68話「結局成し遂げられなかった」
D-4にある洋服店の事務室で放送を聞いた桃髪の美少女剣士、エイミス・フロリッヒャー。
発表された死者の名前の中に、この殺し合いにおいて最初に戦った、
朝倉清幸の名前があった事には少し驚いた。
自分の手から逃れたはいいが、結局何者かに殺されてしまったらしい。
「バッカみたい。結局死んじゃったんじゃん」
色々もっともらしい事を言っておいて結局は脱落するとは。
清幸を嘲るエイミスだったが、二回目に戦い、敗れ、命までは取られなかったが、
手傷を負わされ身ぐるみを剥がれ、ゴミ捨て場に捨てられるという、
筆舌し難い屈辱を自分に味わわせた口の悪い狐女、ドーラ・システィールはまだ生きている。
その事を思い出し、エイミスの可愛らしい顔が怒りに歪む。
「あの狐女はまだ生きてるんだ…くっそぉ、
今度会ったら絶対に殺してやるんだから」
テーブルの上のポテトチップスの袋に手を突っ込み、
チップスを取って口の中に放り込む。
木製の長テーブルの上には事務所内を漁って見付けた、
お菓子の袋やジュースの缶、ペットボトルが散乱している。
「調子に乗って食い過ぎちゃったな…太るかも。
まあいいか、腹ごしらえは重要だもんね。大丈夫大丈夫」
エイミスは自分の荷物を纏め、自分の武器であるヤマトの剣を携え、洋服店の事務室を後にした。
当然、テーブルの上を綺麗に片付ける事などしない。
誰もいない市街地の通りを南の方に進むエイミス。
「誰もいないなあ。20人も死んだから、遭遇率も低くなるのは仕方無いか」
辺りを見回して他参加者の姿を探すが誰もいない。
エイミスは適当な交差点を右折した。
そしてしばらく進んで行くと、前方にある物を発見した。
「あれ…? 何かしら」
少し小走りで近付いてみると、それは血塗れの、狐獣人の死体。
身体付きからして女性で、衣服は身に纏っていない。
いや、足が獣のそれの形状なので、元々衣服は着ていなかったのだろう。
周囲には夥しい量の血痕が飛び散っていた。
「一瞬あの狐女かと思ったけど、違うわね……誰か知らないけどご愁傷様」
一応弔うような言葉を掛けるが勿論建前だけである。
さっさと立ち去ろうと思ったが、その前にエイミスの目に、
恐らくこの雌狐の物と思われるデイパックが歩道の上に置かれているのが飛び込んできた。
既に漁られている可能性もあるがもしかしたらまだ使えそうな物が入っているかもしれない。
周りに誰もいない事を確認し、エイミスは雌狐の死体に背を向け、
デイパックへと歩み寄る。
エイミスの後ろで、雌狐が、
死体であるはずのものが、ゆっくりと目を開けた。
そんな事に気付くはずも無いエイミスはしゃがんでデイパックを漁り始めた。
すると、中からは拳銃が二丁と、その予備弾が出て来た。
「やった! 銃があれば戦力も上がるわ」
予想外、かつ希望していた物品を発見出来た事にエイミスは歓喜の声を上げる。
「やあ」
「……へ?」
突然、背後から若い女性の声が聞こえた。
まさか、どこかに隠れてこちらの様子を窺っていたのだろうか。
エイミスは脂汗をかきながら身体を後ろに向けた。
「う、嘘!?」
そこには、死んでいたはずの雌狐が立っていた。
「嘘じゃないよ。死んで無いよ最初っから。ちょっと眠っちゃっただけ。
でも酷いなあ、人の荷物勝手に漁らないでよね。それ取られるといくら私でも不安だからさあ。
それにしても悪い子。そうねぇ、お仕置きしなくっちゃねぇ……フフフフフフフ」
明らかに残忍そうな笑みを浮かべ、舌舐めずりしながらゆっくりとエイミスに近付く雌狐。
「う、うあ、ま、待って」
予想外の事態に気が動転し、逃げる事も出来ないエイミス。
次の瞬間。
「ウガァウッ!」
雌狐が獣の唸り声を発し、エイミスに飛び掛かった。
一気に地面に倒され、何とか逃れようともがくエイミスだったが、雌狐は案外力があり、
抜け出す事は不可能事に近かった。
そして、雌狐の牙がエイミスの喉笛を噛み裂き、エイミスはすぐに動かなくなった。
血に染まっていた周囲が、新鮮な血液で再び鮮やかな赤に塗り替えられる。
殺し合いに乗ると強い意志を固めていたが、
一人目は取り逃がし、二人目には敗北。
エイミス・フロリッヒャーは誰一人手に掛ける事出来ず、殺し合いの舞台から退場した。
「ふう……」
冷たくなったエイミスの死体に跨りながら、右腕で血に濡れた口元を拭う雌狐――費覧。
とは言っても、彼女の身体はほぼ全部が血塗れになっていたのだが。
「思わず寝ちゃってたら……危ない危ない。
荷物奪われるトコだったよ。ああ、それにしても…」
費覧は自分のデイパックの中からデバイスを取り出し時刻を確認する。
「うわ、やっぱり放送聞き逃しちゃった……」
時刻は既に第一回定時放送が行われる午前6時をとうに過ぎていた。
放送を聞き逃した事に費覧は頭を抱えるが、ここである事を思い付く。
たった今殺した少女は、もしかしたら放送を耳にし、地図や名簿等に情報を書き込んでいるかもしれないと。
エイミスの死体からデイパックを引き剥がし漁ってみる。
「やっぱり……」
十数人の名前が消された名簿と、幾つかのエリアに○印が書き込まれた地図が出てきた。
「章高は……消されてないって事は、まだ生きてるって事ね」
自分の知人である章高はどうやらまだ生存しているらしい。
それだけ分かれば費覧としては十分だったが禁止エリアの方も確認する。
最初に出現するのは約1時間後の午前7時らしいが、
どのエリアも離れており特に心配する必要は無さそうだ。
エイミスの名簿と地図を自分のデイパックの中に押し込み、
中からしまっておいた自動拳銃、ルガーP08を取り出し装備する。
ついでにエイミスが装備していた長剣も拾い上げ、やはりデイパックの中に入れた。
「さて、と……何故か知らない、何故か知らないけど、
南下してけば章高に会えるような気がする。よし、行ってみよう。
どうせ行く宛ても無いんだし」
第六感というものか、南の方向に章高の気配を感じた費覧は、
デイパックを背負い、ふさふさの尻尾を揺らしながら歩き出した。
エイミスが憎悪していたドーラ・システィールはどうしていたのだろうか。
ドーラ・システィールはD-3にある金物屋の民家部分で放送を聞いた。
「ふうん……結構死んでるね」
意外に死んでいる、と、ドーラは少し驚く。
自分以外に殺し合いに乗っている者の数は思っていたよりずっと多いようだ。
最初に殺害した春巻龍という男の名前も当然呼ばれた。
二回目に戦って、負かし、気絶させて身ぐるみを剥がした挙句ゴミ捨て場に捨ててきた、
あの桃髪の美少女剣士はどうなったのだろうか。
名前を聞くのを忘れたので生死は分からない。
もしかしたら先の放送で呼ばれた名前の中にあったかもしれないが。
「まあいいけど…さて」
座っていた台所のテーブル席から立ち上がり、
荷物を纏めて出発の準備をするドーラ。
右手に自動拳銃、H&KUSPを携え、金物屋民家部分を後にする。
外に出ると、軽装のドーラにとって少し肌寒い風が吹いていた。
「とりあえず、南の方へ行ってみようかねぇ。
禁止エリアは遠い所だから大丈夫だろ」
デバイスで方角を確認し、ドーラは市街地を南下し始めた。
【エイミス・フロリッヒャー@オリキャラ 死亡】
【残り 25人】
【一日目/朝方/E-4市街地】
【費覧@オリキャラ】
[状態]:肉体的疲労(中)、返り血(大)、市街地をF-4方面に向け南下中
[装備]:ルガーP08(2/8)
[所持品]:基本支給品一式、ルガーP08の予備マガジン(5)、コルトM1917(1/6)、
45ACPリムド弾(30)、ヤマトの剣@増田こうすけ劇場ギャグマンガ日和、
エロ本(5冊、調達品)
[思考・行動]:
0:皆殺し~♪ 最後には主催者も殺す。
1:南に行けば章高に会える気がする。
2:知人である章高は、限界まで犯してから食い殺す。
[備考]:
※頸動脈断裂と胸と腹に貫通銃創は完治しました。
【一日目/朝方/D-3市街地】
【ドーラ・システィール@FEDA】
[状態]:健康、返り血(少)、市街地をE-3方面に南下中
[装備]:H&K USP(15/15)
[所持品]:基本支給品一式(コッペパン2個消費)、USPの予備マガジン(4)、
鉄パイプ@SIREN
[思考・行動]:
0:殺し合いに乗り、優勝し、元の世界へ帰還する。
1:市街地を南下する。
[備考]:
※バド村殲滅作戦以前からの参戦です。
※E-4市街地にエイミス・フロリッヒャーの死体とデイパックが放置されています。