ふたば系ゆっくりいじめSS@ WIKIミラー
anko0765 奇跡の朝に
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「お? ゆっくりがいる」
自動販売機の脇の暗がりで固まっているゆっくり一家――親まりさに親れいむ、子まりさ――を横目に、男はボタンを押した。
「ゆう、ゆう」という小さな寝息をたてて、一家は眠っていた。
「うちのが欲しがってんだよなあ。どこがかわいいんだか、こんな饅頭」
落ちてきた缶コーヒーを手に取る。男のかじかんだ手に、缶の温もりが染み渡った。
「これ、土産に持っていってやるかな。喜ぶぞ~。『お父さんありがとう!』なんつってさ! ははは」
夜の路地に、楽しげな男の声が響く。
缶コーヒーを両手で転がしながら、男は一家に顔を近づけて、まじまじと眺めた。
「このちっちゃいのなら、まだかわいく見えるかな……」
男は、自分の拳ほどの大きさの子まりさを、指で摘んで持ち上げた。
「むにゃむにゃ、おしょらを……」
子まりさは寝言を言ったが、それでも目覚める気配はない。口の端から砂糖水のよだれをたらし、熟睡しているようだ。
「おうおう、よく寝てるわ」
男はそう言って、子まりさを手に、その場を立ち去った。
自動販売機の脇の暗がりで固まっているゆっくり一家――親まりさに親れいむ、子まりさ――を横目に、男はボタンを押した。
「ゆう、ゆう」という小さな寝息をたてて、一家は眠っていた。
「うちのが欲しがってんだよなあ。どこがかわいいんだか、こんな饅頭」
落ちてきた缶コーヒーを手に取る。男のかじかんだ手に、缶の温もりが染み渡った。
「これ、土産に持っていってやるかな。喜ぶぞ~。『お父さんありがとう!』なんつってさ! ははは」
夜の路地に、楽しげな男の声が響く。
缶コーヒーを両手で転がしながら、男は一家に顔を近づけて、まじまじと眺めた。
「このちっちゃいのなら、まだかわいく見えるかな……」
男は、自分の拳ほどの大きさの子まりさを、指で摘んで持ち上げた。
「むにゃむにゃ、おしょらを……」
子まりさは寝言を言ったが、それでも目覚める気配はない。口の端から砂糖水のよだれをたらし、熟睡しているようだ。
「おうおう、よく寝てるわ」
男はそう言って、子まりさを手に、その場を立ち去った。
男は体を震わせた、
「ん、ちょっと小便……」
この辺りにはトイレもないので、ちょうど通りかかった空き地で済ませてしまうことにした――男は酔っていた。
目の前には、男よりも頭ひとつ分くらい高いブロック塀がある。
その上に飲みかけの缶コーヒーと、いまだ眠ったままの子まりさを置く。
そしてズボンのベルトをはずし――
「……ふう、すっきり」
ことを終えた男は缶コーヒーを手に取り、一口飲む。
そして時計を見て、
「やべ、終電行っちゃうじゃねーか!」
駅に向かって、慌てて走り出した。
「ん、ちょっと小便……」
この辺りにはトイレもないので、ちょうど通りかかった空き地で済ませてしまうことにした――男は酔っていた。
目の前には、男よりも頭ひとつ分くらい高いブロック塀がある。
その上に飲みかけの缶コーヒーと、いまだ眠ったままの子まりさを置く。
そしてズボンのベルトをはずし――
「……ふう、すっきり」
ことを終えた男は缶コーヒーを手に取り、一口飲む。
そして時計を見て、
「やべ、終電行っちゃうじゃねーか!」
駅に向かって、慌てて走り出した。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「きょわいんだじぇええええ!!」
塀の上から両親を見下ろし、子まりさはパニックになっていた。
自分はおうちで両親に寄り添って眠っていたはずだ。
それがなぜ、目が覚めたら自分ただ一匹で、なおかつ目も眩むような高い塀の上にいるのだろう。
ちょっと踏み出せば地面までまっ逆さま。
こんな場所で眠っていたなんて。もし寝ぼけて下に落ちていたらと思うとゾッとする。
何がどうなってこんな状況になったのか、子まりさにはまったく見当がつかなかった。
「まりしゃをたしゅけちぇにぇええええええ!! たしゅけりゅんだじぇえええええ!!」
子まりさは、眼下の両親――まりさとれいむに、泣きながら助けを求め続けた。
塀の上から両親を見下ろし、子まりさはパニックになっていた。
自分はおうちで両親に寄り添って眠っていたはずだ。
それがなぜ、目が覚めたら自分ただ一匹で、なおかつ目も眩むような高い塀の上にいるのだろう。
ちょっと踏み出せば地面までまっ逆さま。
こんな場所で眠っていたなんて。もし寝ぼけて下に落ちていたらと思うとゾッとする。
何がどうなってこんな状況になったのか、子まりさにはまったく見当がつかなかった。
「まりしゃをたしゅけちぇにぇええええええ!! たしゅけりゅんだじぇえええええ!!」
子まりさは、眼下の両親――まりさとれいむに、泣きながら助けを求め続けた。
「おちびちゃん! ゆっくり! ゆっくりするのぜ!!」
塀の下から子まりさを見上げるまりさも、パニックになっていた。
自分たちと一緒に寝ていた子まりさが朝起きると見当たらない。
慌てて探すと、なぜか高い塀の上で泣き喚いているではないか。
とてもじゃないが、子まりさに――そして自分にも――登れる高さではない。
登れないというのは、降りられないということでもある。
「すぐにたすけてあげるからねええええ!!」
つがいのれいむは子まりさに言うが、少なくともまりさには、どうしたらいいかわからない。
「かべさん! いじわるしないでおちびちゃんをおろしてあげるんだぜ! ゆっくりやさしくたのむのぜ!」
まりさが訴えてみても、もちろん事態は好転しなかった。
「ゆっくり優しく」以前の問題で、まったく反応無し。塀はうんともすんとも言わない。
「かべさんはいじわるなのぜ!」
「かべさんはいじわるだね!」
そういうことになった。
「はやくまりしゃをたしゅけちぇえええええ!! ゆっくちしちゃだめなのじぇえええええ!!」
子まりさのおそろしーしーが、足もとのブロックの色を変えた。
塀の下から子まりさを見上げるまりさも、パニックになっていた。
自分たちと一緒に寝ていた子まりさが朝起きると見当たらない。
慌てて探すと、なぜか高い塀の上で泣き喚いているではないか。
とてもじゃないが、子まりさに――そして自分にも――登れる高さではない。
登れないというのは、降りられないということでもある。
「すぐにたすけてあげるからねええええ!!」
つがいのれいむは子まりさに言うが、少なくともまりさには、どうしたらいいかわからない。
「かべさん! いじわるしないでおちびちゃんをおろしてあげるんだぜ! ゆっくりやさしくたのむのぜ!」
まりさが訴えてみても、もちろん事態は好転しなかった。
「ゆっくり優しく」以前の問題で、まったく反応無し。塀はうんともすんとも言わない。
「かべさんはいじわるなのぜ!」
「かべさんはいじわるだね!」
そういうことになった。
「はやくまりしゃをたしゅけちぇえええええ!! ゆっくちしちゃだめなのじぇえええええ!!」
子まりさのおそろしーしーが、足もとのブロックの色を変えた。
上空に黒い影が見えた。
「ゆっ!? あれはからすさんなのぜ!!」
まりさは叫び、そして思い出していた。
おちびちゃんの前のおちびちゃん――塀の上の子まりさの前の子どもは、カラスに襲われ、永遠にゆっくりさせられた。
ゴミ捨て場で食料を漁っていた時に急襲されたのだ。
それ以来、まりさとれいむはカラスを避けて生きてきたし、生ゴミの日にゴミ捨て場に近づくことをしなくなった。
カラスは仇であり天敵なのだ。
その恐ろしいカラスが、子まりさのいるブロック塀の上に降り立った。
目的はわかりきっている――前のおちびちゃんの時と同じだ。
「ゆっ!? あれはからすさんなのぜ!!」
まりさは叫び、そして思い出していた。
おちびちゃんの前のおちびちゃん――塀の上の子まりさの前の子どもは、カラスに襲われ、永遠にゆっくりさせられた。
ゴミ捨て場で食料を漁っていた時に急襲されたのだ。
それ以来、まりさとれいむはカラスを避けて生きてきたし、生ゴミの日にゴミ捨て場に近づくことをしなくなった。
カラスは仇であり天敵なのだ。
その恐ろしいカラスが、子まりさのいるブロック塀の上に降り立った。
目的はわかりきっている――前のおちびちゃんの時と同じだ。
「こにゃいでにぇ! こにゃいでにぇ! ままままりしゃはおきょるとこわいのじぇ? ぷ、ぷきゅううううう!!」
子まりさが『ぷくー』をするが、どうにも様になっていない。当然、カラスには何の効果もなかった。
「おちびちゃん! ゆっくりしないでにげるんだぜええええええ!!」
「おちびちゃんにげてねええええええ!!」
塀の下の二匹にそう叫ばれ、困ったのは子まりさだ。
「どきょににげればいいんだじぇええええ!?」
子まりさに逃げ場などない。
しいて言うなら飛び下りるくらいだが――それはカラスに食われるか、墜落するか、原因が変わるだけで、結果はどちらも変わらない。
それに思い当たったまりさが、今度はカラスに呼びかける。
「からすさん! ゆっくりこっちをみるんだぜ! ぷくーなんだぜ! ぷくうううううう!!」
『ぷくー』だ。まりさは頬に空気を溜め、威嚇態勢に入った。
「ぷくううううう!! はやくこっちをみるんだぜ!! そしてしっぽをまいてにげるのぜ!! ぷくううううう!!」
「からすさん! まりさのぷくーをみてね! すごいよ! こわいんだよ! こわいからはやくみてあげてね!」
カラスは二匹を無視して子まりさに近づき、その小さい体に鋭い爪をあてた。
そしてその尖った嘴が子まりさに――
「たしゅけちぇえええええ!! いぢゃいよおおおおおお!! まりしゃをはなしちぇにぇえええええ!!」
「おちびちゃあああああん! れいむもぷくーするよ! からすさんは、れいむとまりさのだぶるぷくーでこわがってね! ぷくううううう!!」
頬を大きく膨らますれいむとは逆に、まりさは頬から空気を抜いた。
「ぷくうううう!! ……ゆっ? まりさああああ!! どうしてぷくーをやめちゃうのおおおお!?」
れいむの問いかけに、まりさは、
「……こうなったらいちかばちかなのぜ!!」
強い口調で言った。
まりさは自分の帽子の中から小さな木の実を取り出し、素早く口に含む。
そして今にも子まりさを食べようとするカラスに狙いを定め、
「くらいやがれなのぜ!!」
叫ぶと同時に、木の実を「ぷっ!」と吹いた。
木の実は勢いよく――とはお世辞にも言えない速度で放物線を描き、それでもカラスの目に命中した。
カラスはビクッと体を震わせ、子まりさを押さえていた爪を離す。そしてそのままどこかへ飛び去ってしまった。
「お、おとうしゃん、しゅごいにょじぇ……」
そうつぶやき、子まりさは放心した。しーしーがちょろちょろと流れる。
爪があたっていた所が少し傷になっているくらいで、いたって無事だ。
それを見たまりさは体の力を抜き、大きく息を吐いた。
「ゆふう……。ききいっぱつだったのぜ!」
「すごいよまりさ!! いまの、とってもゆっくりしたわざだったよ!!」
そんなまりさを、れいむは尊敬を込めた目で見つめる。
まりさはれいむにニヤリと笑いかけ、
「ゆっへっへ。きのみさんをつかった、みようみまねのどすすぱーくなのぜ! まだみかんせいだったけどうまくいってよかったのぜ!」
得意げに言った。
「でも、おめめにあたったのはできすぎなのぜ! うんがよかったのぜ!」
そして照れたように笑う。
「ゆゆ~ん。さすがはれいむのまりさだよお~」
「ゆふっ。あさっぱらからやめるのぜれいむう~」
体をくねらせ、こすりあわせる二匹を見て、
「まりしゃをたしゅけりゅんだじぇええええ!!」
ちょっと拗ねたように、子まりさが叫んだ。
子まりさが『ぷくー』をするが、どうにも様になっていない。当然、カラスには何の効果もなかった。
「おちびちゃん! ゆっくりしないでにげるんだぜええええええ!!」
「おちびちゃんにげてねええええええ!!」
塀の下の二匹にそう叫ばれ、困ったのは子まりさだ。
「どきょににげればいいんだじぇええええ!?」
子まりさに逃げ場などない。
しいて言うなら飛び下りるくらいだが――それはカラスに食われるか、墜落するか、原因が変わるだけで、結果はどちらも変わらない。
それに思い当たったまりさが、今度はカラスに呼びかける。
「からすさん! ゆっくりこっちをみるんだぜ! ぷくーなんだぜ! ぷくうううううう!!」
『ぷくー』だ。まりさは頬に空気を溜め、威嚇態勢に入った。
「ぷくううううう!! はやくこっちをみるんだぜ!! そしてしっぽをまいてにげるのぜ!! ぷくううううう!!」
「からすさん! まりさのぷくーをみてね! すごいよ! こわいんだよ! こわいからはやくみてあげてね!」
カラスは二匹を無視して子まりさに近づき、その小さい体に鋭い爪をあてた。
そしてその尖った嘴が子まりさに――
「たしゅけちぇえええええ!! いぢゃいよおおおおおお!! まりしゃをはなしちぇにぇえええええ!!」
「おちびちゃあああああん! れいむもぷくーするよ! からすさんは、れいむとまりさのだぶるぷくーでこわがってね! ぷくううううう!!」
頬を大きく膨らますれいむとは逆に、まりさは頬から空気を抜いた。
「ぷくうううう!! ……ゆっ? まりさああああ!! どうしてぷくーをやめちゃうのおおおお!?」
れいむの問いかけに、まりさは、
「……こうなったらいちかばちかなのぜ!!」
強い口調で言った。
まりさは自分の帽子の中から小さな木の実を取り出し、素早く口に含む。
そして今にも子まりさを食べようとするカラスに狙いを定め、
「くらいやがれなのぜ!!」
叫ぶと同時に、木の実を「ぷっ!」と吹いた。
木の実は勢いよく――とはお世辞にも言えない速度で放物線を描き、それでもカラスの目に命中した。
カラスはビクッと体を震わせ、子まりさを押さえていた爪を離す。そしてそのままどこかへ飛び去ってしまった。
「お、おとうしゃん、しゅごいにょじぇ……」
そうつぶやき、子まりさは放心した。しーしーがちょろちょろと流れる。
爪があたっていた所が少し傷になっているくらいで、いたって無事だ。
それを見たまりさは体の力を抜き、大きく息を吐いた。
「ゆふう……。ききいっぱつだったのぜ!」
「すごいよまりさ!! いまの、とってもゆっくりしたわざだったよ!!」
そんなまりさを、れいむは尊敬を込めた目で見つめる。
まりさはれいむにニヤリと笑いかけ、
「ゆっへっへ。きのみさんをつかった、みようみまねのどすすぱーくなのぜ! まだみかんせいだったけどうまくいってよかったのぜ!」
得意げに言った。
「でも、おめめにあたったのはできすぎなのぜ! うんがよかったのぜ!」
そして照れたように笑う。
「ゆゆ~ん。さすがはれいむのまりさだよお~」
「ゆふっ。あさっぱらからやめるのぜれいむう~」
体をくねらせ、こすりあわせる二匹を見て、
「まりしゃをたしゅけりゅんだじぇええええ!!」
ちょっと拗ねたように、子まりさが叫んだ。
塀の上に黒い影が見えた。
「ゆっ!? あれはねこさんなのぜ!!」
まりさは叫び、そして思い出していた。
おちびちゃんの前の、そのまた前のおちびちゃん――塀の上の子まりさの前の、そのまた前の子どもは、猫に襲われ、永遠にゆっくりさせられた。
花壇で食料を漁っていた時に急襲されたのだ。
それ以来、まりさとれいむは猫を避けて生きてきたし、花壇で花を食べることをしなくなった。
猫は仇であり天敵なのだ。
その恐ろしい猫が、ブロック塀の端から子まりさに迫る。
目的はわかりきっている――前の、そのまた前のおちびちゃんの時と同じだ。
「ゆっ!? あれはねこさんなのぜ!!」
まりさは叫び、そして思い出していた。
おちびちゃんの前の、そのまた前のおちびちゃん――塀の上の子まりさの前の、そのまた前の子どもは、猫に襲われ、永遠にゆっくりさせられた。
花壇で食料を漁っていた時に急襲されたのだ。
それ以来、まりさとれいむは猫を避けて生きてきたし、花壇で花を食べることをしなくなった。
猫は仇であり天敵なのだ。
その恐ろしい猫が、ブロック塀の端から子まりさに迫る。
目的はわかりきっている――前の、そのまた前のおちびちゃんの時と同じだ。
「こにゃいでにぇ! こにゃいでにぇ! ままままりしゃはおきょるとこわいのじぇ? ぷ、ぷきゅううううう!!」
子まりさが『ぷくー』をするが、やはり様になっていない。当然、猫にも効果がなかった。
「おちびちゃああああん!! まりさ、さっきのわざだよ! ねこさんをゆっくりやっつけてね!」
「ゆう……」
「なにをぐずぐずしているの? ばかなの? しぬの?」
「もう、きのみさんがないのぜ……」
「ゆううっ!?」
まりさは木の実を先ほどの一つしか持っていなかった。
木の実が無ければ、あの技は使えない。
「どぼじでちゃんとよういしておかないのおおおお!?」
「ゆっくりごめんなさいなのぜ!! ふそくのじたいなのぜ!!」
二匹が揉めている間にも、猫は子まりさに迫る。
「ゆんやあああああああ!! きょわいんだじぇええええええ!!」
「お、おちびちゃん! こうなったらぷくーするのぜ! ぷくううううううう!!」
「れいむもぷくーするよ! ねこさんはせいぜいこわがってね! ぷくううううう!!」
猫は二匹を無視して体を屈め、尻をフリフリと揺すった。
子まりさが『ぷくー』をするが、やはり様になっていない。当然、猫にも効果がなかった。
「おちびちゃああああん!! まりさ、さっきのわざだよ! ねこさんをゆっくりやっつけてね!」
「ゆう……」
「なにをぐずぐずしているの? ばかなの? しぬの?」
「もう、きのみさんがないのぜ……」
「ゆううっ!?」
まりさは木の実を先ほどの一つしか持っていなかった。
木の実が無ければ、あの技は使えない。
「どぼじでちゃんとよういしておかないのおおおお!?」
「ゆっくりごめんなさいなのぜ!! ふそくのじたいなのぜ!!」
二匹が揉めている間にも、猫は子まりさに迫る。
「ゆんやあああああああ!! きょわいんだじぇええええええ!!」
「お、おちびちゃん! こうなったらぷくーするのぜ! ぷくううううううう!!」
「れいむもぷくーするよ! ねこさんはせいぜいこわがってね! ぷくううううう!!」
猫は二匹を無視して体を屈め、尻をフリフリと揺すった。
「ゆっ!?」
まりさは恐怖した。猫のその動きに見覚えがあったからだ。
あの動きのあとに、猫は、前の前のおちびちゃんに飛びかかったのだ。
まりさは恐怖した。猫のその動きに見覚えがあったからだ。
あの動きのあとに、猫は、前の前のおちびちゃんに飛びかかったのだ。
まりさが恐怖したその一瞬に、れいむはすでに行動していた。
「やめでねえええええ!! ねござん!! やめでねえええええ!!」
れいむは叫びながら、ブロック塀に体当たりする。
「おぢびぢゃんをいじめないでねええええ!! ゆっぐりじでいっでねえええええ!!」
二度三度と繰り返されるれいむの体当たり。そんなもので塀やその上の猫がどうにかなるわけもなく、まったくの無駄だったが、その叫び声には効果があった。
切羽詰まったれいむの声に反応し、子まりさに飛びかかるタイミングを誤った猫が、バランスを崩してブロック塀の反対側に落下したのだ。
「ねござん! ゆっぐり! ゆっぐり!」
それに気づかないれいむは、いまだ壁に体当たりしている。
まりさは息を止めてしばらく待ったが、猫がもう一度塀の上に現れることはなかった。
「おとうしゃん、おかあしゃん! ねこしゃんがにげちぇいっちゃのじぇ!!」
子まりさが笑顔で言った。
どうやらどこかへ行ってくれたようだ。
「……こんどこしょだめきゃとおもったのじぇええ……」
塀の上でだらりと体を伸ばす子まりさ。相変わらずしーしーが漏れている。
その様子に安心したまりさは、体当たりを続けるれいむに声をかけた。
「れいむ! もういいのぜ! もうおちびちゃんはたすかったのぜ!」
「ゆ、ゆう……。もうだいじょうぶなの?」
れいむの体のあちこちに、黒い染みが浮かんでいた――痣だ。
無理もない。固いブロック塀に何度も体をぶつけたのだ。
「れいむのおかげなのぜ! すごいのぜ! れいむのつよさにはまりさもかたなしなのぜ!」
「うんがよかったんだよ……」
「おかあしゃん! かっこよかったのじぇ!」
塀の上から、興奮を隠しきれない声で子まりさが叫んだ。
「そのとおりなのぜ、れいむ! さあ、めいよのふしょうをまりさがぺーろぺーろしてあげるのぜ!」
まりさはそう言って、れいむの体を舐め始めた。
「ゆゆ~ん。くすぐったいよ、まりさあ~」
「ゆっへっへ~。ひょっとしてへんなきぶんになってきたのかぜ~?」
「ゆふん。あさからへんなこといわないでね!」
そう言いながら、れいむはまりさにちゅっちゅした。
そんな二匹を見て、
「ゆっ? おとうしゃんとおかあしゃん、にゃにをしちぇいるんだじぇ?」
不思議そうに、子まりさが言った。
「やめでねえええええ!! ねござん!! やめでねえええええ!!」
れいむは叫びながら、ブロック塀に体当たりする。
「おぢびぢゃんをいじめないでねええええ!! ゆっぐりじでいっでねえええええ!!」
二度三度と繰り返されるれいむの体当たり。そんなもので塀やその上の猫がどうにかなるわけもなく、まったくの無駄だったが、その叫び声には効果があった。
切羽詰まったれいむの声に反応し、子まりさに飛びかかるタイミングを誤った猫が、バランスを崩してブロック塀の反対側に落下したのだ。
「ねござん! ゆっぐり! ゆっぐり!」
それに気づかないれいむは、いまだ壁に体当たりしている。
まりさは息を止めてしばらく待ったが、猫がもう一度塀の上に現れることはなかった。
「おとうしゃん、おかあしゃん! ねこしゃんがにげちぇいっちゃのじぇ!!」
子まりさが笑顔で言った。
どうやらどこかへ行ってくれたようだ。
「……こんどこしょだめきゃとおもったのじぇええ……」
塀の上でだらりと体を伸ばす子まりさ。相変わらずしーしーが漏れている。
その様子に安心したまりさは、体当たりを続けるれいむに声をかけた。
「れいむ! もういいのぜ! もうおちびちゃんはたすかったのぜ!」
「ゆ、ゆう……。もうだいじょうぶなの?」
れいむの体のあちこちに、黒い染みが浮かんでいた――痣だ。
無理もない。固いブロック塀に何度も体をぶつけたのだ。
「れいむのおかげなのぜ! すごいのぜ! れいむのつよさにはまりさもかたなしなのぜ!」
「うんがよかったんだよ……」
「おかあしゃん! かっこよかったのじぇ!」
塀の上から、興奮を隠しきれない声で子まりさが叫んだ。
「そのとおりなのぜ、れいむ! さあ、めいよのふしょうをまりさがぺーろぺーろしてあげるのぜ!」
まりさはそう言って、れいむの体を舐め始めた。
「ゆゆ~ん。くすぐったいよ、まりさあ~」
「ゆっへっへ~。ひょっとしてへんなきぶんになってきたのかぜ~?」
「ゆふん。あさからへんなこといわないでね!」
そう言いながら、れいむはまりさにちゅっちゅした。
そんな二匹を見て、
「ゆっ? おとうしゃんとおかあしゃん、にゃにをしちぇいるんだじぇ?」
不思議そうに、子まりさが言った。
カラスと猫を追い払いはしたが、それで子まりさが塀から降りられるわけではない。
「まりしゃ、はやくおりちゃいのじぇええ……」
子まりさはベソをかいていた。
「ゆーん。どうすればいいのぜ……」
「どうしよう……」
まりさとれいむはゆんゆん唸るが、良い案は浮かばない。
「まりさのじゃんぷりょくでも、さすがにこのたかさはむりなのぜ!」
「ゆう。とりさんやうーぱっくみたいに、れいむたちにもはねがはえていればよかったのにね!」
うーぱっく――れいむのその言葉に、まりさは閃いた。
「そうなのぜ! うーぱっくならおそらをとべるのぜ!」
「ゆっ? それはあたりまえだよ!」
「もしかしたらいけるかもしれないのぜ!」
「どういうこと? れいむにゆっくりせつめいしてね!」
まりさは眉毛をキリッとさせて、早口でまくしたてる。
「まりさのともだちのまりさは、うんそうやさんをしているのぜ!」
まりさの友人のまりさは、ゆっくり相手に運送屋を営んでいる。その運送屋まりさのパートナー兼荷物運搬係こそ――誰あろう、うーぱっくなのだ。
「まりさとうーぱっくなら、きっとちからをかしてくれるのぜ!」
その言葉に、れいむの顔が輝く。
「ゆっくりりかいしたよ!」
「すぐにたのみにいってみるのぜ! おちびちゃん、もうすこしがまんするのぜ!」
「ゆっくりいそいでいってきてね! おねがいだよ、まりさ!」
「おとうしゃん! ゆっくりいっちぇらっしゃい! まりしゃ、もうすこしがみゃんしゅりゅのじぇ!」
れいむと子まりさの声を受けて、
「ゆっくりいってくるのぜ!」
「まりしゃ、はやくおりちゃいのじぇええ……」
子まりさはベソをかいていた。
「ゆーん。どうすればいいのぜ……」
「どうしよう……」
まりさとれいむはゆんゆん唸るが、良い案は浮かばない。
「まりさのじゃんぷりょくでも、さすがにこのたかさはむりなのぜ!」
「ゆう。とりさんやうーぱっくみたいに、れいむたちにもはねがはえていればよかったのにね!」
うーぱっく――れいむのその言葉に、まりさは閃いた。
「そうなのぜ! うーぱっくならおそらをとべるのぜ!」
「ゆっ? それはあたりまえだよ!」
「もしかしたらいけるかもしれないのぜ!」
「どういうこと? れいむにゆっくりせつめいしてね!」
まりさは眉毛をキリッとさせて、早口でまくしたてる。
「まりさのともだちのまりさは、うんそうやさんをしているのぜ!」
まりさの友人のまりさは、ゆっくり相手に運送屋を営んでいる。その運送屋まりさのパートナー兼荷物運搬係こそ――誰あろう、うーぱっくなのだ。
「まりさとうーぱっくなら、きっとちからをかしてくれるのぜ!」
その言葉に、れいむの顔が輝く。
「ゆっくりりかいしたよ!」
「すぐにたのみにいってみるのぜ! おちびちゃん、もうすこしがまんするのぜ!」
「ゆっくりいそいでいってきてね! おねがいだよ、まりさ!」
「おとうしゃん! ゆっくりいっちぇらっしゃい! まりしゃ、もうすこしがみゃんしゅりゅのじぇ!」
れいむと子まりさの声を受けて、
「ゆっくりいってくるのぜ!」
まりさは運送屋まりさの元に向かった。
運送屋まりさは快諾してくれた。
うーぱっくはあいにくと仕事中で不在だったが、戻り次第、すぐに駆けつけてくれるそうだ。
運送屋まりさに礼を言って、まりさは家族の元にとって返した。
「ゆっ、ゆっ、ゆっ! おちびちゃん、れいむ、もうあんしんなのぜ!」
そう、もう安心なのだ。
まりさはとてもゆっくりとした――晴れやかな気分で歩を進めた。
「まりさがいまかえるのぜ!」
まりさは、この短い時間に起こったことを思い返していた。
自分はカラスから、れいむは猫から、普段なら敵わない相手から立て続けに子まりさを守った。
どちらも単に運が良かっただけということは、まりさにもわかっている。
しかしその「運が良かった」が二度続いたのだ。
いや、二度ではない。三度だ。
運良く、身近にうーぱっくがいてくれたではないか。
当事者の自分にも信じられない運の良さだ。これはなんと素晴らしいことか。
今のような、この素晴らしい状況を表す言葉を、まりさは知っていた。
それは「奇跡」だ。
「ゆっ、ゆっ、ゆっ!」
奇跡。
その言葉を思い浮かべた途端、まりさの足取りはより軽くなった。
まりさとれいむは奇跡を起こし、カラスと猫を撃退したのだ。
ならば、自分たちの子どもである子まりさはどうか? 今日この日なら、きっと何かしらの奇跡を起こしてくれるのではないか――いや、起こすのだ。
子まりさが起こす奇跡とは――そんなものは決まっている。あの絶望的なまでに高いブロック塀から、うーぱっくに乗って無事生還してくれるのだ。
そして三匹仲良く、いつまでもゆっくりとしたゆん生を送るのだ。
「ゆっくりとうちゃくなのぜ!」
やがて、子まりさとれいむの姿が見えた。
「ゆっくりのひ~、まったりのひ~」
「ゆっくち! ゆっくち!」
れいむの歌に合わせて、子まりさがリズムを取っている。
ああ、なんとゆっくりした光景なのだろうか。
まりさのは思わず微笑む。
「れいむ、おちびちゃん! ゆっくりただいまなのぜ!」
二匹に向けて、まりさは元気に挨拶した。
「ゆっくりおかえりなさい!」
「おきゃえりなしゃいにゃのじぇ!」
まりさの笑顔を見て、二匹は心の底から安心したようだ。
そう、もう安心なのだ。
これから何があろうとも、自分たちはずっとゆっくり生きていける。
まりさには、自分たちに降りかかった今日のこの災難すら、とても素晴らしいことに思えた。
今となってはよくわかる。
苦しさも悲しさも、すべては奇跡の一環だったのだから。
うーぱっくはあいにくと仕事中で不在だったが、戻り次第、すぐに駆けつけてくれるそうだ。
運送屋まりさに礼を言って、まりさは家族の元にとって返した。
「ゆっ、ゆっ、ゆっ! おちびちゃん、れいむ、もうあんしんなのぜ!」
そう、もう安心なのだ。
まりさはとてもゆっくりとした――晴れやかな気分で歩を進めた。
「まりさがいまかえるのぜ!」
まりさは、この短い時間に起こったことを思い返していた。
自分はカラスから、れいむは猫から、普段なら敵わない相手から立て続けに子まりさを守った。
どちらも単に運が良かっただけということは、まりさにもわかっている。
しかしその「運が良かった」が二度続いたのだ。
いや、二度ではない。三度だ。
運良く、身近にうーぱっくがいてくれたではないか。
当事者の自分にも信じられない運の良さだ。これはなんと素晴らしいことか。
今のような、この素晴らしい状況を表す言葉を、まりさは知っていた。
それは「奇跡」だ。
「ゆっ、ゆっ、ゆっ!」
奇跡。
その言葉を思い浮かべた途端、まりさの足取りはより軽くなった。
まりさとれいむは奇跡を起こし、カラスと猫を撃退したのだ。
ならば、自分たちの子どもである子まりさはどうか? 今日この日なら、きっと何かしらの奇跡を起こしてくれるのではないか――いや、起こすのだ。
子まりさが起こす奇跡とは――そんなものは決まっている。あの絶望的なまでに高いブロック塀から、うーぱっくに乗って無事生還してくれるのだ。
そして三匹仲良く、いつまでもゆっくりとしたゆん生を送るのだ。
「ゆっくりとうちゃくなのぜ!」
やがて、子まりさとれいむの姿が見えた。
「ゆっくりのひ~、まったりのひ~」
「ゆっくち! ゆっくち!」
れいむの歌に合わせて、子まりさがリズムを取っている。
ああ、なんとゆっくりした光景なのだろうか。
まりさのは思わず微笑む。
「れいむ、おちびちゃん! ゆっくりただいまなのぜ!」
二匹に向けて、まりさは元気に挨拶した。
「ゆっくりおかえりなさい!」
「おきゃえりなしゃいにゃのじぇ!」
まりさの笑顔を見て、二匹は心の底から安心したようだ。
そう、もう安心なのだ。
これから何があろうとも、自分たちはずっとゆっくり生きていける。
まりさには、自分たちに降りかかった今日のこの災難すら、とても素晴らしいことに思えた。
今となってはよくわかる。
苦しさも悲しさも、すべては奇跡の一環だったのだから。
その時、風が吹いた。
「まりしゃのしゅてきなおぼうししゃん!」
風に飛ばされた帽子を追って、子まりさは足もとのブロックを蹴った。
一瞬の浮遊感。
「ゆわーい! まりしゃ、おしょらをとんでるみちゃい!」
子まりさの視線の端に、笑顔を凍り付かせた両親の姿が映った。
その身ひとつで空を翔ける――最初で最後のそんな奇跡を体験した子まりさは、直後地面に落下し、体を四散させて死んだ。
風に飛ばされた帽子を追って、子まりさは足もとのブロックを蹴った。
一瞬の浮遊感。
「ゆわーい! まりしゃ、おしょらをとんでるみちゃい!」
子まりさの視線の端に、笑顔を凍り付かせた両親の姿が映った。
その身ひとつで空を翔ける――最初で最後のそんな奇跡を体験した子まりさは、直後地面に落下し、体を四散させて死んだ。
(了)
以前書いたもの……
ふたば系ゆっくりいじめ 525 犬
ふたば系ゆっくりいじめ 532 川原の一家
ふたば系ゆっくりいじめ 554 ゴキブリ(前編)
ふたば系ゆっくりいじめ 555 ゴキブリ(後編)
ふたば系ゆっくりいじめ 569 ねとられいむ
ふたば系ゆっくりいじめ 622 格子越しの情景
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挿絵:儚いあき
挿絵:ゆんあき