権利能力・意思能力・行為能力
権利能力・意思能力・行為能力についてのページです。
目次
1 権利能力
1.1 権利能力の意義と権利能力平等の原則
(1) 定義
私権および私法上の義務の主体となる資格。
私権および私法上の義務の主体となる資格。
(2) すべての人は権利能力を平等に持つ
「私権の享有は出生にはじまる」(民3)
→権利能力の始まる時期を定めた規定だが、人はすべて出生するから一般に権利能力平等の原則を定めたものと理解されている。
「外国人」(民3 II):原則として権利能力を承認される。
⇔日本船舶(船舶1)、日本航空機(航空4 I)、鉱業権等(鉱業17)、相互主義(特許25、国賠6)(※1)
※1 例えば、日本人がその国での特許出願を認められていれば、その国の外国人も日本での特許出願を認められる。
「私権の享有は出生にはじまる」(民3)
→権利能力の始まる時期を定めた規定だが、人はすべて出生するから一般に権利能力平等の原則を定めたものと理解されている。
「外国人」(民3 II):原則として権利能力を承認される。
⇔日本船舶(船舶1)、日本航空機(航空4 I)、鉱業権等(鉱業17)、相互主義(特許25、国賠6)(※1)
※1 例えば、日本人がその国での特許出願を認められていれば、その国の外国人も日本での特許出願を認められる。
A. 権利能力の主体は「人」に限定される
「人(自然人と法人)」意外のものは、権利の主体とはなりえない。したがって、動物なども権利の客体にすぎない。
「人(自然人と法人)」意外のものは、権利の主体とはなりえない。したがって、動物なども権利の客体にすぎない。
[ いわゆるアマミノクロウサギ訴訟 ]
鹿児島県・奄美大島の二つのゴルフ場開発をめぐり、国の特別天然記念物アマミノクロウサギなどの希少動物の生存権が侵害されるとして、環境保護団体のメンバーらが1995年2月、アマミノクロウサギ、ルリカケスなどを原告に加えて提訴動物を代弁して県の開発許可取り消しなどを求めた「奄美自然の権利訴訟」の判決で、原告には法的利害関係が認められないなどとして訴えを却下した。
(鹿児島地判平成13年1月22日)
B. すべての「人」は平等に権利を有する
1.2 権利の始期
(1) 権利能力の享有は出生に始まる(民3)
出生の時点は母体から胎児が全部露出した時点である(「全部露出説」)。
※ 出生の時点を一部露出した時点(「一部露出説」)、独立して呼吸をはじめた時点(「独立呼吸説」)等と解する説もある。刑法では一部露出説が通説的見解である。胎児が母体から一部露出した時点で生命を奪うと、民法上は母親に対する不法行為のみが問題となるのに対して、刑法上は殺人罪の適用が問題となる。
出生の時点は母体から胎児が全部露出した時点である(「全部露出説」)。
※ 出生の時点を一部露出した時点(「一部露出説」)、独立して呼吸をはじめた時点(「独立呼吸説」)等と解する説もある。刑法では一部露出説が通説的見解である。胎児が母体から一部露出した時点で生命を奪うと、民法上は母親に対する不法行為のみが問題となるのに対して、刑法上は殺人罪の適用が問題となる。
(2) 原則として胎児は権利能力の主体ではない
出生以前の胎児には権利能力が認められないのが原則である。ただし民法はその例外として、不法行為に基づく損害賠償(民721)、相続(民886)、遺贈(民965)(←受遺者=遺言により財産を受ける者)につき胎児を「既に生まれたものとみなす」ことでこの権利能力を認めている。
※ 日本民法は個別的な私法上の権利につき個別具体的に胎児の権利能力を定めているが(フランス民法、ドイツ民法も同様)、生きて生まれてくることを条件として一般的に胎児の権利能力を認める立法例もある(スイス民法31 III、旧民法人事編1)。前者を個別主義、後者を一般主義と呼んでいる。
※※ 上記以外に、民法は胎児の認知についても定めている(民783 I)。この規定は父母の受諾を要件として胎児の認知をおこなえることを定めた規定であるが、胎児が認知の対象となることを認めるのみであり胎児の認知請求権は認めていない(つまり、母親の権利であって、胎児の権利ではない)。したがって権利義務の主体となることを定めたものとはいえない。
出生以前の胎児には権利能力が認められないのが原則である。ただし民法はその例外として、不法行為に基づく損害賠償(民721)、相続(民886)、遺贈(民965)(←受遺者=遺言により財産を受ける者)につき胎児を「既に生まれたものとみなす」ことでこの権利能力を認めている。
※ 日本民法は個別的な私法上の権利につき個別具体的に胎児の権利能力を定めているが(フランス民法、ドイツ民法も同様)、生きて生まれてくることを条件として一般的に胎児の権利能力を認める立法例もある(スイス民法31 III、旧民法人事編1)。前者を個別主義、後者を一般主義と呼んでいる。
※※ 上記以外に、民法は胎児の認知についても定めている(民783 I)。この規定は父母の受諾を要件として胎児の認知をおこなえることを定めた規定であるが、胎児が認知の対象となることを認めるのみであり胎児の認知請求権は認めていない(つまり、母親の権利であって、胎児の権利ではない)。したがって権利義務の主体となることを定めたものとはいえない。
(3) 相続と胎児(民886)
「胎児は、相続については、既に生まれたものとみなす」(民886 I)が、「胎児が死体で生まれたときは、これを適用しない」(民886 II)
「胎児は、相続については、既に生まれたものとみなす」(民886 I)が、「胎児が死体で生まれたときは、これを適用しない」(民886 II)
[ 例 ]
Aが現金6000万円を残して死亡した。死亡時にAには妻Bと妻のお腹に胎児である子C、母Dがいた。
A. 胎児Cが生きて生まれた場合
Aが死亡すると相続が開始する(民896)。この場合Aの相続人は、Bと(民890)Cとなる(民887 I)。そして相続分は、それぞれBが財産の2分の1、Cが2分の1ずつとなる(民900)。
Aが死亡すると相続が開始する(民896)。この場合Aの相続人は、Bと(民890)Cとなる(民887 I)。そして相続分は、それぞれBが財産の2分の1、Cが2分の1ずつとなる(民900)。
B. 胎児Cが死体で生まれた場合
Cが生きて生まれなかった場合は、Cは相続人とはならない(民886 II)。この場合Aの相続人はBと(民890)、Dであり(民889 I)、相続分はBが3分の2、Dが3分の1となる(民900)。
Cが生きて生まれなかった場合は、Cは相続人とはならない(民886 II)。この場合Aの相続人はBと(民890)、Dであり(民889 I)、相続分はBが3分の2、Dが3分の1となる(民900)。
※ 以上は、法定相続による相続分であり、Aが遺言を残していた場合はこれとは別の処理が為される。また、相続財産は通常現金(あるいは預金債権)だけではないから、相続分を決定するのに、遺産分割協議(協議分割 ー 民907 I)がおこなわれる。相続人間の協議が調わない時は家庭裁判所の審判によって分割される(審判分割 ー 民900 II)。胎児が出生する以前に分割の協議を行うことができるかは、胎児に代わって代理人が胎児の権利を行使することができるのかどうか、誰が代理人となるのかの問題である。胎児抜きで分割協議がおこなわれた後に、胎児が生きて生まれた場合、その分割協議は無効となる。
なお、実務上は遺産分割協議がおこなわれる以前に胎児が相続した不動産を、胎児の名義で登記することは許容されているが、その場合、母が代理人として登記申請行為を行う(民824類推)。
なお、実務上は遺産分割協議がおこなわれる以前に胎児が相続した不動産を、胎児の名義で登記することは許容されているが、その場合、母が代理人として登記申請行為を行う(民824類推)。
(4) 胎児の出生以前に胎児の権利を行使することができるか
[ 例 ]
Aは大八車でY(阪神電車)の踏切を横断中にYの電車に衝突して死亡した。当時AはXと内縁の関係にあり(事実上婚姻生活を営んでいたが、籍は入れていなかった)、Xのお腹にはAの子Bがいた。YはAの父Cとの間で示談交渉をおこない、Cに対して示談金を支払うとともに、事後一切請求をしない旨の約束をした。Bの出生後、XはBとともにYに損害賠償と慰謝料請求を求めてYを提訴した。
A. 前提
(i) 子は父親が交通事故等で死亡した場合、扶養を受ける権利を失うから、これを加害者に賠償請求できる(民709)。
(ii) 子は父親が死亡した場合、慰謝料請求権を有する(民711)。(※1)
※1 民721により、胎児にも請求権が認められる。
(i) 子は父親が交通事故等で死亡した場合、扶養を受ける権利を失うから、これを加害者に賠償請求できる(民709)。
(ii) 子は父親が死亡した場合、慰謝料請求権を有する(民711)。(※1)
※1 民721により、胎児にも請求権が認められる。
B. 判例(胎児の出生以前に胎児の権利を行使することはできない=停止条件説)
判決は、Cには(i)の賠償請求権があること認めるが、これをCが生まれる以前に行使することはできないとした。したがって、これに反するBの示談の効力を否定した。
判決は、Cには(i)の賠償請求権があること認めるが、これをCが生まれる以前に行使することはできないとした。したがって、これに反するBの示談の効力を否定した。
→「既に生まれたものとみなす」
=「胎児の間は権利能力を持たないが、生きて生まれた場合には胎児であったときにさかのぼって権利能力があったと同じように取り扱う(生まれるまでは効力が停止している)」
=「胎児の間は権利能力を持たないが、生きて生まれた場合には胎児であったときにさかのぼって権利能力があったと同じように取り扱う(生まれるまでは効力が停止している)」
C. 通説(胎児の出生以前にも胎児の権利を代理人が行使できる=解除条件説)
学説の多くは胎児の出生以前にも胎児の権利を行使することを認めるべきだとする。もっとも胎児自身は権利を行使できないから、代理人がこれを行使することになるが、民法は胎児の代理人が誰であるかにつき規定をおいていない。しかし、生まれてからはその親権者が代理人となるのであるから、生まれてきた場合の法定代理人(判例のケースではX)が、代理権を行使すべきだという。
学説の多くは胎児の出生以前にも胎児の権利を行使することを認めるべきだとする。もっとも胎児自身は権利を行使できないから、代理人がこれを行使することになるが、民法は胎児の代理人が誰であるかにつき規定をおいていない。しかし、生まれてからはその親権者が代理人となるのであるから、生まれてきた場合の法定代理人(判例のケースではX)が、代理権を行使すべきだという。
→「既に生まれたものとみなす」
=「胎児の間も権利能力を持ち、代理人がこれを行使できるが、死体で生まれた場合にはそれまであった権利関係が解除され、さかのぼって消滅し、はじめから権利を持たなかったことになる」
=「胎児の間も権利能力を持ち、代理人がこれを行使できるが、死体で生まれた場合にはそれまであった権利関係が解除され、さかのぼって消滅し、はじめから権利を持たなかったことになる」
このwikiの更新情報RSS