3DC安全ガイドライン
立体視成立の確認
3D(立体映像)を視聴したとき像が2重に見えたり、立体像が感じにくい場合は、直ちに使用を中止し、表示機器やソフトの設定に間違いがないか確認調整する。それでも2重像に見えたり違和感を感じる等、立体視が成立しない場合は、利用を中止すべきである。
両眼視差を利用する立体機器は、利用者が右目と左目から入る視点の異なる2つの映像を脳の中で融合して始めて立体を感じさせることができる。
システムの調整に不適切'左右の光軸のズレ、左右画像のサイズの違い、色や輝度の差、上下のズレ、左右の映像の光の混合(クロストークが大きいなど)があると左右2つの映像は融合しにくいため2重像に見えたり違和感を感じ、眼精疲労などを引き起こす原因となることがある。
製品の取り扱い説明書をよく読んで、適切に設定し、利用すべきである。
両眼視差立体視成立には個人差、慣れがあることにも注意する。
中には立体視ができない人もいるので、販売時の配慮、製品の取り扱い説明書への記述、イベント等での事前説明、配信での事前説明等が望ましい。
逆視防止のための確認
左右の目に与えるべき映像が左右入れ替わっても利用者は意外に気づかないものである。しかし、視覚疲労や不快感の原因となるので、左右逆転がおきないような配慮が望まれる。
左右の映像が逆転すると凹凸が逆になるはずだが、映像には奥行きを表
す特長が両眼視差以外にもあるので、気がつかないことが多い。ハード
設定の不備、ソフトの操作ミス、データ・フォーマットの違い、データ受け渡
しでの連絡ミスで左右反転映像を見てしまうことがある。
利用者はそれに気づかず使用する場合が多いので、なんらかの方法で
左右の映像を正しく見ているか設置時に確認することを推奨する。
立体映像のイベントで散見されるのは、液晶シャッターメガネの同期ズレ
による左右の映像の入れ替わりや、設置担当者への連絡不備による左
右の映像の入れ替わりである。十分注意したい。
逆視防止のため業界にまたがる規格化が望まれる。
視聴姿勢
両眼視差方式では表示面の水平方向と両目を水平にした姿勢で見るのが望ましい。
両眼が表示面に対して斜めになっていると、左右の眼に写る映像の上下の差異が
大きくなり、融合困難となり、眼精疲労を引き起こす。また、直線偏光を利用した偏光
メガネ方式では、傾けるとクロストークが大きくなり、眼精疲労を誘発しやすくなる。
視聴位置
立体映像の視聴は適正位置から行うことが望ましい。
通常、立体コンテンツは画面を正面からみることを想定して作られている。さらに、ハイビジョンテレビの場合は、画面の高さの3倍の位置での位置で視聴することを前提として制作されている。それより近くで見ると視差角が大きくなり、遠くから見ると視差角が小さくなることに注意すべきである。
標準観視距離'画面の高さの3倍で見た場合の視差角を1度と設定したとき視距離を変えると視差角は、1H3度、1.5H2度、2H1.5度、3H 1度、
4H0.75度、5H0.6度、6H0.5度となる。
イベント会場での座席設定、ホームシアタでの座席設定には注意が必要である。
また、GL-5にも注意が必要である。
さらに、画面を斜め方向からみると台形ひずみが大きくなり、適切な立体像が形成されにくくなるため、疲労や酔いの原因になる場合がある。
視聴時間
3Dの視聴中、疲労、不快感等、異常を感じたら、使用を一旦中止する。休憩をしても疲れ、不快感が取れないときは、視聴を中止するのが望ましい。疲労、不快等の自覚症状は生体からの警告と考えるべきである。また正しい設定の視聴をしているか確認することも重要である。VDT作業で立体映像を扱う場合にはVDTガイドラインの遵守を推奨する。
眼精疲労・映像酔いなど不快感の感じ方は個人差が大きく、様々な要因が関係することから利用時間について、本ガイドラインの遵守が望まれる。
観難さや酔い等不快感を生じたときは一時的に画面から眼をそらすのも有効である。
本ガイドラインを3Dの利用者に周知させることが望ましい。例えば、3D関連機器の取扱説明書への記述や視聴前の説明が推奨される。このガイドラインは、体調をうまく伝えられないような子供では遵守困難と考えられるので大人同伴注意のもと実行することが望まれる。
VDT作業に立体映像を用いる場合は、VDTガイドラインが参考にされたい。
http://www.mhlw.go.jp/houdou/2002/04/h0405-4.html作業に従事する者については、一連続作業時間が1時間を超えないようにし、次の連続作業までの間に10分~15分の作業休止時間を設け、かつ、一連続作業時間内において1回~2回程度の小休止を設けること。」とされている。
低年齢層への配慮
3D機器の子供の利用では発達段階の視機能への影響を考慮したうえで、
利用が必要な場合は、大人の管理のもとに視聴の可否判断、視聴時間制限をするのが望ましい。
視聴中の注意喚起
3Dの快適視聴を実現するため、視聴中に疲労や不快感を感じた時の対処法を取り扱い説明書やイベント等の事前説明で周知することが望ましい。ライブ映像、実写映像などでは、予期せず視差量が過大になったり、動きが激しくなることがあるので特に注意が必要である。
立体視が難しくなったとき、一時的に疲労、不快を感じた時は、メガネを外し、画面から視線をそらしてもらう。視差の大きい場面、視差の急変化の場面、動きの速い場面、視差の急変で生じることがある。
以下は2Dでも同様だが、3Dでも効果がある。
- 2回転、横揺れ、縦揺れを伴う映像コンテンツを観賞する際は、自分が動いているような感覚
- 視覚誘導自己運動感覚が生じることがある。それを不快と感じた場合(映像酔い)は、目を画面外に向けるなどする。
- 3部屋を明るくして鑑賞すると、映像酔いが軽減される場合がある。
- 4休憩をしても疲れや不快感等が取れないときは、視聴を中止するのが望ましい。
立体視の個人差、眼精疲労、不快感の自覚症状と計測方法及び原因
両眼視差を手がかりとする立体視について、見えにくい人、立体がみえてもすぐ眼精疲労を起こす人、強い視差でも疲れを感じない人など、個人差があることに注意し、不特定多数の人に見せるときにはガイドラインを遵守した注意深い対応が望まれる。
立体による眼精疲労、不快感の自覚症状と計測方法及び原因
立体観察による眼精疲労や不快感の自覚症状はつぎのようなものである。
- 目が疲れる
- 目が重い
- 二重に見える
- 目が乾く
- 頭が重い
- 頭が痛い、
- 肩こり
- 肩が痛い
- 背中が痛い
- 吐き気がする
- めまい
- 酔う等
眼精疲労や不快感に関する客観的測定法'他覚的評価としては下記が行われている
が標準化された方法は存在せず、研究途上である。以下が良く使われている。
- 融合限界頻度CFF
- 視機能調節機能
- 輻輳機能
- 視覚誘発電位、
- 自律神経系
- 瞳孔
- 心電
- 血圧
眼精疲労や不快感等の原因として次のものがあげられる。
- 見えの不自然さ
- 不適切な視差の設定
- 調節・輻輳の矛盾
- 映像の歪
- 箱庭効果、
- 書割効果
- 画枠歪
- 垂直視差の有無
- 運動視差の矛盾
- 左右像の幾何学的ずれ(特に上下左右像の光学的特性の差)
- 左右色の差
アナグリフ方式の赤青メガネは手軽なためよくつかわれているが、左右の眼に入る
色が異なり、視野闘争を生じさせるため、疲労しやすい。
本物とは異なる擬似の立体映像であることから、なんらかの違和感は避けられないが、
表示装置とコンテンツの注意深い設定により、快適にみることができる。
最終更新:2010年07月06日 16:24