国連・子どもの権利委員会の勧告:教育一般関連(日本)


第1回総括所見(1998年)

(一般原則)
13.……委員会は、高等教育機関へのアクセスにおける不平等がコリアンの子どもたちに影響を与えていること、および社会のあらゆる分野、とくに学校制度において、一般の子どもたちが参加権(第12条)を行使する上で困難に直面していることを、とりわけ懸念するものである。
35.条約の一般原則、とりわけ差別の禁止(第2条)、子どもの最善の利益(第3条)および子どもの意見の尊重(第12条)の一般原則が、政策に関する議論および意思決定の指針となるのみならず、いかなる法改正ならびに司法上のおよび行政上の決定においても、かつ子どもに影響を与えるあらゆる事業および計画の発展および実施においても適切に反映されることを確保するために、さらなる努力が行なわれなければならないというのが委員会の見解である。……委員会はまた、コリアンおよびアイヌを含むマイノリティの子どもの差別的な取扱いを、それがいつどこで生じようとも全面的に調査し、かつ解消するようにも勧告する。……
(プライバシー)
15.委員会は、とくに家庭、学校およびその他の施設において子どものプライバシーへの権利を保障するために締約国がとった措置が不充分であることを懸念する。
36.委員会は、締約国に対し、とくに家庭、学校、ケアのための施設および他の施設において子どものプライバシーへの権利を保障するために、法的措置も含めて追加的措置を導入するよう勧告する。
(障害のある子ども) → 国連・子どもの権利委員会の勧告:障害児関連
(教育)
22.識字率がきわめて高いことに表れている通り締約国が教育を重視していることに留意しながらも、委員会は、競争が激しい教育制度のストレスにさらされ、かつその結果として余暇、運動および休息の時間が得られないために子どもたちの間で発達障害が生じていることを、条約の原則および規定、とくに第3条、第6条、第12条、第29条および第31条に照らして懸念する。委員会はさらに、学校忌避の事例が相当数にのぼることを懸念するものである。
43.競争の激しい教育制度が締約国に存在すること、ならびにその結果として子どもの身体的および精神的健康に悪影響が生じていることを踏まえ、委員会は、締約国に対し、条約第3条、第6条、第12条、第29条および第31条に照らして、過度のストレスおよび学校忌避を防止しかつそれと闘うために適切な措置をとるよう勧告する。
23.委員会は、条約第29条に従い、人権教育を体系的に学校カリキュラムに導入するために締約国がとった措置が不充分であることを、懸念する。
44.委員会は、締約国に対し、条約第29条に従って、人権教育を体系的に学校カリキュラムに含めるために適切な措置をとるよう勧告する。
24.委員会は、学校における暴力が頻繁にかつ高いレベルで生じていること、とくに体罰が広く用いられていることおよび生徒の間で非常に多くのいじめが存在することを、懸念する。体罰を禁ずる立法、およびいじめの被害者のためのホットラインのような措置も確かに存在するものの、委員会は、現行の措置が学校暴力を防止するためには不充分であることに、懸念とともに留意する。
45.とくに条約第3条、第19条および第28条2項に照らし、委員会は、学校における暴力を防止するため、とくに体罰およびいじめを解消する目的で包括的な計画を作成し、かつその実施を注意深く監視するよう勧告する。加えて、委員会は、家庭、ケアのための施設およびその他の施設における体罰を法律で禁止するよう勧告するものである。委員会はまた、代替的形態によるしつけおよび規律の維持が子どもの人間の尊厳と一致する方法で、かつこの条約に従って行なわれることを確保するために、意識啓発キャンペーンを行なうようにも勧告する。

(参考)人種差別撤廃委員会の勧告(2001年)

14.委員会は、韓国・朝鮮人、主に児童、学生を対象とした暴力行為に係る報告及びこの点に関する当局の不十分な対応に対し懸念を有するものであり、政府に対し、当該行為を防止し、これに対処するためのより毅然たる措置をとることを勧告する。
15.在日の外国国籍の児童に関し、委員会は小学及び中学教育が義務的でないことに留意する。委員会は、更に、「日本における初等教育の目的は、日本人をコミュニティのメンバーたるべく教育することにあるため、外国の児童に対し当該教育を受けることを強制することは不適切である。」との締約国の立場に留意する。委員会は、強制が、統合の目的を達成するために全く不適切であるとの主張に同意する。しかしながら、本条約第3条及び第5条(e)(v)との関連で、委員会は、本件に関し異なった取扱いの基準が人種隔離並びに教育、訓練及び雇用についての権利の享受が不平等なものとなることに繋がり得るものであることを懸念する。締約国に対し、本条約第5条(e)に定める諸権利が、人種、皮膚の色、民族的又は種族的出身について区別なく保障されることを確保するよう勧告する。
16.委員会は、韓国・朝鮮人マイノリティに対する差別に懸念を有する。韓国・朝鮮人学校を含む外国人学校のマイノリティの学生が日本の大学へ入学するに際しての制度上の障害の幾つかを除去するための努力は払われているが、委員会は、特に、韓国語での学習が認められていないこと及び在日韓国・朝鮮人学生が高等教育へのアクセスについて不平等な取扱いを受けていることに懸念を有している。締約国に対し、韓国・朝鮮人を含むマイノリティに対する差別的取扱いを撤廃するために適切な措置をとることを勧告する。また、日本の公立学校においてマイノリティの言語での教育へのアクセスを確保するよう勧告する。

(参考)社会権規約委員会の勧告(2001年)

31.委員会は、あらゆる段階の教育がしばしば過度に競争主義的でストレスに満ちたものとなっており、その結果、生徒の不登校、病気、さらには自殺すら生じていることを懸念する。
58.委員会は、締約国が、委員会の一般的意見第11号および第13号ならびに子どもの権利に関する委員会の一般的意見第1号を考慮にいれながら、教育制度の包括的再検討を行なうよう強く勧告する。このような再検討においては、あらゆる段階の教育がしばしば過度に競争主義的でストレスに満ちたものとなっており、その結果、生徒の不登校、病気、さらには自殺すら生じていることにとくに焦点が当てられるべきである。
32.委員会は、マイノリティの子どもにとって、自己の言語による教育および自己の文化に関する教育を公立学校で享受する可能性がきわめて限られていることに懸念を表明する。委員会はまた、朝鮮学校のようなマイノリティの学校が、たとえ国の教育カリキュラムを遵守している場合でも公的に認められておらず、したがって中央政府の補助金を受けることも大学入学試験の受験資格を与えることもできないことについても、懸念するものである。
59.委員会は、締約国に対し、学校教科書その他の教材において、諸問題が、規約第13条1項、委員会の一般的意見第13号および子どもの権利に関する委員会の一般的意見第1号に掲げられた教育の目的および目標を反映した公正なかつバランスのとれた方法で提示されることを確保するよう、促す。
60.委員会は、言語的マイノリティに属する生徒が相当数就学している公立学校の正規のカリキュラムに母語による教育を導入するよう強く勧告する。委員会はさらに、締約国が、マイノリティの学校およびとくに朝鮮学校が国の教育カリキュラムにしたがっている状況においては当該学校を公的に認め、それによって当該学校が補助金その他の財政援助を得られるようにすること、および、当該学校の卒業資格を大学入学試験の受験資格として承認することを勧告するものである。

第2回総括所見(2004年)

広報および研修
20.……委員会は、子どもおよび公衆一般、ならびに子どもとともにおよび子どものために働いている多くの専門家が条約およびそこに体現された権利基盤型アプローチについて充分に理解していないことを、依然として懸念するものである。
21.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
(a) 公衆一般および子どもを対象として、条約、およびとくに子どもが権利の主体であるということに関する意識啓発キャンペーンを強化すること。
(b) 子どもとともにおよび子どものために働いているすべての者、とくに教職員、裁判官、弁護士、議員、法執行官、公務員、自治体職員、子どもを対象とした施設および拘禁場所で働く職員、心理学者を含む保健従事者、ならびにソーシャルワーカーを対象として、条約の原則および規定に関する体系的な教育および研修をひきつづき実施すること。
(c) 意識啓発キャンペーン、研修および教育プログラムが態度の変革、行動および子どもの取扱いに与えた影響を評価すること。
(d) 人権教育、およびとくに子どもの権利教育を学校カリキュラムに含めること。
子どもの意見の尊重
27.子どもの意見の尊重を向上させようとする締約国の努力には留意しながらも、委員会は、子どもに対する社会の伝統的態度により、家庭、学校、その他の施設および社会一般における子どもの意見の尊重が制限されていることを依然として懸念する。
28.委員会は、条約第12条にしたがい、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
(a) 家庭、裁判所および行政機関、施設および学校ならびに政策立案において、子どもに影響を及ぼすあらゆる事柄に関して子どもの意見の尊重を促進しかつ子どもの参加の便宜を図ること。また、子どもがこの権利を知ることを確保すること。
(b) 子どもに影響を及ぼすあらゆる事柄に関して意見を考慮されかつ参加する子どもの権利について、とくに親、教育者、政府の行政職員、司法関係者および社会一般に対し、教育的情報を提供すること。
(c) 子どもの意見がどのぐらい考慮されているか、またそれが政策、プログラムおよび子どもたち自身にどのような影響をあたえているかについて定期的検討を行なうこと。
(d) 学校、および子どもに教育、余暇その他の活動を提供しているその他の施設において、政策を決定する諸会議体、委員会その他のグループの会合に子どもが制度的に参加することを確保すること。
表現および結社の自由
29.委員会は、学校内外で生徒が行なう政治活動に対する制限を懸念する。委員会はまた、18歳未満の子どもは団体に加入するために親の同意を必要とすることも懸念するものである。
30.委員会は、条約第13条、第14条および第15条の全面的実施を確保するため、締約国が、学校内外で生徒が行なう活動を規制する法令および団体に加入するために親の同意を必要とする要件を見直すよう勧告する。
プライバシーに対する権利
33.委員会は、とくに子どもの持ち物検査との関連でプライバシーに対する子どもの権利が全面的に尊重されていないこと……を懸念する。
34.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
(a) 個人的通信および私物の検査との関連も含め、プライバシーに対する子どもの権利の全面的実施を確保すること。
(b) (略)
体罰
35.委員会は、学校における体罰は法律で禁止されているとはいえ、学校、施設および家庭において体罰が広く実践されていることに懸念とともに留意する。
36.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
(a) 施設および家庭における体罰を禁止すること。
(b) 体罰に関する態度を変革するため、子どもの不当な取扱いの悪影響について教育キャンペーンを実施すること。また、そのような罰に代わる手段として、学校、施設および家庭において積極的かつ非暴力的な形態の規律およびしつけを促進すること。
(c) 施設および学校の子どもを対象とした苦情申立てのしくみを強化することにより、不当な取扱いの苦情が効果的に、かつ子どもに配慮した方法で対応されることを確保すること。
障害のある子ども → 国連・子どもの権利委員会の勧告:障害児関連
教育、余暇および文化的活動
49.委員会は、教育制度を改革し、かつそれをいっそう条約に一致させるために締約国が行なっている努力に留意する。しかしながら、委員会は以下の点について懸念するものである。
(a) 教育制度の過度に競争的な性質によって、子どもの身体的および精神的健康に悪影響が生じ、かつ子どもが最大限可能なまで発達することが阻害されていること。
(b) 高等教育進学のための過度な競争のため、学校における公教育が、貧しい家庭出身の子どもには負担できない私的教育によって補完されなければならないこと。
(c) 学校における子どもの問題および紛争に関して、親と教職員とのコミュニケーションおよび協力がきわめて限られていること。
(d) 日本にある外国人学校を卒業して大学進学を希望する者の資格基準が拡大されたとはいえ、依然として高等教育へのアクセスを否定されている者が存在すること。
(e) とくにドロップアウトした生徒を対象として柔軟な教育機会を提供している東京都の夜間定時制高校が閉鎖されようとしていること。
(f) マイノリティの子どもたちにとって、自己の言語で教育を受ける機会がきわめて限られていること。
(g) 審査手続の存在にも関わらず、一部の歴史教科書が不完全または一面的であること。
50.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
(a) 高校を卒業したすべての生徒が高等教育に平等にアクセスできるよう、高い水準の教育の質を維持しつつも学校制度の競争的性質を緩和する目的で、生徒、親および関連の非政府組織の意見を考慮にいれながらカリキュラムを見直すこと。
(b) 生徒および親と連携しながら、学校における問題および紛争、とくに(いじめを含む)学校における暴力に効果的に対応するための措置を発展させること。
(c) 東京都に対して夜間定時制高校の閉鎖を再検討するよう奨励し、かつ代替的形態の教育を拡大すること。
(d) マイノリティ・グループの子どもが自己の文化を享受し、自己の宗教を表明しまたは実践し、かつ自己の言語を使用する機会を拡大すること。
(e) 教科書でバランスのとれた見方が提示されることを確保するため、教科書の審査手続を強化すること。
性的搾取および人身取引
51.パラ3で述べたように、委員会は、児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律(1999年)の制定および実施を歓迎する。しかしながら、委員会は以下の点について懸念するものである。
(a)~(b) (略)
(c) 被害を受けた子どもが犯罪者として取り扱われているという報告があること。
(d) 「援助交際」すなわち対償をともなう交際が行なわれているという報告があること。
(e) 〔性的〕同意に関する最低年齢が低いこと。このことは「援助交際」を助長している可能性があり、また子どもの性的虐待の訴追を妨げている。
52.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
(a)~(c) (略)
(d) 未成年者の性的虐待および性的搾取に関連する法律についての資料、および教育プログラム(健康的なライフスタイルについて学校で実施されるプログラムを含む)のような、性的サービスの勧誘および提供を行なう者を対象とした防止措置を発展させること。
(e) 性的同意に関する最低年齢を引上げること。

(参考)人種差別撤廃委員会(2010年)〔PDF

13.……また、在日韓国・朝鮮学校(Korean schools)に通う生徒を含むグループに対する不適切で下品な言動、及び、インターネット上での、特に部落民に対して向けられた有害で人種主義的な表現や攻撃という事象が継続的に起きていることに懸念をもって留意する(第4条(a)及び(b))。
 ……委員会は締約国に以下を勧告する。
(a) 本条約第4条の差別を禁止する規定を完全に実施するための法律の欠如を是正すること。
(b) 憎悪的及び人種差別的表明に対処する追加的な措置、とりわけ、それらを捜査し関係者を処罰する取組を促進することを含めて、関連する憲法、民法、刑法の規定を効果的に実施することを確保すること。
(c) 人種主義的思想の流布に対する注意・啓発キャンペーンを更に行い、インターネット上の憎悪発言や人種差別的プロパガンダを含む人種差別を動機とする違反を防ぐこと。
22.委員会は、バイリンガル相談員や7言語による就学ガイドブックといった締約国による少数グループへの教育を促進する努力に評価をもって留意する。しかしながら、教育制度における人種差別克服のための具体的施策の実施に関する情報が欠如していることを遺憾に思う。さらに、委員会は以下の事項を含め、子どもの教育に差別的な影響を及ぼす行為について懸念を表明する:
(a) アイヌの子どもやその他の国のグループの子どもが自らの言語に関する教育や自らの言語による教育を受ける適切な機会の欠如
(b) 締約国における義務教育の原則が、日本が締約国となっている本条約第5条の(e)の(v)、児童の権利条約第28条並びに経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約第13条2に適合した形で、外国人の子どもに完全には適用されていない事実
(c) 学校の認定、教育課程の同等性や高等教育への入学に関連する障害
(d) 締約国に居住する外国人及び韓国・朝鮮系(Korean)、中国系の学校に対する公的支援や補助金、税制上の優遇措置に関する異なる扱い
(e) 締約国において現在国会にて提案されている公立及び私立の高校、専修学校(technicalcolleges )並びに高校に相当する課程を置く多様な機関の授業料を無償とする法制度変更において、北朝鮮の学校を除外することを示唆する複数の政治家の姿勢(第2条及び第5条)
 委員会は、非市民に対する差別に関する一般的勧告30(2004年)に照らして、教育機会の提供において差別がないこと、締約国の領域内に居住する子どもが学校への入学や義務教育就学において障壁に直面しないことを締約国が確保することを勧告する。また、委員会は、この点において、外国人のための学校に関する種々の制度や、国の公的学校制度の外で別の枠組みを設立することが望ましいかについての調査研究を締約国が行うことを勧告する。委員会は、締約国の少数グループが自らの言語に関する教育や自らの言語による教育を受けられるように適切な機会を提供するとともに、締約国がユネスコの教育差別防止条約への加入を検討することを慫慂する。
25.委員会は、本条約において保護されているグループによる日本社会への貢献に関する正確なメッセージを伝えることを目的として教科書を改訂するために、締約国によりとられた措置が不十分であったことを懸念する(第5条)。
 委員会は、締約国がマイノリティの文化や歴史をよりよく反映するために既存の教科書を改訂することやマイノリティが話す言語で書かれたものを含む歴史や文化に関する書籍及びその他の出版物を奨励することを勧告する。特に、義務教育において、アイヌや琉球の言語教育及びこれらの言語による教育を支援することを慫慂する。

第3回総括所見(2010年)

差別の禁止
33.……委員会は、男女平等の促進に言及していた教育基本法第5条が削除されたことに対する女性差別撤廃委員会の懸念(CEDAW/C/JPN/CO/6)を繰り返す。
34.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
(a)包括的な反差別法を制定し、かつ、どのような事由であれ子どもを差別するあらゆる立法を廃止すること。
(b)とくに女子、民族的マイノリティに属する子ども、日本人ではない子どもおよび障害のある子どもに対して実際に行なわれている差別を削減しかつ防止するため、意識啓発キャンペーンおよび人権教育を含む必要な措置をとること。
生命、生存および発達に対する権利
41.(略)
42.委員会は、締約国が、子どもの自殺リスク要因について調査研究を行ない、防止措置を実施し、学校にソーシャルワーカーおよび心理相談サービスを配置し、かつ、困難な状況にある子どもに児童相談所システムがさらなるストレスを課さないことを確保するよう勧告する。委員会はまた、締約国が、官民問わず、子どものための施設を備えた機関が適切な最低安全基準を遵守することを確保するようにも勧告する。
子どもの意見の尊重
43.司法上および行政上の手続、学校、子ども施設ならびに家庭において子どもの意見は考慮されているという締約国の情報には留意しながらも、委員会は、……学校において子どもの意見が重視される分野が限定されていること、および、政策策定プロセスにおいて子どもおよびその意見に言及されることがめったにないことを依然として懸念する。委員会は、権利を有する人間として子どもを尊重しない伝統的見解のために子どもの意見の重みが深刻に制限されていることを依然として懸念する。
44.条約第12条および意見を聴かれる子どもの権利に関する委員会の一般的意見12号(2009年)に照らし、委員会は、締約国が、あらゆる場面(学校その他の子ども施設、家庭、地域コミュニティ、裁判所および行政機関ならびに政策策定プロセスを含む)において、自己に影響を及ぼすあらゆる事柄に関して全面的に意見を表明する子どもの権利を促進するための措置を強化するよう勧告する。
体罰
47.学校における体罰が明示的に禁じられていることには留意しつつ、委員会は、その禁止規定が効果的に実施されていないという報告があることに懸念を表明する。委員会は、すべての体罰を禁ずることを差し控えた1981年の東京高等裁判所判決に、懸念とともに留意する。委員会はさらに、家庭および代替的養護現場における体罰が法律で明示的に禁じられていないこと、および、とくに民法および児童虐待防止法が適切なしつけの行使を認めており、体罰の許容可能性について不明確であることを懸念する。
48.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう強く勧告する。
(a)家庭および代替的養護現場を含むあらゆる場面で、子どもを対象とした体罰およびあらゆる形態の品位を傷つける取り扱いを法律により明示的に禁止すること。
(b)あらゆる場面における体罰の禁止を効果的に実施すること。
(c)体罰等に代わる非暴力的な形態のしつけおよび規律について、家族、教職員ならびに子どもとともにおよび子どものために活動しているその他の専門家を教育するため、キャンペーンを含む伝達プログラムを実施すること。
障害のある子ども → 国連・子どもの権利委員会の勧告:障害児関連
メンタルヘルス
60.委員会は、著しい数の子どもが情緒的ウェルビーイングの水準の低さを報告していること、および、親および教職員との関係の貧しさがその決定要因となっている可能性があることを示すデータに留意する。委員会はまた、発達障害者支援センターにおける注意欠陥・多動性障害(ADHD)の相談数が増えていることにも留意する。委員会は、ADHDの治療に関する調査研究および医療専門家の研修が開始されたことを歓迎するが、この現象が主として薬物によって治療されるべき生理的障害と見なされていること、および、社会的決定要因が正当に考慮されていないことを懸念する。
61.委員会は、締約国が、子どもおよび思春期の青少年の情緒的および心理的ウェルビーイングの問題に、あらゆる環境における効果的支援を確保する学際的アプローチを通じて対応するための効果的措置をとるよう勧告する。委員会はまた、締約国が、ADHDの診断数の推移を監視するとともに、この分野における調査研究が製薬産業とは独立に実施されることを確保するようにも勧告する。
教育(職業訓練および職業指導を含む)
70.委員会は、日本の学校制度によって学業面で例外的なほど優秀な成果が達成されてきたことを認めるが、学校および大学への入学を求めて競争する子どもの人数が減少しているにも関わらず過度の競争に関する苦情の声があがり続けていることに、懸念とともに留意する。委員会はまた、このような高度に競争的な学校環境が就学年齢層の子どものいじめ、精神障害、不登校、中途退学および自殺を助長している可能性があることも、懸念する。
71.委員会は、学業面での優秀な成果と子ども中心の能力促進とを結合させ、かつ、極端に競争的な環境によって引き起こされる悪影響を回避する目的で、締約国が学校制度および大学教育制度を再検討するよう勧告する。これとの関連で、締約国は、教育の目的に関する委員会の一般的意見1号(2001年)を考慮するよう奨励される。委員会はまた、締約国が、子ども同士のいじめと闘う努力を強化し、かつそのような措置の策定に子どもたちの意見を取り入れるよう勧告する。
72.委員会は、中国系、北朝鮮系その他の出身の子どもを対象とした学校に対する補助金が不十分であることを懸念する。委員会はまた、このような学校の卒業生が日本の大学の入学試験を受けられない場合があることも懸念する。
73.委員会は、締約国に対し、外国人学校への補助金を増額し、かつ大学入試へのアクセスにおいて差別が行なわれないことを確保するよう奨励する。締約国は、ユネスコ・教育差別禁止条約の批准を検討するよう奨励される。
74.委員会は、日本の歴史教科書においては歴史的出来事に対する日本側の解釈しか記述されていないため、地域の異なる国々出身の子どもの相互理解が増進されていないという情報があることを懸念する。
75.委員会は、締約国が、検定教科書においてアジア・太平洋地域の歴史的出来事に関するバランスのとれた見方が提示されることを確保するよう勧告する。

武力紛争選択議定書・第1回総括所見(2010年)

人権教育および平和教育
10.委員会は、平和教育との関連も含め、あらゆる段階のあらゆる学校のカリキュラムで締約国が提供している具体的な人権教育についての詳しい情報が存在しないことに、懸念とともに留意する。
11.委員会は、締約国が、すべての児童生徒を対象とする人権教育およびとくに平和教育の提供を確保するとともに、これらのテーマを子どもの教育に含めることについて教職員を研修するよう勧告する。

性的搾取議定書・第1回総括所見(2010年)

普及および研修
14.委員会は、選択議定書の規定に関する意識啓発活動が不十分であることに、懸念とともに留意する。
15.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
(a)選択議定書の規定が、とくに学校カリキュラムおよびキャンペーンを含む長期的な意識啓発プログラムを通じ、とくに子ども、その家族およびコミュニティを対象として広く普及されることを確保すること。
(b)議定書第9条第2項にしたがい、議定書に掲げられた犯罪の有害な影響および被害者が利用可能な救済手段についての意識を、研修および教育キャンペーンを通じ、子どもを含む公衆の間で促進すること。
(c)選択議定書に関連する諸問題についての意識啓発活動および研修活動を支援するため、市民社会組織およびメディアとの協力を発展させること。

(参考)社会権規約委員会の勧告(2013年)

13.委員会は、締約国で根深く残るジェンダー役割についてのステレオタイプのため、女性による経済的、社会的および文化的権利の平等な享受が妨げられ続けていることを懸念する。委員会はまた、数次にわたる男女共同参画基本計画の採択のような措置がとられたにも関わらず、ジェンダー役割に関する社会一般の態度の変革を狙った十分な措置がとられてこなかったことに、懸念をもって留意する。さらに、委員会は、締約国の称賛すべき努力にも関わらず、労働市場における垂直および水平のジェンダー分離がいまなお徹底していること……に表れているように、進展がなかなか見られないことを懸念する。委員会は、第3次男女共同参画基本計画で締約国が控えめな目標しか設定しておらず、規約上の権利の行使に関する平等の達成が加速されることはないであろう点を遺憾に思う。(第3条)
 委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促す。
  • (a) ジェンダー役割に関する社会のとらえ方を変革するための意識啓発キャンペーンを実行すること。
  • (b) 伝統的にいずれかの性が多数を占めてきた分野以外の分野での教育の追求を促進する目的で、女子および男子に対して平等な就業機会に関する教育を行なうこと。
  • (c) 男女共同参画基本計画において男女双方を対象とするいっそう大胆な目標を採択するとともに、教育、雇用ならびに政治的および公的意思決定の分野においてクオータ(割当枠)制等の一時的措置を実施すること。(以下略)
  • (d) コース別雇用管理制度および妊娠を理由とする解雇のような、女性差別である慣行を廃止すること。
  • (e) 待機児童ゼロの達成をいっそう速やかに進めるとともに、保育が負担可能な料金で利用できるようにすること。
26.委員会は、「慰安婦」が受けてきた搾取により、彼女たちによる経済的、社会的および文化的権利の享受ならびに彼女たちの賠償請求権に対する悪影響が永続していることを懸念する。(第11条、第3条)
 委員会は、搾取の永続的影響に対応し、かつ「慰安婦」による経済的、社会的および文化的権利の享受を保障するため、締約国があらゆる必要な措置をとるよう勧告する。委員会はまた、「慰安婦」にスティグマを付与するヘイトスピーチその他の示威行動を防止するため、締約国が「慰安婦」の搾取について公衆を教育するよう勧告する。
27.委員会は、締約国の高校教育授業料無償化プログラムから朝鮮学校が除外されていることを懸念する。これは差別である。(第13条、第14条)
 差別の禁止は、教育のあらゆる側面に全面的かつ即時的に適用され、また国際的に定められたすべての差別禁止事由を包含していることを想起しつつ、委員会は、高校教育授業料無償化プログラムが朝鮮学校に通う子どもたちにも適用されることを確保するよう、締約国に対して求める。
28.委員会は、多数の外国人児童が学校に通っていないことに、懸念をもって留意する。(第13条、第14条)
 委員会は、締約国に対し、義務教育の状況の監視を、法律上の地位に関わらず締約国の領域内にいるすべての子ども(国民ではない子どもを含む)に対して適用するよう促す。
29.委員会は、規約第13条(b)にしたがって完全無償の中等教育を漸進的に提供するため、締約国が、可能なかぎり早期に、入学料および教科書費を授業料無償化プログラムの対象に含めるよう勧告する。
30.委員会は、アイヌ民族が先住民族として認められ、かつその他の進展が達成されたにも関わらず、経済的、社会的および文化的権利の享受に関してアイヌ民族が不利な立場に置かれたままであることを依然として懸念する。委員会は、アイヌ語が消滅の危機にあることをとりわけ懸念する。(第15条、第2条第2項)
 委員会は、締約国が、アイヌ民族の生活水準を向上させるための努力を強化し、かつ、とくに雇用および教育の分野において追加的な特別措置を実施するよう勧告する。委員会は、これらの措置を、北海道外在住のアイヌ民族に対しても適用するよう勧告する。委員会は、締約国に対し、アイヌ語を保全しかつ振興するためにとられた措置の成果に関する情報を次回の定期報告書に記載するよう要請する。


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