法執行官と接触する際にいかなる形態の不当な取扱いおよび虐待からも保護され、かつ通報のための経路にアクセスできることを確保すること。
被害者の回復および再統合
28.人身取引被害者のための国営シェルターが設置され、かつ虐待および人身取引の被害を受けた女性および子どもを援助する家族保護部署が警察署内に設けられたことは歓迎しながらも、委員会は、締約国に人身取引被害者が存在するにもかかわらずシェルターに入所者がいないと報告されていること、および、保健省によって運営されている支援部署が、2013年の設置以降、人身取引被害者を特定しかつ援助するためのいあkなる努力も行なっていないことを懸念する。委員会はまた、以下のことを懸念するものである。
  • (a) 買春の被害を受けた子どもが、刑務所からの釈放と同時に、援助をなかなか見つけられない状況に置かれること(とくに、家族によって買売春のために売り渡された場合)。
  • (b) 人身取引被害者の付託のための全国的機構が2012年に創設されたものの、まだ完成および実施の段階に至っていないこと。
  • (c) 保健ケア施設が性的搾取の被害者を治療するための体制を整えておらず、または治療に後ろ向きである事例が報告されていること。
29.委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促す。
  • (a) 選択議定書上の犯罪の被害者である子どもの効果的特定のためのプログラムおよび政策を策定すること。
  • (b) 選択議定書上の犯罪の被害者である子どもに支援および保護を提供するとともに、これらの子どもが心理的援助およびカウンセリングならびに医療ケアにアクセスできることを確保すること。
  • (c) 保健サービスにおいて、選択議定書上の犯罪の被害者である子どもに対し、その身体的および精神的回復のためのあらゆる便宜が提供されることを保障するために、すべての必要な措置(法的措置を含む)をとること。
ヘルプライン
30.委員会は、バグダード県で2つのチャイルドヘルプラインが――カルフ地区の家族福祉局に1か所、および、ルサファ地区に設けられたコミュニティ基盤型の家族保護警察署に1か所――開設されたことを歓迎する。しかしながら委員会は、全国的なヘルプラインが設置されておらず、かつ、既存のヘルプラインおよびその安全な利用に関して子どもの意識を高めるための十分な取り組みが展開されていないことを懸念するものである。
31.委員会は、締約国が、全国的な単一のヘルプラインの設置に対して十分な人的資源、技術的資源および財源を配分するためにあらゆる必要な努力を行なうよう勧告する。委員会はまた、締約国が以下の措置をとることも勧告するものである。
  • (a) 選択議定書で対象とされている犯罪の防止およびこれへの対応を効果的に進めるため、既存のヘルプラインの運営担当者を対象として体系的な研修および能力構築を実施すること。
  • (b) 全国的ヘルプラインが、国全体のすべての子どもにとって全面的にアクセス可能でありかつ知られた存在となるよう、当該ヘルプラインにアウトリーチの要素が備えられることを確保するとともに、当該ヘルプラインと、子どもに焦点を当てるNGO、警察、ヘルスワーカーおよびソーシャルワーカーとの連携を促進すること。

VIII.国際的な援助および協力(第10条)

多国間、二国間および地域間の取り決め
32.委員会は、締約国と近隣諸国との間で選択議定書上の犯罪と闘うための地域的取り決めが締結されていないことに、懸念とともに留意する。
33.締約国が地域的取り決めを締結していないことに照らし、かつ選択議定書第10条第1項に鑑み、委員会は、締約国に対し、議定書上の犯罪を防止し、摘発しかつ訴追するための、とくに近隣諸国との多国間、地域間および二国間の取り決めを通じて、引き続き国際協力を確立するよう奨励する。

IX.フォローアップおよび普及

フォローアップ
34.委員会は、締約国が、とくにこれらの勧告を関連の政府省庁、議会ならびに国および地方の公的機関に送付して適切な検討およびさらなる行動を求めることにより、これらの勧告が全面的に実施されることを確保するためにあらゆる適切な措置をとるよう勧告する。
総括所見の普及
35.委員会は、選択議定書、その実施および監視に関する議論および意識を喚起する目的で、締約国が提出した報告書および文書回答ならびに関連の勧告(総括所見)を、インターネット等も通じ(ただしこれに限るものではない)、公衆一般、市民社会組織、若者グループ、専門家グループおよび子どもが広く入手できるようにすることを勧告する。

X.通報手続に関する選択議定書の批准

36.委員会は、締約国が、子どもの権利の充足をさらに強化する目的で、通報手続に関する子どもの権利条約の選択議定書を批准するよう勧告する。

XI.次回報告書

37.選択議定書第12条第2項にしたがい、委員会は、締約国に対し、議定書の実施に関するさらなる情報を、子どもの権利条約第44条にしたがって提出される、条約に基づく次回の定期報告書に記載するよう要請する。


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最終更新:2017年05月18日 21:31