THE GATE OF MAGUS

「大変な事になったわねー…」

思わずそうぼやきながら髪を掻き毟ってみるも、事態が変わる訳も無い。
私――ドリスは、気がついたら殺し合いに参加させられていた。
何を馬鹿いってるんだと思うだろう、実際私自身がそう思う。

「そもそも、私はグランバニア城の自室で寝てたハズなんだけど…ここは一体何処なのよ、まったく…もう」
誰に言うでも無くぶつぶつと愚痴を垂れるも、返事は返ってこない…当然の事だが。


彼女が飛ばされた場所は、地面から巨大な四角い物体が大量に生えており、前も後ろも右も左も同じ様な光景が延々と続いていた。
…仮にもし、ドリスの元いた場所にビルと言う物があれば、その正体に思い当たったかもしれない。
とはしかし、ビルなどという物を見た事も聞いた事もないドリスがそれを知る事もないのだが、さて。

「って言うか、こんな所で油売ってる場合じゃないわね」

ひとしきり愚痴をこぼして頭が冷えたのか、ドリスは自分のデイバッグを背負うと取りあえず自分の向いていた方角に向かって歩き出した。

(参加者の中でのアタシの知り合いは四人…)
その内三人、テン、ソラ―――そして、カデシュ。
彼ら三人は間違いなくこんな馬鹿げたゲームに乗ったりはしないだろう、そうドリスは断言できた。
残る一人であるヤグナーに関しては…正直、さっさと見つけ出してふんじばっておきたい、というのが本音だ。

元々敵対しているからというのもあるが、一番の理由としては、単純にアイツは信用できない。ただそれだけだ。
何せ自らの利益のために、他人は勿論、知人や仲間だったはずの奴すらあっさり捨て駒にするような奴だ。
自然とドリスの脳裏に、いざと言う時は頼りになるが、普段はアホやってるだけの海賊船長の顔が浮かんだ。

(…オーゼルグの奴、元気かなぁ…)

…などと物思いに耽っている暇も無いので、さっさと海賊船長を頭の中から締め出す。

まぁ、とにかくヤグナーは警戒しておく必要がある、これは確定だ。

さて、次はどう動くかを決めなくてはならない。


首輪に関しては、正直自分では何の対処も出来ないだろうから、後回しにするしかない。
あのふざけた主催者の居場所を調べるとしても、自分一人で調べられる範囲には限界がある。


となると、自然とする事は決まってくる。
あれだけの人がいたのだ、もしかしたら首輪を外せる様な人間もこの場にいるかもしれない。
何も主催者を倒す必要は無いのだ、この首輪さえ外せれば、後はこの会場から逃げ出してしまえばいい。
…もちろん、可能ならば主催者達を思いっきりぶちのめしたい、という気持ちもある。
あの場で、あまりにも唐突の事だったとはいえ、少女の首が吹き飛ばされたのをただ黙って見ていただけだった事が、悔しくて仕方なかった。

だが首輪が付いている時点で、主催への反逆は不可能だ。
例え外せたとしても、あの異常な力を持った存在に勝てるかどうか分からない。
…となると、少なくとも現状に置ける自分の目標は、主催者の打倒ではなく、この会場から逃げる事。
あくまで自分達の勝利条件はこのゲームから脱出する事なのだ。


とりあえずの方針としては――――テン、ソラ、カデシュ達を探しつつ、殺し合いを壊そうとしている人たちとの合流、といった所だろう。
何をするにもまずは知り合いの安全を確保してからだ。
よし、そうと決まったら―――

そこまで考えた所でドリスの思考は中断された。
なぜなら彼女の前方、100メートル程先に、一人の男が佇んでいたからだ。

「…!?」
考え事をしていたとはいえ、いきなり目の前に人が現れたのだ、それはもう驚いた。
対して目前の男は反応する事も無く、ただその場に立ち尽くしている。
前側に強い癖と跳ねのある銀髪と、いかついなんていうもんじゃない顔つきは、はっきり言って恐い。
でも、いきなり襲ってこない所からして、殺し合いには乗っていないんだろうけど…


どう対応するべきか、ドリスがやや困ったような表情を浮かべていると、その心情を察してくれたのか、前の男が口を開いた。

「…我が名はゼンガー。ゼンガー・ゾンボルト」

いきなり挨拶もなしに名乗りを挙げてきた、が、ドリスとしてもどう対応すれば良いかが分かったのでよしとする。
名前を名乗って来たという事は、自分とコンタクトを取りたいという事だろう。
自然と口からは安堵の息が漏れる。
そうだよね、人の事を見た目だけで疑うなんて失礼だよね、たはは。

「ああ御免なさい、黙っちゃって。私はドリス、勿論こんな殺し合いには――」
そこまで喋り、ドリスは前髪に隠れていたゼンガーの目を見た。






その瞬間、ドリスから言葉が消失した。







今まで彼女は、親族であり、大切な人たちから託された双子の兄妹、テンとソラを守る為にそれ相応の戦いをしてきたつもりだ。
その際には、命を落としかねない局面とて何度かあったし、それなりの悪党も見てきたつもりだ。
それでも、いや、だからこそだろうか、その目を見たときに、もうドリスは一言も言葉を発せなくなってしまった。
それどころか、ゼンガーの行動の一つ一つを見ながらも、それらに対する思考がまったく追いつかない。


―――何故、目の前の男は腰に差してある刀を抜いたのか。


―――何故、男はそのまま自分の下へ歩いてきているのか。


―――何故、そこまで底冷えする殺気を初対面の自分に向けているのだろうか。


そして、ゼンガーと名乗った男は一歩、また一歩とドリスに歩み寄りながら、口を開く。
その言葉が終わる時が、ドリスを××す時だとでも言うかのように。

「娘…ドリスよ、今一度聞け。我はゼンガー。ゼンガー・ゾンボルト」

もう刀はドリスに届く距離まで来ている。
そして、その距離が縮めば縮むほど、己の命が毟り取られていく様なおぞましい感覚がドリスの中を駆け巡る。



「我こそは―――」



その感覚に応えるかの様に、ゼンガーは刀を構え、獲物を見つけた猛獣の様な眼でドリスを睨んだ。
そして、


「――――――メイガスの、剣なり!」


咆哮と共に、ドリスに刀を振るい―――






金属がぶつかる音と共に、刀が根元から吹き飛んだ。


「何っ!?」「えっ?」


声は斬られる筈だった少女と斬るつもりだった男の双方の口から漏れ、互いに動きが止まる。


「な、なんだか良く分かんないけど、今の内!」
そして一瞬先に硬直を解いたドリスはバックステップを踏み、ゼンガーに背を向け、その場から疾走した。

「くっ…!」
後ろからゼンガーの声が聞こえたが、それとほぼ同時に、何処からかゼンガーの刀を折った一撃が再び飛来してくる。
どうやら誰かが自分を援護してくれている様だ。


その正体や目的も気になるが、今はその好意を受け取ってこの場から逃げさせ貰うしかないと判断、そのまま思考を中断し、ただただ全力でドリスはその場から逃走していった。


 ◇ ◇ ◇

(仕留め損ねたか…)

とある廃ビルの屋上にて、弓を持ちながらその場を後にする男がいた。

ざっくらばんに切られた髪と頬に付いているバツ印、そしてムッツリとした表情が特徴的なその男の名は、相良宗介といった。
青髪の少女を逃がす事に成功した事を声を上げ喜ぶでもなく、宗介はただ淡々とこの廃ビルから離脱する為の準備を進めるだけだった。
そもそも、この青年は一つの作戦が成功した所で一々馬鹿騒ぎをする様な性格ではないのだ。
むしろ、慣れない武器を使用した結果、殺し合いに乗っていたと思われる男を倒せなかった事に歯噛みしていた。

(……)

宗介は歩みの速度はそのままに、しかし頭の中ではこの異常事態への対処法を考えていた(とはいえ、それでも警戒は全く怠っていない所はさすがと言うべきか)


(敵の狙いは何だ?大佐殿を拉致する所までは理解できる、しかしわざわざ俺や民間人を大量に拉致し、あまつさえこの殺し合いの中にわざわざ拉致した大佐殿を参加させるべきメリット等何一つない)

宗介の言う大佐殿――――テレサ・テスタロッサ。愛称としてテッサとも呼ばれる少女は、壊滅させられたミスリル残党達の事実上の現指導者だ。
各地の紛争やテロ活動、ひいては国際問題になりかねない様な災いの芽を摘み取り、世界の安定化を図っていた、秘密組織ミスリル。
しかし、その存在を厄介視した国際極秘武装売買組織―――アマルガムによって、ミスリルは壊滅、宗介の所属していた西大西洋戦隊も取り返しの聞かない規模の状態となっていた。
だが、それでも彼らの隊長であったテッサは、なんとかアマルガムに対抗する為に奔走し、結果アマルガムの幹部達は未だ自分達の事を『厄介な敵』と認識している状態にあった。
そして宗介は、彼女と共に、ある場所に向かうヘリの中にいた筈なのだが―――


(敵の正体はアマルガムか?組織そのものはともかく、レナード・テスタロッサならば大佐殿をこの茶番に巻き込む可能性もあるが…)
頭の中で、テッサの実兄にして、宗介の最大の『敵』である男の嫌味な笑い顔が浮かぶも、それを振り払い、立ち止まる。
ビルの入口に辿り着いたからだ。


(何を考えるにしても、情報不足か)

そこまで考え、入口の内外周辺の安全を確認し、物音を立てないようにしつつ移動を開始した。

(出来る限りの情報を収集しつつ大佐殿と合流する…それしか無いか)
ウィスパードであるテッサに可能な限りこの会場や主催者、首輪に関する情報等が手に入れば、あるいは何らかの打開策を考え付いてくれるかも知れない。

だがテッサは正直いって、直接的な戦闘ではまるで無力と言わざるを得ない。
何とか早期に合流を果たし、危険から守らなければ―――


そして、最後に名簿に乗っていた一人の人間の名を思い出した。
(ガウルン…か、おそらくは同姓同名の別人か、奴の弟子か何かか…?)

かつて自らに相対した最悪の屑の顔が一瞬頭を過ぎるも、直ぐにそれを締め出し、とくに考えもしなかった。

そんな事を考えつつ、幾つ目かの曲がり角を曲がって行った時、宗介は一瞬眉を吊り上げ、そして己の判断に呆れ返り、近くの自販機の影に身を潜めた。
向かいの町らしきポイントへ向かうには橋を渡る必要があり、人探し、そして殺し合いに乗った人間の排除、という目的に都合が良いと思ったからだ。





だが、そんな事は少し考えれば誰でも分かる事。


故に、橋で獲物を待ちわびる獣が現れるのは必定。



先程自らの矢によって折れた刀を腰に差し、しかしその迫力は遠くから見るのと近くで感じるのでは大違いだった。
その男は、その目を自らの隠れている物陰へと移し、そのままねめ回す様にこちらを睨んでいた。


―――ばれている。


確信に近い物を感じ、デイバッグから再び弓と矢を取り出す。

「……出てくるが良い。」

周りの遮蔽物、足場の状況を確認し、自らと相手のコンディションを推定する。

「我はゼンガー、ゼンガー・ゾンボルト、メイガスの剣なり」

こちらとしてはさっさとその身体に穴を開けさせてもらい、町に向かいたいのだ。
正々堂々とした勝負をするつもり等更々ない。
(悪いが、道を空けてもらうぞ)

「我がメイガスの生涯となりえる者は、俺がメイガスの元へ戻るのを邪魔するものは、我が剣の前にて、今日この地にて…費えるのだああぁぁぁ!!!!」

「悪いが、断る!」

互いに叫び、ゼンガーと宗介は互いの武器を構え、ぶつかり合う。
対峙する彼らの感情は、少なくとも表向きはまるで逆さま。

静と激、それぞれの感情を宿したまま、二人の戦士はぶつかり合う。





【E-2/町外れ/一日目/深夜】

【ゼンガー・ゾンボルト@スーパーロボット大戦オリジナル@】
[状態]: 健康
[服装]: ゼンガーの服
[装備]: ゲンジマルの刀(折れている)@うたわれるもの
[道具]: 基本支給品一式、不明支給品×?
[思考]
基本:殺し合いに優勝し、メイガスの元へ帰る
0: 目の前の男を殺す
1: 取り逃がした娘も追い、殺す
2: 代わりの剣が欲しい
[備考]
※α外伝、敵状態の参戦です
※メイガスの洗脳に関しては特に制限などは掛かっていません。


【相良宗介@フルメタル・パニック!】
[状態]: 健康
[服装]: AS操縦服
[装備]: 京の弓@真剣で私に恋しなさい!(矢残り26本)
[道具]: 基本支給品一式、不明支給品×?
[思考]
基本:殺し合いには乗らないが、乗った他参加者は殺害も辞さない
0: 銀髪の男を迎撃する。
1: テッサを探す。
2: 可能な限り、情報を集める。
[備考]
※原作小説「せまるニック・オブ・タイム」ヤムスク11到達直前からの参戦です。
※ガウルンは別人だと思っています。


【ドリス@ドラゴンクエスト天空物語】
[状態]: 困惑、ダッシュ
[服装]: 私服
[装備]: 無し
[道具]: 基本支給品一式、不明支給品×?
[思考]
基本:知り合いと共に、この会場から脱出する。
0: ゼンガーから逃げる!全速で!!
1: テン、ソラ、カデシュを見つけ出す
2: ヤグナーは見つけ次第捕まえる。
3; 誰が助けてくれたんだろう?
[備考]
※少なくとも10巻以降からの参戦です。
※ドリスは橋を越え、町方面に逃走しました。

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最終更新:2010年04月19日 12:23
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