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anko4380 古びた別荘でのバイトさん 前編
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『古びた別荘でのバイトさん 前編』 21KB
愛で 虐待 現代 独自設定 ぬるホラー 4作目 失礼します
愛で 虐待 現代 独自設定 ぬるホラー 4作目 失礼します
~注意書きさん~
*ゆっくりホラーSSのつもりです。突然書きたくなって書きました。
*愛でお兄さんが主人公ですが、お兄さんたちとは関係ない間接的な虐待系描写があります。
*直接的な虐待描写はありません。
*ゆっくりがメイン題材ですが、当のゆっくりたちを中心にした話とは言い難いかも。
*ゆっくりホラーSSのつもりです。突然書きたくなって書きました。
*愛でお兄さんが主人公ですが、お兄さんたちとは関係ない間接的な虐待系描写があります。
*直接的な虐待描写はありません。
*ゆっくりがメイン題材ですが、当のゆっくりたちを中心にした話とは言い難いかも。
~今まで書いたもの~
anko4224 単純群れ虐殺1~5(anko4225,-56,-57,-64)
anko4266 まりさは飼われゆっくり1~10(anko4272,-73,-86,-87,4326,-27,-30,-63,-64)
anko4369 おうちに いれてねっ!
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anko4266 まりさは飼われゆっくり1~10(anko4272,-73,-86,-87,4326,-27,-30,-63,-64)
anko4369 おうちに いれてねっ!
やあ、俺は愛でお兄さん。ゆっくりしていってね!
今年の夏も毎晩熱帯夜でむーしむーし暑苦しく、とてもすーやすーやと寝られたものじゃない。
目が冴えてしまったので、今日は俺が経験した怪奇現象について語ろうと思う。
目が冴えてしまったので、今日は俺が経験した怪奇現象について語ろうと思う。
去年の夏、俺はゼミの教授のツテで、どこかの金持ちが土地ごと買い取ったペンションのお掃除バイトを紹介された。
海沿いの並び、微妙に周りから孤立した位置にあるそれは、部分的に改装を重ねているものの土台自体は古いものらしく、何でも近々取り壊して建て替えるのだとか。
前の所有者が使っていたときのまま私物やゴミが山のようにあるため、それを掃除して欲しいというわけだ。
前の所有者が使っていたときのまま私物やゴミが山のようにあるため、それを掃除して欲しいというわけだ。
どうせ大量のゴミなら業者に運搬してもらうのだろうから、ついでに清掃の業者も頼めば一日で済むだろうに。
だが、金持ちというのは案外こういうところで狡からいというか、ケチというか、まあ倹約・節約する癖のようなものが付いているのだという。
いずれにせよ、海に近いお屋敷に賃金はそれなりーながらもタダで遊びに行けるというのは、貧乏学生の俺にとっては福音であった。
利害の一致。結局世の中はそういうことで回っている。
だが、金持ちというのは案外こういうところで狡からいというか、ケチというか、まあ倹約・節約する癖のようなものが付いているのだという。
いずれにせよ、海に近いお屋敷に賃金はそれなりーながらもタダで遊びに行けるというのは、貧乏学生の俺にとっては福音であった。
利害の一致。結局世の中はそういうことで回っている。
仕事さえちゃんとやってくれるならいいよっ!という許しを得て、俺はそこに友人と連れ立って出かけた。
もちろん夏に海沿いの別荘にいけるというシチュエーションにあって、男を連れて行くはずがない。
誘ったのは、大学のゼミで知り合った同期の女の子。
さっぱりとした短髪に、理知的なくりっとした目が印象的な、とってもゆっくりした子だ。
その夏、俺は前々から狙ってアプローチをかけ、ワンランク上の友人ぐらいの仲にまで発展していたこの子を、落とす気でいた。
もちろん夏に海沿いの別荘にいけるというシチュエーションにあって、男を連れて行くはずがない。
誘ったのは、大学のゼミで知り合った同期の女の子。
さっぱりとした短髪に、理知的なくりっとした目が印象的な、とってもゆっくりした子だ。
その夏、俺は前々から狙ってアプローチをかけ、ワンランク上の友人ぐらいの仲にまで発展していたこの子を、落とす気でいた。
いや、連れて行ったのは正確にはその子だけではない。
俺と彼女、人間二人に、ゆっくりがふたり。
俺の飼いゆであるれいむと、その子の飼いゆであるまりさ。
俺とその子はゆっくりを飼っているという繋がりで仲良くなった側面もあるし、いきなり男女二人っきりでバイトにかこつけたお泊りデートをするというそれなりに強引なアプローチにおいて、こいつらはいい緩衝材になるという打算もあった。
俺と彼女、人間二人に、ゆっくりがふたり。
俺の飼いゆであるれいむと、その子の飼いゆであるまりさ。
俺とその子はゆっくりを飼っているという繋がりで仲良くなった側面もあるし、いきなり男女二人っきりでバイトにかこつけたお泊りデートをするというそれなりに強引なアプローチにおいて、こいつらはいい緩衝材になるという打算もあった。
けど、もしかしたら、俺のこの選択と考えは、誤っていたのかもしれない。
『古びた別荘でのバイトさん』
ペンションに着いた初日。
俺たちはゆわぁぁ……!!と歓喜すると共に、ゆげぇぇ……!!と絶望した。
俺たちはゆわぁぁ……!!と歓喜すると共に、ゆげぇぇ……!!と絶望した。
まず古いものというからどれほどのものかと覚悟していた、このデートプランの一番のネックであった別荘さんの風体は、予想を裏切ってこの上なく上出来だった。
前の所有者というのもそれはそれはお金持ちであったのだろう。
モダンとでもいうのか、シックとでもいうのか、古いながら優雅で落ち着いた内装をしている。
多少の埃は溜まっているようだったが、廃屋ではないので窓も扉もしっかりとしており、砂や潮風にやられているわけでもない。
客室のベッドは今の所有者が買い取る1年ほど前に、前所有者の親族が時たま使う用に入れ替えたものらしい。
少々狭いが何日目になるか二人で寝るのにも十分なサイズが……などと考えていた俺はどうしようもないアホだった。
前の所有者というのもそれはそれはお金持ちであったのだろう。
モダンとでもいうのか、シックとでもいうのか、古いながら優雅で落ち着いた内装をしている。
多少の埃は溜まっているようだったが、廃屋ではないので窓も扉もしっかりとしており、砂や潮風にやられているわけでもない。
客室のベッドは今の所有者が買い取る1年ほど前に、前所有者の親族が時たま使う用に入れ替えたものらしい。
少々狭いが何日目になるか二人で寝るのにも十分なサイズが……などと考えていた俺はどうしようもないアホだった。
一方、俺をゆげぇ!ゆっくりしてないいい!!と狼狽させ、彼女をして「まあ頑張りたまえ。僕も手伝うから」と言わしめたのは、処分すべきゴミと廃棄された私物の多さだ。
埃や汚れはともかくとして、正直まともに片付けられているのは、きっとそこしか利用してなかったのだろう2階の客室だけ。
1階のほとんどはまるですべてのゆっくりしてないものをかき集めましたと言わんばかりに、ごーちゃごーちゃとし、用途の分からない小物や絵画や家具が山のように積まれている。
せっかく現代レベルのものに改装したのであろうキッチンも、生ゴミこそなかったものの、カン・ビン・ペットボトル、カップめんの容器やプラごみで溢れかえり、後継者の零落っぷりを窺わせるような救いがたい有様だった。
風呂場が無事だったのは不幸中の幸いか。
何日目になるか二人で一緒に浸かるにも十分すぎる広さが……などと考えていた俺は、やはりどうしようもないアホであり、幸せな脳内お花畑だった。
1階のほとんどはまるですべてのゆっくりしてないものをかき集めましたと言わんばかりに、ごーちゃごーちゃとし、用途の分からない小物や絵画や家具が山のように積まれている。
せっかく現代レベルのものに改装したのであろうキッチンも、生ゴミこそなかったものの、カン・ビン・ペットボトル、カップめんの容器やプラごみで溢れかえり、後継者の零落っぷりを窺わせるような救いがたい有様だった。
風呂場が無事だったのは不幸中の幸いか。
何日目になるか二人で一緒に浸かるにも十分すぎる広さが……などと考えていた俺は、やはりどうしようもないアホであり、幸せな脳内お花畑だった。
「ゆぅぅ? ゆっくりーっ!! ごーそごーそ! まりさは ゆっくりの おそうじやさんっ!」
「ゆっくりぴょんぴょんっ! れいむは、たからものを さがすよっ!!」
「ゆっくりぴょんぴょんっ! れいむは、たからものを さがすよっ!!」
最初に怯んだらそれまでだ。
エントロピーを凌駕して塵塚怪王と化した俺は、鬼のような形相と勢いで山を崩し、大抵は燃えないゴミに分類されるそれらを一応分類し、唐箱なりダンボールなりに詰めて整理していった。
エントロピーを凌駕して塵塚怪王と化した俺は、鬼のような形相と勢いで山を崩し、大抵は燃えないゴミに分類されるそれらを一応分類し、唐箱なりダンボールなりに詰めて整理していった。
その横で、れいむとまりさがのんきな声をあげ、自分好みの「たきゃらもにょ!」を探している。
ああ、れいむ可愛いよれいむ。
俺のれいむはおとなっ!になっても無邪気可愛い。
ああ、れいむ可愛いよれいむ。
俺のれいむはおとなっ!になっても無邪気可愛い。
そして、そのふたりが怪我をしないように見守っている彼女もとってもクール&ビューティだ。
「手伝ってね手伝ってねっ! ゆっくりの独り占めはゆっくりできないよっ!!」
そう喚く俺に、イタズラそうな上目遣いを返してくる。
きゅんと俺の胸が心地よく痛むのが引ききらぬ絶妙なタイミングで、すっと立ち上がり、一転優しそうな目をして
きゅんと俺の胸が心地よく痛むのが引ききらぬ絶妙なタイミングで、すっと立ち上がり、一転優しそうな目をして
「仕方ないなぁ。じゃあ、ゆっくりしないで手伝ってあげよう」
とその独特な落ち着いた口調で囁いてくることによって、俺の中の何かが有頂天になった。
分かるかい、れいむ。これが恋だよ。
お前がぶりぶりと尻を振る姿や、「たからものだよぉお!!」とよく分からないゴミを掲げて喜ぶ姿を見て微笑んでいるまりさも、きっと同じような気持ちじゃないかね。
お前がぶりぶりと尻を振る姿や、「たからものだよぉお!!」とよく分からないゴミを掲げて喜ぶ姿を見て微笑んでいるまりさも、きっと同じような気持ちじゃないかね。
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俺の並々ならぬ努力によって、たった半日で全体の1/たくさんぐらいは片付いたかに思われた。
疲労した俺は、しかしテンションはむしろ高く、「ワンチャンあるのぜっ!」とつい普段使わない汚い言葉を出して、彼女とれいむまりさを連れて海へ向かった。
丘の麓にある森に近いペンションから歩いて数分。
流石にプライベートビーチというわけではないが、渋滞を恐れる一般人たちが足早に引き上げたのだろう午後のビーチは比較的空いているようだった。
丘の麓にある森に近いペンションから歩いて数分。
流石にプライベートビーチというわけではないが、渋滞を恐れる一般人たちが足早に引き上げたのだろう午後のビーチは比較的空いているようだった。
「ゆゆーん、れいむ、うみさんをみるの、はじめてっ!だよぉ」
「ゆっくりしてるねっ! ゆぅぅうん、なみさん、ざざーん! ざざーんんっ! ゆゆーんっ」
「ゆっくりしてるねっ! ゆぅぅうん、なみさん、ざざーん! ざざーんんっ! ゆゆーんっ」
ゆっくりは当然海の中で遊ぶことは出来ない。
快晴の砂浜に落とせば、人間さんでもそうなるように、立派にあんよ焼きされてしまうだろう。
俺は他の愛で人間さんがそうしているように、ふたりのためにビニールシートとパラソルを用意してやった。
快晴の砂浜に落とせば、人間さんでもそうなるように、立派にあんよ焼きされてしまうだろう。
俺は他の愛で人間さんがそうしているように、ふたりのためにビニールシートとパラソルを用意してやった。
適当な位置で熟年のカップルだか子どもが遊ぶのを見守る両親だかのように、その名の通り、ただゆっくりしている。
砂浜や海がきらきら光ったり、空にもくもく雲さんが出ているのがゆっくりできるらしい。
まりさの方は特に波がお気に入りなようだった。
海の向こうの方からゆっくりと近付いてきたうねりがざぶーんと白波になって砂浜を濡らし、それがゆっくりと乾いていく間に次の波が来る。
こういうのを「ゆっくりしてるよー」と楽しめるのは、風流なやつらとでもいうのか、つい飼い主のこちらまで誇らしいような気分になってしまう。
砂浜や海がきらきら光ったり、空にもくもく雲さんが出ているのがゆっくりできるらしい。
まりさの方は特に波がお気に入りなようだった。
海の向こうの方からゆっくりと近付いてきたうねりがざぶーんと白波になって砂浜を濡らし、それがゆっくりと乾いていく間に次の波が来る。
こういうのを「ゆっくりしてるよー」と楽しめるのは、風流なやつらとでもいうのか、つい飼い主のこちらまで誇らしいような気分になってしまう。
思えばあまあまをよこせ!などと喚く奴らの、何とゆっくりしていないことか。
身の丈に合わない大きいものを求めず、ただ慎ましく満ち足りるを知る。これぞゆっくり。
身の丈に合わない大きいものを求めず、ただ慎ましく満ち足りるを知る。これぞゆっくり。
かく言う俺も、目の前で存外無邪気に波を相手にはしゃいでいる彼女のように、大きくなく慎ましい方が好みだ。
何がとは言わない。
何がとは言わない。
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前置きが長くなりすぎたかもしれない。
俺が経験した怪奇現象が最初に起きたのは、この日の夜だった。
俺が経験した怪奇現象が最初に起きたのは、この日の夜だった。
夕飯を食べ終え、疲労もあってか俺と彼女は早めにベッドに入り、すーやすーやすることにした。
残念ながら同衾は愚か同室でもなく、2つある客室にそれぞれ分かれての就寝だったが、まあそれはいいだろう。
元々寝つきのいい俺は、波の音を楽しむとか、深夜まで鳴くようになったセミに悩まされるとかいうこともなく、ぐっすりと眠っていたはずだった。
残念ながら同衾は愚か同室でもなく、2つある客室にそれぞれ分かれての就寝だったが、まあそれはいいだろう。
元々寝つきのいい俺は、波の音を楽しむとか、深夜まで鳴くようになったセミに悩まされるとかいうこともなく、ぐっすりと眠っていたはずだった。
ずーり、ずーり……
ずーり、ずーり……
音が聞こえる。
何かが這うような音が。
何かが這うような音が。
俺がふと目を覚ましたのは、もしかしたら偶然ではなかったのかもしれないが、まあ分からない。
都会と違い、深夜に起きれば辺りは真っ暗闇なのだなという感想を抱いたのを、記憶している。
都会と違い、深夜に起きれば辺りは真っ暗闇なのだなという感想を抱いたのを、記憶している。
ずーり、ずーり……
ずーり、ずーり……
やはり何かが、というか、ゆっくりが這うような音が聞こえる。
俺はそれほど寝ぼけてもいない頭で、しかしぼんやりと考えた。
どこから聞こえてくるかが、奇妙なことに分からない。
多少離れているようでもあり、そうでないようでもあり……
上からのようでもあり、下からのようでもある。
俺はそれほど寝ぼけてもいない頭で、しかしぼんやりと考えた。
どこから聞こえてくるかが、奇妙なことに分からない。
多少離れているようでもあり、そうでないようでもあり……
上からのようでもあり、下からのようでもある。
まず最初に俺の頭に思い浮かんだのは、当然、れいむのことだった。
「れいむ、しーしーかぁ……?」
僅かに月明かりが入ってくる窓以外は未だ闇に閉ざされた視界の中で、適当に声を投げかける。
思い込みがそうさせるのだろうが、れいむは毎年夏になるとあついよーあついよーと呻いて、考えなしに大量の水を飲む。
そして夜になるとおねしーしーをすることもあれば、成ゆんらしくしっかりと起きて、ひとりでゆっくり用トイレさんにいくこともある。
ちなみに1年前は、つまり今これを語る俺からすると2年前になるが、ひとりで夜トイレに行けなくて、起きたとしても泣きながらその場で漏らしていたのだが。
思い込みがそうさせるのだろうが、れいむは毎年夏になるとあついよーあついよーと呻いて、考えなしに大量の水を飲む。
そして夜になるとおねしーしーをすることもあれば、成ゆんらしくしっかりと起きて、ひとりでゆっくり用トイレさんにいくこともある。
ちなみに1年前は、つまり今これを語る俺からすると2年前になるが、ひとりで夜トイレに行けなくて、起きたとしても泣きながらその場で漏らしていたのだが。
ともかく、今日もたくさんお水をごーくごーくしていたれいむは、しーしーしたくなったのかも知れない。
もちろん他人のおうちであるここに、れいむ用のしーしートイレなど用意していない。
ゆぅゆぅ呻きながら尿意を我慢し、暗い暗いの中、存在しないトイレさんを探しているのかと思うと、愛で派としてのハートがQNQNと痛む。
もちろん他人のおうちであるここに、れいむ用のしーしートイレなど用意していない。
ゆぅゆぅ呻きながら尿意を我慢し、暗い暗いの中、存在しないトイレさんを探しているのかと思うと、愛で派としてのハートがQNQNと痛む。
ずーり、ずーり……
ずーり、ずーり……
俺はガバッと起き上がり……そこで気付いた。
今のれいむは俺がいるベッドの横、小さなサイドベッドの上に敷いたタオルに包まって眠っているはずなのだ。
落下してあんよが破けるほどの高さではないにしろ……下に降りられるはずがない。
落下してあんよが破けるほどの高さではないにしろ……下に降りられるはずがない。
「ゆぅぅ、おにーさん……? なぁに……? ゆっくりぃ?」
「お、おおう……」
「お、おおう……」
横に視線を移すと、餡順応してきた視界の中でうっすらとれいむのシルエットが映る。
確かに俺がいるベッドの横、サイドベッドの上で大人しくタオルに包まれている。
確かに俺がいるベッドの横、サイドベッドの上で大人しくタオルに包まれている。
俺は一応手を伸ばしてその頬を撫で、それが確かにれいむであることを確認した。
「起こしちゃってごめんな、れいむ。ただ、なんかな――」
ずーり、ずーり……
ずーり、ずーり……
まだどこから聞こえているか分からない音がする。
「ずーりずーり、きこえるね……」
「ああ。何なんだろうな」
「ああ。何なんだろうな」
隣の部屋で寝ている、彼女のまりさだろうか。
それにしては、音が大きいような小さいような、響き方が感覚にそぐわないような……
それにしては、音が大きいような小さいような、響き方が感覚にそぐわないような……
こちら側に来たがっているようにもぞもぞするれいむを抱え上げ、膝の上で抱っこしてやる。
奇妙なずーりずーり音に、俺自身若干の不気味さを感じているが、無邪気なれいむはきょわいきょわいになったのかもしれない。
奇妙なずーりずーり音に、俺自身若干の不気味さを感じているが、無邪気なれいむはきょわいきょわいになったのかもしれない。
れいむがゆっくりできるように頬や頭を優しく撫でていると、しばらくして奇妙な音は聞こえなくなった。
「ゆぅぅぅ……」
「何だったんだろう。やっぱりまりさかな。ま、気にしないで寝ような、れいむ」
「何だったんだろう。やっぱりまりさかな。ま、気にしないで寝ような、れいむ」
サイドベッドの方に戻りたがらないれいむ。可愛い。
仕方ないので、寝返りを打っても潰れない位置、俺の枕の横に置いてやり、手を添えてあやしてやる。
仕方ないので、寝返りを打っても潰れない位置、俺の枕の横に置いてやり、手を添えてあやしてやる。
しばらくしてゆぅゆぅと寝息を立て始めたれいむを見て俺も安心し、すぐにその後を追って眠りに落ちた。
---------------------------------------------------------
「ねぇ……」
「うん?」
「うん?」
翌朝。
れいむが結局漏らしたおねしーしータオルを洗濯していた俺に、寝ぼけ眼の彼女が声をかけてきた。
ああ、そのシャワー直後の濡れた髪に、露出の多いラフな格好がとってもきゅーとっ!だよぉお! まるで天使さn……
れいむが結局漏らしたおねしーしータオルを洗濯していた俺に、寝ぼけ眼の彼女が声をかけてきた。
ああ、そのシャワー直後の濡れた髪に、露出の多いラフな格好がとってもきゅーとっ!だよぉお! まるで天使さn……
「昨日の夜、2時ぐらいだと思うんだけど、君のれいむちゃんを部屋で遊ばせてたかい?」
「えっ……いや、してないけど」
「えっ……いや、してないけど」
そうか……と呟いて身支度に戻る彼女の背を見ながら、俺はこの時点で多少の嫌な予感を感じ始めていた。
「そっちのまりさの方こそ、夜中に部屋を歩き回ってたってこと、ないよな?」
不安に後押しされ、つい答えの分かりきっている質問が口から漏れてしまう。
うん、と彼女は答えたが、それもそのはず。
人間さんの方は疲れて眠っているし、ゆっくりの方も本能的にすーやすーやする深夜帯。
わざわざゆっくりを起こして遊ぶなんて不自然だし、まりさだって身動き取れないサイドベッドの上で寝かされていたに違いない。
バスケットボールサイズの成ゆんとは言え、暗い中、蹴飛ばしたり踏みつけたりすることがないよう、飼いゆを人の通る床で寝かせないのは愛で派の常識だ。
人間さんの方は疲れて眠っているし、ゆっくりの方も本能的にすーやすーやする深夜帯。
わざわざゆっくりを起こして遊ぶなんて不自然だし、まりさだって身動き取れないサイドベッドの上で寝かされていたに違いない。
バスケットボールサイズの成ゆんとは言え、暗い中、蹴飛ばしたり踏みつけたりすることがないよう、飼いゆを人の通る床で寝かせないのは愛で派の常識だ。
「…………」
「………」
「………」
向かい合っている俺と彼女の間に、嫌な空気が流れる。
おいおい、ジョニー、冗談はよしてくれ。
俺たちはここに肝試しっ!に来たわけじゃあないんだぜ?
ひと夏のあばんっちゅーるっ!な恋から始まる、しあわせー!に満ち満ちた関係。
そんな夢を叶えてくれる、ここはゆっくりプレイスだったはずじゃないか。
俺たちはここに肝試しっ!に来たわけじゃあないんだぜ?
ひと夏のあばんっちゅーるっ!な恋から始まる、しあわせー!に満ち満ちた関係。
そんな夢を叶えてくれる、ここはゆっくりプレイスだったはずじゃないか。
「そっちも聞こえてたのか。あの、ずーりずーりっていう音……」
「うん……」
「うん……」
ああ、ダメだ。
所詮チキンハートな俺の口からは、不安を打ち消そうとしつつ逆効果な言葉しか出てこない。
思いつくまま口にしたセリフで自らフラグを立てていくという、全く俺も餡子脳だ。
所詮チキンハートな俺の口からは、不安を打ち消そうとしつつ逆効果な言葉しか出てこない。
思いつくまま口にしたセリフで自らフラグを立てていくという、全く俺も餡子脳だ。
けど、片腕で自らを抱き締めて若干俯いて不安そうな顔をしているこの目の前の天使さん、まじ天使。
ゆゆーん、愛しのハニー(予定)は、お兄さんがゆっくり守るよっ!
ゆゆーん、愛しのハニー(予定)は、お兄さんがゆっくり守るよっ!
「何だったんだろうな。まあ気にするなよ。多分野生のゆっくりでもいるんだろ」
「そう、だね。うん、野生のゆっくりか……」
「そう、だね。うん、野生のゆっくりか……」
不自然なものだったとはいえ、所詮はゆっくりが這うようなずーりずーりという音が聞こえただけ。
実害もなければ、思えば野良ゆで溢れる都会にあっては、案外普通に経験していたようなことだった気がしないでもない。
実害もなければ、思えば野良ゆで溢れる都会にあっては、案外普通に経験していたようなことだった気がしないでもない。
大したことではないな。
とりあえずそういうことにして納得した俺たちは、身支度と朝食に取り掛かった。
「かちかちふーどさん、ゆっくりやわらかくなってねっ! もーしゃもーしゃ……ぺっ! はい、どーぞっ」
「ゆゆぅぅんっ! やわやわしゃんだよお! まりさ、ありがとぉお!!」
「ゆゆぅぅんっ! やわやわしゃんだよお! まりさ、ありがとぉお!!」
いつもれいむに食べさせているやわやわフードさんは高温多湿下で保存が利かないため、持ってきていない。
食べ慣れないかちかちフードを前に分かりやすく意気消沈していたれいむを見て、まりさがまるで赤ゆっくりにしてあげるかのように、フードを噛み砕いて唾液と混ぜ、柔らかくして与えてやっている。
食べ慣れないかちかちフードを前に分かりやすく意気消沈していたれいむを見て、まりさがまるで赤ゆっくりにしてあげるかのように、フードを噛み砕いて唾液と混ぜ、柔らかくして与えてやっている。
俺がお湯でもかけて柔らかくしてやるつもりだったのだが、仲睦まじいことだ。
そしてこのシチュエーション、無垢で本能的な行為なんだろうが、実にHENTAIだな。
配役は逆だが、某有名アニメ映画のワンシーンを思い出す。
いつか俺と彼女も戯れにこういう爛れたお遊びを……と視線を向けた先には、テーブルの端でじゃれ合うれいむたちを見て赤面している天使さんがおり、俺に気付くとキュンと来るジト目を向けてきた。
そしてこのシチュエーション、無垢で本能的な行為なんだろうが、実にHENTAIだな。
配役は逆だが、某有名アニメ映画のワンシーンを思い出す。
いつか俺と彼女も戯れにこういう爛れたお遊びを……と視線を向けた先には、テーブルの端でじゃれ合うれいむたちを見て赤面している天使さんがおり、俺に気付くとキュンと来るジト目を向けてきた。
緩衝材になってないな、れいむ。だが、それでいい。
成功報酬としておくが、おうちに帰ったらあまあまをやろう。
成功報酬としておくが、おうちに帰ったらあまあまをやろう。
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また余計な話をしてしまった。
おお惚気惚気と思って勘弁して欲しい。
おお惚気惚気と思って勘弁して欲しい。
この日、つまり怪奇現象が起きたすぐ翌日だが、この話における重要な展開があった。
俺と彼女の仲ではなく、怪奇現象に関してだ。
俺と彼女の仲ではなく、怪奇現象に関してだ。
今思うと、ここでまたしても俺は選択を誤っていたのかもしれない。
朝食を経て落ち着きを取り戻した俺たちは、かといってウェーイ!と海に直行していけるような気分でもなく、ひとまずクソ真面目に掃除の続きに取り掛かった。
モノが積まれて先が見えないほど埋まっていた廊下が、徐々に開けてくる。
日々の問題を見えないところ使わないところに押し込めず、コツコツと整理整頓、処理していくことの重要性をしみじみと感じ取っていると、廊下の奥かられいむの声が聞こえた。
日々の問題を見えないところ使わないところに押し込めず、コツコツと整理整頓、処理していくことの重要性をしみじみと感じ取っていると、廊下の奥かられいむの声が聞こえた。
「ゆゆーっ! れいむ、ついに ざいっほう!のおへやをみつけたよぉお!!」
おいおいゴミ山が崩れてくるかもしれないのに、奥に行っちゃ危ないだろ……
そんなことを呟きながら、ゆっくりでは通れても人間さんが通るには多少厳しいスキマを無理に分け入っていく。
そんなことを呟きながら、ゆっくりでは通れても人間さんが通るには多少厳しいスキマを無理に分け入っていく。
「ゆっ! れいむの おにーさんっ! ここに もうひとつ おへやさんがあるよっ!」
「ゆっくり あけてねっ! れいむの たからものさんが まってるよぉお!! ゆんゆん!」
「ゆっくり あけてねっ! れいむの たからものさんが まってるよぉお!! ゆんゆん!」
れいむとまりさが並んでいる。
その目の前、廊下の突き当たりには、確かにもうひとつのお部屋があった。
その目の前、廊下の突き当たりには、確かにもうひとつのお部屋があった。
「っ……と、こりゃあ」
しかし、未知の領域には見たこともないしあわせが待っているものだと信じて疑わずにぴょんぴょんと跳ねるれいむとは対照的に、俺がそれを見たときの印象はすこぶる悪かった。
その悪い印象は主に「仕事が増えたらしい」という至極平凡でまともなものであったが、その中に僅かに、仕事とは関係のない嫌な予感が紛れていた。
そして、その嫌な予感は、実際に的中することに、というわけでもないのかもしれないが、まあ正しかったことになる。
そして、その嫌な予感は、実際に的中することに、というわけでもないのかもしれないが、まあ正しかったことになる。
れいむとまりさが見つけたもうひとつの部屋は、他の部屋とは全く違っていた。
微妙に凝った装飾の如何にも重そうな金属製の扉で閉ざされており、錆びた南京錠が掛けられていたのだ。
バイトを紹介してくれた教授にも今の所有者にも、こんな扉、こんな部屋のことは聞かされていない。
南京錠をあけるべき鍵も受け取っていないし、どこかに紛れていた可能性はあるが、少なくとも今の段階でそれらしきものを掃除して片付けた記憶もない。
南京錠をあけるべき鍵も受け取っていないし、どこかに紛れていた可能性はあるが、少なくとも今の段階でそれらしきものを掃除して片付けた記憶もない。
戯れにその鉄の扉に手をかけて引いてみたが、予想以上の重量だったし、錠がかけられているので当然ながら、開かなかった。
「どうしたんだい?」
現在最前線となっているお掃除戦線に俺がいないことに気付いたのか、背後に彼女がやって来ていた。
曖昧な返事をし、目の前の扉を指差す。
足元ではれいむが「まだかな、まだかなー」と待ちきれないといった具合で、そーわそーわしていた。
曖昧な返事をし、目の前の扉を指差す。
足元ではれいむが「まだかな、まだかなー」と待ちきれないといった具合で、そーわそーわしていた。
「ふう、む……。これは、何というか……怪しいね。不気味な感じ」
「怖いこと言うなよう。確かに怪しいし不気味だが、きっと倉庫みたいなものだろ。
問題は、こいつをどうするかだ。遊びに来てるだけだったら、放っておくんだけどなぁ」
「そうだね。鍵は、もらってないんだよね?」
「怖いこと言うなよう。確かに怪しいし不気味だが、きっと倉庫みたいなものだろ。
問題は、こいつをどうするかだ。遊びに来てるだけだったら、放っておくんだけどなぁ」
「そうだね。鍵は、もらってないんだよね?」
ああ、と返す。
下手すると今の所有者も、この部屋のことなんて知らないのかもしれない。
下見に来ていたとしても、こいつは今までゴミ山の奥に埋もれていたわけなのだから。
下手すると今の所有者も、この部屋のことなんて知らないのかもしれない。
下見に来ていたとしても、こいつは今までゴミ山の奥に埋もれていたわけなのだから。
例えばまるで、隠されているかのように。
「…………。お、オーナーさんに電話して、みるかぁ」
自分の思いつきに自分で怖くなってしまった俺は、努めて冷静に、現代人らしい理性と合理的判断を発揮して、携帯電話を手に取った。
何かあったら連絡ちょうだいねっ! すぐでいいよっ!と案外気さくに連絡先を教えてくれている今の所有者。
盆も過ぎた頃合、社会人ならば仕事に出てしまっているかと思いきや、数コールですぐに出てくれた。
そういえば在宅で仕事をしている人だと教授が言っていた気がする。
留守電にメッセージを入れる気満々だった俺は、不意打ちを喰らって声が上ずったが、何とか用件を伝えることに成功した。
盆も過ぎた頃合、社会人ならば仕事に出てしまっているかと思いきや、数コールですぐに出てくれた。
そういえば在宅で仕事をしている人だと教授が言っていた気がする。
留守電にメッセージを入れる気満々だった俺は、不意打ちを喰らって声が上ずったが、何とか用件を伝えることに成功した。
「――というわけなんですけど、どうしたらいいですかね?」
『まるまるうしうし、ゆっくり理解したよっ。そうだなー、そんな部屋があるとはねぇ……。
僕も鍵とか前の人からもらってはいないんだけど、南京錠が掛けてあるんだっけ?』
「はい、そうです。普通のというか、ボッロボロに錆びてますけど」
『そうかぁ。じゃあ悪いんだけど、ちょっとそれ壊せるか試してみてくれないかな。
危なくなく、無理のない範囲でいいです。
壊せなかったら、仕方ないからそのままでいいや。
無事壊せたら、契約どおり、大きすぎるゴミ以外のお掃除よろしくね。お給料に色つけるよっ』
『まるまるうしうし、ゆっくり理解したよっ。そうだなー、そんな部屋があるとはねぇ……。
僕も鍵とか前の人からもらってはいないんだけど、南京錠が掛けてあるんだっけ?』
「はい、そうです。普通のというか、ボッロボロに錆びてますけど」
『そうかぁ。じゃあ悪いんだけど、ちょっとそれ壊せるか試してみてくれないかな。
危なくなく、無理のない範囲でいいです。
壊せなかったら、仕方ないからそのままでいいや。
無事壊せたら、契約どおり、大きすぎるゴミ以外のお掃除よろしくね。お給料に色つけるよっ』
会話を終え、ピッと電話を切り、彼女の方へ振り返る。
鍵壊して中に入れないか試してくれないかと言われた旨を伝えたが、その彼女の背後にはまだまだゴミに溢れた廊下が見える。
鍵壊して中に入れないか試してくれないかと言われた旨を伝えたが、その彼女の背後にはまだまだゴミに溢れた廊下が見える。
その日、俺たちは結局閉ざされた南京錠の部屋には手を付けず、元々の掃除を続けた。
どうせ期限は夏いっぱい。
俺も彼女も、周辺の観光を含め、足掛け数日は滞在する予定なのだ。
どうせ期限は夏いっぱい。
俺も彼女も、周辺の観光を含め、足掛け数日は滞在する予定なのだ。
適度な曇天で作業しやすかったこともあり、その日はほぼ1日を掃除に費やした。
代わりに海での遊びもそこそこに、暗くなる前に夕飯も済ませ、コンビニで仕入れたアルコール類を飲む。
教授への愚痴やら、同期生の噂話やら、若者らしい将来の希望や不安を語り合い、気付けば深夜。
れいむとまりさがとっくに寄り添ってすーやすーやしているのに気付き、「不規則な生活は良くないね」という彼女の助言にも従い、飼い主さんたちも眠ることにした。
代わりに海での遊びもそこそこに、暗くなる前に夕飯も済ませ、コンビニで仕入れたアルコール類を飲む。
教授への愚痴やら、同期生の噂話やら、若者らしい将来の希望や不安を語り合い、気付けば深夜。
れいむとまりさがとっくに寄り添ってすーやすーやしているのに気付き、「不規則な生活は良くないね」という彼女の助言にも従い、飼い主さんたちも眠ることにした。
ずーり、ずーり……
ずーりずーり、ずっずっず……
寝入ってから、恐らく最初の90分サイクルが終わった辺りなのだろう、俺はとてつもなく嫌な気分と共に目覚めさせられた。
目が覚めてからすぐは、頭が覚醒しきっていないこともあり、そこまで明確には耳に入ってこない。
目が覚めてからすぐは、頭が覚醒しきっていないこともあり、そこまで明確には耳に入ってこない。
しかし、イヤだな~、怖いな~、と思っていると、果たして再びあの音が聞こえてくる。
ずーり、ずーり……
ずーり、ずーり……
ずーり、ずーり……ずっずっずっ……
れいむ、じゃあないんだよな。
俺は昨日のようにれいむをわざわざ起こしてきょわいきょわいにさせないよう、黙って横を向いた。
青黒い窓の影の中に、れいむのものに相違ないシルエットが見え、ゆっくりと上下して、ゆぅゆぅ息づいている。
もちろん、まりさの足音でもないだろう。
俺は昨日のようにれいむをわざわざ起こしてきょわいきょわいにさせないよう、黙って横を向いた。
青黒い窓の影の中に、れいむのものに相違ないシルエットが見え、ゆっくりと上下して、ゆぅゆぅ息づいている。
もちろん、まりさの足音でもないだろう。
野生ゆっくりか……
俺は壁側を向いて横になり、気持ち身体を縮こまらせるようにして、眠ろうと努力した。
が、こういうときの常というもので、俺の気持ちとは裏腹に、頭の方には勝手に思考が沸き、それによってどんどんと意識が覚醒し、恐怖に侵蝕されてしまう。
が、こういうときの常というもので、俺の気持ちとは裏腹に、頭の方には勝手に思考が沸き、それによってどんどんと意識が覚醒し、恐怖に侵蝕されてしまう。
野生や野良のゆっくりが外を這っているなんてことが、本当にありえるだろうか。
確かに街灯に溢れた眠らない都会ならば、夜の間にこっそり狩りをしたり、引越しをしたりするゆっくりがいないこともないだろう。
だが、ここは海水浴場の中心から離れ、別荘群からも独立している、半分森の中。
少ないとはいえ野良ゆが迷い込んでこないこともないだろうし、この2日一切見ていないが野生ゆがいないこともないだろう。
だが、ここは海水浴場の中心から離れ、別荘群からも独立している、半分森の中。
少ないとはいえ野良ゆが迷い込んでこないこともないだろうし、この2日一切見ていないが野生ゆがいないこともないだろう。
しかし、これほど真っ暗闇なのに、どうして夜目の利かないゆっくりが外を歩いているわけがあるのか。
あらゆる可能性を否定できるわけではないが、納得のいくような説明はとても出来ない。
れみりゃやふらんなどの夜行性の捕食種だろうか。
いや、れみりゃ・ふらんは空を飛ぶ。
ずーりずーりなんて音は出さないはずだ。
胴付きれみりゃは微妙に夜行性でなくなるし、これもどすどす歩くだけで、ずーりずーりとはならない。
ずーりずーりなんて音は出さないはずだ。
胴付きれみりゃは微妙に夜行性でなくなるし、これもどすどす歩くだけで、ずーりずーりとはならない。
飛行するもの以外で、夜行性の饅頭型ゆっくりがいただろうか。
ゆっくり好きの愛で人間である俺とて、希少種を含めたすべてのゆっくりを把握しているわけではない。
俺が思いつかない希少種の中で、夜にずーりずーりと狩りをするタイプのものがいたかもしれない。
猫っぽいゆっくりであるちぇんなら、夜に集会でもしているかもしれない。
そうだ、羽の折れた胴無しれみりゃなら、きっとずーりずーりと這いずり回るしかなくなるはずだ。
ゆっくり好きの愛で人間である俺とて、希少種を含めたすべてのゆっくりを把握しているわけではない。
俺が思いつかない希少種の中で、夜にずーりずーりと狩りをするタイプのものがいたかもしれない。
猫っぽいゆっくりであるちぇんなら、夜に集会でもしているかもしれない。
そうだ、羽の折れた胴無しれみりゃなら、きっとずーりずーりと這いずり回るしかなくなるはずだ。
ずーり、ずーり……
ずーり、ずーり……
様々な可能性を考え、気持ちを落ち着かせようとするが、まるで上手くいかない。
何せホラー映画や心霊番組の内容を思い出しているだとか、忽然と頭に沸いた怖いイメージの連想に取りつかれているだとか言うわけではないのだ。
恐怖を喚起させるこの「ずーり、ずーり」という不可解な音は、ずっと俺の耳に否応無しに現実のものとして響き続けていたのだから。
何せホラー映画や心霊番組の内容を思い出しているだとか、忽然と頭に沸いた怖いイメージの連想に取りつかれているだとか言うわけではないのだ。
恐怖を喚起させるこの「ずーり、ずーり」という不可解な音は、ずっと俺の耳に否応無しに現実のものとして響き続けていたのだから。
お兄さんはもうおとなっ!なんだよっ!
こんな下らないことで、きょわいきょわいで眠れないよぉお!!なんてことにはならないよっ!
ゆっくりという饅頭生物が動いて喋るのは信じるけど、オカルトなんて信じないいいい!!
こんな下らないことで、きょわいきょわいで眠れないよぉお!!なんてことにはならないよっ!
ゆっくりという饅頭生物が動いて喋るのは信じるけど、オカルトなんて信じないいいい!!
そんなことを必死に思ったとて無駄だった。
震えるわけではないが、鼓動が早くなり、嫌な汗がべっとりと出てきて気持ち悪い。
震えるわけではないが、鼓動が早くなり、嫌な汗がべっとりと出てきて気持ち悪い。
身体が嫌な意味で熱くなってしまってもうすんなりとは眠ることが出来なさそうだが、かといってシャワーを浴びにいくという選択もありえない。
何故なら、音は1階から響いているような気もするからだ。
蠕動する音が窓越しに聞こえるようなすぐ近くを、例えば別荘に密着するようにして、ずっとずーりずーりしているというのも不自然と言えば不自然だ。
まして天井裏だとか扉の向こうの廊下だとか床下の1階からだとか聞こえてくるように思うのは、何かの錯覚か反響に違いない。
まして天井裏だとか扉の向こうの廊下だとか床下の1階からだとか聞こえてくるように思うのは、何かの錯覚か反響に違いない。
もういっそ、家鳴りか、風か、水道ポンプだか電子機器だかの駆動音か。
しかしともかく幻聴ではない。
今も確かに聞こえている。
今も確かに聞こえている。
ずっずっずっずっ……
ずーり、ずーり……
俺はむーしむーしな不快感に耐えて腹にかけていたタオルケットを広げて足からすっぽり包まり、ひたすら時間が過ぎるのを待った。
昨日はちょっとれいむを撫でていた間に去ったはずの音は、まだ消えない。
昨日はちょっとれいむを撫でていた間に去ったはずの音は、まだ消えない。
俺が起きてから何分経った?
時間の感覚が曖昧だった。
時間の感覚が曖昧だった。
結局この日、怪奇現象の2日目、俺がいつの間にか疲れて眠ってしまうまで、音は鳴り続けていた。
つづく
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