ふたば系ゆっくりいじめSS@ WIKIミラー
anko0191 ぱらまりさ01
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ankoss
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(ゆっくりが死んだり潰れたりしますが、虐待作品ではありません。可愛いまりさが好きな人だけ読んでね)
ぱらまりさを作ろう 前編 作:YT
ぱらまりさを作ろう。
名もなきお兄さんの一人である俺は、ある日そう思った。
ぱらまりさとは、もちろんゆっくりまりさの亜種のことだ。
ただしそれはまだこの世に存在しない。
たったいま思いついたのだから当然だ。
巷にはさまざまなゆっくりがあふれている。
可愛いやつ、ゲスいやつ、帽子に乗って水を渡るやつ、帽子に食べ物を集めるやつ、子供を生むやつ生まないやつ、胴のあるやつないやつ、
歌うやつや殻のあるやつや芸をするやつや畑を耕すやつや化けて出るやつやレイプしたりされたりするやつや踊ったり転がったり食べられたりペットボトルに入ったり……。
きりがないのでこの辺でやめておくが、そんな現代、普通のゆっくりを飼っても面白くない。
だから自分だけのゆっくりを作ろう、と思いついた。
世間には好き者が多いからどこかで誰かが同じようなものを作っているかもしれんが、まあ構わん。
俺の周りに今までいなかったんだから、俺史上初、ということでいいだろう。
名もなきお兄さんの一人である俺は、ある日そう思った。
ぱらまりさとは、もちろんゆっくりまりさの亜種のことだ。
ただしそれはまだこの世に存在しない。
たったいま思いついたのだから当然だ。
巷にはさまざまなゆっくりがあふれている。
可愛いやつ、ゲスいやつ、帽子に乗って水を渡るやつ、帽子に食べ物を集めるやつ、子供を生むやつ生まないやつ、胴のあるやつないやつ、
歌うやつや殻のあるやつや芸をするやつや畑を耕すやつや化けて出るやつやレイプしたりされたりするやつや踊ったり転がったり食べられたりペットボトルに入ったり……。
きりがないのでこの辺でやめておくが、そんな現代、普通のゆっくりを飼っても面白くない。
だから自分だけのゆっくりを作ろう、と思いついた。
世間には好き者が多いからどこかで誰かが同じようなものを作っているかもしれんが、まあ構わん。
俺の周りに今までいなかったんだから、俺史上初、ということでいいだろう。
そんなわけで元になるゆっくりを一匹買ってきた。
ゆっくりまりさ、昨日生まれたばかりというほやほやの赤ん坊だ。
ショップで寝ているところを袋に入れてもらったまりさは、うちへ帰って床に転がすと、ぷよぷよん、と震えて目を覚ました。
「ゆっ……ゆっ……ゆっくりしていっちぇね!!!」
イクスクラメーション三つ。よし、イキのいい元気な赤まりさだ。
今後のためもあるので指先でなでなでして、たっぷり懐かせてやった。
「よーしよーし、俺がお父さんだぞ。ゆっくりしていってね」
「ゆっ!? おとーしゃんがおとーしゃんだにぇ? ゆっくり!!!」
「なーでなーで」
「ゆーんゆーん♪ ゆっくりできるにぇ!!!」
ゆっくりフードとか買うのはだるいので、パンの耳を適当に口で噛んで、ペーストにした。
オレンシジュースを買うのももだるいので省略。その代わりに砂糖水を用意する。
それらを出すと、まりさは喜んで食べた。
「むーちゃ、むーちゃ、ちあわちぇー☆」
小さな星がまわりでキラキラする。おお、ゆっくりのくせに魔理沙風味。生意気。
満足したようなので、今後の食事はパンの耳と砂糖水に決定した。楽でいいよな。
ゆっくりまりさ、昨日生まれたばかりというほやほやの赤ん坊だ。
ショップで寝ているところを袋に入れてもらったまりさは、うちへ帰って床に転がすと、ぷよぷよん、と震えて目を覚ました。
「ゆっ……ゆっ……ゆっくりしていっちぇね!!!」
イクスクラメーション三つ。よし、イキのいい元気な赤まりさだ。
今後のためもあるので指先でなでなでして、たっぷり懐かせてやった。
「よーしよーし、俺がお父さんだぞ。ゆっくりしていってね」
「ゆっ!? おとーしゃんがおとーしゃんだにぇ? ゆっくり!!!」
「なーでなーで」
「ゆーんゆーん♪ ゆっくりできるにぇ!!!」
ゆっくりフードとか買うのはだるいので、パンの耳を適当に口で噛んで、ペーストにした。
オレンシジュースを買うのももだるいので省略。その代わりに砂糖水を用意する。
それらを出すと、まりさは喜んで食べた。
「むーちゃ、むーちゃ、ちあわちぇー☆」
小さな星がまわりでキラキラする。おお、ゆっくりのくせに魔理沙風味。生意気。
満足したようなので、今後の食事はパンの耳と砂糖水に決定した。楽でいいよな。
床に本を積んで、バリケードを構築。
一畳ほどのスペースを作って、ボールやパイプなどおもちゃになりそうなものを放り込んだ。
「ゆっゆっ、ゆっくちあちょぶんだにぇ!」
気に入ってくれたようで、小さなまりさは這いずったり転がったりして遊び始めた。
うんうんやしーしーもしてくれたが、ティッシュを数枚適当に敷いて、そこでするよう命令。
二、三度指で弾き飛ばしてしつけたらすぐ覚えてくれた。
「ゆっくりしちぇいっちぇね! おとーしゃん、ゆっくりあしょんで!!!」
そんなことを叫ぶまりさを適度に放置、たまに風呂に入れたりして、一週間。
「ゆっくりしていってね! おとーさん、ゆっくり!」
大人言葉になって、ぴょんぴょん跳ねられるようになったところで、いよいよ調教を開始した。
一畳ほどのスペースを作って、ボールやパイプなどおもちゃになりそうなものを放り込んだ。
「ゆっゆっ、ゆっくちあちょぶんだにぇ!」
気に入ってくれたようで、小さなまりさは這いずったり転がったりして遊び始めた。
うんうんやしーしーもしてくれたが、ティッシュを数枚適当に敷いて、そこでするよう命令。
二、三度指で弾き飛ばしてしつけたらすぐ覚えてくれた。
「ゆっくりしちぇいっちぇね! おとーしゃん、ゆっくりあしょんで!!!」
そんなことを叫ぶまりさを適度に放置、たまに風呂に入れたりして、一週間。
「ゆっくりしていってね! おとーさん、ゆっくり!」
大人言葉になって、ぴょんぴょん跳ねられるようになったところで、いよいよ調教を開始した。
「うーす、ご飯だよまりさ」
「ゆっ? ごはんだよ! まりさゆっくりたべるね!」
まりさは喜んで跳んできたが、その姿は昨日までとは違う。
左右の三つ編みの先を、帽子の縁に安全ピンでとめてあるのだ。
俺はそれを見咎めて、言う。
「まりさ、どうした。三つ編みが帽子に引っかかっちゃってんぞ」
「ゆう、朝起きたらなってたよ。どうしてかまりさわかんないよ……」
困惑の顔になって左右にぷるぷる震えた。ふふふ、気づいてない気づいてない。
もちろんそれはまりさが寝ている間に俺がやったのだ。
ゆっくりまりさという生き物は、デフォルトで左側しか三つ編みがないが、それでは不便なので、右側にも三つ編みを作ってやった。
大サービスだ。
ついでに三角のてっぺんも少しだけ円形に切り抜いてあるが、これには気づいていないらしい。
「まあいい、とにかくご飯だ。食べるよな」
「ゆっ! もちろんだよ!」
「じゃあ、ここな」
「ゆう?」
俺はいつもの床ではなく、二つ重ねたティッシュペーパーの箱の上に皿を置いた。
まだピンポン玉ぐらいの大きさのまりさは、戸惑ってぴょんぴょん跳ねる。
「ゆうー、とどかないよ、おとーさん!」
「まあ待て、裏へ回れ」
「ゆゆっ?」
いそいそとまりさが裏へ回ると、そこに文庫本を積みかさねた階段がある。
「ゆっくりのぼるよ!」
まりさは喜んでそこをぴょんぴょんと登っていき、最上段の扉をパタンとくぐった。
「むーしゃ、むーしゃ、しあわせー☆☆」
例によって随喜の涙を流しつつパンの耳と砂糖水を完食、満腹になって階段へ戻ろうとする。
そこでハタと気づいた。
「ゆゆっ? とおれないよ! 板さんとおしてね!」
扉にぽよんぽよんと体当たりするまりさ。来た時はそれで通れたのだ。
しかし通れるわけがない。まりさは理解していないが、それは一方にしか開かない扉だ。
「ゆうー、困ったよ、下へ降りられないよ……」
困惑したまりさは、箱の縁へ向かったが、そこでしり込みした。
無理もない。箱二つの高さはまりさの背丈の三倍だ。
人間の感覚に当てはめれば四メートル以上に相当する。
困りきったまりさは、俺を見上げていった。
「おとーさん、ゆっくりおろしてね! まりさおりられないよ!」
「いや、無理だな。おとーさんにもその扉は開けられないし、まりさは下ろせないのだ」
「ゆーっ!? おろせないの? まりさどうしたらいいの?」
「まあ落ち着け、いい方法がある」
混乱してもたもたと這い回るまりさをなだめ、俺は説明を始めた。
「おまえが、ぱらまりさになればいいんだ」
「ぱらまりさ? それはゆっくりしたもの?」
「ああ、そうだ。とてもゆっくりしたゆっくりだ」
「ゆっくり! ゆっくり!」
「跳ねるな、まだ続きがある。おまえの、それな。左右の三つ編み」
「ゆっ?」
「それがいい感じに帽子とくっついている。だから、帽子は持ち上がりこそすれ、おまえから離れることはないな」
「ゆ、ゆ……なんとなくわかるよ!」
「その状態で飛び降りると、どうなる」
「ゆっ!? とびおりはゆっくりできないよ! べちゃってなるよ!」
「それは普通の場合だ。しかしぱらまりさならべちゃっとならない。なぜなら、帽子が助けてくれるからだ」
「ゆゆっ! おぼうしさんが!?」
「そうだ。ふわぁーっとなって、三つ編みを引っ張って、まりさを持ち上げてくれるぞ。
それはもう、お空を飛んでいるみたいな感じだ」
「ゆーーーっ!? お、『おそらをとんでるみたい』!?」
『お空を飛んでるみたい』。ゆっくりが強い魅力を感じる十八の殺し文句の一つだ。
これを聞かされたゆっくりはほぼ無条件で提案に従ってしまうという、便利ワードである。
「まあ、この場合は、みたいっつーかほんとに飛ぶんだが……」
「ゆっくり! ゆっくり!」
「跳ねるな、最後まで聞け。とにかく、帽子によって空を飛ぶことが出来る、これがぱらまりさだ。
大いなる真のぱらまりさになったものは、誰よりもゆっくり出来る伝説の楽園へ飛ぶことが出来る――と言われている」
主に俺に。
「ゆっ、ゆっ! ゆっくりできるんだね! まりさはゆっくり、『ファー』をするよ!」
「よし、わかったな。ではその縁へ行け」
「ゆっ、ゆっ!」
「よし、飛べ!」
「ゆうーっ!」
まりさはとんだ。高さ十センチの崖から、勇ましく、華麗に。
そして落ちた。
ベチャッ。
「ゆぎゃっ!」
口から軽くあんこを吐き出して、まりさはぐったりと斜めになる。
「ゆううう、まりさファーができなかったよ……?」
「いや、できてたぞ。ちょっぴりだけどふわぁっとしていた!」
「ゆっ、ほんと?」
あっさりと信じ込んで起き上がるまりさ。実に他愛ない。
俺はもっともらしくうなずいて言ってやった。
「うむ、帽子が浮き上がって、金髪がひらひらっとなっていたな」
これは本当だが、もちろん浮力を発するほどではない。
しかしここで俺は、ゆっくりのアバウトさに頼った大技に出た。
「そこでまりさよ、おまえ、帽子をもっと大きくしろ!」
「ゆうっ?」
ぴょん、と驚いて跳ねるまりさに、俺は指を突きつけた。
「ぱらまりさは帽子が命だ。帽子が大きければ大きいほど、長く飛ぶことができる。
まりさ! 星の出る優秀なまりさ! おまえならできる!
気合と根性で帽子を大きくし、最高にゆっくりしたぱらまりさになるのだ!」
「ゆゆぅっ!!!」
びりびりと電気に打たれたように震えるまりさ。
どうやら俺の言ったことを天命だと思い込んだらしい。
実際はワゴンで一匹二百五十円で売っていた安物まりさなのだが、それを教えてやる義理もない。
「ま……まりさは、さいこーにゆっくりしたぱらまりさになるよ!」
「なるか!」
「ゆっくりぱらまりさになるよ!」
「ゆっくり?」
「ゆっくり!」
「ゆっくりしていってね!」
「ゆっくりしていってね!!!」
「よし、そうと決まったらたっぷりあんこ補給だ。
もういっちょうご飯をやるから箱の上まで走れ!」
「ゆーーーっ!!!」
ぴょんぴょんぴょん! と猛烈な勢いで箱の裏へ回るまりさ。
どっこいせ……と俺はローテンションでパン耳を取りにいった。
「ゆっ? ごはんだよ! まりさゆっくりたべるね!」
まりさは喜んで跳んできたが、その姿は昨日までとは違う。
左右の三つ編みの先を、帽子の縁に安全ピンでとめてあるのだ。
俺はそれを見咎めて、言う。
「まりさ、どうした。三つ編みが帽子に引っかかっちゃってんぞ」
「ゆう、朝起きたらなってたよ。どうしてかまりさわかんないよ……」
困惑の顔になって左右にぷるぷる震えた。ふふふ、気づいてない気づいてない。
もちろんそれはまりさが寝ている間に俺がやったのだ。
ゆっくりまりさという生き物は、デフォルトで左側しか三つ編みがないが、それでは不便なので、右側にも三つ編みを作ってやった。
大サービスだ。
ついでに三角のてっぺんも少しだけ円形に切り抜いてあるが、これには気づいていないらしい。
「まあいい、とにかくご飯だ。食べるよな」
「ゆっ! もちろんだよ!」
「じゃあ、ここな」
「ゆう?」
俺はいつもの床ではなく、二つ重ねたティッシュペーパーの箱の上に皿を置いた。
まだピンポン玉ぐらいの大きさのまりさは、戸惑ってぴょんぴょん跳ねる。
「ゆうー、とどかないよ、おとーさん!」
「まあ待て、裏へ回れ」
「ゆゆっ?」
いそいそとまりさが裏へ回ると、そこに文庫本を積みかさねた階段がある。
「ゆっくりのぼるよ!」
まりさは喜んでそこをぴょんぴょんと登っていき、最上段の扉をパタンとくぐった。
「むーしゃ、むーしゃ、しあわせー☆☆」
例によって随喜の涙を流しつつパンの耳と砂糖水を完食、満腹になって階段へ戻ろうとする。
そこでハタと気づいた。
「ゆゆっ? とおれないよ! 板さんとおしてね!」
扉にぽよんぽよんと体当たりするまりさ。来た時はそれで通れたのだ。
しかし通れるわけがない。まりさは理解していないが、それは一方にしか開かない扉だ。
「ゆうー、困ったよ、下へ降りられないよ……」
困惑したまりさは、箱の縁へ向かったが、そこでしり込みした。
無理もない。箱二つの高さはまりさの背丈の三倍だ。
人間の感覚に当てはめれば四メートル以上に相当する。
困りきったまりさは、俺を見上げていった。
「おとーさん、ゆっくりおろしてね! まりさおりられないよ!」
「いや、無理だな。おとーさんにもその扉は開けられないし、まりさは下ろせないのだ」
「ゆーっ!? おろせないの? まりさどうしたらいいの?」
「まあ落ち着け、いい方法がある」
混乱してもたもたと這い回るまりさをなだめ、俺は説明を始めた。
「おまえが、ぱらまりさになればいいんだ」
「ぱらまりさ? それはゆっくりしたもの?」
「ああ、そうだ。とてもゆっくりしたゆっくりだ」
「ゆっくり! ゆっくり!」
「跳ねるな、まだ続きがある。おまえの、それな。左右の三つ編み」
「ゆっ?」
「それがいい感じに帽子とくっついている。だから、帽子は持ち上がりこそすれ、おまえから離れることはないな」
「ゆ、ゆ……なんとなくわかるよ!」
「その状態で飛び降りると、どうなる」
「ゆっ!? とびおりはゆっくりできないよ! べちゃってなるよ!」
「それは普通の場合だ。しかしぱらまりさならべちゃっとならない。なぜなら、帽子が助けてくれるからだ」
「ゆゆっ! おぼうしさんが!?」
「そうだ。ふわぁーっとなって、三つ編みを引っ張って、まりさを持ち上げてくれるぞ。
それはもう、お空を飛んでいるみたいな感じだ」
「ゆーーーっ!? お、『おそらをとんでるみたい』!?」
『お空を飛んでるみたい』。ゆっくりが強い魅力を感じる十八の殺し文句の一つだ。
これを聞かされたゆっくりはほぼ無条件で提案に従ってしまうという、便利ワードである。
「まあ、この場合は、みたいっつーかほんとに飛ぶんだが……」
「ゆっくり! ゆっくり!」
「跳ねるな、最後まで聞け。とにかく、帽子によって空を飛ぶことが出来る、これがぱらまりさだ。
大いなる真のぱらまりさになったものは、誰よりもゆっくり出来る伝説の楽園へ飛ぶことが出来る――と言われている」
主に俺に。
「ゆっ、ゆっ! ゆっくりできるんだね! まりさはゆっくり、『ファー』をするよ!」
「よし、わかったな。ではその縁へ行け」
「ゆっ、ゆっ!」
「よし、飛べ!」
「ゆうーっ!」
まりさはとんだ。高さ十センチの崖から、勇ましく、華麗に。
そして落ちた。
ベチャッ。
「ゆぎゃっ!」
口から軽くあんこを吐き出して、まりさはぐったりと斜めになる。
「ゆううう、まりさファーができなかったよ……?」
「いや、できてたぞ。ちょっぴりだけどふわぁっとしていた!」
「ゆっ、ほんと?」
あっさりと信じ込んで起き上がるまりさ。実に他愛ない。
俺はもっともらしくうなずいて言ってやった。
「うむ、帽子が浮き上がって、金髪がひらひらっとなっていたな」
これは本当だが、もちろん浮力を発するほどではない。
しかしここで俺は、ゆっくりのアバウトさに頼った大技に出た。
「そこでまりさよ、おまえ、帽子をもっと大きくしろ!」
「ゆうっ?」
ぴょん、と驚いて跳ねるまりさに、俺は指を突きつけた。
「ぱらまりさは帽子が命だ。帽子が大きければ大きいほど、長く飛ぶことができる。
まりさ! 星の出る優秀なまりさ! おまえならできる!
気合と根性で帽子を大きくし、最高にゆっくりしたぱらまりさになるのだ!」
「ゆゆぅっ!!!」
びりびりと電気に打たれたように震えるまりさ。
どうやら俺の言ったことを天命だと思い込んだらしい。
実際はワゴンで一匹二百五十円で売っていた安物まりさなのだが、それを教えてやる義理もない。
「ま……まりさは、さいこーにゆっくりしたぱらまりさになるよ!」
「なるか!」
「ゆっくりぱらまりさになるよ!」
「ゆっくり?」
「ゆっくり!」
「ゆっくりしていってね!」
「ゆっくりしていってね!!!」
「よし、そうと決まったらたっぷりあんこ補給だ。
もういっちょうご飯をやるから箱の上まで走れ!」
「ゆーーーっ!!!」
ぴょんぴょんぴょん! と猛烈な勢いで箱の裏へ回るまりさ。
どっこいせ……と俺はローテンションでパン耳を取りにいった。
しかしホラというのは吹いてみるもので――。
「ゆっくりしていってね!」ふわぁっ……。
ぴょんぴょんぴょんぴょん。
「ゆっくりしていってね!」ふわぁっ……。
ぴょんぴょんぴょんぴょん。
「あほぇー……」
間抜けな声を漏らしているのは俺だ。バリケードの外から唖然として見つめている。
ティッシュ三箱分の台からジャンプして、帽子に頼ってふわふわ降下するまりさを。
ぽよん、と地上につくが早いか、ぴょんぴょんと裏へ回って、また階段を登る。
そんなことを、まりさは何十回も繰り返しているのだった。
あきれたことに、まりさはたった一週間で、本当に「ファー」をマスターしてしまった。
すでに体はピンポン玉時代より一回りも大きくなっていたが、帽子はそれ以上に大きくなっている。
いや、大きく「した」のだ。まりさが。意志の力で。
まりさ本人が可能だと信じ込んだために、大きくなったらしい。
まあ、もともとまりさの帽子の成長原理は謎だからな……。
ともあれその直径は、今や俺の手のひらぐらいある。まだ小さなまりさを支えるには十分すぎるほどだ。
それに頼って、まりさは三十センチほど先まで滑空できるようになっていた。
俺に気づくと、くるんと振り返って、ゆっくりれいむのような得意げな顔でほざく。
「ゆっ、おとーさん! まりさ、ファーができるようになったよ!
ゆっくりみていてね! ゆっくりみていてね!」
ぴょん!
ふわぁっ、と帽子が風を孕む。二本の三つ編みの下で金髪饅頭がゆらゆらと揺れる。
ゆっくりと降りていったまりさは、見事に着地を決めた。
その後頭部に、膨らんだ帽子がポスンとかぶさった。先端の穴から空気が抜け、頭にぴったりフィットする。
「ゆっへん! どう?」
「おおおー……」
俺は思わずパチパチと拍手した。
ぴょんぴょんぴょんぴょん。
「ゆっくりしていってね!」ふわぁっ……。
ぴょんぴょんぴょんぴょん。
「あほぇー……」
間抜けな声を漏らしているのは俺だ。バリケードの外から唖然として見つめている。
ティッシュ三箱分の台からジャンプして、帽子に頼ってふわふわ降下するまりさを。
ぽよん、と地上につくが早いか、ぴょんぴょんと裏へ回って、また階段を登る。
そんなことを、まりさは何十回も繰り返しているのだった。
あきれたことに、まりさはたった一週間で、本当に「ファー」をマスターしてしまった。
すでに体はピンポン玉時代より一回りも大きくなっていたが、帽子はそれ以上に大きくなっている。
いや、大きく「した」のだ。まりさが。意志の力で。
まりさ本人が可能だと信じ込んだために、大きくなったらしい。
まあ、もともとまりさの帽子の成長原理は謎だからな……。
ともあれその直径は、今や俺の手のひらぐらいある。まだ小さなまりさを支えるには十分すぎるほどだ。
それに頼って、まりさは三十センチほど先まで滑空できるようになっていた。
俺に気づくと、くるんと振り返って、ゆっくりれいむのような得意げな顔でほざく。
「ゆっ、おとーさん! まりさ、ファーができるようになったよ!
ゆっくりみていてね! ゆっくりみていてね!」
ぴょん!
ふわぁっ、と帽子が風を孕む。二本の三つ編みの下で金髪饅頭がゆらゆらと揺れる。
ゆっくりと降りていったまりさは、見事に着地を決めた。
その後頭部に、膨らんだ帽子がポスンとかぶさった。先端の穴から空気が抜け、頭にぴったりフィットする。
「ゆっへん! どう?」
「おおおー……」
俺は思わずパチパチと拍手した。
こうして、まりさはぱらまりさとしての道を歩みだした。
俺はまりさが少しずつ大きくなっていくのにあわせて、台の高さを少しずつ増していった。
ティッシュ箱三個分、四個分、五個分――椅子一個分、椅子とティッシュ一個分、それから机の高さ。
もちろん、すべてまりさが寝ている間に行い、「天変地異が起きたから仕方なく修行せねばならない」というポーズだけは維持した。
「うおっ、まりさ! また台が高くなってるぞ?」
「ゆゆっ!? ほんとうだよ! 机さんになってるよ!」
「お父さん、こんな高いところにご飯をおかにゃならん。やれるか?」
「ゆっくりのぼるよ!」
まりさはティッシュ箱の階段を跳ねのぼり、これだけはいつもこっそり俺が手作りしている板一枚の扉をくぐって、机に躍り出た。
俺の腰ぐらいの高さで、感動の声を上げる。
「ゆっゆう! とってもたかいよ! ゆっくりできるよ!」
「しかしそこから飛ばにゃならんぞ。いけるのか」
「ゆっくりファーをするよ!」
むーしゃむーしゃを済ませたまりさは、いざ机の端に立つと、緊張した顔で叫んだ。
「ゆっくりしていってね!」
バッ……ふわふわふわ。
まりさはバリケードを楽々と越え、なんと部屋の端までたどり着いてしまった。
俺は舌を巻いた。
「この野郎、早くも滑空比三をマークしやがったか」
しかし順調に見えた成長も、あるところで壁に突き当たった。
それは台がカラーボックスになり、まりさの大きさがソフトボール大を越えたころだった。
ある日、まりさの飛距離が伸びなくなったのだ。
それだけではなく、時がたつにつれ今度はみるみる飛距離が下がり始めてしまった。
しまいには滑空できず、ほとんど墜落に等しい効果をするようになった。
「ゆっくりしていってね!!!」
叫んで飛び降りたまりさが、急速に落下して、べちゃっと床に当たる。
「ゆぶぅ!」
あんこを吐き出して痙攣し、それでもめげずによろよろと這いずり、台の上に向かう。
修行が足りないと思っているからだ。しかし俺はおかしいと気づいていた。
何日目かに、まりさが派手な墜落でドバッとあんこを吐き、ぴくりとも動かなくなったところで調査に乗り出すことにした。
まずまりさに砂糖水を注射して救命しておいてから、帽子を取って調べる。
異常なし。穴が避けたり破れたりはしていない。
では、まりさ本体のほうか?
そう思ってまりさを持ち上げなおした俺は、眉をひそめた。
「……んん~~~?」
重い。
なんかこう、ノシッ、と来る。
面倒だったが、体重を量ったり帽子の寸法を調べたりして計算した結果、問題点が明らかになった。
「まりさよ」
目を覚ましたまりさの前で、俺は厳粛に宣言した。
「おまえは重くなってはならない」
「ゆぅっ!?」
「いいか、ぱらまりさは身軽で敏捷なゆっくりだ。身軽とはどういうことかわかるか」
「ゆっ、からだがかるいことだよ!」
「そのとおりだ。しかるに今のおまえは重い。こう重くてはぱらまりさになれん!」
「ゆーっ!?」
「頑張って軽くなるんだ、まりさ!」
「ゆっゆっゆっ……」
どんどん成長するゆっくりにとって、軽くなれというのは至難の業。
まりさにもわかっているらしく、舌を吐き出し白目を剥いて苦しみ出した。
実のところこれは無理な注文だった。相手は物理法則だからだ。
まりさの帽子はまりさに合わせて相似形で成長し、帽子の揚力は帽子の面積に比例する。
だからつまり、揚力はまりさの寸法の二乗でアップする。
ところがまりさの体重はまりさの容積に比例する。
だからつまり、体重はまりさの寸法の三乗でアップするわけだ。
二乗vs三乗――どちらが勝つかは明らかだ。有名な二乗三乗則である。
すなわちまりさが漫然と成長を続ける限り、いつかは重くなりすぎて飛べなくなるのは、火を見るより明らかだったのだ!
「まりさ、どうする!?」
「ゆ゛っ……ゆ゛っ……ゆ゛っ……」
宇宙を律する厳格な法則を前にして、さしものまりさも解決に至れないらしく、その晩はまりさの苦悶の声がずっと続いていた。
俺はまりさが少しずつ大きくなっていくのにあわせて、台の高さを少しずつ増していった。
ティッシュ箱三個分、四個分、五個分――椅子一個分、椅子とティッシュ一個分、それから机の高さ。
もちろん、すべてまりさが寝ている間に行い、「天変地異が起きたから仕方なく修行せねばならない」というポーズだけは維持した。
「うおっ、まりさ! また台が高くなってるぞ?」
「ゆゆっ!? ほんとうだよ! 机さんになってるよ!」
「お父さん、こんな高いところにご飯をおかにゃならん。やれるか?」
「ゆっくりのぼるよ!」
まりさはティッシュ箱の階段を跳ねのぼり、これだけはいつもこっそり俺が手作りしている板一枚の扉をくぐって、机に躍り出た。
俺の腰ぐらいの高さで、感動の声を上げる。
「ゆっゆう! とってもたかいよ! ゆっくりできるよ!」
「しかしそこから飛ばにゃならんぞ。いけるのか」
「ゆっくりファーをするよ!」
むーしゃむーしゃを済ませたまりさは、いざ机の端に立つと、緊張した顔で叫んだ。
「ゆっくりしていってね!」
バッ……ふわふわふわ。
まりさはバリケードを楽々と越え、なんと部屋の端までたどり着いてしまった。
俺は舌を巻いた。
「この野郎、早くも滑空比三をマークしやがったか」
しかし順調に見えた成長も、あるところで壁に突き当たった。
それは台がカラーボックスになり、まりさの大きさがソフトボール大を越えたころだった。
ある日、まりさの飛距離が伸びなくなったのだ。
それだけではなく、時がたつにつれ今度はみるみる飛距離が下がり始めてしまった。
しまいには滑空できず、ほとんど墜落に等しい効果をするようになった。
「ゆっくりしていってね!!!」
叫んで飛び降りたまりさが、急速に落下して、べちゃっと床に当たる。
「ゆぶぅ!」
あんこを吐き出して痙攣し、それでもめげずによろよろと這いずり、台の上に向かう。
修行が足りないと思っているからだ。しかし俺はおかしいと気づいていた。
何日目かに、まりさが派手な墜落でドバッとあんこを吐き、ぴくりとも動かなくなったところで調査に乗り出すことにした。
まずまりさに砂糖水を注射して救命しておいてから、帽子を取って調べる。
異常なし。穴が避けたり破れたりはしていない。
では、まりさ本体のほうか?
そう思ってまりさを持ち上げなおした俺は、眉をひそめた。
「……んん~~~?」
重い。
なんかこう、ノシッ、と来る。
面倒だったが、体重を量ったり帽子の寸法を調べたりして計算した結果、問題点が明らかになった。
「まりさよ」
目を覚ましたまりさの前で、俺は厳粛に宣言した。
「おまえは重くなってはならない」
「ゆぅっ!?」
「いいか、ぱらまりさは身軽で敏捷なゆっくりだ。身軽とはどういうことかわかるか」
「ゆっ、からだがかるいことだよ!」
「そのとおりだ。しかるに今のおまえは重い。こう重くてはぱらまりさになれん!」
「ゆーっ!?」
「頑張って軽くなるんだ、まりさ!」
「ゆっゆっゆっ……」
どんどん成長するゆっくりにとって、軽くなれというのは至難の業。
まりさにもわかっているらしく、舌を吐き出し白目を剥いて苦しみ出した。
実のところこれは無理な注文だった。相手は物理法則だからだ。
まりさの帽子はまりさに合わせて相似形で成長し、帽子の揚力は帽子の面積に比例する。
だからつまり、揚力はまりさの寸法の二乗でアップする。
ところがまりさの体重はまりさの容積に比例する。
だからつまり、体重はまりさの寸法の三乗でアップするわけだ。
二乗vs三乗――どちらが勝つかは明らかだ。有名な二乗三乗則である。
すなわちまりさが漫然と成長を続ける限り、いつかは重くなりすぎて飛べなくなるのは、火を見るより明らかだったのだ!
「まりさ、どうする!?」
「ゆ゛っ……ゆ゛っ……ゆ゛っ……」
宇宙を律する厳格な法則を前にして、さしものまりさも解決に至れないらしく、その晩はまりさの苦悶の声がずっと続いていた。
しかしゆっくりのいい加減さとはたいしたもので――。
「ゆっくりしていってね!!!」
バッ。
ふわぁっ…………………………。
「うぼぁー……」
間抜けな声を漏らしているのは俺だ。部屋の戸口から唖然として見つめている。
俺の身長に等しい本棚からジャンプして、部屋中をぐるぐる旋回して回るまりさを。
あきれたことに、まりさはたった二週間で二乗三乗則を克服してしまった。
その答えが――
「おとーさん、ゆっくりしていってね!!! ぷくぅぅ!」
左右へべろんと伸びた、まりさの頬。
リフティング・ボディ(揚力型胴体)。
いや、ゆっくりは生首なんだから、リフティング・ヘッドというべきか。
ともかく足りない分の揚力を、自分の体で発生し、あまつさえ扁平になることで重量も減らしやがった。
「ゆっぷひとぶよ!」
バッ、と飛んだかと思うと、パラグライダー付き全翼機みたいなけったいな格好で、ふーわふーわと部屋の中を何周もする。
よく見れば、帽子も左右に広がり、前縁が滑らかに下向きにめくれ、後尾が燕の尾のように二股になって伸びている。
信じられないことに、帽子のモディファイまで進めやがったようだ。
嗚呼まりさ、汝はどこまで飛んでゆく……。
「ぷはっ! おとーさん、まりさまたファーができるようになったよ!」
ぽてん、と飛び降りたまりさの大きさは、もう高めのカレーパンぐらいになっていた。
バッ。
ふわぁっ…………………………。
「うぼぁー……」
間抜けな声を漏らしているのは俺だ。部屋の戸口から唖然として見つめている。
俺の身長に等しい本棚からジャンプして、部屋中をぐるぐる旋回して回るまりさを。
あきれたことに、まりさはたった二週間で二乗三乗則を克服してしまった。
その答えが――
「おとーさん、ゆっくりしていってね!!! ぷくぅぅ!」
左右へべろんと伸びた、まりさの頬。
リフティング・ボディ(揚力型胴体)。
いや、ゆっくりは生首なんだから、リフティング・ヘッドというべきか。
ともかく足りない分の揚力を、自分の体で発生し、あまつさえ扁平になることで重量も減らしやがった。
「ゆっぷひとぶよ!」
バッ、と飛んだかと思うと、パラグライダー付き全翼機みたいなけったいな格好で、ふーわふーわと部屋の中を何周もする。
よく見れば、帽子も左右に広がり、前縁が滑らかに下向きにめくれ、後尾が燕の尾のように二股になって伸びている。
信じられないことに、帽子のモディファイまで進めやがったようだ。
嗚呼まりさ、汝はどこまで飛んでゆく……。
「ぷはっ! おとーさん、まりさまたファーができるようになったよ!」
ぽてん、と飛び降りたまりさの大きさは、もう高めのカレーパンぐらいになっていた。
そんなある日のことだ、まりさが珍しく恥ずかしそうにやってきたのは。
「おとーさん、あのね、あのね……」
赤くなってうつむいてもじもじしてウザかったので、一発パチンとでこぴんしてやると、決心したみたいにまりさは叫んだ。
「まりさ、およめさんがほしいよ!」
「ゆっくり!?」
いや、びっくり。
俺のほうが驚いた。
こいつに性欲があったとは……。
しかし考えてみれば、奇怪な飛行進化を遂げていること以外は、飯も食えばうんうんもする普通のゆっくりまりさだから、性欲があってもおかしくないわな。
「まりさ、かわいいおよめさんとふーふになりたいよ……」
照れ照れともじもじするまりさは相当ウザかったが、一蹴しようとして、俺は思いなおした。
待てよ。
これはぱらまりさを量産するチャンスかもしれん。
量産してどうするというあてはない。
というか今のこのまりさの行く末すら何の計画もないが、それは問題ではない。
ショップに売れるかもしれないし、誰かに見せられるかもしれない。
ダメなら潰せばいい。
俺はそう考えて、言った。
「……そうだな、おまえも年頃だし、ひとつ嫁探しをしてやるか」
「ゆゆーっ! ありがとうおとーさん、ゆっくりしていってね☆! ゆっくりしていってね☆!」
まりさはぴょんぴょん跳ねて星を散らして喜んだ。
俺は内心で、こんなにけったいな変形をしてしまったまりさが、果たして他のゆっくりに気に入ってもらえるだろうかと心配したが、それは杞憂だった。
嫁探しに出かけたショップで、まりさはモテモテだったのだ。
「ゆーっ、すごくかっこいいまりさが来たよ! ゆっくりしていってね!」
「むきゅ、ゆっくりして、ゆっくりしていってねッホエホッゲホッブ」
「ゆっくりしてー! まりさゆっくりしてー!」
「んほおおおおおおお! なんてゆっくりしたとかいてきまりさなのぉぉ!? ハァッハァッハァッハァッ!!!」
ケージというケージからゆっくりたちが声をかける。
それだけモテたら増長しそうなものだが、うちのまりさは他のゆっくりを見たことがないので恥ずかしがって照れる。
それがまた人気を呼び大合唱のまりさコールになるという具合だった。
「まりさこっちへ来てぇぇぇぇ!!!」
俺は不思議に思って、店員に聞いた。
「何、ここ。みんなメッチャ飢えてない?」
「やーそうでもないですが……あっ、お客さんこそ面白いまりさをお連れになってますね」
容器に収まらないので頭に乗っけていったまりさをよくよく眺めると、店員は感心した様子で言った。
「いやあこれは面白い。どうしてこんな調教を?」
「それは秘密。で、なんでもてるの」
「それはもちろん、帽子が立派だからでしょうね。まりさの帽子は何にも勝るステータスですから」
なるほど、そういえば以前自分でもそんなことを言ったわ。
まりさは最近では潰したメロンほどのサイズになり、帽子は人間の大人の麦藁帽子よりも大きくなって左右にゆったりと伸びている。
俺がまりさを頭に載せるのは、一つにはその帽子のおかげで俺にとっても日よけになるからだった。
ともあれまりさはモテモテで、嫁選びに不自由することはなかった。
俺はまりさをしばらく自由にゆっくりたちと会話させ、嫁を選ばせた。
「ま、まりさはあのれいむがいいよ……」
「まあ基本だな。よう、れいむ。おまえ、このまりさが気に入りそうか?」
「ゆん! ステキなまりさだね、ゆっくり暮らせそうだよ! ゆっくりしていってね!!!」
明るく元気なれいむのようだ。俺も納得して買ってやった。
うちへ帰って、結婚式。ウェディングドレス代わりのティッシュで適当に包んで、適当な式辞を述べて、適当に濃くした砂糖水をくれてやったら、二頭は真っ赤になって喜んだ。
「腐りしときもぉ、かじられしときもぉ、ともに生きると、誓いマスカー?」
「まりさはちかうよ!」
「れいむもちかうよ!」
「ではァ、ゆっくりしていってね」
「ゆっくりしていってね!!!」
「ゆっくりしていってね!!!」
「おとーさん、あのね、あのね……」
赤くなってうつむいてもじもじしてウザかったので、一発パチンとでこぴんしてやると、決心したみたいにまりさは叫んだ。
「まりさ、およめさんがほしいよ!」
「ゆっくり!?」
いや、びっくり。
俺のほうが驚いた。
こいつに性欲があったとは……。
しかし考えてみれば、奇怪な飛行進化を遂げていること以外は、飯も食えばうんうんもする普通のゆっくりまりさだから、性欲があってもおかしくないわな。
「まりさ、かわいいおよめさんとふーふになりたいよ……」
照れ照れともじもじするまりさは相当ウザかったが、一蹴しようとして、俺は思いなおした。
待てよ。
これはぱらまりさを量産するチャンスかもしれん。
量産してどうするというあてはない。
というか今のこのまりさの行く末すら何の計画もないが、それは問題ではない。
ショップに売れるかもしれないし、誰かに見せられるかもしれない。
ダメなら潰せばいい。
俺はそう考えて、言った。
「……そうだな、おまえも年頃だし、ひとつ嫁探しをしてやるか」
「ゆゆーっ! ありがとうおとーさん、ゆっくりしていってね☆! ゆっくりしていってね☆!」
まりさはぴょんぴょん跳ねて星を散らして喜んだ。
俺は内心で、こんなにけったいな変形をしてしまったまりさが、果たして他のゆっくりに気に入ってもらえるだろうかと心配したが、それは杞憂だった。
嫁探しに出かけたショップで、まりさはモテモテだったのだ。
「ゆーっ、すごくかっこいいまりさが来たよ! ゆっくりしていってね!」
「むきゅ、ゆっくりして、ゆっくりしていってねッホエホッゲホッブ」
「ゆっくりしてー! まりさゆっくりしてー!」
「んほおおおおおおお! なんてゆっくりしたとかいてきまりさなのぉぉ!? ハァッハァッハァッハァッ!!!」
ケージというケージからゆっくりたちが声をかける。
それだけモテたら増長しそうなものだが、うちのまりさは他のゆっくりを見たことがないので恥ずかしがって照れる。
それがまた人気を呼び大合唱のまりさコールになるという具合だった。
「まりさこっちへ来てぇぇぇぇ!!!」
俺は不思議に思って、店員に聞いた。
「何、ここ。みんなメッチャ飢えてない?」
「やーそうでもないですが……あっ、お客さんこそ面白いまりさをお連れになってますね」
容器に収まらないので頭に乗っけていったまりさをよくよく眺めると、店員は感心した様子で言った。
「いやあこれは面白い。どうしてこんな調教を?」
「それは秘密。で、なんでもてるの」
「それはもちろん、帽子が立派だからでしょうね。まりさの帽子は何にも勝るステータスですから」
なるほど、そういえば以前自分でもそんなことを言ったわ。
まりさは最近では潰したメロンほどのサイズになり、帽子は人間の大人の麦藁帽子よりも大きくなって左右にゆったりと伸びている。
俺がまりさを頭に載せるのは、一つにはその帽子のおかげで俺にとっても日よけになるからだった。
ともあれまりさはモテモテで、嫁選びに不自由することはなかった。
俺はまりさをしばらく自由にゆっくりたちと会話させ、嫁を選ばせた。
「ま、まりさはあのれいむがいいよ……」
「まあ基本だな。よう、れいむ。おまえ、このまりさが気に入りそうか?」
「ゆん! ステキなまりさだね、ゆっくり暮らせそうだよ! ゆっくりしていってね!!!」
明るく元気なれいむのようだ。俺も納得して買ってやった。
うちへ帰って、結婚式。ウェディングドレス代わりのティッシュで適当に包んで、適当な式辞を述べて、適当に濃くした砂糖水をくれてやったら、二頭は真っ赤になって喜んだ。
「腐りしときもぉ、かじられしときもぉ、ともに生きると、誓いマスカー?」
「まりさはちかうよ!」
「れいむもちかうよ!」
「ではァ、ゆっくりしていってね」
「ゆっくりしていってね!!!」
「ゆっくりしていってね!!!」
その晩、たとえゆっくりでも同じ室内で初夜をやられると大変に不愉快になる、ということを思い知った。
二頭は仲良く暮らした。れいむはまりさの飛行形態を見て最初は驚いたが、その形でエサを取って来るので、じきに納得したようだった。
忘れられているかもしれんが、俺は今でも「台の上にしか食事を置けない」というスタイルを崩していないのである。
その意味はだいぶ薄れてしまったが、面白いのでずっと続けていた。
月日は過ぎ、やがてまりさが来てから半年がたった。
ある日、俺が出先から帰ってくると、まりさが勢いよくふわぁーっと飛んできて、ボンと胸にぶつかった。
「おっと」
抱きとめてやると、まりさは嬉しさに顔を輝かせながら言った。
「おとーさん、ゆっくりよろこんでね! れいむに赤ちゃんができたよ!」
「なにっ?」
驚いて確かめると確かにれいむはにんっしんっしていた。腹のぽっこり膨れた、動物型妊娠だ。
「やったね! れいむ! まりさとってもうれしいよ! ゆっくりした赤ちゃんをうんでね!」
「ゆっくり! れいむがんばるね、まりさに似たかわいい赤ちゃんをうむよ!」
「すーりすーり☆☆」
星をたくさん散らして喜ぶ夫婦。
忘れられているかもしれんが、俺は今でも「台の上にしか食事を置けない」というスタイルを崩していないのである。
その意味はだいぶ薄れてしまったが、面白いのでずっと続けていた。
月日は過ぎ、やがてまりさが来てから半年がたった。
ある日、俺が出先から帰ってくると、まりさが勢いよくふわぁーっと飛んできて、ボンと胸にぶつかった。
「おっと」
抱きとめてやると、まりさは嬉しさに顔を輝かせながら言った。
「おとーさん、ゆっくりよろこんでね! れいむに赤ちゃんができたよ!」
「なにっ?」
驚いて確かめると確かにれいむはにんっしんっしていた。腹のぽっこり膨れた、動物型妊娠だ。
「やったね! れいむ! まりさとってもうれしいよ! ゆっくりした赤ちゃんをうんでね!」
「ゆっくり! れいむがんばるね、まりさに似たかわいい赤ちゃんをうむよ!」
「すーりすーり☆☆」
星をたくさん散らして喜ぶ夫婦。
後から考えれば、このときがまりさの幸福の頂点だった。
(後編へ続く)
前作で、
09/06/25 01:47:17
たまにはこういうSSもアリだと思った俺は異端なのか
たまにはこういうSSもアリだと思った俺は異端なのか
この感想を書いてくださった方と、以降喜んでくださった方に、感謝とこの話を捧げます。
助かりました。
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助かりました。
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挿絵:釣りまりさあき
挿絵:セールスあき