ふたば系ゆっくりいじめSS@ WIKIミラー
anko1261 夕暮れ
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ankoss
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「ゆっ! ゆっ! ぼーるしゃん、ゆっくちまっちぇにぇ!」
「まりさ、あわてると危ないぞー」
夕焼けに染まる河川敷。小さなスーパーボールを一生懸命追いかけるまりさを見ながら、俺は笑った。
俺とまりさはボール遊びをしている。
もうかれこれ――時計がないからわからないけれど――少なくとも一時間は同じことをしているだろう。
俺がごく軽く放ったボールをまりさが取りに行って、俺の元に持ってくる。それを俺がまた放って――その繰り返しだ。
この単純な、遊びとも言えない遊びが、俺は楽しくて仕方なかった。まりさもそうだろう。
「ぼーるしゃんをつかまえりゅよ! まりしゃがぼーるしゃんをつかまえりゅよ!」
まりさが心底嬉しそうな声を出しながらボールを口に咥えた。
何度目とも知れないその光景。それでも何だか嬉しくなった俺は、
「よし! いいぞ、まりさ! ナイスキャッチ!」
そう、声をかけた。これも何度目だろうか。
まりさの瞳が、顔が、ぱあっと輝いたのが、赤い空の下でもはっきりとわかった。
「ゆっ! まりしゃがないしゅきゃっちしちゃよ! ゆっくちほめちぇにぇ!」
「ははは! またやった! 口を開いたから、ボールが落ちちゃったじゃないか!」
「ゆゆっ? ぼーるしゃん、ゆっくちにげにゃいでにぇ!」
てんてんと転がるボールを慌てて追いかける――。そんなまりさを見ているだけで、とても楽しい。
と、まりさがぽてんと転んだ。
「ありゃ。危ないって言ったのに……」
「ゆっ! まりしゃ、こーろこーろしゅるよ! ぼーるしゃんとおしょろいだにぇ!」
こちらに向かって転がるボールを追走するように、まりさがころころと転がってくる。
「こーろこーろ! ぼーるしゃん、おにいしゃんのところまできょうそうだよ! まりしゃのほうがはやいよ!」
「はは、競走になっちゃった。お帽子が脱げないように気をつけろよー」
遊びの内容が変わってしまったらしいが、別にどうだっていい。
まりさが楽しんでくれたら、楽しんでいる様子を見せてくれたら、俺だって楽しいのだ。
「ぼーるしゃん! あとしゅこしだよ! がんばってにぇ!」
まりさは、転がるのをやめてしまったボールを励ましている。しかしボールが自発的に回転を始めるわけはない。一匹と一個は、いつまで経ってもその場から動かない。
俺は地面から腰を上げ、
「おーい。俺、待ちくたびれちゃったなあ。まりさを置いて帰っちゃおうかなあ?」
と心にもない事を言った。帰るつもりなんて、まったくない。
「ゆ、ゆゆっ!? まっちぇにぇ! まっちぇにぇ! ぼーるしゃんもゆっくちしにゃいでにぇ!」
再びボールを咥えて、大急ぎで――と言ってもたかが知れているけれど――俺に向かって跳ねてくるまりさ。
「ははは」
かわいいなあ。――不意に、鼻の奥がつんと痛んだ。
「まりさ、あわてると危ないぞー」
夕焼けに染まる河川敷。小さなスーパーボールを一生懸命追いかけるまりさを見ながら、俺は笑った。
俺とまりさはボール遊びをしている。
もうかれこれ――時計がないからわからないけれど――少なくとも一時間は同じことをしているだろう。
俺がごく軽く放ったボールをまりさが取りに行って、俺の元に持ってくる。それを俺がまた放って――その繰り返しだ。
この単純な、遊びとも言えない遊びが、俺は楽しくて仕方なかった。まりさもそうだろう。
「ぼーるしゃんをつかまえりゅよ! まりしゃがぼーるしゃんをつかまえりゅよ!」
まりさが心底嬉しそうな声を出しながらボールを口に咥えた。
何度目とも知れないその光景。それでも何だか嬉しくなった俺は、
「よし! いいぞ、まりさ! ナイスキャッチ!」
そう、声をかけた。これも何度目だろうか。
まりさの瞳が、顔が、ぱあっと輝いたのが、赤い空の下でもはっきりとわかった。
「ゆっ! まりしゃがないしゅきゃっちしちゃよ! ゆっくちほめちぇにぇ!」
「ははは! またやった! 口を開いたから、ボールが落ちちゃったじゃないか!」
「ゆゆっ? ぼーるしゃん、ゆっくちにげにゃいでにぇ!」
てんてんと転がるボールを慌てて追いかける――。そんなまりさを見ているだけで、とても楽しい。
と、まりさがぽてんと転んだ。
「ありゃ。危ないって言ったのに……」
「ゆっ! まりしゃ、こーろこーろしゅるよ! ぼーるしゃんとおしょろいだにぇ!」
こちらに向かって転がるボールを追走するように、まりさがころころと転がってくる。
「こーろこーろ! ぼーるしゃん、おにいしゃんのところまできょうそうだよ! まりしゃのほうがはやいよ!」
「はは、競走になっちゃった。お帽子が脱げないように気をつけろよー」
遊びの内容が変わってしまったらしいが、別にどうだっていい。
まりさが楽しんでくれたら、楽しんでいる様子を見せてくれたら、俺だって楽しいのだ。
「ぼーるしゃん! あとしゅこしだよ! がんばってにぇ!」
まりさは、転がるのをやめてしまったボールを励ましている。しかしボールが自発的に回転を始めるわけはない。一匹と一個は、いつまで経ってもその場から動かない。
俺は地面から腰を上げ、
「おーい。俺、待ちくたびれちゃったなあ。まりさを置いて帰っちゃおうかなあ?」
と心にもない事を言った。帰るつもりなんて、まったくない。
「ゆ、ゆゆっ!? まっちぇにぇ! まっちぇにぇ! ぼーるしゃんもゆっくちしにゃいでにぇ!」
再びボールを咥えて、大急ぎで――と言ってもたかが知れているけれど――俺に向かって跳ねてくるまりさ。
「ははは」
かわいいなあ。――不意に、鼻の奥がつんと痛んだ。
再び地面に腰を下ろした俺の元に、ボールを咥えたまりさが帰ってきた。
「ゆふう! ゆ、ゆっくちとうちゃく、だよ!」
「はい。おかえり、まりさ」
「ゆっくちただいま! おにいしゃん!」
「よし、じゃあまたボールを投げようか?」
「ゆっ! ちょっとまってね、おにいしゃん! まりしゃはいまおもいだしちゃよ!」
「ん?」
心臓が強く鳴った。
「ここはまりしゃとおにいしゃんが、であったばしょだったんだよ!」
「ああ……」
そう――この河川敷で俺はまりさと出会い、そして家に連れて帰ったのだ。
「ゆふふっ! おにいしゃんはおぼえちぇた?」
「ははっ、当たり前だろ? 忘れるわけがないってば」
さすがに忘れようもない事だ。むしろまりさが「思い出した」と言ったことに驚かされた。そんなことも忘れていたのか。
「ゆっ! ゆっ! ゆっ! おぼえていてくれちぇ、まりしゃはゆっくちうれちいよ!」
「そうか」
「ゆっ! きをとりなおちて、ゆっくちぼーるしゃんをおいきゃけるよ!」
「はいはい、じゃあ行くよ?」
俺はスーパーボールを軽く放った。
ボールは地面に落ちて――そこに小石でもあったらしい。あさっての方向にバウンドしてしまった。
「ゆゆうっ!? ぼーるしゃん! ゆっくちまっちぇにぇ! ゆっくちまっちぇにぇ!」
「ははは、ごめんごめん! がんばれ、まりさ!」
「ゆっ! まりしゃ、がんばりゅよ! ゆっくちがんばりゅよ!」
まりさはわざわざ跳ねるのをやめて振り返り、俺に向かって宣言してくれた。
「ゆふう! ゆ、ゆっくちとうちゃく、だよ!」
「はい。おかえり、まりさ」
「ゆっくちただいま! おにいしゃん!」
「よし、じゃあまたボールを投げようか?」
「ゆっ! ちょっとまってね、おにいしゃん! まりしゃはいまおもいだしちゃよ!」
「ん?」
心臓が強く鳴った。
「ここはまりしゃとおにいしゃんが、であったばしょだったんだよ!」
「ああ……」
そう――この河川敷で俺はまりさと出会い、そして家に連れて帰ったのだ。
「ゆふふっ! おにいしゃんはおぼえちぇた?」
「ははっ、当たり前だろ? 忘れるわけがないってば」
さすがに忘れようもない事だ。むしろまりさが「思い出した」と言ったことに驚かされた。そんなことも忘れていたのか。
「ゆっ! ゆっ! ゆっ! おぼえていてくれちぇ、まりしゃはゆっくちうれちいよ!」
「そうか」
「ゆっ! きをとりなおちて、ゆっくちぼーるしゃんをおいきゃけるよ!」
「はいはい、じゃあ行くよ?」
俺はスーパーボールを軽く放った。
ボールは地面に落ちて――そこに小石でもあったらしい。あさっての方向にバウンドしてしまった。
「ゆゆうっ!? ぼーるしゃん! ゆっくちまっちぇにぇ! ゆっくちまっちぇにぇ!」
「ははは、ごめんごめん! がんばれ、まりさ!」
「ゆっ! まりしゃ、がんばりゅよ! ゆっくちがんばりゅよ!」
まりさはわざわざ跳ねるのをやめて振り返り、俺に向かって宣言してくれた。
「おにいしゃん! しょろしょろおうちにかえらにゃいの?」
いきなりのまりさの言葉に、俺は焦った。
ここでいつまでも遊んでいたい。まだ家には帰りたくない。
「えっ? ボール遊びには飽きちゃったか? なら別の遊びを――」
「ちがうよ! まりしゃは、おなかがぺーこぺーこになっちゃったよ!」
「何だ、お腹が減っちゃったのか?」
「ゆっ! おうちにかえっちぇ、ごはんをむーちゃむーちゃしようにぇ!」
家でごはんか――。
「おにいしゃん! いっちょにむーちゃむーちゃしようにぇ!」
「うん。でも――」
もう少し、ここで遊ぼうよ。――そう言おうとした時、俺の名前を呼ぶ声に気付いた。
俺はドキッとして振り返る。
声の主は土手の上からこちらを見ていた。表情まではわからない。
まりさも土手の上の人間に気付いたようだ。――ここまでか。
「ゆっ!? おにいしゃん! あしょこに――」
「よし、まりさ!」
俺はまりさの言葉を遮るように言った。少し声が上ずってしまった。
「これで最後にしようか。このボールを取ってきたら、おうちに帰ろう。な?」
「ゆっ! ゆっくちりきゃいしちゃよ、おにいしゃん!」
「うん。それじゃ――」
俺はボールを投げた。今までよりも強めに、まりさがそうそう辿りつけない距離に。
ボールは何度か地面を跳ねて跳ねて――草むらの中にでも入ってしまったのだろうか。ますます薄暗くなる空のせいもあり、俺たちのいる場所からは見えない。
「ゆわあああっ!? ぼーるしゃん、まっちぇえええええ!? どきょいっちゃのおおおお!?」
まりさは一目散にボールの方向に向かった。
「ははは! がんばれよ、まりさ!」
そうだ。
がんばれ。がんばってくれ、まりさ。
すん、と鼻を鳴らして、俺は土手に向かった。
いきなりのまりさの言葉に、俺は焦った。
ここでいつまでも遊んでいたい。まだ家には帰りたくない。
「えっ? ボール遊びには飽きちゃったか? なら別の遊びを――」
「ちがうよ! まりしゃは、おなかがぺーこぺーこになっちゃったよ!」
「何だ、お腹が減っちゃったのか?」
「ゆっ! おうちにかえっちぇ、ごはんをむーちゃむーちゃしようにぇ!」
家でごはんか――。
「おにいしゃん! いっちょにむーちゃむーちゃしようにぇ!」
「うん。でも――」
もう少し、ここで遊ぼうよ。――そう言おうとした時、俺の名前を呼ぶ声に気付いた。
俺はドキッとして振り返る。
声の主は土手の上からこちらを見ていた。表情まではわからない。
まりさも土手の上の人間に気付いたようだ。――ここまでか。
「ゆっ!? おにいしゃん! あしょこに――」
「よし、まりさ!」
俺はまりさの言葉を遮るように言った。少し声が上ずってしまった。
「これで最後にしようか。このボールを取ってきたら、おうちに帰ろう。な?」
「ゆっ! ゆっくちりきゃいしちゃよ、おにいしゃん!」
「うん。それじゃ――」
俺はボールを投げた。今までよりも強めに、まりさがそうそう辿りつけない距離に。
ボールは何度か地面を跳ねて跳ねて――草むらの中にでも入ってしまったのだろうか。ますます薄暗くなる空のせいもあり、俺たちのいる場所からは見えない。
「ゆわあああっ!? ぼーるしゃん、まっちぇえええええ!? どきょいっちゃのおおおお!?」
まりさは一目散にボールの方向に向かった。
「ははは! がんばれよ、まりさ!」
そうだ。
がんばれ。がんばってくれ、まりさ。
すん、と鼻を鳴らして、俺は土手に向かった。
「もう済んだの?」
「…………」
主語を欠いたその質問は理解できたが、しかし俺は言葉を返さなかった。
「……そう」
その短い言葉だけで、俺の答えを、思いを酌んでくれたのがわかった。
それからしばらく、二人で河川敷を見下ろす。お互いに言葉はない。
まりさが必死に跳ねているのがかろうじて見えた。遠く離れているのに、何度も聞いた「ぼーるしゃん! まっちぇにぇ! まっちぇにぇ!」という声が聞こえてくるかのようだ。
「――あのさ」
黙っていると、どうしても込み上げてくる。俺は言葉を発した。
「まりさ、ここで俺と会ったことも忘れてたみたいだ」
この河川敷で出会って家につれて帰ったのは、今日の――少し前の出来事なのに。
「そう」
「楽しそうに俺と遊んでくれたよ」
家から再びここに戻った時は火がついたように泣いていたのに。恨みごとを言っていたのに。
「そう」
「俺が家に連れて帰ったことだけは憶えてるみたいでさ。『飼ってやる』って言われたのが、よほど嬉しかったのかなあ」
「野良ゆっくりなんてそんなものよ。『餡子脳』って言ってね。自分にとって都合のいい事しか憶えていないの。捨てられた記憶なんて、遊んでいるうちに消えてしまったんでしょうね」
「そうみたいだね……」
「ええ。――だから、今日あなたと会ったことも、遊んだことも、じきに忘れてくれるわよ」
「だと良いけどね」
まりさはまだ跳ねている。ボールはどこまで転がったのだろうか。
駄目だ――と思った時には、すでに涙が頬を伝っていた。
俺の気まぐれのせいで、まりさには本当に申し訳ないことをしてしまった。俺の事なんて今すぐにでも忘れてもらった方が良い。どうか、どうか忘れてくれ。
でも――でも俺は、今日の事を一生忘れられそうにない。
嗚咽を堪えている俺の頭に、手が乗せられた。髪を漉かれる、気持ちの良い感触。
「ごめんね。――でも、ペットショップや加工所で躾けられていないゆっくりを飼っても、不幸になるだけだわ。ゆっくりも飼い主も」
「うん……」
「だからこそ、みんな高いお金を出してゆっくりを買っているの。その気になればいくらでも野良が拾えるのにね」
「うん……」
「あなたがもう少し大きくなったら――ゆっくりを飼うのは、その時また考えましょう」
俺はそれには答えない。今は答えようもない。
まりさは草むらの中に入ってしまった。もう、どこにいるのかわからない。
さよなら、まりさ。
夢を見させてごめんな。飼いゆっくりにしてあげられなくてごめんな。
「さあ、帰りましょうか。お父さんがお腹をぺこぺこにして待っているわよ」
――まりしゃは、おなかがぺーこぺーこになっちゃったよ!――
頭の中でまりさの声が甦って、すぐに消えた。再び溢れそうになる涙を手の甲でごしごしと拭う。
「――うん。帰ろうか、お母さん」
「…………」
主語を欠いたその質問は理解できたが、しかし俺は言葉を返さなかった。
「……そう」
その短い言葉だけで、俺の答えを、思いを酌んでくれたのがわかった。
それからしばらく、二人で河川敷を見下ろす。お互いに言葉はない。
まりさが必死に跳ねているのがかろうじて見えた。遠く離れているのに、何度も聞いた「ぼーるしゃん! まっちぇにぇ! まっちぇにぇ!」という声が聞こえてくるかのようだ。
「――あのさ」
黙っていると、どうしても込み上げてくる。俺は言葉を発した。
「まりさ、ここで俺と会ったことも忘れてたみたいだ」
この河川敷で出会って家につれて帰ったのは、今日の――少し前の出来事なのに。
「そう」
「楽しそうに俺と遊んでくれたよ」
家から再びここに戻った時は火がついたように泣いていたのに。恨みごとを言っていたのに。
「そう」
「俺が家に連れて帰ったことだけは憶えてるみたいでさ。『飼ってやる』って言われたのが、よほど嬉しかったのかなあ」
「野良ゆっくりなんてそんなものよ。『餡子脳』って言ってね。自分にとって都合のいい事しか憶えていないの。捨てられた記憶なんて、遊んでいるうちに消えてしまったんでしょうね」
「そうみたいだね……」
「ええ。――だから、今日あなたと会ったことも、遊んだことも、じきに忘れてくれるわよ」
「だと良いけどね」
まりさはまだ跳ねている。ボールはどこまで転がったのだろうか。
駄目だ――と思った時には、すでに涙が頬を伝っていた。
俺の気まぐれのせいで、まりさには本当に申し訳ないことをしてしまった。俺の事なんて今すぐにでも忘れてもらった方が良い。どうか、どうか忘れてくれ。
でも――でも俺は、今日の事を一生忘れられそうにない。
嗚咽を堪えている俺の頭に、手が乗せられた。髪を漉かれる、気持ちの良い感触。
「ごめんね。――でも、ペットショップや加工所で躾けられていないゆっくりを飼っても、不幸になるだけだわ。ゆっくりも飼い主も」
「うん……」
「だからこそ、みんな高いお金を出してゆっくりを買っているの。その気になればいくらでも野良が拾えるのにね」
「うん……」
「あなたがもう少し大きくなったら――ゆっくりを飼うのは、その時また考えましょう」
俺はそれには答えない。今は答えようもない。
まりさは草むらの中に入ってしまった。もう、どこにいるのかわからない。
さよなら、まりさ。
夢を見させてごめんな。飼いゆっくりにしてあげられなくてごめんな。
「さあ、帰りましょうか。お父さんがお腹をぺこぺこにして待っているわよ」
――まりしゃは、おなかがぺーこぺーこになっちゃったよ!――
頭の中でまりさの声が甦って、すぐに消えた。再び溢れそうになる涙を手の甲でごしごしと拭う。
「――うん。帰ろうか、お母さん」
(了)
作・藪あき
挿絵:嘆きあき
挿絵:儚いあき