総括所見:フランス(第2回・2004年)


CRC/C/15/Add.240(2004年6月30日)
原文:英語(平野裕二仮訳)

1.委員会は、2004年6月2日に開かれた第967回および第968回会合(CRC/C/SR.967 and 968参照)においてフランスの第2回定期報告書(CRC/C/65/Add.26)を検討し、2004年6月4日に開かれた第971回会合において以下の総括所見を採択した。

A.序

2.委員会は、定期報告書の形式および内容に関する一般指針(CRC/C/58)にしたがって作成された締約国の第2回定期報告書の提出を歓迎するものの、当該報告書に海外県および海外領土についての情報が記載されていないことを遺憾に思う。委員会は、若干遅れて提出されたものの、締約国における子どもの状況についていっそう明確な理解を与えてくれた、事前質問事項(CRC/C/Q/FRA/2)に対する文書回答を歓迎するものである。委員会はさらに、ハイレベルな代表団の参加に評価の意とともに留意するとともに、率直な対話、および、提起された多くの質問に対して代表団のメンバーが提供した回答を歓迎する。

B.締約国によってとられたフォローアップ措置および達成された進展

3.委員会は、子どもの売買、児童買春および児童ポルノならびに武力紛争への子どもの関与に関する子どもの権利条約の両選択議定書が締約国によって批准されたこと、ならびに、最悪の形態の児童労働の禁止および撤廃のための即時の行動に関するILO第182号条約が批准されたことを歓迎する。委員会は、以下の者のような、条約の実施に関連した積極的進展に、評価の意とともに留意するものである。
  • (a) 締約国が近年行なった、多数の法令の採択(とくに以下のもの)。
    • 性犯罪の防止および抑止ならびに未成年者の保護に関する1998年6月17日の法律の規定。
    • 国際的な養子縁組に関する子の保護および協力に関する1993年5月29日のハーグ条約(1998年3月7日の法律第98-147号)の発効(1998年10月1日)を受けてとられた措置、および、関連の、国際養子縁組に関する2001年2月6日の法律。
    • 離婚の際の補足手当に関する2000年6月30日の法律。
    • 相続権に関わる婚外子差別を撤廃する、遺族配偶者および遺児の権利に関する2001年12月3日の法律。
    • 親の権威に関する2002年3月4日の法律。
    • 姓に関する2002年3月4日の法律。
    • 子ども時代の保護に関する2004年1月2日の法律。
  • (b) 委員会の勧告のフォローアップとしてとられた措置、とくに、子どもオンブズマンの設置(2000年3月6日の法律)、フランスにおける子どもの権利調査委員会および子どもの権利に関する議会代表団の設置(2003年2月13日の法律)ならびに危機にさらされる子ども時代に関する国家監視機関(2004年1月2日の法律)の設置。

C.主要な懸念領域および勧告

1.実施に関する一般的措置

委員会の前回の勧告
4.委員会は、締約国の第1回報告書(CRC/C/3/Add.15)の検討後に委員会が行なった懸念表明および勧告(CRC/C/15/Add.20)の一部、とくにパラ11、17(第30条への留保)、13、19、20(地域間格差)、14(自己の出自を知る権利)、22(最低婚姻年齢)、23(子どもによる意見表明およびその正当な重視)、24(児童虐待の防止)、26(少年司法)および27(義務教育を修了していない子ども)に掲げられたものへの対応が不十分であることを遺憾に思う。委員会は、これらの懸念および勧告がこの文書でもあらためて繰り返されていることに留意するものである。
5.委員会は、締約国に対し、第1回報告書に関する総括所見の勧告のうちまだ実施されていないものに対応し、かつ第2回定期報告書に関するこの総括所見に掲げられた一連の懸念に対応するために、あらゆる努力を行なうよう促す。委員会はまた、締約国に対し、権利の主体としての子ども観をすべての政策、プログラムおよびプロジェクトに編入することも促すとともに、締約国に対し、留保および両方の宣言を撤回するようあらためて慫慂するものである。
立法
6.委員会は、立法と条約の整合性を確保する目的で国家人権諮問委員会が立法に関して果たしている助言の役割、および、非政府組織がこの点に関して果たしている積極的役割に留意する。委員会はまた、子どもの権利に関する法改正のプロセスも歓迎するものである。
7.委員会は、締約国に対し、研修の必要性、監視機構および十分な資源の提供を考慮に入れながら、条約に関連するすべての法律の実施を確保するためにあらゆる必要な措置をとるよう勧告する。委員会はまた、締約国に対し、生命倫理の分野で法律を採択するための努力を続行することも奨励するものである。委員会は、締約国に対し、条約の直接適用可能性に関する情報を次回の報告書で提供するよう要請する。
実施、調整、評価および国家的計画
8.委員会は、重層的な主体が条約の実施に関与していることに留意するものの、締約国も留意しているとおり、これらの主体間で調整が行なわれていないことを懸念する。とくに委員会は、県の責任が増大していることにより、調整の不十分さとあいまって、条約の実施における重複および相当の格差が生じかねないことを懸念するものである。特定の問題に責任を負う権限ある期間を特定することも困難になる可能性がある。条約第2条に照らし、委員会はまた、締約国報告書が海外県および海外領土について簡単にしか触れていないことも懸念するものである。
9.委員会は、締約国に対し、条約の実施に関して格差または差別が生じるいかなる可能性も減少させかつ解消する目的で、国レベルと県レベル(海外領土および海外県も含む)との間で条約の実施を全般的に調整するための機関を設置するよう、促す。締約国は、当該機関に対し、その任務を効果的に遂行するための十分な人的資源および財源ならびに十分かつ定義の明確な権限が与えられることを確保するべきである。
資源配分
10.委員会は、とくに社会的援助の配分の調和を図るためにとられた措置を歓迎する。にもかかわらず、委員会は、前回の結論(CRC/C/15/Add.20、パラ13)でも留意したように、とくに移住者の家族のような貧困家族の居住との関連で、社会でもっとも脆弱な立場に置かれた集団の状況ならびにその経済的および社会的権利に対応するためにとられた措置が不十分であることを、依然として懸念するものである。
11.委員会は、子ども、とくに経済的に不利な立場に置かれた集団に属する子どもの経済的、社会的および文化的権利の実施を「利用可能な資源を最大限に用いて」確保するための予算配分を優先させることにより、条約第4条の全面的実施に特段の注意を払うべきである旨の、締約国に対する前回の勧告をあらためて繰り返す。
データ収集
12.委員会は、自国の管轄下にある地域全体を通じ、条約が対象とするすべての分野に関する細分化されたデータの収集について締約国が消極的であることを遺憾に思う。このようなデータは、達成された進展の監視および評価ならびに子どもに関わる政策の影響評価にとってきわめて重要である。
13.委員会は、締約国に対し、データ収集のための中央登録機関を設置するとともに、条約が対象とするあらゆる分野を編入した包括的なデータ収集システムを導入するよう促す。当該システムは、とくに脆弱な立場に置かれた子どもを具体的に重視しながら、18歳未満のすべての子どもを網羅したものであるべきである。このような情報には海外県および海外領土も含めることが求められる。
研修/条約の普及
14.委員会は、条約の普及、および条約を周知するためにさまざまな省庁がとった措置に関して報告書で提供された情報を歓迎する。しかしながら委員会は、子どもとともにおよび子どものために働くすべての専門家が条約の精神を十分に知りかつ理解しているわけではない可能性があるという見解に立つものである。
15.委員会は、締約国に対し、子どもとともにおよび子どものために働く専門家集団(とくに議員、裁判官、弁護士、保健従事者、教員、学校管理者および必要に応じて他の者)を対象として、子どもの権利に関する十分かつ体系的な研修および(または)感受性強化措置を施すための努力を引き続き行なうよう、奨励する。

2.子どもの定義

16.委員会は、条約第40条3項(a)の明示的規定にも関わらず、締約国が刑事責任に関する最低年齢を定めていないことを懸念する。委員会はまた、国内法が、女子(15歳)と男子(18歳)で異なる最低婚姻年齢を定めていることに関する懸念もあらためて表明する。このような法律は、性別に基づく差別であり、かつ若年女子の生存および発達に影響を及ぼす可能性があることに加え、強制婚との闘いをいっそう困難にするものである。
17.委員会は、締約国が、国際的に受け入れられる水準であり、かつその年齢に達しない子どもは刑法に違反する能力を有しないと推定される、刑事責任に関する最低年齢を定めるよう勧告する。委員会はさらに、締約国が最低婚姻年齢を見直すことにより、強制婚との闘いに資する条件を整備し、かつ子どもの発達を可能なかぎり最大限に確保すべく、女子についての年齢を男子についての年齢まで引き上げることを検討するよう勧告するものである。

3.一般原則

差別の禁止
18.委員会は、あらゆる形態の差別を防止しかつこれと闘うための独立機関を2004年に設置する計画を歓迎する。しかしながら委員会は、とくに経済的および社会的権利の分野で差別が根強く残っており、とりわけ海外県および海外領土に居住している子ども、外国人の子どもおよびいわゆる「サン・パピエ」〔資格外滞在者〕ならびに婚外子との関連で社会的統合が疎外されていること、および、実際には一部地域で出身、皮膚の色、宗教、名前その他の地位に基づく差別がいまなお続いていることを、懸念するものである。
19.委員会は、前回の懸念および勧告(CRC/C/15/Add.20、地域格差に関するパラ19)をあらためて繰り返すとともに、締約国が、現行法を条約と一致させかつその効果的実施を確保する(出身、皮膚の色、宗教、名前その他の地位に基づく差別が実際には根強く残っている状況を防止しかつこれと闘うために必要な措置をとることも含む)目的で、現行法を見直すよう勧告する。さらに、委員会は、締約国が、法律から差別的用語を削除するための立法手続を迅速に進めることを勧告するものである。
20.委員会は、「人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容に反対する世界会議」で採択されたダーバン宣言および行動計画をフォローアップするために締約国が実施した措置およびプログラムのうち子どもの権利条約に関わるものについての具体的情報を、条約第29条1項(教育の目的)に関する一般的意見1号も考慮にいれながら、次回の定期報告書に記載するよう要請する。
子どもの意見の尊重
21.委員会は、自己に関わるすべての事柄について自由に意見を表明し、かつその意見を正当に考慮される子どもの権利を強化するため、締約国が行なった立法上の努力を歓迎する。しかしながら委員会は、法律が一貫していないこと、および、実際上、立法の解釈および子どもの「分別能力」の有無の判断によって子どもがこの権利を否定される可能性が残り、または子ども自身の要請が条件とされるおそれがあるために差別が生じる可能性があることを、依然として懸念するものである。加えて、委員会は、実務上、ほとんどの裁判官は子どもの聴聞について積極的ではなく、かつ、これまで性的虐待の被害を受けた子どもが裁判によって救済されてこなかった旨の、子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する特別報告者の結論(E/CN.4/2004/9/Add.1、パラ85および89)について懸念を覚える。
22.委員会は、締約国が、子どもの意見の尊重に関わる矛盾点を解消する目的で法律を見直すよう勧告する。さらに、条約第12条にしたがい、自己に影響を与えるすべての事柄についての子どもの意見の尊重および子どもの参加を、単なる可能性ではなく子どもにも知らされた権利として、家庭、学校、施設ならびに司法上および行政上の手続において引き続き促進しかつその便宜を図ることが、奨励されるところである。委員会はさらに、締約国に対し、子どもが自由に意見を表明でき、かつその後はこれらの意見が正当に重視されることを奨励するような雰囲気をつくり出す目的で、親、教員および校長、政府の行政職員、司法機関、子どもたち自身および社会一般に教育的情報を提供するよう、奨励する。

4.市民的権利および自由

出生登録
23.委員会は、2002年1月22日に採択された、自己の出自を知る権利についての法律に留意する。しかしながら委員会は、条約第7条に掲げられた権利が締約国によって全面的に尊重されていない可能性があること、および、母が希望する場合にはその身元を秘匿する権利が認められていることは条約の規定と一致しないことを、依然として懸念するものである。さらに、委員会は、仏領ギアナにおける出生登録水準が低いことを懸念する。
24.委員会は、差別の禁止の原則(第2条)および子どもの最善の利益の原則(第3条)に照らして第7条の規定、とくに可能なかぎり自己の親を知る子どもの権利が全面的に執行されることを確保するため、締約国があらゆる適当な措置をとるよう勧告する。委員会はまた、締約国に対し、仏領ギアナにおける出生登録の状況に対応するための努力を継続しかつ強化することも奨励するものである。
宗教の自由
25.委員会は、憲法で宗教の自由が定められていること、および、教会と国の分離に関する1905年の法律が信仰に基づく差別を禁じていることに留意する。委員会は同様に、締約国が公立学校の非宗教性を重視していることを認識するものである。しかしながら、条約第14条および第29条に照らし、委員会は、宗教に基づくものを含む差別が増加しているという訴えについて懸念を覚える。委員会はまた、公立学校における宗教的標章および服装に関する新法(2004年3月15日の法律第2004-228号)が、子どもの最善の利益の原則および教育にアクセスする子どもの権利をないがしろにすることによって逆効果となり、所期の成果を達成できない可能性があることも懸念するものである。委員会は、同法の規定が、同法の施行から1年後に評価の対象とされる予定であることを歓迎する。
26.委員会は、同法の効果を評価する際、締約国が、条約に掲げられた子どもの権利の享受状況を評価プロセスの重要な基準として用いるとともに、個人の権利が侵害されないことおよび子どもがこのような法律の結果として学校制度その他の場面から排除されまたは周縁化されないことを保障しつつ、公立学校の非宗教的性質を確保する代替的手段(調停を含む)も検討するよう、勧告する。学校の服装規則については、子どもの参加を奨励しながら公立学校自身が対応するほうが、望ましい結果につながる可能性がある。委員会はさらに、締約国が、新法の結果学校を退学させられた女子の状況を引き続き注意深く監視し、かつこれらの女子が教育にアクセスする権利を享受できることを確保するよう、勧告するものである。
情報へのアクセス
27.委員会は、CD-ROM、ビデオカセットおよびゲームならびにポルノ的出版物の販売またはこれらの媒体へのアクセス可能性に関する適切な法律または指針が存在しないことにより、子どもがその福祉に有害となるおそれのある情報および資料にアクセスすることが容易になっていることを懸念する。
28.委員会は、とくに印刷媒体、電子媒体および視聴覚媒体における暴力およびポルノグラフィーの有害な影響から子どもを保護するため、締約国が法的措置を含む必要な措置をとるよう、勧告する。
拷問その他の残虐な、非人道的なまたは品位を傷つける取扱いおよび処罰(第37条(a))
29.委員会は、第37条(a)に関する情報、および、自由を奪われた子どもならびに官吏による不当な取扱いの行為および不当な取扱いに相当する可能性がある拘禁環境についての前回の勧告(CRC/C/15/Add.20、パラ26)に関する情報が、締約国報告書に記載されていないことを懸念する。
30.委員会は、締約国に対し、子どもの拘禁環境および取扱い、ならびに、あらゆる形態の不当な取扱いを根絶するという決定について行なわれたいずれかのフォローアップについての具体的情報を、次回の定期報告書に記載するよう促す。委員会は、自由の剥奪は常に、真に最後の手段としてかつ可能なもっとも短い期間で構想されるべきであり、かつ心理的回復および社会的再統合にも特段の注意がはらわれるべきであることを想起するものである。

5.家庭環境および代替的養護

家族再統合
31.委員会は、認定を受けた難民を対象とする家族再統合手続の期間が長く、しばしば1年を超えることもあることを懸念する。
32.委員会は、締約国が、家族再統合手続への対応が積極的に、人道的にかつ迅速に行なわれることを確保するため、あらゆる必要な措置をとるよう勧告する。
養子縁組
33.委員会は、国際養子縁組の過半数が1993年ハーグ条約を批准していない出身国との間で行なわれていることに留意するとともに、認証機関を通じてではなく個人的経路を通じて行なわれる国際養子縁組の割合が高いことを懸念する。
34.委員会は、仏領ポリネシアにおける国内養子縁組についての法律および慣行が条約の規定と全面的に一致していない可能性があることを懸念する。
35.条約第21条その他の関連規定に照らし、委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう奨励する。
  • (a) 実務が養子縁組の分野における新法と一致することを確保すること。
  • (b) 法律の実施のために必要な国のプログラムおよび補完的規制のための文書が策定されることを確保すること。
  • (c) 法律の効果的実施および監視のために十分な人的資源その他の資源が利用可能とされることを確保すること。
  • (d) 国際養子縁組の事案への対応が、条約(とくに第21条)およびフランスが批准している1993年ハーグ条約の原則および規定に全面的にしたがって行なわれることを確保すること。
  • (e) 人権侵害を生起させるおそれがある慣行を回避し、かつ子どもの権利が擁護されることを確保するため、仏領ポリネシアで国内養子縁組に関する法律および慣行を採択すること。
虐待およびネグレクト
36.委員会は、2000年9月に発表された児童虐待と闘うための行動計画に関して締約国報告書で提供された情報を歓迎する。委員会はまた、医療従事者が懲戒的制裁の対象とされることなく虐待および不当な取扱いの事案を通報することを認めた、子どもの保護に関する2004年1月2日の法律第2004〔-1〕号も心強く思うものである。しかしながら、憂慮すべき状況下で死亡する15歳未満の子どもの1週間ごとの人数に関する情報は、委員会にとって重大な懸念の理由となる。委員会はまた、とくに被害者の証言の録画または録音を認めた1998年6月17日の法律第98-468号が実施されていないことも、とりわけ懸念するものである。
37.委員会は、虐待およびネグレクトのさらなる発生を防止し、かつその被害者に対して十分な治療プログラムを提供することを目的として、締約国が、児童虐待およびネグレクトを防止しおよびこれと闘いならびに問題の規模について住民(子どもとともにおよび子どものために働く専門家を含む)の感受性を強化するための努力を続行するよう、勧告する。さらに、委員会は、締約国に対し、1998年6月17日の法律を全面的に実施し、かつこの点についての研修が行なわれることを確保するよう、促すものである。
体罰
38.委員会は、締約国が、体罰は全面的に受け入れ不可能であり容認できないと考えていることを歓迎する。しかしながら委員会は、家庭、学校、施設その他の子どもの養育現場における体罰が明示的に禁じられていないことを依然として懸念するものである。
39.委員会は、締約国が、家庭、学校、施設その他の子どもの養育現場における体罰を法律で明示的に禁止するよう、勧告する。委員会はさらに、条約第28条2項に照らし、とくに家庭、学校および養育施設において、積極的かつ非暴力な形態のしつけおよび規律に関する意識を高め、かつこのようなしつけおよび規律を促進するよう勧告するものである。

6.基礎保健および福祉

障害のある子ども
40.委員会は、「プラン・アンディスコール」(Plan Handiscol)のような、障害のある子どもを普通学校に統合するためのプログラム、およびこの点に関して見られた進展を歓迎する。にもかかわらず、委員会は、これらのプログラムが依然として不十分であること、および、これらの努力の対象とされず、主な負担を家族のみが負いながら適切なケアを受けないままでいる子どもが多すぎることを、懸念するものである。さらに、委員会は、障害を発見するための努力が十分ではない可能性があることを懸念する。
41.委員会は、締約国に対し、現在の努力を積極的に続行し、かつ引き続き以下の措置をとるよう奨励する。
  • (a) 障害者の機会均等化に関する基準規則(国連総会決議48/86)および障害のある子どもに関する一般的討議の際に採択された委員会の勧告(CRC/C/69参照)を正当に考慮しながら、障害のある子どもに関する現行の政策および慣行を見直すこと。
  • (b) 子どもの障害を発見するための努力および生徒の全般的ニーズがよりよく評価されることを確保するための努力を教育制度内で行なうこと。
  • (c) 障害のある子どもが教育に対する権利を可能なかぎり最大限に行使できることを確保し、かつ普通教育制度へのこれらの子どもの統合を促進するための努力を続行すること。
  • (d) 必要な専門的資源(障害の専門家)および財源をとくに地方レベルで利用可能とし、ならびにコミュニティを基盤とするリハビリテーション・プログラム(親の支援グループを含む)を促進しおよび拡大するため、いっそうの努力を行なうこと。
  • (e) 公衆の否定的態度を変革するための意識啓発キャンペーンを強化すること。
健康および保健サービス
42.委員会は、母親、乳児および学齢の子どもの保護について締約国報告書に記載された情報を歓迎する。しかしながら委員会は、保健ケアおよび保健サービスのこの側面が県の責任とされていることに留意するとともに、これとの関係で、諸地域圏間で不平等が生じる可能性があることを懸念するものである。委員会は、とくに以下の点について懸念を覚える。
  • (a) 精神医学サービスが存在しないこと。
  • (b) 資格外移住者による保健ケアへのアクセスが「条件付」とされていること。
  • (c) 母乳のみの育児を促進しかつ奨励する全国機関が設けられていないこと。
43.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 十分かつ持続可能な資源(人的資源および財源)が供給されることを確保するための努力を強化すること。これには、十分な人数の保健ケア専門家の養成、保健ケアワーカーに対する十分な給与の提供、および、とくにもっとも不利な立場に置かれた地域における保健ケア・インフラへの投資のための資源配分も含む。
  • (b) 母乳育児を促進するための全国的機構(評価および調整を含む)を設置すること。
思春期の健康
44.委員会は、思春期の子どもに焦点を当てて2004年6月に開催される予定の家族に関する会議、ならびに、とくに16歳未満の子どものタバコの使用を減らすための行動など、締約国がとっている立法上の措置その他の行動を歓迎する。委員会は、自殺率が高いこと(この年齢層の死因の第2位に位置している)、10代の妊娠数が相対的に多いこと、精神保健サービスが不十分であること、および、提供されているサービスが青少年のニーズに適合していない可能性があり、そのためプライマリーヘルス・サービスにアクセスする青少年の意欲の低減につながっていることについての締約国の懸念に留意するものである。
45.委員会は、締約国が、思春期の健康政策を促進し、かつ学校における健康教育プログラムを強化するための努力を増強するよう勧告する。委員会はさらに、健康教育訓練プログラムの有効性をとくにリプロダクティブヘルスとの関連で評価し、かつ、子どもの最善の利益にかなう場合は親の同意を得ずにアクセスすることのできる、若者に配慮した、秘密の守られるカウンセリング、ケアおよびリハビリテーションのための便益を発展させるための措置(十分な人的資源および財源の配分を含む)を勧告するものである。委員会はさらに、思春期の子どもを対象とする精神保健プログラムおよび精神保健サービス(専門の精神医学サービスを含む)を発展させるよう、勧告する。
生活水準
46.委員会は、子どものために必要な生活条件を確保する第一次的な責任は親にあることに留意しながらも、貧困水準が悪化していることについての経済的、社会的および文化的権利に関する委員会の懸念(E/C.12/1/Add.72)を共有する。委員会は、このような状況が子どもの身体的、精神的、霊的、道徳的および社会的発達に悪影響を及ぼしていることを懸念するものである。委員会はまた、一部の集団の子どもについて家族手当へのアクセスに関する制限が設けられていることも懸念する。
47.委員会は、締約国に対し、条約第27条にしたがってすべての子どもの生活水準を向上させかつ物的援助および支援プログラムを提供するための努力を強化することにより、親および子どもに責任を負う他の者を援助するための措置をとるよう、奨励する。家族に対する配分に際しては、子どもがフランスの領域に入国した態様が条件とされるべきではない。

7.教育、余暇および文化的活動

48.委員会は、締約国が16歳まで無償の義務的学校教育を提供するために努力していること、および、学校が統合および平等の場所と見なされていることを歓迎する。にもかかわらず、委員会は、一部の学校に対して「要注意」校のレッテルが貼られていること、および、学校における意思決定プロセスへの意味のある子ども参加が行なわれていないことを懸念するものである。さらに、委員会は、障害のある数千人の子どもが教育に対する権利を奪われていることを懸念する。
49.委員会は、締約国に対し、条約第28条および第29条に一致する形ですべての子どもが教育に対する権利を享受し、かつ、条約第3条に一致する形で障害のある子どもが可能なかぎり普通教育に統合されることを確保するための努力を、教育の目的に関する委員会の一般的意見1号を考慮に入れながら続行するよう促す。委員会は、締約国に対し、義務教育に対する公共支出の水準を高めるよう奨励するものである。さらに、締約国は、学校生活に関わる意思決定プロセスへの子どもの参加に寄与し、かつこれを促進するよう奨励される。

8.特別な保護措置

保護者のいない未成年者
50.委員会は、保護者のいない未成年者が収容区域に収容されている間、法定代理人に代わる「特別管理人」による援助を提供することによってこれらの未成年者の状況に対応しようとしている、締約国の努力に留意する。しかしながら、委員会はまた、このような状況にある未成年者の人数が着実に増加していること、および、新法の実施が依然として課題となっていることにも留意するものである。保護者のいない外国人未成年者は、引き続き自由を奪われ、かつ成人ともに拘禁されている。委員会はまた、空港に到着した保護者のいない子どもが、司法が介入せず、かつその家族の状況についての評価も行なわれないまま、出身国に創刊される場合があることも懸念する。委員会はさらに、これらの子どもによる、その権利を保護するための基礎的サービスへのアクセスを調整しかつ促進するための明確な指示が存在しないことを懸念するものである。これに加えて、年齢決定手続には誤認の余地があり、未成年者に対して本来受ける資格のある保護が与えられないことにつながるおそれが生じている。
51.委員会は、締約国が、この分野における努力を続行し、かつ、とくに以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) ニーズに応じた対応ができるよう、情報および統計の収集に関して調整のとれたアプローチを確保すること。
  • (b) 基礎的サービス、とくに教育、保健および法的援助を保障することを目的とした措置の方向性を定め、かつこれらの措置を調整する規範を確立すること。
  • (c) 現在用いられている方法よりも正確であることが証明されている最近の年齢決定法の導入を検討すること。
経済的搾取
52.委員会は、子どもを経済的搾取から保護するための立法上その他の努力を歓迎する。しかしながら委員会は、不法な強制労働ネットワークが活動を続けており、かつ、外国人の子どもが、十分精力的な対策がとられていないネットワークの犠牲になっていることを懸念するものである。
53.委員会は、締約国が、条約第32条ならびに締約国が批准した就労の最低年齢に関するILO第138号条約および最悪の形態の児童労働に関する第182号条約にしたがって、とくに外国人の子どもを対象として活動を続けている人身取引・搾取ネットワークを解体し、かつ、この分野で活動している非政府組織との協力およびこれらの組織に対する支援を強化するための措置を、国内的および国際的レベルで精力的に続行するよう勧告する。
性的搾取、人身取引
54.委員会は、子どもの商業的性的搾取に反対する世界会議(ストックホルム、1996年)の後、子どもを虐待および不当な取扱いから保護するための国内行動計画が採択されたことに留意する。翌1997年には、虐待された子どもの保護が国家的優先課題である旨、宣言された。しかしながら委員会は、子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する特別報告者が2002年11月のフランス訪問後の報告書で指摘したとおり、子どもの人身取引、売買春および関連の問題が生じていることを懸念するものである。
55.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 子どもの人身取引および商業的性的搾取の原因、性質および規模を評価するため、包括的研究を実施すること。
  • (b) 子どもの性的虐待および人身取引の問題に関する専門家および一般公衆の感受性を、メディア・キャンペーンを含む教育を通じて強化し、かつ協力関係を確立する等の手段により、性的搾取および人身取引の発生を減少させかつ防止するための措置をとること。
  • (c) 子どもの人身取引の送り出し国の公的機関との協力関係を確立し、またはすでに存在する協力関係を強化すること。
  • (d) 1996年および2001年の子どもの商業的性的搾取に反対する会議で採択された宣言および行動綱領ならびにグローバル・コミットメントを考慮に入れながら、非政府組織との協力を増進させることも含む調整のとれたやり方で、性的搾取および人身取引の被害者に対して提供される保護(防止、証人保護、社会的再統合、保健ケアへのアクセスおよび心理的援助を含む)を増強すること。
  • (e) すべての子ども(15~18歳の子どもを含む)の個別の苦情を受理しかつこれに効果的に対応するための、秘密が守られ、アクセスしやすくかつ子どもに配慮した機構が確立されることを確保すること。
  • (f) 子どもに配慮したやり方で苦情を受理し、監視し、調査しかつ訴追する方法について、法執行官、ソーシャルワーカーおよび検察官を対象とした研修を実施すること。
有害物質濫用
56.委員会は、薬物濫用一般およびとくに低年齢の子どもの薬物濫用が増えていることを懸念する。
57.委員会は、締約国に対し、有害物質濫用の防止の分野における活動を継続しおよび拡大し、ならびに薬物濫用の被害者である子どもに対応するリハビリテーション・プログラムを支援するよう、奨励する。
少年司法
58.委員会は、とくに司法の方向性および計画に関する2002年9月9日の法律第2002-1138号および犯罪の進化に対する司法の適応に関する2004年3月9日の法律第2004-204号との関連で、教育的措置よりも抑圧的措置を優先させる傾向にある、少年司法分野における立法および実務についての懸念をあらためて表明する。法律の規定には、警察による未成年容疑者の留置期間を4日まで延長できること、および、警察が10~13歳の子どもの身柄を最長24時間拘束できることが含まれる。委員会はまた、危険な状況にある子どもを保護する責任が行政機関に転嫁され、そのため司法機関には抑圧的機能しか委ねられない可能性があることについてオンブズマンが表明した懸念にも留意するものである。委員会は、未成年の刑務所収容者数が増加していることおよびそれにともなって環境が悪化していることとの関連で子どもオンブズマンが表明した懸念を共有する。さらに、閉鎖型教育施設を導入したことの影響がまだ明らかになっていない。
59.委員会は、締約国が以下の措置をとるべきである旨の前回の勧告をあらためて繰り返す。
  • (a) 少年司法の運営に関する委員会の一般的討議も踏まえながら、少年司法に関する基準、ならびに、とくに条約第37条、第40条および第39条ならびに少年司法の運営に関する国連最低基準規則(北京規則)および少年非行の防止のための国連指針(リャド・ガイドライン)の全面的実施を確保すること。
  • (b) 拘禁(未決勾留を含む)は最後の手段としてのみ、可能なかぎり短い期間で用いるとともに、未成年者が成人から分離されることを確保すること。
  • (c) 懲罰的措置は、適正手続および法的援助を保障したうえで司法機関のみがとることを確保するため、国内法を見直すこと。
  • (d) 第39条に照らし、少年司法制度に関わることになった子どもの回復および社会的再統合を促進するための適当な措置(当該再統合を促進するための十分な教育および認証を含む)をとること。
  • (e) 非行、犯罪および薬物依存のような問題につながる社会的条件の解消の一助とするため、家族およびコミュニティの役割を支援することのような防止措置を強化すること。
マイノリティ集団に属する子ども
60.委員会は、フランスのすべての子どもは法律の前に平等であり、宗教の自由に対する権利、私事について自己の言語で表現する権利および文化的活動に対する権利を有している旨の、締約国報告書で提供された情報を歓迎する。しかしながら委員会は、法律の前における平等では、事実上の差別に直面している可能性がある一部のマイノリティ集団(ロマなど)による平等な権利の享受を確保するためには不十分であるおそれがあることを、依然として懸念するものである。委員会は、締約国が、自国の立場の再検討および条約第30条に付した留保の撤回を検討していないことを遺憾に思う。
61.委員会は、締約国に対し、とくに国連条約機関および人種主義と不寛容に反対する欧州委員会(ECRI)の勧告、とりわけ子どもに関わる勧告がフォローアップされることを確保することにより、人種主義、外国人嫌悪、差別および不寛容を防止しかつこれらと闘うための措置を引き続きとるよう、奨励する。委員会は、締約国に対し、マイノリティ集団に属する子どもについての立場を再検討し、かつ第30条に付した留保の撤回を検討するよう促すものである。

9.報告書、文書回答、総括所見の普及

62.条約第44条6項に照らし、委員会は、締約国が提出した第2回定期報告書および文書回答を広く公衆一般が入手できるようにするとともに、関連の議事要録および委員会が採択した総括所見とともに報告書を刊行することを検討するよう勧告する。このような文書は、締約国のあらゆる行政レベルおよび一般公衆(関心のある非政府組織を含む)の間で条約ならびにその実施および監視に関する議論および意識を喚起するため、広く配布されるべきである。全国子どもの権利の日(11月20日)を、とくに県を含む国の代表、非政府組織、子どもオンブズマンその他の参加を奨励することにより、条約の実施(とくにこの総括所見の実施を含む)に弾みをつける目的で活用することが求められる。

10.次回報告書

63.委員会は、条約第44条の規定を全面的に遵守した報告実践の重要性を強調する。条約に基づいて締約国が子どもに対して負う責任の重要な側面のひとつは、子どもの権利委員会が条約の実施における進展を審査する定期的機会を持てるようにすることである。これとの関連で、締約国が定期的にかつ時宜を得た報告を行なうことはきわめて重要である。委員会は、時宜を得た定期的報告を行なううえで一部の締約国が困難を経験していることを認識する。例外的措置として、締約国が条約を全面的に遵守してその報告義務の履行の遅れを取り戻すことを援助するため、委員会は、締約国に対し、第3回・第4回統合的報告書(この報告書は120ページを超えるべきではない。CRC/C/118参照)を2007年9月5日までに提出するよう慫慂するとともに、その後は条約で予定されているとおり5年ごとに報告を行なうよう期待する。当該報告書には、フランス海外県および海外領土における条約の実施についての情報が記載されるべきである。


  • 更新履歴:ページ作成(2010年11月1日)。
最終更新:2011年11月01日 18:31