ふたば系ゆっくりいじめSS@ WIKIミラー
anko1788 そんなの常識ですよ?
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ankoss
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注意書きです。
1 駄文です。
2 希少種優遇です。
3 原初に近いゆっくりが登場します。
4 少し汚い表現があるかもしれません。
5 他の作者様の作品と似ている可能性があります。
それでもOKという方のみ、どうぞ。
「いまからここをれいむのおうちにするよ!」
それは、ある昼下がりの午後の出来事でした。
一匹の野良ゆっくりれいむが、人家の窓ガラスを石で割って侵入してきました。
家の中に入るなり、いきなりのお家宣言。
もし、この家に人間がいればすぐにでも飛び出してきて、れいむを潰すか追い出すかするでしょう。
しかし、肝心の家主は現在会社でデスクワークの真っ最中。この家には人間は誰一人いませんでした。
……『人間』は、ですが。
「だれですか、あなたは!?」
その家には、家主の飼いゆっくりである、ゆっくりさなえがお留守番をしていました。
「ゆゆ!?なんでさなえがれいむのおうちにいるの!?さっさとでていってね!」
「なにをいってるんですか!ここはおにいさんとさなえのおうちですよ!」
「ここはれいむのおうちなのに、まったく、さなえはとんでもないゲスだね!おわびとして、おいしいごはんさんをよういしてね!」
ここまでの流れを見る限り、ある意味でテンプレとも言える展開になって来ました。
恐らく、さなえは大人しく食べ物を差し出すか、断るかの二択のどちらかを選択する……。
……かに思われましたが。
「……ごはんさん?……どうして、ごはんさんをたべるんですか?」
「……ゆ?」
さなえの口から出たのは、従属でも拒否でも無く、本心からの疑問の言葉でした。
これは、ある『常識』的なゆっくりと、『非常識』的なゆっくりの物語です。
「そんなの常識ですよ?」
作者:ぺけぽん
「……ゆっ、ゆひゃひゃひゃひゃっ!!」
「なにがそんなにおかしいんですか?」
「さなえはほんとうにばかだね!ごはんさんをたべないとおなかがすいてゆっくりできないにきまってるでしょ!」
れいむはさなえの事を、頭が可哀想な馬鹿ゆっくりだと思いました。
「え?ごはんさんをたべなくても、おなかはすきませんよ?」
さなえのその言葉を聞くまでは。
「……はあぁぁぁぁっ!?なにいってるのぉぉぉぉっ!?ばかなの!?しぬの!?」
「どうしてそんなにおこっているんですか?」
「ごはんさんをたべないのにおなかがすかないわけないで「すきませんよ?」ゆっ!?」
れいむは一瞬固まってしまいました。……が。
「そ、そうだ!さなえはごはんさんじゃなくて、あまあまやじゅーすをたくさんたべたりのんだりしてるんだよ!」
ご飯では無く、お菓子やジュースを食べたり飲んだりしているからお腹が減らないんだ。
れいむはそう考えを切り替えました。
「たべてませんよ?」
さなえは即答でそう答えました。
「……は?」
「ごはんさんも、おかしも、じゅーすも、なーんにもたべたりのんだりしていません」
「……う、うそだあぁぁぁぁっ!!なにもたべなきゃしんじゃうでしょぉぉぉぉっ!!」
「なにもたべなくても、ゆっくりはしにませんよ?そんなの『じょうしき』じゃないですか」
「……え?」
今、何て言ったんだこいつは。
ご飯を食べなくても死なない?
それが『常識』だと?
馬鹿な。そんな馬鹿な。
れいむは混乱していました。
もしさなえの言っている事が本当なら、さなえは何も食べないで生きている事になります。
……そんな事は絶対にあり得ない。
「そ、そうだ!わかったよ!」
「なにがですか?」
「さなえはとんでもないうそつきだよ!れいむをだまそうだなんてそうはいかないよ!」
れいむはさなえが自分を騙そうと嘘を付いているのだと解釈しました。
「なにをいっているんですか?れいむさんは『ひじょうしき』なゆっくりですね」
「はぁぁぁぁっ!?なにをいってるんだおまえはぁぁぁぁっ!?」
ふざけるな。何でこんな嘘吐きのゲスゆっくりに『非常識』なんて言われなければいけないのだ。
「ふざけるなぁぁぁぁっ!?だったらおまえはうんうんやしーしーもしないのかぁぁぁぁっ!?」
「え?そんなのするわけないじゃないですか」
またもや即答でした。
「……もういい!もういいよぉぉぉぉっ!!おまえのもうっそうっにつきあってられないよぉぉぉぉっ!!」
れいむはそう言うなり、さなえに飛びかかりました。
これ以上さなえの妄想に付き合っていては埒が明かない。
すぐにでもこのゲスさなえを瞬殺してこの家を奪おう。
そう思うのと体が動いたのはほぼ同時でした。
「しねぇぇぇぇっ!!」
「きゃっ!」
れいむの体当たりがさなえの体に命中し、さなえは弾き飛ばされてしまいました。
「ゆへへへっ!!いいきみだね!」
今のは致命傷だ。これでゲスさなえも永遠にゆっくりしただろう。
そう思いながら、れいむが台所へ向かおうとした時です。
「う~ん……。びっくりしました……」
死んだと思ったはずのさなえがムクリと起き上がったのです。
しかも傷一つなく。
「……な、なんでしんでないのぉぉぉぉっ!?」
そんな馬鹿な。
確かにれいむの渾身の一撃は命中したはずだ。
それなのに。
「もう!びっくりするじゃないですか!」
「なんでぇぇぇぇっ!?なんでしぬどころかけがひとつしていないのぉぉぉぉっ!?」
「なにいってるんですか!ゆっくりはじゅみょういがいでは、ちょっとやそっとのことじゃしなないんですよ!」
「……は?」
その言葉にれいむは一瞬、餡子脳がフリーズしていました。
……一体何を言っているんだこいつは。
ゆっくりは寿命以外では死なないだと?
……じゃあ、なんでまりさは死んだんだ?
れいむは今までの出来事を思い出していました。
以前、このれいむには番であるまりさがいました。
れいむはまりさと共に路上で物乞いをして僅かながらの食べ物を貰い、その日暮らしをしていました。
れいむとまりさだけなら何とか生きていけたかもしれませんでした。
ですが、数日前にれいむとまりさは住処である人気のない路地裏の段ボールの中でつい『すっきりー』をしてしまいました。
結果、れいむの頭の上にれいむ種4匹、まりさ種1匹の計5匹の赤ゆっくりが実ってしまいました。
赤ゆ達がれいむの頭の上に実っている間は普段通りで良かったのですが、赤ゆ達が産まれると、状況は一変しました。
「こんにゃまじゅいごひゃんしゃんにゃんてたべりぇりゅわきぇにゃいでしょ!」
「れいみゅとあしょんでくれにゃいおやにゃんてしにぇ!」
「いきゅじほうきにゃの!?とんだゲチュおやだにぇ!」
産まれた赤ゆはかなりのゲスっぷりを発揮しました。
れいむとまりさは嘆きましたが、初めてできた自分の子供。そこは我慢して赤ゆ達を育てていました。
そうなると、このままでは食糧が足りず、一家は飢え死にしてしまいます。
れいむは段ボールの住処に残って子供達の世話をし、まりさは一生懸命物乞いをしていました。
ですがある日、いつも以上に貰える食糧が少なかったまりさは、とうとう人間に対し、キレてしまいました。
『このクズにんげん!まりさたちのどれいのくせになんでまりさたちをゆっくりさせないんだぜ!いっそのことしんだほうがいいのぜ!』
結局、まりさは人間に踏みつぶされてしまい、永遠にゆっくりしてしまいました。
そうなれば困るのはれいむと赤ゆ達です。
自分が物乞いに行けば、赤ゆっくりの世話をする者がいないのですから。
れいむは少ない餡子脳で、頭から湯気が出る位悩みました。
数時間後。れいむはある決断をしました。
れいむと赤ゆ達が生き残る道はただ一つ。
人間の家を奪って、そこでゆっくりする。
何とも浅はかな考えですが、れいむはそれを実行に移しました。
ギャーギャー騒ぐ赤ゆ達を段ボールハウスに残し、進入できそうな人家を探しました。
そして見つけたのが、人間が居なさそうな一軒の家でした。
そして現在に至ります。
「うそだうそだうそだあぁぁぁぁっ!!」
「きゃっ!やっ!」
れいむはそう叫びながらさなえにのしかかり、さなえの上で何度も跳ねました。
デタラメだ。
こいつの言っていることはデタラメだ。
死なないゆっくりなどいるものか。
そう思い、れいむはさなえを本気で殺そうと、何度も何度も跳ねました。
「やめてください!おもいですよ!」
……やはりと言うべきか。
さなえは嫌がってはいるものの、とても死にそうな状態とは言えませんでした。
「ゆふぅ……、ゆふぅ……、ゆふぅ……」
「どいてください!れいむさん!」
さなえは何とかれいむの束縛から逃げ出そうとしますが、なかなか思うように動く事はできませんでした。
「ゆふぅ……、ゆふぅ……、ゆふぅ……」
れいむは悩みました。
これだけ傷めつけてもさなえは全然死にそうにない。
ならばこいつをどうするべきか。
「……きめた!きめたよ!おまえは、れいむのすっきりーどれいにしてやるよ!」
死なないのなら、一生奴隷としてこき使ってやる。
先程までさなえが死なない事を否定していたのに、れいむはあっさりと考え方を切り替えました。
こいつはゆっくりできないクズだが、よく見てみると、なかなかの美ゆっくり。
このれいむのどれいとしてはギリギリ合格点だ。
れいむは勝手にさなえに点数を付けていました。
「かってなことをいわないでください!」
さなえの怒りはもっともです。ですがれいむに対しては馬の耳に念仏です。
「ゆひゃひゃっ!!おまえにきょひするけんりなんかないよ!」
そう言うなり、れいむは自分のぺにぺにをさなえの下腹部に押し当てました。
「な……なにをするんですか!?」
「わかっていっているでしょ!?さなえはほんとうにあばずれだね!」
れいむはニタリと笑いながら、自分のぺにぺにをさなえの中に入れようとしました。
……が。
「なんでまむまむがないのぉぉぉぉっ!?」
「そんなものあるわけないじゃないですかぁっ!」
さなえの下腹部には、本来どのゆっくりにもあるはずの生殖器が存在しませんでした。
「ゆぎぃぃぃぃっ!!……だったら!!」
れいむはさなえの上から飛び下りると、さなえの体に自分の体を何度も擦りつけました。
「やっ、やめてください!」
「ゆひゃひゃひゃっ!!やめるわけないでしょっ!?まむまむがないなら、すりすりですっきりするよっ!!」
すりすりなら確実にさなえはすっきりー!するだろう。
そして赤ゆを実らせて、れいむと同じ赤ゆだけ産ませて、さなえと同じ赤ゆは食べてやる。
永遠にそれを繰り返せば、美味しい赤ゆを食べながら、自分の可愛いおちびちゃんに囲まれて幸せな日々を送れる。
れいむはそう確信していました。
……数十分後。
「……な……なん、で……、なんで、すっきりしないのぉぉぉぉっ!?」
この数十分の間に、れいむは何度もすっきりー!しました。
なのに、さなえは一度もすっきりー!せず、子供を妊娠する事もありませんでした。
「あたりまえです!ゆっくりはすっきりー!なんてしませんよ!」
「じゃあなんであかちゃんができないのぉぉぉぉっ!?さすがにあかちゃんはできるでしょぉぉぉぉっ!!」
「そんなわけないでしょう!?あかちゃんは『うーぱっく』さんがはこんでくれるんですよ!?」
「はあぁぁぁぁっ!?」
もはやれいむの餡子脳では、現状を全て理解しきる事ができませんでした。
ただ確実に理解している事は。
さなえはご飯を食べなくてもゆっくりできる。
さなえは排泄しなくてもゆっくりできる。
さなえは寿命以外ではほとんど死ぬ要素が無いのでゆっくりできる。
さなえはすっきりー!しなくてもゆっくりできる。
さなえには『うーぱっく』が赤ちゃんを届けてくれるのでゆっくりできる。
れいむにとって、その全てが信じられない事でした。
自分の信じ続けてきた『常識』が、さなえには全く通用しないのです。
それどころか、自分が『非常識』だと言われる始末。
明らかにおかしいのはこのさなえだ。
明らかにゆっくりできていないのはこのさなえだ。
……なのに。
れいむはご飯を食べなくてはゆっくりできない。
れいむは排泄をしなければゆっくりできない。
れいむは寿命以外でも死ぬ要素が沢山あるのでゆっくりできない。
れいむはすっきりー!できなければゆっくりできない。
れいむは自力で赤ちゃんを産まなければいけないのでゆっくりできない。
このれいむとさなえを比べてみると。
どうしても自分の方がゆっくりしていないのです。
「みとめない!みとめない!みとめないぃぃぃぃっ!!」
れいむはさなえを認める訳にはいきませんでした。
もしさなえを認めてしまえば、明らかにゆっくりできていないのは自分なのですから。
「ゆっがあぁぁぁぁっ!!」
れいむは今度こそ、さなえの息の根を止めてやろうと、今までのゆん生の中の最高の力で体当たりを仕掛けました。
「させるかよ、糞饅頭」
「ゆげっ!?」
その体当たりがさなえに届く事はありませんでした。
れいむの襲撃からかれこれ約1時間。その間に、家主であるお兄さんが帰宅していたのです。
自宅に帰ってさなえの居る居間へ向かったお兄さんの見た光景は、野良れいむがさなえに体当たりしようとしているものでした。
すぐさまお兄さんはダッシュでれいむを蹴り飛ばし、れいむの暴挙を阻止しました。
「ゆべっ!」
れいむは壁にぶち当たり、ずるずると落ちて行きました。
「お、おにいさん!こわかったですぅ!」
「さなえ、大丈夫か?怪我は無いか?」
「はい、だいじょうぶです……」
お兄さんはさなえの無事を確認していました。
「な……、なんでにんげんがいるのおぉぉぉぉっ!?」
れいむにとっての幸運は、お兄さんの蹴りが致命傷とはならなかった事です。
ですので、今のれいむには現状を理解できずに叫ぶ位の元気がありました。
「それはこっちの台詞だ、糞饅頭。さなえに何をしようとした?」
「さ、さなえがわるいんだよ!ここはれいむのおうちなのに、さなえがあとからきたんだよ!」
「ふざけるな。それはお前の妄想だ」
「そ、それだけじゃないよ!さなえはうそつきなんだよ!ごはんさんをたべなくてもゆっくりできるとか、しなないとかうそをついているんだよ!」
「……」
「だから、この『ひじょうしき』なさなえをせいっさいっしようとしたんだよ!」
「……」
「れいむはぜんぜんわるくないよ!だって、おかしいのはさな「……何言ってるんだ?お前」ゆっ!?」
「ゆっくりなら、それ位普通だろ?一体何を言ってるんだ?」
「……ふざけるなあぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」
さなえだけでなく、この糞奴隷までもがそんな嘘をほざくのか。
こいつらは本当に頭が可哀想、いや、狂っている。
こいつらの話は何もかもがデタラメだ。
「だったらしょうこをみせろおぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!!」
「……」
お兄さんは黙り込んでしまいました。
「ゆ、ゆぷぷぷっ!!できないんでしょ?しょうこをみせることができないんでしょお!?」
「……」
……勝った。
お兄さんの沈黙は、このれいむ様に反論できない証。
れいむはそう解釈しました。
やはりこいつらは嘘吐きだった。
これでこいつらはこのれいむ様の奴隷に
「いいよ?」
「……え?」
お兄さんはそう言うなり、さなえを連れて別の部屋へ行ってしまいました。
一匹取り残されてしまったれいむ。
その間、れいむはポカンと固まっていました。
……数分後。
お兄さんは両手に何かを持ってきて戻って来ました。
両手に持っていたのは、風呂桶でした。
そしてその風呂桶の中には、少し熱めのお湯が入っていました。
「そ、そんなものでどうしようっていうの!?」
れいむはお兄さんが何をしようとしているのか想像できませんでした。
「この風呂桶の中に、今からさなえが入る」
「……ゆ、ゆーひゃっひゃっひゃっ!!!!ばかなの!?しぬの!?そんなことしたら、しぬにきまってるでしょ!?ゆーひゃっひゃっひゃっ!!!!」
頭が狂ってしまったのか、この糞奴隷は。
ゆっくりは水に溶けて死んでしまうじゃないか。
「ほれ、さなえ。少し早いけど風呂にしようか」
「はーい!」
さなえは躊躇なく風呂桶のお湯の中へ飛び込みました。
「ゆーひゃっひゃっひゃっ!!!!さなえはほんとうにおおばかものだね!」
まったく、自分から死にに行くようなものじゃないか。
『非常識』もここまで来ると哀れだ。
れいむはそう考えていました。
……しかし。
「ふ~……。いいおゆです~」
さなえは死ぬどころか、風呂桶の中でプカプカ浮いてリラックスしていたのです。
「……ふざけるなあぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」
このクズ共が!この嘘吐き共が!
ゆっくりが水で溶けないなんてあり得ない!
こいつらは何か細工をしたんだ。
そうに決まってる。そうに決まってる!
「そんなものでなっとくできるわけがないでしょおぉぉぉぉっ!?ほかのしょうこをだせえぇぇぇぇっ!!」
「いいよ?」
またもあっさりとお兄さんはそう言うと、さなえを連れてしまいました。
またも一匹取り残されてしまったれいむ。
その間、れいむはやはりポカンと固まっていました。
……数分後。
お兄さんは両手に何かを持ってきて戻って来ました。
両手に持ってきたのは、レトルトのカレーライスでした。
「な、なんなの、そのごはんさんは!?」
ご飯なのに何故かゆっくりできなさそうな感じがする。
れいむは本能でそう感じていました。
「おい、糞饅頭。試しに食ってみろ」
そう言うなり、お兄さんはほんの少しのカレーライスをれいむの口の中に上から落としました。
「ゆ、ゆぎゃあぁぁぁぁっ!?からいぃぃぃぃっ!?」
ほんの少量でもこの始末。
ゆっくりにとって辛い食べ物は、劇薬と言っても過言ではありません。
「ひふうぅぅぅぅ……、ひふぅぅぅぅ……」
食べたカレーライスが少量でもあったため、れいむは程なくして落ち着きを取り戻しました。
「今から、このカレーライスをさなえに食べてもらう」
「……ゆ、ゆーひゃっひゃっひゃっ!!!!ばかなの!?しぬの!?そんなことしたら、しぬにきまってるでしょ!?ゆーひゃっひゃっひゃっ!!!!」
とうとう本当に頭が狂ってしまったのか、この糞奴隷は。
こんな辛い物を食べてしまえば、死んでしまうじゃないか。
「ほれ、さなえ。『数日ぶり』のカレーライスだぞ」
「わあ!かれーらいすさんですー!」
さなえは躊躇なくカレーライスを食べ始めました。
「ゆーひゃっひゃっひゃっ!!!!さなえはほんとうにおおばかものだね!」
まったく、自分から死にに行くようなものじゃないか。
『非常識』もここまで来ると本当に哀れだ。
れいむはそう考えていました。
……しかし。
「ふー!ごちそうさまでした!」
さなえは死ぬどころか、そのカレーライスをあっと言う間に完食してしまったのです。
……れいむは、もはや大声を上げる気にもなれませんでした。
もはやれいむには、さなえはゲスでも嘘吐きでも頭がおかしい奴でも無く。
おぞましい化け物にしか見えませんでした。
さなえには、自分達ゆっくりの『常識』が通用しないのですから。
「これで分かっただろ?」
「ゆっ!?」
お兄さんの問い掛けにれいむは過敏に反応しました。
「一体どっちが『非常識』なんだ?」
その問い掛けに、れいむが取った行動は。
「ゆぎゃあぁぁぁぁぁぁぁっ!?」
目の前の『非常識』から、逃げ出す事でした。
……結局。
れいむはお兄さんの家から一目散に逃げ出しました。
逃げ出している途中で何度も何度も振り返りましたが、お兄さんは追いかけては来ませんでした。
命が助かっただけでも儲けもの。
金輪際、あの家には近づかないようにしよう。
普通のゆっくりはそう考えるものです。
……普通のゆっくりは、ですが。
「……ゆぐうぅぅぅぅ……。れいむはぜったいにあきらめないよぉ……」
あれだけの恐怖を味わってなお、このれいむはあの家を奪う事を諦めていませんでした。
「けど、またあのおうちにいったら、ゆっくりできないよ……」
さすがに、れいむはあの家で味わった恐怖を忘れてはいませんでした。
……その恐怖を理由に、あの家に関わらないという選択をすれば良かったのですが。
「それでもぜったいにてにいれてやるぅ……」
とは言ったものの、れいむはどうすればあの家を手に入れる事が出来るのか分かりませんでした。
このまま、あの家に戻れば、先程の二の舞でしょう。
最悪の場合、お兄さんに瞬殺されてしまう可能性もあります。
「ゆぐぅ……!どうすればいいのぉ……!」
れいむは許せませんでした。
何故、あの『化け物』のように不気味なさなえが、人間に飼われて幸せに暮らしているのか。
れいむの方が、あのさなえより何百倍も可愛いのに!
あんな『非常識』なさなえのどこがいいのか。
あんな『非常識』な……。『非常識』……。『非常識』……。
「!!」
れいむは閃きました。
「ゆふっ……!ゆふふっ!!そうだ!これだよ!これならぜったいうまくいくよ!あのおうちをれいむのものにできるよ!」
れいむは自分の天才的な閃きに自己陶酔していました。
その方法とは……。
「ゆっくりかえったよ!」
「「「「「ゆゆ~ん!おかえりなちゃーい!!」」」」」
母親であるれいむの帰宅に、留守番をしていた赤ゆ達は、媚を売るような笑顔で出迎えました。
「「「「「おきゃーしゃん!あちゃらしいおうちはみちゅけたの?」」」」」
「うん、みつけたよ!」
「ゆわ~い!!」
「やっちゃー!」
「ゆっきゅりできりゅにぇ!」
「うれちーちー!」
「おきゃーしゃんはやきゅにたちゅにぇ!」
赤ゆ達はとてもご機嫌でした。
何故なら、れいむが今よりもゆっくりできるというお家を見つけてきたと言うのですから。
「「「「「おきゃーしゃん!はやきゅあたらしいおうちにいきょう!」」」」」
こんな今にも崩壊しそうで、寒い段ボール箱よりも、温かくて頑丈な、ゆっくりできるお家。
そこなら自分達はとてもゆっくりできる。
赤ゆ達はそう信じていました。
……ですが。
「いますぐはむりだよ!」
れいむのその言葉を聞いた途端。
「にゃんでぇぇぇぇっ!?」
「ふじゃけりゅなぁぁぁぁっ!!」
「ゆっきゅりできにゃいぃぃぃぃっ!!」
「かなちーちいぃぃぃぃっ!!」
「こにょやきゅたたじゅうぅぅぅぅっ!!」
先程とは打って変わって、赤ゆ達はれいむを罵倒し始めました。
「でもあんしんしてね!おかあさんのいうことをちゃんときけば、すぐにあたらしいおうちにいけるよ!」
「「「「「ゆ?ほんとう?」」」」」
「ほんとうだよ!だからおちびちゃんたちはすなおにいうことをきいてね!」
「「「「「……ゆっきゅりりかいしたよ!」」」」」
本当は面倒な事は死んでも御免でしたが、これもゆっくりできる新しいお家のため。
赤ゆ達はしぶしぶ了承しました。
「だいじょうぶ!とってもかんたんなことだよ!」
「「「「「なりゃあんしんだにぇ!」」」」」
よかった。どうやら簡単な事で済みそうだ。
赤ゆ達はそう思っていました。
「ごはんさんをたべないで、うんうんとしーしーをしないで、ぺにぺにとまむまむをつぶして、すっきりーしなければいいんだよ!」
れいむのその言葉を聞くまでは。
「「「「「はあぁぁぁぁっ!?びゃかにゃのおぉぉぉぉっ!?しにゅにょおぉぉぉぉっ!?」
赤ゆ達はれいむの言葉に耳を疑いました。
それはそうでしょう。どれもこれも、明らかにゆっくりできなさそうな事ばかりなのですから。
「そんにゃふじゃけたこちょをいうゲシュおやはちにぇぇぇぇっ!!」
一匹の赤まりさがれいむに飛びかかりました。
こんなゆっくりできない母親は、まりさが制裁してやる!
赤まりさは、すぐさま母親に逆らう事を選びました。
「おかあさんにしねなんていうクズはしねぇ!」
「ゆぴぃっ!?」
まりさはれいむに押しつぶされ、一瞬で餡子の染みと化しました。
その選択自体が死亡フラグである事を永遠に理解する事無く。
「「「「ゆんやあぁぁぁぁっ!?」」」」
母親であるれいむの突然の暴挙に、残された赤ゆ……、赤れいむ達は叫びました。
「うるさいよ!こいつのようになりたくなかったら、すなおにれいむのいうことをきいてね!」
「「「「ゆっきゅりりきゃいしましたあぁぁぁぁっ!!」」」」
赤れいむ達は母親に従う事を選びました。
れいむが思いついた方法。
それは、自分の娘達をさなえと同じようなゆっくりにする事でした。
可愛さでは断然自分達の方が上だ。
しかし、それだけではあの糞奴隷は満足しないだろう。
だったら、あのさなえと同じになればいい。
あの人間はさなえの『非常識』さにベタ惚れなのだろう。
可愛さで優っていて、同じようにゆっくりしている自分達とさなえが並んだら、あの人間はどうするか。
間違いなく歓喜して自分達を選び、さなえを殺すか追い出すだろう。
そして人間は自分達の奴隷にして、一生死ぬまであまあまを貢がせるのだ。
……それが、れいむの閃きの全てでした。
はっきり言ってかなり無茶苦茶な案でしたが、れいむにが絶対的な根拠がありました。
「あのさなえにできて、れいむにできないわけがないよ!」
クズであるさなえにでもできるのだから、全てにおいて優っているれいむが不可能なはずがない。
それが、れいむの自身の源でした。
『非常識』と馬鹿にしたさなえと同じ存在になり、家を乗っ取る。
もはやれいむは、目的と手段が逆転していました。
それに気付く事無く、れいむは自分の娘達に対して『特訓』を開始したのです。
長女れいむはこう言われました。
「これから先、何も食べるな」と。
基本的にゆっくりは燃費が悪い生き物で、それが赤ゆっくりならばなおさらです。
成長期である赤ゆも状態で何も食べないという事は、死を選ぶようなものです。
このままでは、長女れいむは2、3日で餓死してしまいます。
「おにゃきゃしゅいたよ……、おきゃーしゃん……」
「うるさいよ!そんなこといわずにがまんしてね!」
長女れいむの訴えはあっさりと破棄されてしまいました。
「ゆぅ……。おにゃきゃしゅいたよぉ……」
二女れいむはこう言われました。
「これから先、絶対にうんしーをするな」と。
ゆっくりは自分の体内の古い中身や水分を便や尿として排泄します。
排泄する事ができないという事は、身体や精神に苦痛やストレスをもたらします。
このままでは、二女れいむは2、3日で破裂死してしまいます。
「うんうんしたいよ……、おきゃーしゃん……」
「うるさいよ!そんなこといわずにがまんしてね!」
二女れいむの訴えはあっさりと破棄されてしまいました。
「ゆぅ……。うんうんしたいよぉ……」
三女れいむはこう言われました。
「ぺにぺにはいらないから、さっさと潰す」と。
母れいむはそう言うなり、三女れいむのぺにぺにを噛み千切ってしまいました。
ぺにぺにを噛み千切られ、その傷から命の餡子が少しずつ漏れだしてしまいました。
このままでは、三女れいむは2、3日で出餡死してしまいます。
「ぺーりょぺりょしちぇ……、おきゃーしゃん……」
「うるさいよ!そんなこといわずにがまんしてね!」
三女れいむの訴えはあっさりと破棄されてしまいました。
「ゆぅ……ぺりょぺりょしちぇよぉ……」
そして四女れいむは……。
「ゆんやあぁぁぁぁっ!?やめちぇにぇぇぇぇっ!?」
「うるさいよ!これくらいでねをあげないでね!」
四女れいむは母れいむに後ろから犯されていました。
四女れいむはこう言われました。
「何があっても、絶対にすっきりー!するな」と。
母れいむはかれこれ十数分四女れいむを犯していました。
それも四女れいむが必死で、すっきりー!しないよう耐えていたためです。
しかし、もはや体力の限界でした。
「ちゅっ、ちゅっきりぃぃぃぃっ!!」
四女れいむは絶頂に達してしまい、頭から茎が生え、実ゆっくりが実り始めました。
「やめちぇ……!!れいみゅのあんきょしゃんしゅわにゃいでぇ……!」
赤ゆっくりが子供を宿せば、餡子を子供に吸い取られて、確実に永遠に死んでしまいます。
この四女れいむもその例に漏れず、あっという間に黒ずんで永遠にゆっくりしてしまいました。
それと同時に、栄養源が無くなってしまった実ゆも、小さな黒い塊となって、黒ずんだ四女れいむの隣にポトポト落ち始めました。
「ふん!こんなこともがまんできないなんて、れいむのこどもじゃないよ!」
自分の子供を殺したというのに、れいむは全く悪びれていませんでした。
生き残りの三匹の赤れいむ達はブルブルと震えながられいむを見ていました。
その日の夜。
れいむはグースカといびきをたてて寝ていました。
それとは対照的に、赤れいむ達は寝る事ができませんでした。
長女れいむは空腹による痛みのため。
二女れいむは排泄できない痛みのため。
三女れいむはぺにぺにを噛み千切られた痛みのため。
結局、赤れいむ達は一睡もする事無く、朝を迎えました。
二日目。
長女れいむはたった一日で体の体積が2割ほど小さくなっていました。
それは、自分の体内の餡子を消費し、エネルギーに変える事で起こった現象でした。
言わば、予備バッテリーのようなものです。
「……ゆ……ゆぅ……」
長女れいむは空腹を必死に耐えていました。
二女れいむは大量の脂汗をだらだらと垂らしていました。
顔を真っ赤にし、歯ぐきをむき出しにして歯をがっしりと噛んでいます。
その表情はとにかく必死。それ以外の表現が思いつかない位のものでした。
「ゆぎぃぃ……!!」
二女れいむは排泄を必死に耐えていました。
そして三女れいむは……。
「もっちょ……、ゆっきゅりしちゃきゃった……」
その言葉を遺言に、三女れいむは永遠にゆっくりしてしまいました。
ぺにぺにを噛み千切られた際に出来た傷跡から、予想以上に餡子が漏れ出してしまったのが原因でした。
「ふん!こんなこともがまんできないなんて、れいむのこどもじゃないよ!」
自分の子供を殺したというのに、れいむは全く悪びれていませんでした。
生き残りの二匹の赤れいむ達はブルブルと震えながられいむを見ていました。
その日の夜。
れいむはグースカといびきをたてて寝ていました。
それとは対照的に、赤れいむ達は寝る事ができませんでした。
長女れいむは空腹による痛みのため。
二女れいむは排泄できない痛みのため。
結局、赤れいむ達は一睡もする事無く、朝を迎えました。
三日目。
長女れいむは昨日よりもさらに一回り小さくなっていました。
このまま何も食べなければ、長女れいむは明日にでも、確実にゆっくりしてしまうでしょう。
「……」
長女れいむは喋るエネルギーすらも惜しいと考え、ただじっと耐えていました。
そして二女れいむは……。
「ゆ、ゆぎぎぎぃぃぃぃっ……!!」
もはや体力と忍耐の限界が近づいていました。
そもそも、一睡もせずに排泄を耐えていたこと自体が、奇跡を通り越して異常でした。
目は今にも飛び出そうで、顔はトマトのように真っ赤で、歯は噛みしめ過ぎたため、ヒビが入っていました。
もはや、その表情は赤ゆっくりの範疇を通り越していました。
「ゆぎゃあぁぁぁぁっ!!」
そして二女れいむは、勢いよくうんうんとしーしーを噴射するように排泄しました。
……それと同時に、本来は出るはずの無い、命の餡子まで。
勢い良く出しすぎたため、古い餡子と共に、出す必要のない餡子まで一緒に出てしまったのです。
結果。二女れいむはペラペラの皮だけになり、永遠にゆっくりしてしまいました。
「ふん!こんなこともがまんできないなんて、れいむのこどもじゃないよ!」
自分の子供を殺したというのに、れいむは全く悪びれていませんでした。
生き残りの長女れいむの瞳には、何も映っていませんでした。
その日の夜。
れいむはいびきをたてて寝ていました。
それとは対照的に、長女れいむは寝る事ができませんでした。
もはや理由は言わなくても分かるでしょう。
長女れいむの命はまさに風前の灯火でした。
四日目。
長女れいむは、ピクリとも動かなくなっていました。
赤ゆっくり達の中では、一番まともなゆん生の終え方だったと言えるでしょう。
「なんでぇぇぇぇっ!?なんでこんなこともできないのぉぉぉぉっ!?」
れいむは訳が分かりませんでした。
どうしてこの子供達は、こんなにも根性無しなのか。
結局誰一人まともに出来やしなかった。
……いや。もしかしたら。
もしかしたら。れいむは、騙されていたのでは?
全部、あのさなえと人間の思い通りだったのでは?
れいむに嘘を吹き込んで、楽しんでいたのでは?
……許せない。
絶対に許せない!
「ゆるさないよぉぉぉぉっ!!あのくそどもぉぉぉぉっ!!」
れいむは段ボール箱から勢いよく飛び出し、もう一度あの家に向かいました。
はっきり言って逆恨み以外のなにものでもありません。
ですが、れいむの餡子脳の中では、さなえとお兄さんが、自分の娘達を殺した事になっていたのです。
「ころしてやるぅぅぅぅっ!!おちびちゃんのかたきだぁぁぁぁっ!!」
「……何で、またここに来たんだ?お前は」
「ゆ……ゆひぃ……」
案の定と言うべきでしょうか。
れいむはお兄さんにスーパーフルボッココンボを決められ、瀕死の状態でした。
さなえはお兄さんに別の部屋で待っているよう言われたので、隣の部屋で待機していました。
「一度見逃したというのに、何で戻って来たんだ?」
「お、おまえが……、おちびちゃんをころしたんだぁ……!!」
「は?何を訳の分からない事を……」
れいむはお兄さんに、今までの事情を全て話しました。
れいむの話を聞いた後……。
「……そうか。それは悪かったな。お詫びに、お前をさなえと同じ体にしてやるよ」
「ゆ!?」
お兄さんが謝る理由は全く無いのですが、お兄さんはれいむに謝罪しました。
それどころか、さなえと全く同じ体にしてやるとまで言ってきたのです。
「……いいよ!それでゆるしてあげるよ!」
れいむにとって、それは願ってもないチャンスでした。
口では散々さなえの事を罵倒していましたが、さなえと同じ体になれば、とてもゆっくりした毎日を送る事が出来るのですから。
おちびちゃんが死んでしまったのは残念だけど、子供はまた産めばいい。
れいむはあっさりと自分の子供の仇を取る事を諦めました。
「それじゃあ、このジュースを飲んでくれ。今からお前に改造手術を施してやるよ」
お兄さんはそう言うと、台所へ行き、冷蔵庫を開けて中から水色の液体が入った瓶を一本持ってきました。
れいむは一瞬その飲み物を飲む事を躊躇いました。
「どうした?飲まないのか?」
「……のむよ!だからさっさとよこしてね!」
「……分かった」
お兄さんはれいむの口の中に、その飲み物を流しこみました。
その飲み物を飲んだ瞬間。れいむは気絶してしまいました。
「おい、起きろ、れいむ」
「ゆ……、ゆん……?」
どれ位寝ていたでしょうか。
れいむはお兄さんの呼びかけに目を覚ましました。
「もう改造手術は終わった。お前はさなえと同じ体になった」
「ゆ……!?ほんとう……!?」
れいむは半信半疑でした。
自分の体にはこれと言った変化が何一つ無かったのですから。
「変わっていないと思うなら、この飯を食べてから一旦お前の家に戻れ。そうすれば全て分かる」
お兄さんはれいむの目の前に、市販のゆっくりフードを山盛りにして差し出しました。
「ゆゆ!?おいしそうだよ!これはぜんぶれいむのものだよ!」
れいむはお兄さんの説明を聞かず、ゆっくりフードにむしゃぶりつきました。
「むーしゃむしゃ!うっめ!めっちゃうっめ!」
れいむはゆっくりフードを意地汚く、あっという間に食べ終えてしまいました。
「げふぅ……。もしこれでなにもかわっていなかったら、せいっさいっしてやるからね!」
れいむはドスン、ドスンと跳ねてお兄さんの家を後にしました。
ここまでしてもらってこの捨て台詞です。
普通の人間ならこの場で潰していてもおかしくはないのですが、お兄さんはそれをしませんでした。
れいむが去ってから数分後。
「おにいさん、もういいですか……?」
隣の部屋で待機していたさなえがお兄さんに尋ねました。
「ああ。もういいよ、さなえ」
「……さっきのれいむさん。わたしのせいで、おちびちゃんがしんでしまったって……」
「お前は何も悪くないよ、さなえ」
お兄さん同様、さなえも全く悪くありませんでした。
しかしさなえは心優しいゆっくり。
相手がゲスでも、どうしても心配したり、自分を責めたりしてしまうのです。
「わたしは、『ひじょうしき』なんでしょうか……」
「さなえ。あんな奴の言う事なんか間に受けるな。お前は『非常識』なんかじゃないさ」
「……ありがとうございます、おにいさん」
さなえはお兄さんに対し、少しだけ笑みを浮かべました。
れいむにボロクソ言われたこのさなえ。
他のゆっくりから見て、さなえは異形とも言える存在でした。
ですが、このさなえは幼い頃、ゆっくりショップで一万円で販売していた所をお兄さんに買い取ってもらった、普通のゆっくりです。
品種改良をした特別なゆっくりではありません。
突然変異をした特別なゆっくりでもありません。
では、何故このさなえはこんなにも、他のゆっくりとかなり違うのか。
その秘密は、さなえとお兄さんが最初に出会った、2年前にありました。
「ふ、ふちゅちゅきゃもにょでしゅが、よりょしきゅおねぎゃいしましゅ!」
赤ゆであるさなえはとても緊張していました。
このお兄さんに買い取ってもらい、生活の場が今までのゲージの中とは違い、広々とした家の中に変わったのですから。
それに、お兄さんに失礼の無いようにしなければいけない。
さなえはそう考えていました。
「そんなに緊張しなくてもいいよ、さなえ」
お兄さんはさなえに優しくそう言いました。
「は、はい!わきゃりました!」
「ははは……。あ、そうだ、さなえ。お腹減ってないか?ご飯の用意が出来てるんだ」
「ごはんしゃんでしゅか?」
ご飯と聞いた途端、さなえのお腹がク~と鳴りました。
「あう……、はじゅかしいでしゅ……」
「よし、それじゃあ飯にするか」
お兄さんとさなえは温かいご飯を食べ始めました。
「むしゃむしゃ……。……おいしいでしゅ!おにいしゃんぎゃちゅくったんでしゅか?」
「ああ、一応趣味なんだ。口に合ったか?」
「はい!おいしいでしゅ!」
さなえはお兄さんが用意してくれたご飯を綺麗に完食しました。
「ふぅ……。おいしかったでしゅ……」
「なあ、さなえ」
「はい?なんでしゅか?」
美味しいご飯を食べて満腹のさなえに、お兄さんはこう言いました。
「ゆっくりってさ、毎日ご飯を食べなくてもゆっくりできるんだよ。知らなかったか?」
「……え?」
さなえは耳を疑いました。
それもそうでしょう。ゲージに居た頃は毎日大体決まった時間になるとお腹が空き、餌を食べていたのですから。
「あ、あの、おにいしゃん……」
「ん?どうした、さなえ」
「……しょれ、ほんとうでしゅか……?」
「ああ。本当だよ」
お兄さんは自信たっぷりにそう言いました。
「で、でみょ……」
それでもさなえは信じられませんでした。
「本当だって。だって……」
お兄さんはさなえに向かって、こう言ったのです。
「それが『常識』なんだからさ」
その夜。
さなえはなかなか寝付けませんでした。
ゆっくりは毎日ご飯を食べなくてもゆっくりできる。
けれども、さなえはお兄さんの言葉を疑っていました。
そんな事がある筈がない。
そう思っていました。
「それが『常識』なんだからさ」
お兄さんのその言葉を聞くまでは。
お兄さんはゆっくりである自分よりも物知りです。
そのお兄さんが『常識』だと言うのですから、きっと本当なのでしょう。
(しゃにゃえは、せけんしらじゅだったんでしゅね……)
ゆっくりはご飯を食べなくてもゆっくりできる。
だって、それが『常識』なんだから。
そう思いながら、さなえはゆっくりと眠りにつきました。
……次の日。
「おにいしゃん!おにいしゃん!」
「ふわ~あ……。……どうした、さなえ……」
「おにいしゃんのいっていたこちょはほんとうだったんでしゅね!」
「え?」
「おなかがぜんぜんへらないんでしゅ!おにいしゃんのいったとおりでしゅ!」
「……え?」
「これが、『じょうしき』なんでしゅね!ありぎゃとうございましゅ、おにいしゃん!」
「……あ、ああ。そうだ!それが『常識』なんだよ!よかったなさなえ!これで一つ賢くなれたぞ!」
「えへへ……」
(まさか成功するとは……)
さなえのその言葉を聞いた時、お兄さんは内心かなり驚いていました。
お兄さんはさなえを飼う前に、本屋でゆっくりの飼い方が書かれている本を買いました。
お兄さんはさなえ種の情報が載っているページをめくりました。
そのページには、こう書いてありました。
『さなえ種は信仰深いゆっくりです』
『さなえ種は『常識』をとても重要視しています』
『さなえ種は基本的に何かを信じやすい性格で、反面、騙されやすい性格とも言えます』
そのページを読んだお兄さんは考えました。
もしかしたら、うまくいけば、さなえのゆっくりとしての『常識』を変える事も可能ではないか、と。
お兄さんがさなえに『常識』を説明した時。
正直、お兄さんは遊び半分でした。
失敗したら失敗したで、『さなえにはまだ早すぎたかもな』と適当な事を言ってごまかせばいい。
お兄さんはそんな感じで軽く考えていました。
ですが、さなえに対して、予想以上の効果があったようです。
(もう少し遊んでみるか……。)
「どうしたんでしゅか?おにいしゃん」
「ん!?いや、なんでもないよ」
数日もすれば、赤ゆっくりであるさなえは、この事を忘れて元に戻るだろう。
お兄さんは軽く考えていました。
「あの、おにいしゃん、しーしーしたいでしゅ……」
「ゆっくりはしーしーしなくても大丈夫なんだ。これは『常識』だぞ?」
「おにいしゃん、おみじゅしゃんはこわいでしゅ……」
「大丈夫!ゆっくりは水に溶けるなんて絶対に無いんだ。これも『常識』だからな」
「おにいしゃん、にゃんだかかりゃしょうなごはんしゃんでしゅ……」
「ゆっくりは辛い物を食べてこそのゆっくりだ!『常識』中の『常識』だな!」
「おにいしゃん!いたいでしゅ!がびょうしゃんをふんでしまいました!」
「大丈夫!ゆっくりはちょっとやそっとじゃ怪我をしないんだ!そんなの当たり前だぞ?『常識』だからな!」
お兄さんは純粋なさなえに色々なデタラメを『常識』と称して吹き込みました。
結果……。そのデタラメが、さなえの頭の中で『常識』として確立して。
その『常識』に合わせて身体能力も変化していったのです。
……それが、このさなえが変わっている理由の全てでした。
「……あっ。それとおにいさん」
「何だ?さなえ」
「あのれいむさんも、わたしとおなじようにしたんですか?」
「……ああ。あのれいむもさなえと同じ様にしたよ」
「……そうですか。……ゆっくりできるといいですね」
お兄さんは無言でさなえを抱き抱え、頭を優しく撫でました。
……お兄さんはさなえに対して、いくつか嘘を付いていました。
実際はれいむに対して、改造手術なんか施していません。
お兄さんが飲ませた物。あれは、ただのラムネでした。
砂糖による甘さと、炭酸水による辛さ。
ゆっくりにとって相反する飲み物と言えます。
それをゆっくりが飲むと、気絶してしまうのです。
当然、お兄さんには、そんな改造技術なんかありませんでした。
お兄さんがした事。それは、気絶れいむのある部分を小麦粉で塞いだだけです。
そうすればれいむはどうなるか。お兄さんは分かった上でやりました。
そして。
お兄さんはれいむに対し、罪悪感なんかこれっぽっちも感じていませんでした。
ですから、これかられいむがどうなろうが、知った事ではなかったのです。
「ゆぎゃあぁぁぁぁっ!?いだいぃぃぃぃっ!?」
れいむは今、原因不明の激痛に襲われていました。
お兄さんの家でゆっくりフードをたらふく食べた後、うんうんがしたくなったのです。
そして段ボール箱から少し離れた場所でうんうんをしようとしました。
……ですが、うんうんは出ませんでした。
それどころか、しーしーも出ないのです。
そして、うんうんをしようとした瞬間。
とてつもない激痛を体全体が駆け巡ったのです。
「なんでぇぇぇぇっ!?なんでいだいのおぉぉぉぉっ!?」
お兄さんが小麦粉で塞いだ場所。
それは、れいむのあにゃるとまむまむでした。
あにゃるを塞げば、うんうんは体の中に残ったままです。
まむまむを塞げば、しーしーは体の中に残ったままです。
それらを無理矢理排泄しようとすればどうなるか。
その結果は、れいむの苦痛が証明していました。
「ゆぎぃぃぃぃっ!?いだいっ!いだいぃぃぃぃっ!?」
れいむは痛みでその場から動く事ができませんでした。
「だれがれいむをだずげろぉぉぉぉっ!!」
れいむは大声で助けを求めました。
……が。そこは人気のない路地裏。
それが災いして、人間はおろか、ゆっくりも野良猫も、誰も来ませんでした。
れいむは、ある意味でさなえと同じ体になれました。
穴が塞がっているのですから、排泄する必要がありません。
そして、体の中に排泄物が残っている訳ですから、空腹を感じる事もありません。
腹の中が餡子で満たされているのですから、足りない栄養を補う必要もありません。
つまり、ほぼ半永久的に生きられるようなものです。
それは、れいむが求めていたものと大体同じようなものでした。
「ゆぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?だれがだずげでぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!」
それが幸せに繋がったとは、限りませんでしたが。
「ふふ、おちびちゃん、ゆっくりしていってくださいね!」
「はい、おきゃーしゃま!」
(うーん……。まさか本当にこれも『常識』になるなんてなぁ……)
あれから数日後。
さなえとお兄さんにに新しい家族が増えました。
それは、さなえに良く似た可愛らしい赤さなえでした。
お兄さんはその赤さなえをゆっくりショップで購入した訳でも、拾ってきた訳でもありません。
以前、お兄さんはさなえにこんな事も言ってました。
「おにいさん、あかちゃんはどうやってつくるんですか?」
「ん?んー……、あー……。うーぱっくが運んでくれるんだよ。『常識』だよ。……多分」
お兄さんはその場をごまかすような感じでそう言ってしまいました。
……結果。本当にうーぱっくがお兄さんの家に赤さなえを運んで来たのです。
そして、さなえ自身の体にも大きな変化がありました。
「おにいさん!わたしも『どうつき』になれましたから、これからいろいろとおてつだいできますよ!」
「……ああ、そうだな。期待してるよ、さなえ」
そう。さなえは『胴付き』ゆっくりへとクラスチェンジしたのです。
これにもお兄さんが絡んでいました。
「おにいさん、どうすればからだがはえてくるんでしょうか?」
「うーん……。俺の知っている『常識』だとな……。……カレーを食べ続ければ何とかなるんじゃないか?」
やはりと言うべきか、お兄さんの適当な『常識』は、現実のものとなったのでした。
「おちびちゃん、いまからとってもたいせつなはなしがあります!」
「ゆ?なんでしゅか?おきゃーしゃん」
「これからはなすことは、とってもだいじですからね?しっかりおぼえてくださいよ?」
「はい!わきゃりました!」
あるゆっくりは、自分が信じる『常識』の中で、とてもゆっくりする事ができました。
あるゆっくりは、自分が信じる『非常識』の中で、とてもゆっくりする事ができませんでした。
一体、どちらの『常識』が正しかったのか。
それは、ゆっくりが生きるうえでは、ほんの些細な事かもしれませんでした。
「それじゃあ、いまから、とてもだいじな『じょうしき』をおしえますからね!」
END
あとがき
反省点です。
1 何だこのさなえ無双は。
2 お兄さんのキャラが定まらなかったなぁ……
3 独自設定てんこもりだね!
結論
おまんじゅうあき様が復活したよおぉぉぉぉっ!!
ヒャッホオォォォッ!!!
このSSは、おまんじゅうあき様の絵を見ている内に、ピキーン!と何かが来たので書きました。
やっぱりさなえは無限大の可能性を秘めているね!
最後になりますが、前作のゆっくりボタンの数を見てみると、予想以上の数でした。
あんな駄文にボタンを押してくれた方。本当にありがとうございます。
これからも、時間が許す限り精一杯頑張りますので、よろしくお願いします。
1 駄文です。
2 希少種優遇です。
3 原初に近いゆっくりが登場します。
4 少し汚い表現があるかもしれません。
5 他の作者様の作品と似ている可能性があります。
それでもOKという方のみ、どうぞ。
「いまからここをれいむのおうちにするよ!」
それは、ある昼下がりの午後の出来事でした。
一匹の野良ゆっくりれいむが、人家の窓ガラスを石で割って侵入してきました。
家の中に入るなり、いきなりのお家宣言。
もし、この家に人間がいればすぐにでも飛び出してきて、れいむを潰すか追い出すかするでしょう。
しかし、肝心の家主は現在会社でデスクワークの真っ最中。この家には人間は誰一人いませんでした。
……『人間』は、ですが。
「だれですか、あなたは!?」
その家には、家主の飼いゆっくりである、ゆっくりさなえがお留守番をしていました。
「ゆゆ!?なんでさなえがれいむのおうちにいるの!?さっさとでていってね!」
「なにをいってるんですか!ここはおにいさんとさなえのおうちですよ!」
「ここはれいむのおうちなのに、まったく、さなえはとんでもないゲスだね!おわびとして、おいしいごはんさんをよういしてね!」
ここまでの流れを見る限り、ある意味でテンプレとも言える展開になって来ました。
恐らく、さなえは大人しく食べ物を差し出すか、断るかの二択のどちらかを選択する……。
……かに思われましたが。
「……ごはんさん?……どうして、ごはんさんをたべるんですか?」
「……ゆ?」
さなえの口から出たのは、従属でも拒否でも無く、本心からの疑問の言葉でした。
これは、ある『常識』的なゆっくりと、『非常識』的なゆっくりの物語です。
「そんなの常識ですよ?」
作者:ぺけぽん
「……ゆっ、ゆひゃひゃひゃひゃっ!!」
「なにがそんなにおかしいんですか?」
「さなえはほんとうにばかだね!ごはんさんをたべないとおなかがすいてゆっくりできないにきまってるでしょ!」
れいむはさなえの事を、頭が可哀想な馬鹿ゆっくりだと思いました。
「え?ごはんさんをたべなくても、おなかはすきませんよ?」
さなえのその言葉を聞くまでは。
「……はあぁぁぁぁっ!?なにいってるのぉぉぉぉっ!?ばかなの!?しぬの!?」
「どうしてそんなにおこっているんですか?」
「ごはんさんをたべないのにおなかがすかないわけないで「すきませんよ?」ゆっ!?」
れいむは一瞬固まってしまいました。……が。
「そ、そうだ!さなえはごはんさんじゃなくて、あまあまやじゅーすをたくさんたべたりのんだりしてるんだよ!」
ご飯では無く、お菓子やジュースを食べたり飲んだりしているからお腹が減らないんだ。
れいむはそう考えを切り替えました。
「たべてませんよ?」
さなえは即答でそう答えました。
「……は?」
「ごはんさんも、おかしも、じゅーすも、なーんにもたべたりのんだりしていません」
「……う、うそだあぁぁぁぁっ!!なにもたべなきゃしんじゃうでしょぉぉぉぉっ!!」
「なにもたべなくても、ゆっくりはしにませんよ?そんなの『じょうしき』じゃないですか」
「……え?」
今、何て言ったんだこいつは。
ご飯を食べなくても死なない?
それが『常識』だと?
馬鹿な。そんな馬鹿な。
れいむは混乱していました。
もしさなえの言っている事が本当なら、さなえは何も食べないで生きている事になります。
……そんな事は絶対にあり得ない。
「そ、そうだ!わかったよ!」
「なにがですか?」
「さなえはとんでもないうそつきだよ!れいむをだまそうだなんてそうはいかないよ!」
れいむはさなえが自分を騙そうと嘘を付いているのだと解釈しました。
「なにをいっているんですか?れいむさんは『ひじょうしき』なゆっくりですね」
「はぁぁぁぁっ!?なにをいってるんだおまえはぁぁぁぁっ!?」
ふざけるな。何でこんな嘘吐きのゲスゆっくりに『非常識』なんて言われなければいけないのだ。
「ふざけるなぁぁぁぁっ!?だったらおまえはうんうんやしーしーもしないのかぁぁぁぁっ!?」
「え?そんなのするわけないじゃないですか」
またもや即答でした。
「……もういい!もういいよぉぉぉぉっ!!おまえのもうっそうっにつきあってられないよぉぉぉぉっ!!」
れいむはそう言うなり、さなえに飛びかかりました。
これ以上さなえの妄想に付き合っていては埒が明かない。
すぐにでもこのゲスさなえを瞬殺してこの家を奪おう。
そう思うのと体が動いたのはほぼ同時でした。
「しねぇぇぇぇっ!!」
「きゃっ!」
れいむの体当たりがさなえの体に命中し、さなえは弾き飛ばされてしまいました。
「ゆへへへっ!!いいきみだね!」
今のは致命傷だ。これでゲスさなえも永遠にゆっくりしただろう。
そう思いながら、れいむが台所へ向かおうとした時です。
「う~ん……。びっくりしました……」
死んだと思ったはずのさなえがムクリと起き上がったのです。
しかも傷一つなく。
「……な、なんでしんでないのぉぉぉぉっ!?」
そんな馬鹿な。
確かにれいむの渾身の一撃は命中したはずだ。
それなのに。
「もう!びっくりするじゃないですか!」
「なんでぇぇぇぇっ!?なんでしぬどころかけがひとつしていないのぉぉぉぉっ!?」
「なにいってるんですか!ゆっくりはじゅみょういがいでは、ちょっとやそっとのことじゃしなないんですよ!」
「……は?」
その言葉にれいむは一瞬、餡子脳がフリーズしていました。
……一体何を言っているんだこいつは。
ゆっくりは寿命以外では死なないだと?
……じゃあ、なんでまりさは死んだんだ?
れいむは今までの出来事を思い出していました。
以前、このれいむには番であるまりさがいました。
れいむはまりさと共に路上で物乞いをして僅かながらの食べ物を貰い、その日暮らしをしていました。
れいむとまりさだけなら何とか生きていけたかもしれませんでした。
ですが、数日前にれいむとまりさは住処である人気のない路地裏の段ボールの中でつい『すっきりー』をしてしまいました。
結果、れいむの頭の上にれいむ種4匹、まりさ種1匹の計5匹の赤ゆっくりが実ってしまいました。
赤ゆ達がれいむの頭の上に実っている間は普段通りで良かったのですが、赤ゆ達が産まれると、状況は一変しました。
「こんにゃまじゅいごひゃんしゃんにゃんてたべりぇりゅわきぇにゃいでしょ!」
「れいみゅとあしょんでくれにゃいおやにゃんてしにぇ!」
「いきゅじほうきにゃの!?とんだゲチュおやだにぇ!」
産まれた赤ゆはかなりのゲスっぷりを発揮しました。
れいむとまりさは嘆きましたが、初めてできた自分の子供。そこは我慢して赤ゆ達を育てていました。
そうなると、このままでは食糧が足りず、一家は飢え死にしてしまいます。
れいむは段ボールの住処に残って子供達の世話をし、まりさは一生懸命物乞いをしていました。
ですがある日、いつも以上に貰える食糧が少なかったまりさは、とうとう人間に対し、キレてしまいました。
『このクズにんげん!まりさたちのどれいのくせになんでまりさたちをゆっくりさせないんだぜ!いっそのことしんだほうがいいのぜ!』
結局、まりさは人間に踏みつぶされてしまい、永遠にゆっくりしてしまいました。
そうなれば困るのはれいむと赤ゆ達です。
自分が物乞いに行けば、赤ゆっくりの世話をする者がいないのですから。
れいむは少ない餡子脳で、頭から湯気が出る位悩みました。
数時間後。れいむはある決断をしました。
れいむと赤ゆ達が生き残る道はただ一つ。
人間の家を奪って、そこでゆっくりする。
何とも浅はかな考えですが、れいむはそれを実行に移しました。
ギャーギャー騒ぐ赤ゆ達を段ボールハウスに残し、進入できそうな人家を探しました。
そして見つけたのが、人間が居なさそうな一軒の家でした。
そして現在に至ります。
「うそだうそだうそだあぁぁぁぁっ!!」
「きゃっ!やっ!」
れいむはそう叫びながらさなえにのしかかり、さなえの上で何度も跳ねました。
デタラメだ。
こいつの言っていることはデタラメだ。
死なないゆっくりなどいるものか。
そう思い、れいむはさなえを本気で殺そうと、何度も何度も跳ねました。
「やめてください!おもいですよ!」
……やはりと言うべきか。
さなえは嫌がってはいるものの、とても死にそうな状態とは言えませんでした。
「ゆふぅ……、ゆふぅ……、ゆふぅ……」
「どいてください!れいむさん!」
さなえは何とかれいむの束縛から逃げ出そうとしますが、なかなか思うように動く事はできませんでした。
「ゆふぅ……、ゆふぅ……、ゆふぅ……」
れいむは悩みました。
これだけ傷めつけてもさなえは全然死にそうにない。
ならばこいつをどうするべきか。
「……きめた!きめたよ!おまえは、れいむのすっきりーどれいにしてやるよ!」
死なないのなら、一生奴隷としてこき使ってやる。
先程までさなえが死なない事を否定していたのに、れいむはあっさりと考え方を切り替えました。
こいつはゆっくりできないクズだが、よく見てみると、なかなかの美ゆっくり。
このれいむのどれいとしてはギリギリ合格点だ。
れいむは勝手にさなえに点数を付けていました。
「かってなことをいわないでください!」
さなえの怒りはもっともです。ですがれいむに対しては馬の耳に念仏です。
「ゆひゃひゃっ!!おまえにきょひするけんりなんかないよ!」
そう言うなり、れいむは自分のぺにぺにをさなえの下腹部に押し当てました。
「な……なにをするんですか!?」
「わかっていっているでしょ!?さなえはほんとうにあばずれだね!」
れいむはニタリと笑いながら、自分のぺにぺにをさなえの中に入れようとしました。
……が。
「なんでまむまむがないのぉぉぉぉっ!?」
「そんなものあるわけないじゃないですかぁっ!」
さなえの下腹部には、本来どのゆっくりにもあるはずの生殖器が存在しませんでした。
「ゆぎぃぃぃぃっ!!……だったら!!」
れいむはさなえの上から飛び下りると、さなえの体に自分の体を何度も擦りつけました。
「やっ、やめてください!」
「ゆひゃひゃひゃっ!!やめるわけないでしょっ!?まむまむがないなら、すりすりですっきりするよっ!!」
すりすりなら確実にさなえはすっきりー!するだろう。
そして赤ゆを実らせて、れいむと同じ赤ゆだけ産ませて、さなえと同じ赤ゆは食べてやる。
永遠にそれを繰り返せば、美味しい赤ゆを食べながら、自分の可愛いおちびちゃんに囲まれて幸せな日々を送れる。
れいむはそう確信していました。
……数十分後。
「……な……なん、で……、なんで、すっきりしないのぉぉぉぉっ!?」
この数十分の間に、れいむは何度もすっきりー!しました。
なのに、さなえは一度もすっきりー!せず、子供を妊娠する事もありませんでした。
「あたりまえです!ゆっくりはすっきりー!なんてしませんよ!」
「じゃあなんであかちゃんができないのぉぉぉぉっ!?さすがにあかちゃんはできるでしょぉぉぉぉっ!!」
「そんなわけないでしょう!?あかちゃんは『うーぱっく』さんがはこんでくれるんですよ!?」
「はあぁぁぁぁっ!?」
もはやれいむの餡子脳では、現状を全て理解しきる事ができませんでした。
ただ確実に理解している事は。
さなえはご飯を食べなくてもゆっくりできる。
さなえは排泄しなくてもゆっくりできる。
さなえは寿命以外ではほとんど死ぬ要素が無いのでゆっくりできる。
さなえはすっきりー!しなくてもゆっくりできる。
さなえには『うーぱっく』が赤ちゃんを届けてくれるのでゆっくりできる。
れいむにとって、その全てが信じられない事でした。
自分の信じ続けてきた『常識』が、さなえには全く通用しないのです。
それどころか、自分が『非常識』だと言われる始末。
明らかにおかしいのはこのさなえだ。
明らかにゆっくりできていないのはこのさなえだ。
……なのに。
れいむはご飯を食べなくてはゆっくりできない。
れいむは排泄をしなければゆっくりできない。
れいむは寿命以外でも死ぬ要素が沢山あるのでゆっくりできない。
れいむはすっきりー!できなければゆっくりできない。
れいむは自力で赤ちゃんを産まなければいけないのでゆっくりできない。
このれいむとさなえを比べてみると。
どうしても自分の方がゆっくりしていないのです。
「みとめない!みとめない!みとめないぃぃぃぃっ!!」
れいむはさなえを認める訳にはいきませんでした。
もしさなえを認めてしまえば、明らかにゆっくりできていないのは自分なのですから。
「ゆっがあぁぁぁぁっ!!」
れいむは今度こそ、さなえの息の根を止めてやろうと、今までのゆん生の中の最高の力で体当たりを仕掛けました。
「させるかよ、糞饅頭」
「ゆげっ!?」
その体当たりがさなえに届く事はありませんでした。
れいむの襲撃からかれこれ約1時間。その間に、家主であるお兄さんが帰宅していたのです。
自宅に帰ってさなえの居る居間へ向かったお兄さんの見た光景は、野良れいむがさなえに体当たりしようとしているものでした。
すぐさまお兄さんはダッシュでれいむを蹴り飛ばし、れいむの暴挙を阻止しました。
「ゆべっ!」
れいむは壁にぶち当たり、ずるずると落ちて行きました。
「お、おにいさん!こわかったですぅ!」
「さなえ、大丈夫か?怪我は無いか?」
「はい、だいじょうぶです……」
お兄さんはさなえの無事を確認していました。
「な……、なんでにんげんがいるのおぉぉぉぉっ!?」
れいむにとっての幸運は、お兄さんの蹴りが致命傷とはならなかった事です。
ですので、今のれいむには現状を理解できずに叫ぶ位の元気がありました。
「それはこっちの台詞だ、糞饅頭。さなえに何をしようとした?」
「さ、さなえがわるいんだよ!ここはれいむのおうちなのに、さなえがあとからきたんだよ!」
「ふざけるな。それはお前の妄想だ」
「そ、それだけじゃないよ!さなえはうそつきなんだよ!ごはんさんをたべなくてもゆっくりできるとか、しなないとかうそをついているんだよ!」
「……」
「だから、この『ひじょうしき』なさなえをせいっさいっしようとしたんだよ!」
「……」
「れいむはぜんぜんわるくないよ!だって、おかしいのはさな「……何言ってるんだ?お前」ゆっ!?」
「ゆっくりなら、それ位普通だろ?一体何を言ってるんだ?」
「……ふざけるなあぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」
さなえだけでなく、この糞奴隷までもがそんな嘘をほざくのか。
こいつらは本当に頭が可哀想、いや、狂っている。
こいつらの話は何もかもがデタラメだ。
「だったらしょうこをみせろおぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!!」
「……」
お兄さんは黙り込んでしまいました。
「ゆ、ゆぷぷぷっ!!できないんでしょ?しょうこをみせることができないんでしょお!?」
「……」
……勝った。
お兄さんの沈黙は、このれいむ様に反論できない証。
れいむはそう解釈しました。
やはりこいつらは嘘吐きだった。
これでこいつらはこのれいむ様の奴隷に
「いいよ?」
「……え?」
お兄さんはそう言うなり、さなえを連れて別の部屋へ行ってしまいました。
一匹取り残されてしまったれいむ。
その間、れいむはポカンと固まっていました。
……数分後。
お兄さんは両手に何かを持ってきて戻って来ました。
両手に持っていたのは、風呂桶でした。
そしてその風呂桶の中には、少し熱めのお湯が入っていました。
「そ、そんなものでどうしようっていうの!?」
れいむはお兄さんが何をしようとしているのか想像できませんでした。
「この風呂桶の中に、今からさなえが入る」
「……ゆ、ゆーひゃっひゃっひゃっ!!!!ばかなの!?しぬの!?そんなことしたら、しぬにきまってるでしょ!?ゆーひゃっひゃっひゃっ!!!!」
頭が狂ってしまったのか、この糞奴隷は。
ゆっくりは水に溶けて死んでしまうじゃないか。
「ほれ、さなえ。少し早いけど風呂にしようか」
「はーい!」
さなえは躊躇なく風呂桶のお湯の中へ飛び込みました。
「ゆーひゃっひゃっひゃっ!!!!さなえはほんとうにおおばかものだね!」
まったく、自分から死にに行くようなものじゃないか。
『非常識』もここまで来ると哀れだ。
れいむはそう考えていました。
……しかし。
「ふ~……。いいおゆです~」
さなえは死ぬどころか、風呂桶の中でプカプカ浮いてリラックスしていたのです。
「……ふざけるなあぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」
このクズ共が!この嘘吐き共が!
ゆっくりが水で溶けないなんてあり得ない!
こいつらは何か細工をしたんだ。
そうに決まってる。そうに決まってる!
「そんなものでなっとくできるわけがないでしょおぉぉぉぉっ!?ほかのしょうこをだせえぇぇぇぇっ!!」
「いいよ?」
またもあっさりとお兄さんはそう言うと、さなえを連れてしまいました。
またも一匹取り残されてしまったれいむ。
その間、れいむはやはりポカンと固まっていました。
……数分後。
お兄さんは両手に何かを持ってきて戻って来ました。
両手に持ってきたのは、レトルトのカレーライスでした。
「な、なんなの、そのごはんさんは!?」
ご飯なのに何故かゆっくりできなさそうな感じがする。
れいむは本能でそう感じていました。
「おい、糞饅頭。試しに食ってみろ」
そう言うなり、お兄さんはほんの少しのカレーライスをれいむの口の中に上から落としました。
「ゆ、ゆぎゃあぁぁぁぁっ!?からいぃぃぃぃっ!?」
ほんの少量でもこの始末。
ゆっくりにとって辛い食べ物は、劇薬と言っても過言ではありません。
「ひふうぅぅぅぅ……、ひふぅぅぅぅ……」
食べたカレーライスが少量でもあったため、れいむは程なくして落ち着きを取り戻しました。
「今から、このカレーライスをさなえに食べてもらう」
「……ゆ、ゆーひゃっひゃっひゃっ!!!!ばかなの!?しぬの!?そんなことしたら、しぬにきまってるでしょ!?ゆーひゃっひゃっひゃっ!!!!」
とうとう本当に頭が狂ってしまったのか、この糞奴隷は。
こんな辛い物を食べてしまえば、死んでしまうじゃないか。
「ほれ、さなえ。『数日ぶり』のカレーライスだぞ」
「わあ!かれーらいすさんですー!」
さなえは躊躇なくカレーライスを食べ始めました。
「ゆーひゃっひゃっひゃっ!!!!さなえはほんとうにおおばかものだね!」
まったく、自分から死にに行くようなものじゃないか。
『非常識』もここまで来ると本当に哀れだ。
れいむはそう考えていました。
……しかし。
「ふー!ごちそうさまでした!」
さなえは死ぬどころか、そのカレーライスをあっと言う間に完食してしまったのです。
……れいむは、もはや大声を上げる気にもなれませんでした。
もはやれいむには、さなえはゲスでも嘘吐きでも頭がおかしい奴でも無く。
おぞましい化け物にしか見えませんでした。
さなえには、自分達ゆっくりの『常識』が通用しないのですから。
「これで分かっただろ?」
「ゆっ!?」
お兄さんの問い掛けにれいむは過敏に反応しました。
「一体どっちが『非常識』なんだ?」
その問い掛けに、れいむが取った行動は。
「ゆぎゃあぁぁぁぁぁぁぁっ!?」
目の前の『非常識』から、逃げ出す事でした。
……結局。
れいむはお兄さんの家から一目散に逃げ出しました。
逃げ出している途中で何度も何度も振り返りましたが、お兄さんは追いかけては来ませんでした。
命が助かっただけでも儲けもの。
金輪際、あの家には近づかないようにしよう。
普通のゆっくりはそう考えるものです。
……普通のゆっくりは、ですが。
「……ゆぐうぅぅぅぅ……。れいむはぜったいにあきらめないよぉ……」
あれだけの恐怖を味わってなお、このれいむはあの家を奪う事を諦めていませんでした。
「けど、またあのおうちにいったら、ゆっくりできないよ……」
さすがに、れいむはあの家で味わった恐怖を忘れてはいませんでした。
……その恐怖を理由に、あの家に関わらないという選択をすれば良かったのですが。
「それでもぜったいにてにいれてやるぅ……」
とは言ったものの、れいむはどうすればあの家を手に入れる事が出来るのか分かりませんでした。
このまま、あの家に戻れば、先程の二の舞でしょう。
最悪の場合、お兄さんに瞬殺されてしまう可能性もあります。
「ゆぐぅ……!どうすればいいのぉ……!」
れいむは許せませんでした。
何故、あの『化け物』のように不気味なさなえが、人間に飼われて幸せに暮らしているのか。
れいむの方が、あのさなえより何百倍も可愛いのに!
あんな『非常識』なさなえのどこがいいのか。
あんな『非常識』な……。『非常識』……。『非常識』……。
「!!」
れいむは閃きました。
「ゆふっ……!ゆふふっ!!そうだ!これだよ!これならぜったいうまくいくよ!あのおうちをれいむのものにできるよ!」
れいむは自分の天才的な閃きに自己陶酔していました。
その方法とは……。
「ゆっくりかえったよ!」
「「「「「ゆゆ~ん!おかえりなちゃーい!!」」」」」
母親であるれいむの帰宅に、留守番をしていた赤ゆ達は、媚を売るような笑顔で出迎えました。
「「「「「おきゃーしゃん!あちゃらしいおうちはみちゅけたの?」」」」」
「うん、みつけたよ!」
「ゆわ~い!!」
「やっちゃー!」
「ゆっきゅりできりゅにぇ!」
「うれちーちー!」
「おきゃーしゃんはやきゅにたちゅにぇ!」
赤ゆ達はとてもご機嫌でした。
何故なら、れいむが今よりもゆっくりできるというお家を見つけてきたと言うのですから。
「「「「「おきゃーしゃん!はやきゅあたらしいおうちにいきょう!」」」」」
こんな今にも崩壊しそうで、寒い段ボール箱よりも、温かくて頑丈な、ゆっくりできるお家。
そこなら自分達はとてもゆっくりできる。
赤ゆ達はそう信じていました。
……ですが。
「いますぐはむりだよ!」
れいむのその言葉を聞いた途端。
「にゃんでぇぇぇぇっ!?」
「ふじゃけりゅなぁぁぁぁっ!!」
「ゆっきゅりできにゃいぃぃぃぃっ!!」
「かなちーちいぃぃぃぃっ!!」
「こにょやきゅたたじゅうぅぅぅぅっ!!」
先程とは打って変わって、赤ゆ達はれいむを罵倒し始めました。
「でもあんしんしてね!おかあさんのいうことをちゃんときけば、すぐにあたらしいおうちにいけるよ!」
「「「「「ゆ?ほんとう?」」」」」
「ほんとうだよ!だからおちびちゃんたちはすなおにいうことをきいてね!」
「「「「「……ゆっきゅりりかいしたよ!」」」」」
本当は面倒な事は死んでも御免でしたが、これもゆっくりできる新しいお家のため。
赤ゆ達はしぶしぶ了承しました。
「だいじょうぶ!とってもかんたんなことだよ!」
「「「「「なりゃあんしんだにぇ!」」」」」
よかった。どうやら簡単な事で済みそうだ。
赤ゆ達はそう思っていました。
「ごはんさんをたべないで、うんうんとしーしーをしないで、ぺにぺにとまむまむをつぶして、すっきりーしなければいいんだよ!」
れいむのその言葉を聞くまでは。
「「「「「はあぁぁぁぁっ!?びゃかにゃのおぉぉぉぉっ!?しにゅにょおぉぉぉぉっ!?」
赤ゆ達はれいむの言葉に耳を疑いました。
それはそうでしょう。どれもこれも、明らかにゆっくりできなさそうな事ばかりなのですから。
「そんにゃふじゃけたこちょをいうゲシュおやはちにぇぇぇぇっ!!」
一匹の赤まりさがれいむに飛びかかりました。
こんなゆっくりできない母親は、まりさが制裁してやる!
赤まりさは、すぐさま母親に逆らう事を選びました。
「おかあさんにしねなんていうクズはしねぇ!」
「ゆぴぃっ!?」
まりさはれいむに押しつぶされ、一瞬で餡子の染みと化しました。
その選択自体が死亡フラグである事を永遠に理解する事無く。
「「「「ゆんやあぁぁぁぁっ!?」」」」
母親であるれいむの突然の暴挙に、残された赤ゆ……、赤れいむ達は叫びました。
「うるさいよ!こいつのようになりたくなかったら、すなおにれいむのいうことをきいてね!」
「「「「ゆっきゅりりきゃいしましたあぁぁぁぁっ!!」」」」
赤れいむ達は母親に従う事を選びました。
れいむが思いついた方法。
それは、自分の娘達をさなえと同じようなゆっくりにする事でした。
可愛さでは断然自分達の方が上だ。
しかし、それだけではあの糞奴隷は満足しないだろう。
だったら、あのさなえと同じになればいい。
あの人間はさなえの『非常識』さにベタ惚れなのだろう。
可愛さで優っていて、同じようにゆっくりしている自分達とさなえが並んだら、あの人間はどうするか。
間違いなく歓喜して自分達を選び、さなえを殺すか追い出すだろう。
そして人間は自分達の奴隷にして、一生死ぬまであまあまを貢がせるのだ。
……それが、れいむの閃きの全てでした。
はっきり言ってかなり無茶苦茶な案でしたが、れいむにが絶対的な根拠がありました。
「あのさなえにできて、れいむにできないわけがないよ!」
クズであるさなえにでもできるのだから、全てにおいて優っているれいむが不可能なはずがない。
それが、れいむの自身の源でした。
『非常識』と馬鹿にしたさなえと同じ存在になり、家を乗っ取る。
もはやれいむは、目的と手段が逆転していました。
それに気付く事無く、れいむは自分の娘達に対して『特訓』を開始したのです。
長女れいむはこう言われました。
「これから先、何も食べるな」と。
基本的にゆっくりは燃費が悪い生き物で、それが赤ゆっくりならばなおさらです。
成長期である赤ゆも状態で何も食べないという事は、死を選ぶようなものです。
このままでは、長女れいむは2、3日で餓死してしまいます。
「おにゃきゃしゅいたよ……、おきゃーしゃん……」
「うるさいよ!そんなこといわずにがまんしてね!」
長女れいむの訴えはあっさりと破棄されてしまいました。
「ゆぅ……。おにゃきゃしゅいたよぉ……」
二女れいむはこう言われました。
「これから先、絶対にうんしーをするな」と。
ゆっくりは自分の体内の古い中身や水分を便や尿として排泄します。
排泄する事ができないという事は、身体や精神に苦痛やストレスをもたらします。
このままでは、二女れいむは2、3日で破裂死してしまいます。
「うんうんしたいよ……、おきゃーしゃん……」
「うるさいよ!そんなこといわずにがまんしてね!」
二女れいむの訴えはあっさりと破棄されてしまいました。
「ゆぅ……。うんうんしたいよぉ……」
三女れいむはこう言われました。
「ぺにぺにはいらないから、さっさと潰す」と。
母れいむはそう言うなり、三女れいむのぺにぺにを噛み千切ってしまいました。
ぺにぺにを噛み千切られ、その傷から命の餡子が少しずつ漏れだしてしまいました。
このままでは、三女れいむは2、3日で出餡死してしまいます。
「ぺーりょぺりょしちぇ……、おきゃーしゃん……」
「うるさいよ!そんなこといわずにがまんしてね!」
三女れいむの訴えはあっさりと破棄されてしまいました。
「ゆぅ……ぺりょぺりょしちぇよぉ……」
そして四女れいむは……。
「ゆんやあぁぁぁぁっ!?やめちぇにぇぇぇぇっ!?」
「うるさいよ!これくらいでねをあげないでね!」
四女れいむは母れいむに後ろから犯されていました。
四女れいむはこう言われました。
「何があっても、絶対にすっきりー!するな」と。
母れいむはかれこれ十数分四女れいむを犯していました。
それも四女れいむが必死で、すっきりー!しないよう耐えていたためです。
しかし、もはや体力の限界でした。
「ちゅっ、ちゅっきりぃぃぃぃっ!!」
四女れいむは絶頂に達してしまい、頭から茎が生え、実ゆっくりが実り始めました。
「やめちぇ……!!れいみゅのあんきょしゃんしゅわにゃいでぇ……!」
赤ゆっくりが子供を宿せば、餡子を子供に吸い取られて、確実に永遠に死んでしまいます。
この四女れいむもその例に漏れず、あっという間に黒ずんで永遠にゆっくりしてしまいました。
それと同時に、栄養源が無くなってしまった実ゆも、小さな黒い塊となって、黒ずんだ四女れいむの隣にポトポト落ち始めました。
「ふん!こんなこともがまんできないなんて、れいむのこどもじゃないよ!」
自分の子供を殺したというのに、れいむは全く悪びれていませんでした。
生き残りの三匹の赤れいむ達はブルブルと震えながられいむを見ていました。
その日の夜。
れいむはグースカといびきをたてて寝ていました。
それとは対照的に、赤れいむ達は寝る事ができませんでした。
長女れいむは空腹による痛みのため。
二女れいむは排泄できない痛みのため。
三女れいむはぺにぺにを噛み千切られた痛みのため。
結局、赤れいむ達は一睡もする事無く、朝を迎えました。
二日目。
長女れいむはたった一日で体の体積が2割ほど小さくなっていました。
それは、自分の体内の餡子を消費し、エネルギーに変える事で起こった現象でした。
言わば、予備バッテリーのようなものです。
「……ゆ……ゆぅ……」
長女れいむは空腹を必死に耐えていました。
二女れいむは大量の脂汗をだらだらと垂らしていました。
顔を真っ赤にし、歯ぐきをむき出しにして歯をがっしりと噛んでいます。
その表情はとにかく必死。それ以外の表現が思いつかない位のものでした。
「ゆぎぃぃ……!!」
二女れいむは排泄を必死に耐えていました。
そして三女れいむは……。
「もっちょ……、ゆっきゅりしちゃきゃった……」
その言葉を遺言に、三女れいむは永遠にゆっくりしてしまいました。
ぺにぺにを噛み千切られた際に出来た傷跡から、予想以上に餡子が漏れ出してしまったのが原因でした。
「ふん!こんなこともがまんできないなんて、れいむのこどもじゃないよ!」
自分の子供を殺したというのに、れいむは全く悪びれていませんでした。
生き残りの二匹の赤れいむ達はブルブルと震えながられいむを見ていました。
その日の夜。
れいむはグースカといびきをたてて寝ていました。
それとは対照的に、赤れいむ達は寝る事ができませんでした。
長女れいむは空腹による痛みのため。
二女れいむは排泄できない痛みのため。
結局、赤れいむ達は一睡もする事無く、朝を迎えました。
三日目。
長女れいむは昨日よりもさらに一回り小さくなっていました。
このまま何も食べなければ、長女れいむは明日にでも、確実にゆっくりしてしまうでしょう。
「……」
長女れいむは喋るエネルギーすらも惜しいと考え、ただじっと耐えていました。
そして二女れいむは……。
「ゆ、ゆぎぎぎぃぃぃぃっ……!!」
もはや体力と忍耐の限界が近づいていました。
そもそも、一睡もせずに排泄を耐えていたこと自体が、奇跡を通り越して異常でした。
目は今にも飛び出そうで、顔はトマトのように真っ赤で、歯は噛みしめ過ぎたため、ヒビが入っていました。
もはや、その表情は赤ゆっくりの範疇を通り越していました。
「ゆぎゃあぁぁぁぁっ!!」
そして二女れいむは、勢いよくうんうんとしーしーを噴射するように排泄しました。
……それと同時に、本来は出るはずの無い、命の餡子まで。
勢い良く出しすぎたため、古い餡子と共に、出す必要のない餡子まで一緒に出てしまったのです。
結果。二女れいむはペラペラの皮だけになり、永遠にゆっくりしてしまいました。
「ふん!こんなこともがまんできないなんて、れいむのこどもじゃないよ!」
自分の子供を殺したというのに、れいむは全く悪びれていませんでした。
生き残りの長女れいむの瞳には、何も映っていませんでした。
その日の夜。
れいむはいびきをたてて寝ていました。
それとは対照的に、長女れいむは寝る事ができませんでした。
もはや理由は言わなくても分かるでしょう。
長女れいむの命はまさに風前の灯火でした。
四日目。
長女れいむは、ピクリとも動かなくなっていました。
赤ゆっくり達の中では、一番まともなゆん生の終え方だったと言えるでしょう。
「なんでぇぇぇぇっ!?なんでこんなこともできないのぉぉぉぉっ!?」
れいむは訳が分かりませんでした。
どうしてこの子供達は、こんなにも根性無しなのか。
結局誰一人まともに出来やしなかった。
……いや。もしかしたら。
もしかしたら。れいむは、騙されていたのでは?
全部、あのさなえと人間の思い通りだったのでは?
れいむに嘘を吹き込んで、楽しんでいたのでは?
……許せない。
絶対に許せない!
「ゆるさないよぉぉぉぉっ!!あのくそどもぉぉぉぉっ!!」
れいむは段ボール箱から勢いよく飛び出し、もう一度あの家に向かいました。
はっきり言って逆恨み以外のなにものでもありません。
ですが、れいむの餡子脳の中では、さなえとお兄さんが、自分の娘達を殺した事になっていたのです。
「ころしてやるぅぅぅぅっ!!おちびちゃんのかたきだぁぁぁぁっ!!」
「……何で、またここに来たんだ?お前は」
「ゆ……ゆひぃ……」
案の定と言うべきでしょうか。
れいむはお兄さんにスーパーフルボッココンボを決められ、瀕死の状態でした。
さなえはお兄さんに別の部屋で待っているよう言われたので、隣の部屋で待機していました。
「一度見逃したというのに、何で戻って来たんだ?」
「お、おまえが……、おちびちゃんをころしたんだぁ……!!」
「は?何を訳の分からない事を……」
れいむはお兄さんに、今までの事情を全て話しました。
れいむの話を聞いた後……。
「……そうか。それは悪かったな。お詫びに、お前をさなえと同じ体にしてやるよ」
「ゆ!?」
お兄さんが謝る理由は全く無いのですが、お兄さんはれいむに謝罪しました。
それどころか、さなえと全く同じ体にしてやるとまで言ってきたのです。
「……いいよ!それでゆるしてあげるよ!」
れいむにとって、それは願ってもないチャンスでした。
口では散々さなえの事を罵倒していましたが、さなえと同じ体になれば、とてもゆっくりした毎日を送る事が出来るのですから。
おちびちゃんが死んでしまったのは残念だけど、子供はまた産めばいい。
れいむはあっさりと自分の子供の仇を取る事を諦めました。
「それじゃあ、このジュースを飲んでくれ。今からお前に改造手術を施してやるよ」
お兄さんはそう言うと、台所へ行き、冷蔵庫を開けて中から水色の液体が入った瓶を一本持ってきました。
れいむは一瞬その飲み物を飲む事を躊躇いました。
「どうした?飲まないのか?」
「……のむよ!だからさっさとよこしてね!」
「……分かった」
お兄さんはれいむの口の中に、その飲み物を流しこみました。
その飲み物を飲んだ瞬間。れいむは気絶してしまいました。
「おい、起きろ、れいむ」
「ゆ……、ゆん……?」
どれ位寝ていたでしょうか。
れいむはお兄さんの呼びかけに目を覚ましました。
「もう改造手術は終わった。お前はさなえと同じ体になった」
「ゆ……!?ほんとう……!?」
れいむは半信半疑でした。
自分の体にはこれと言った変化が何一つ無かったのですから。
「変わっていないと思うなら、この飯を食べてから一旦お前の家に戻れ。そうすれば全て分かる」
お兄さんはれいむの目の前に、市販のゆっくりフードを山盛りにして差し出しました。
「ゆゆ!?おいしそうだよ!これはぜんぶれいむのものだよ!」
れいむはお兄さんの説明を聞かず、ゆっくりフードにむしゃぶりつきました。
「むーしゃむしゃ!うっめ!めっちゃうっめ!」
れいむはゆっくりフードを意地汚く、あっという間に食べ終えてしまいました。
「げふぅ……。もしこれでなにもかわっていなかったら、せいっさいっしてやるからね!」
れいむはドスン、ドスンと跳ねてお兄さんの家を後にしました。
ここまでしてもらってこの捨て台詞です。
普通の人間ならこの場で潰していてもおかしくはないのですが、お兄さんはそれをしませんでした。
れいむが去ってから数分後。
「おにいさん、もういいですか……?」
隣の部屋で待機していたさなえがお兄さんに尋ねました。
「ああ。もういいよ、さなえ」
「……さっきのれいむさん。わたしのせいで、おちびちゃんがしんでしまったって……」
「お前は何も悪くないよ、さなえ」
お兄さん同様、さなえも全く悪くありませんでした。
しかしさなえは心優しいゆっくり。
相手がゲスでも、どうしても心配したり、自分を責めたりしてしまうのです。
「わたしは、『ひじょうしき』なんでしょうか……」
「さなえ。あんな奴の言う事なんか間に受けるな。お前は『非常識』なんかじゃないさ」
「……ありがとうございます、おにいさん」
さなえはお兄さんに対し、少しだけ笑みを浮かべました。
れいむにボロクソ言われたこのさなえ。
他のゆっくりから見て、さなえは異形とも言える存在でした。
ですが、このさなえは幼い頃、ゆっくりショップで一万円で販売していた所をお兄さんに買い取ってもらった、普通のゆっくりです。
品種改良をした特別なゆっくりではありません。
突然変異をした特別なゆっくりでもありません。
では、何故このさなえはこんなにも、他のゆっくりとかなり違うのか。
その秘密は、さなえとお兄さんが最初に出会った、2年前にありました。
「ふ、ふちゅちゅきゃもにょでしゅが、よりょしきゅおねぎゃいしましゅ!」
赤ゆであるさなえはとても緊張していました。
このお兄さんに買い取ってもらい、生活の場が今までのゲージの中とは違い、広々とした家の中に変わったのですから。
それに、お兄さんに失礼の無いようにしなければいけない。
さなえはそう考えていました。
「そんなに緊張しなくてもいいよ、さなえ」
お兄さんはさなえに優しくそう言いました。
「は、はい!わきゃりました!」
「ははは……。あ、そうだ、さなえ。お腹減ってないか?ご飯の用意が出来てるんだ」
「ごはんしゃんでしゅか?」
ご飯と聞いた途端、さなえのお腹がク~と鳴りました。
「あう……、はじゅかしいでしゅ……」
「よし、それじゃあ飯にするか」
お兄さんとさなえは温かいご飯を食べ始めました。
「むしゃむしゃ……。……おいしいでしゅ!おにいしゃんぎゃちゅくったんでしゅか?」
「ああ、一応趣味なんだ。口に合ったか?」
「はい!おいしいでしゅ!」
さなえはお兄さんが用意してくれたご飯を綺麗に完食しました。
「ふぅ……。おいしかったでしゅ……」
「なあ、さなえ」
「はい?なんでしゅか?」
美味しいご飯を食べて満腹のさなえに、お兄さんはこう言いました。
「ゆっくりってさ、毎日ご飯を食べなくてもゆっくりできるんだよ。知らなかったか?」
「……え?」
さなえは耳を疑いました。
それもそうでしょう。ゲージに居た頃は毎日大体決まった時間になるとお腹が空き、餌を食べていたのですから。
「あ、あの、おにいしゃん……」
「ん?どうした、さなえ」
「……しょれ、ほんとうでしゅか……?」
「ああ。本当だよ」
お兄さんは自信たっぷりにそう言いました。
「で、でみょ……」
それでもさなえは信じられませんでした。
「本当だって。だって……」
お兄さんはさなえに向かって、こう言ったのです。
「それが『常識』なんだからさ」
その夜。
さなえはなかなか寝付けませんでした。
ゆっくりは毎日ご飯を食べなくてもゆっくりできる。
けれども、さなえはお兄さんの言葉を疑っていました。
そんな事がある筈がない。
そう思っていました。
「それが『常識』なんだからさ」
お兄さんのその言葉を聞くまでは。
お兄さんはゆっくりである自分よりも物知りです。
そのお兄さんが『常識』だと言うのですから、きっと本当なのでしょう。
(しゃにゃえは、せけんしらじゅだったんでしゅね……)
ゆっくりはご飯を食べなくてもゆっくりできる。
だって、それが『常識』なんだから。
そう思いながら、さなえはゆっくりと眠りにつきました。
……次の日。
「おにいしゃん!おにいしゃん!」
「ふわ~あ……。……どうした、さなえ……」
「おにいしゃんのいっていたこちょはほんとうだったんでしゅね!」
「え?」
「おなかがぜんぜんへらないんでしゅ!おにいしゃんのいったとおりでしゅ!」
「……え?」
「これが、『じょうしき』なんでしゅね!ありぎゃとうございましゅ、おにいしゃん!」
「……あ、ああ。そうだ!それが『常識』なんだよ!よかったなさなえ!これで一つ賢くなれたぞ!」
「えへへ……」
(まさか成功するとは……)
さなえのその言葉を聞いた時、お兄さんは内心かなり驚いていました。
お兄さんはさなえを飼う前に、本屋でゆっくりの飼い方が書かれている本を買いました。
お兄さんはさなえ種の情報が載っているページをめくりました。
そのページには、こう書いてありました。
『さなえ種は信仰深いゆっくりです』
『さなえ種は『常識』をとても重要視しています』
『さなえ種は基本的に何かを信じやすい性格で、反面、騙されやすい性格とも言えます』
そのページを読んだお兄さんは考えました。
もしかしたら、うまくいけば、さなえのゆっくりとしての『常識』を変える事も可能ではないか、と。
お兄さんがさなえに『常識』を説明した時。
正直、お兄さんは遊び半分でした。
失敗したら失敗したで、『さなえにはまだ早すぎたかもな』と適当な事を言ってごまかせばいい。
お兄さんはそんな感じで軽く考えていました。
ですが、さなえに対して、予想以上の効果があったようです。
(もう少し遊んでみるか……。)
「どうしたんでしゅか?おにいしゃん」
「ん!?いや、なんでもないよ」
数日もすれば、赤ゆっくりであるさなえは、この事を忘れて元に戻るだろう。
お兄さんは軽く考えていました。
「あの、おにいしゃん、しーしーしたいでしゅ……」
「ゆっくりはしーしーしなくても大丈夫なんだ。これは『常識』だぞ?」
「おにいしゃん、おみじゅしゃんはこわいでしゅ……」
「大丈夫!ゆっくりは水に溶けるなんて絶対に無いんだ。これも『常識』だからな」
「おにいしゃん、にゃんだかかりゃしょうなごはんしゃんでしゅ……」
「ゆっくりは辛い物を食べてこそのゆっくりだ!『常識』中の『常識』だな!」
「おにいしゃん!いたいでしゅ!がびょうしゃんをふんでしまいました!」
「大丈夫!ゆっくりはちょっとやそっとじゃ怪我をしないんだ!そんなの当たり前だぞ?『常識』だからな!」
お兄さんは純粋なさなえに色々なデタラメを『常識』と称して吹き込みました。
結果……。そのデタラメが、さなえの頭の中で『常識』として確立して。
その『常識』に合わせて身体能力も変化していったのです。
……それが、このさなえが変わっている理由の全てでした。
「……あっ。それとおにいさん」
「何だ?さなえ」
「あのれいむさんも、わたしとおなじようにしたんですか?」
「……ああ。あのれいむもさなえと同じ様にしたよ」
「……そうですか。……ゆっくりできるといいですね」
お兄さんは無言でさなえを抱き抱え、頭を優しく撫でました。
……お兄さんはさなえに対して、いくつか嘘を付いていました。
実際はれいむに対して、改造手術なんか施していません。
お兄さんが飲ませた物。あれは、ただのラムネでした。
砂糖による甘さと、炭酸水による辛さ。
ゆっくりにとって相反する飲み物と言えます。
それをゆっくりが飲むと、気絶してしまうのです。
当然、お兄さんには、そんな改造技術なんかありませんでした。
お兄さんがした事。それは、気絶れいむのある部分を小麦粉で塞いだだけです。
そうすればれいむはどうなるか。お兄さんは分かった上でやりました。
そして。
お兄さんはれいむに対し、罪悪感なんかこれっぽっちも感じていませんでした。
ですから、これかられいむがどうなろうが、知った事ではなかったのです。
「ゆぎゃあぁぁぁぁっ!?いだいぃぃぃぃっ!?」
れいむは今、原因不明の激痛に襲われていました。
お兄さんの家でゆっくりフードをたらふく食べた後、うんうんがしたくなったのです。
そして段ボール箱から少し離れた場所でうんうんをしようとしました。
……ですが、うんうんは出ませんでした。
それどころか、しーしーも出ないのです。
そして、うんうんをしようとした瞬間。
とてつもない激痛を体全体が駆け巡ったのです。
「なんでぇぇぇぇっ!?なんでいだいのおぉぉぉぉっ!?」
お兄さんが小麦粉で塞いだ場所。
それは、れいむのあにゃるとまむまむでした。
あにゃるを塞げば、うんうんは体の中に残ったままです。
まむまむを塞げば、しーしーは体の中に残ったままです。
それらを無理矢理排泄しようとすればどうなるか。
その結果は、れいむの苦痛が証明していました。
「ゆぎぃぃぃぃっ!?いだいっ!いだいぃぃぃぃっ!?」
れいむは痛みでその場から動く事ができませんでした。
「だれがれいむをだずげろぉぉぉぉっ!!」
れいむは大声で助けを求めました。
……が。そこは人気のない路地裏。
それが災いして、人間はおろか、ゆっくりも野良猫も、誰も来ませんでした。
れいむは、ある意味でさなえと同じ体になれました。
穴が塞がっているのですから、排泄する必要がありません。
そして、体の中に排泄物が残っている訳ですから、空腹を感じる事もありません。
腹の中が餡子で満たされているのですから、足りない栄養を補う必要もありません。
つまり、ほぼ半永久的に生きられるようなものです。
それは、れいむが求めていたものと大体同じようなものでした。
「ゆぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?だれがだずげでぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!」
それが幸せに繋がったとは、限りませんでしたが。
「ふふ、おちびちゃん、ゆっくりしていってくださいね!」
「はい、おきゃーしゃま!」
(うーん……。まさか本当にこれも『常識』になるなんてなぁ……)
あれから数日後。
さなえとお兄さんにに新しい家族が増えました。
それは、さなえに良く似た可愛らしい赤さなえでした。
お兄さんはその赤さなえをゆっくりショップで購入した訳でも、拾ってきた訳でもありません。
以前、お兄さんはさなえにこんな事も言ってました。
「おにいさん、あかちゃんはどうやってつくるんですか?」
「ん?んー……、あー……。うーぱっくが運んでくれるんだよ。『常識』だよ。……多分」
お兄さんはその場をごまかすような感じでそう言ってしまいました。
……結果。本当にうーぱっくがお兄さんの家に赤さなえを運んで来たのです。
そして、さなえ自身の体にも大きな変化がありました。
「おにいさん!わたしも『どうつき』になれましたから、これからいろいろとおてつだいできますよ!」
「……ああ、そうだな。期待してるよ、さなえ」
そう。さなえは『胴付き』ゆっくりへとクラスチェンジしたのです。
これにもお兄さんが絡んでいました。
「おにいさん、どうすればからだがはえてくるんでしょうか?」
「うーん……。俺の知っている『常識』だとな……。……カレーを食べ続ければ何とかなるんじゃないか?」
やはりと言うべきか、お兄さんの適当な『常識』は、現実のものとなったのでした。
「おちびちゃん、いまからとってもたいせつなはなしがあります!」
「ゆ?なんでしゅか?おきゃーしゃん」
「これからはなすことは、とってもだいじですからね?しっかりおぼえてくださいよ?」
「はい!わきゃりました!」
あるゆっくりは、自分が信じる『常識』の中で、とてもゆっくりする事ができました。
あるゆっくりは、自分が信じる『非常識』の中で、とてもゆっくりする事ができませんでした。
一体、どちらの『常識』が正しかったのか。
それは、ゆっくりが生きるうえでは、ほんの些細な事かもしれませんでした。
「それじゃあ、いまから、とてもだいじな『じょうしき』をおしえますからね!」
END
あとがき
反省点です。
1 何だこのさなえ無双は。
2 お兄さんのキャラが定まらなかったなぁ……
3 独自設定てんこもりだね!
結論
おまんじゅうあき様が復活したよおぉぉぉぉっ!!
ヒャッホオォォォッ!!!
このSSは、おまんじゅうあき様の絵を見ている内に、ピキーン!と何かが来たので書きました。
やっぱりさなえは無限大の可能性を秘めているね!
最後になりますが、前作のゆっくりボタンの数を見てみると、予想以上の数でした。
あんな駄文にボタンを押してくれた方。本当にありがとうございます。
これからも、時間が許す限り精一杯頑張りますので、よろしくお願いします。